なのは+『心のちから』   作:黒影翼

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余録・型無き技量破壊戦闘

 

 

 

余録・型無き技量破壊戦闘

 

 

 

Side~ジークリンデ=エレミア

 

 

 

フォート=トレイア。

彼の、ここ数戦を見た限りの印象は…

 

そんな強くない…やった。

 

あのヒドゥンとの戦いにまで駆り出された以上、そんなはずがないんやけど…

ともかく、力も技量も特別感じなかった。

総魔力量はそれなりにあるみたいやけど…それも、低い発揮値のせいでただ継戦能力が高いってだけになっとる。

 

『我等がチャンピオン、ジークリンデ=エレミア選手の二回戦!砂地となった今回、果たしてフォートは何処まで通じるのか!?』

 

アーちゃんの解説に改めて地を二、三回蹴ってみる。

平地より力の伝達は悪いものの、それは向こうも同じやし、しっかり鍛えとれば砂地でも速く動く事はできる。問題はなさそうやった。

 

「気合勝ちは出来んよ。デバイス抜いたら?」

 

芸術的なまでに極めた射撃使いのティアナさん。

対抗するように二丁の銃を抜いて、ダメージを無視して連射で押し切ったけど…そのノリでウチとやるならちょっと残念な結果が想像できる。

 

「リベリオンは身体の中だ、いつでも何でも装備できる。速人の馬鹿ほどだらだらやるつもりは無いから気にすんな。」

 

何一つ気負う事無く立っているあたりは達人っぽいけど、それ以外がどうも…

 

『それでは二回戦第三試合!レディー…ファイトッ!!』

 

開幕直後、一気に駆け出してくるフォート。

その手はしっかりと握られている。

 

ティアナさん相手に銃抜いたあたりから察し取ったけど…ウチ相手に格闘戦か。

 

「ふっ!」

 

さしあたって拳を繰り出す。

最短距離を奔る様に突き出した右拳を彼は左腕でガードする。

 

普通やな。

 

間髪いれずに左拳でアッパーを放つ。

右拳をガードして足を止めたところに放りこむようにする本命。

だったけど…

 

崩れ落ちるように体をそらして膝を曲げた彼によって回避された。

 

「ふっ!」

「っ…」

 

そのまま左足だけ思いっきり蹴り上げてくるフォート。

砂地に埋まっていた足を振り上げたため、砂が顔にとんでくる。

 

左足を振り上げた勢いを使って右脚を振り上げながら後転しようとする彼のがら空きになった背中に向かって指を立てて魔力弾を放り込む。

直撃して、後転から起き上がる途中だった彼はうつぶせに倒れた。

 

追撃に斜め下に向かって足を踏み込む。

公式試合じゃダウン扱いであまりできん追撃法やけど、だからといってルール上問題ない追撃ならやらん意味はない。

 

が…

 

「わ…と…」

 

踏み込んだ足が命中する前に、彼はウチの足を掴んで引っ張った。

投げ、言う感じでもなんでもない。ただ適当に自分に当たらんように引っ張っただけ。

けど、砂地で片足だけやったためかぐらついてそのまま尻餅をつく。

 

「ふっ!!」

「おっと。」

 

掴まれていたままの足を振り上げながら後転から着地して構える。その間に、彼も立ち上がっていた。

踏ん張りが効かん分格闘戦やり辛い、なら…

 

「ゲヴェイア・クーゲル!」

 

射撃で…と、渦巻く弾幕を展開して放つ。

そんなウチに対して真正面から突っ走ってくるフォート。

 

砂地の分、瞬間的なダッシュやジャンプなんかの初速や跳躍力は落ちる。弾幕を防ぎながら突っ込むのは無謀…

 

「お?」

 

と思っていたら、彼は腕を交差させて顔面を庇いながら、猫みたいに真っ直ぐになって飛んで来た。

放った弾幕の当たる面が少なくなる上、顔面を腕で庇っているから急所にも当たらん。

けど、そんな体勢からじゃ攻撃なんて出来ん。やのに、体当たり気味にモロに突っ込んでくる。

真っ直ぐ顔から向かってきとるから、狙うなら顔面か頭。

頭を上から殴って地面に叩きつけ、そこから寝技に…と思ったんやけど。

 

「っ!」

 

打ち下ろしをガードした上で、地面にめり込むように落ちた勢いを利用した彼は、頭が地面に向かう事で上がった左足の踵でウチを蹴ってきた。

見えてない上に型も何もないそれは、頭でなくウチの右肩に命中する。

そして、砂地に突っ込んだ腕を使って逆立ちのようになった彼は、適当に足を振り回した。

 

下がって回避してる間に立ち直した彼に向かって、今度は低空タックルを仕掛け…

 

「フォトンバースト。」

 

手を開いた彼が砲撃を放った。

突進をかける相手に砲撃。普通の戦法ではあるし、彼の速射砲撃なら無視して腕で防ぎながら突っ込める程度や。

 

砲撃の狙いがウチなら。

 

「っ…」

 

ウチと彼の間に着弾した砲撃は、思いっきり砂を舞い上げウチの視界を覆い隠す。

目に砂が入るのを避けるために砂を防ぎながら突っ込み突破。ダメージはなく、移動してなければ捕まえられたんやけど…

 

砂を抜けたウチの目の前には、何も無かった。

 

「づ…っ!」

 

直後、『両足』で頭を踏まれた。

前のめりに転びかけたウチは、手を突いてそれを避けて、斜め後ろを見る。

ウチの頭で跳躍と言うよりは、踏み込む感じで踏んできたらしく、既に着地して振り返っていた。

 

…滅茶苦茶や。

 

格闘戦技の型なら、変なことばっかりしてくる。

けど、直撃はあんまり放り込めとらん。

 

上手いとあんまり思えんけどやり辛い。

我流ですらない感じで…

 

 

 

Side~ミウラ=リナルディ

 

 

 

「我流と言うより無流って感じだな、アイツの場合。」

「無流…ですか?」

 

見たことない感じでチャンピオンと戦うフォートさん。

予選突破から少し気になっていた為、彼に詳しいらしい速人さんに折角だからと話を聞きながら試合を見ようと思ったのだけど…

戦えている以上我流の凄腕なのか?あるいはああ見えて何か学んでいるんだろうか?

全く分からず聞いてみた結果、余計分からない返しをされた。

 

「戦技のなんとか流ってのは、元を正せば全部開祖は我流か別流派からの派生だろ?仮に自力だけで戦闘方法を身につけてても我流になる訳だが…」

 

それは分かる。

何にだって始まりはある。だから、仮に滅茶苦茶な戦い方でも我流の筈。

 

「けどアイツ、そう言うの下手でな。だから、型も何も無く、戦闘訓練だけひたすらやってたんだよ。一つの体勢から攻撃を凌ぐ方法をとったら、同じ方法、体勢で防ぎ辛い攻撃を仕掛けるって感じでな。」

 

それは、ひたすら同じ体勢からの蹴り方、殴り方を懸命に身に付くまで覚えた反復練習をしてたボク…普通の格闘戦技の使い手とはまるっきり違う。

 

「その結果がアレだ。」

 

速人さんが呆れたように告げた丁度そのとき、チャンピオンの『打撃』に向かって肩から『体当たり』を仕掛けるフォートさんの姿。

打ち込んだ攻撃を振りぬけずに全身から当たられて姿勢を崩したところにそのまま乱雑に振り下ろされた拳を受けるチャンピオン。

 

技術で繰り出すカウンターや防御法としてはどう考えてもおかしい体当たり。

ただ、アレでもダメージを減らす効果が高い事は知っていた。

体験した事があるけどハードヒッターのボクですら、振りぬかずに変なタイミングで当たった打撃はそんなに重くならない。

ブローみたいにめり込むタイプの打撃以外はダメージを軽減できるはずだ。普通はやらないけど。

 

どの技を使用するか、どう連携するか、じゃ無くて、攻撃によるダメージを一番受けず、攻撃が当てられるタイミングに攻撃する。技、と言うよりその『行動』を考える…いや、反応の早さを見てる限り、多分殆ど反射的に決めてるんだ。

繰り出す技、型を習得してる訳じゃない…身に着けてる訳ですらないから、我流じゃなく、流派の無い人。

 

「ま、参考にはしないほうがいい。10人いたら9人が故障して、1人だけ身に付くような賭けに近い訓練を願い事の為にせざるを得なかった結果、たまたま成功したのがアイツだ。自分を出来るだけ前へ上へ磨くって作業とは程遠い。」

 

確かに速人さんの言う通り、身体に無理がありすぎるし、ダメージ前提で危なっかしい。

けれど…

 

「全く参考にならないって事はないです。ああいう対処法があるって言うのも見れますし、ボクも近づかないと始まらないタイプなので。」

「そっか。怪我すんなよ。」

 

言いながらポンポンと軽くボクの頭を撫でる速人さん。

 

 

その掌から頭に伝わる感触が、まるで鞄のようだった。

 

 

手の皮が硬くなってるんだろうけれど、こうなるまで一体どれだけ剣を振って皮を痛めればいいのか想像できない。

賭けに近い訓練…か。

他人事のように言う速人さんも、量だけなら似たようなものをやってきたから、あんな異常な技量があるんだろう。

そう考えると、なんだか言われた通りに無茶をせずにはいられない気がした。

うぅ…オーバーワークの注意も受けてるんだけどなぁ…

 

複雑な気分でボクは、普通には見られない試合を眺めていた。

 

 

 

Side~フォート=トレイア

 

 

 

大会で俺のような人間と当たる事などないんだろう。

戸惑ってるのは容易に想像つくが、それでもなんか楽すぎる気がしていた。

足場が砂地なのも関係してるのかな?

ま、そうは言ってもそこまでクリーンヒット、大ダメージを与えてる感じでもない。

油断は出来ない。

 

「…正直甘くみとったみたいや。」

「いや、普通に見積もったら多分当たってる戦力分析だと思うぞ。特技が無い相手なんて。」

 

自分で天才どころか無才だと分かってるので、技量や魔法から戦力分析を行う人なら甘く見られてもしょうがないのも分かっている。気持ちは分かる。

そして、楽しそうに笑ったかと思うと、彼女は両腕に武装を展開した。

 

鉄腕…だったか。

 

「…壊すから、痛いよ?降参するなら早めに」

「勝つから問題ない。」

 

クラッシュエミュレートが無いからだろうか、わざわざ念押しをしてくるジークリンデさん。

練習としてはありがたい忠告だが、俺としてはそこまで気にする事はなかった。

 

俺のコメントに落ち込んだり暗い表情を見せる事はなく、彼女は笑う。

 

「心配無用…って事やな。」

「あぁ。」

「ホント言うたらその方が楽しいし…本気で行かせて貰うよ!!」

 

展開した鉄腕を構えて接近してくるジークリンデさん。

人体破壊技の使い手だったか。ま…

 

殺人技より厄介な訳は無いだろうが。

 

俺は向かってくる彼女に自分から接近。

向かってきた左の拳を、右拳で殴り弾く。

 

防御や型にはまってない、向かってきた拳を殴ることで逸らすって行為に少し驚いたらしいが、それでも俺が異端なのには慣れたらしく、今度は右手を伸ばしてくる。

速いそれは、打撃ではなく襟元を掴むためのもの。

同時に前に出していた右脚のふくらはぎを蹴ってみたが、今度は姿勢を崩すに至らない。

 

「せぇ…のぉっ!!!」

「っ!」

 

片手のクセに背負い投げ気味に投げ落とされる。頭から落ちれば話にならないから、どうにか右足を裏から先に地面に振り下ろす。

右脚、背中、後頭部の順で衝撃が来る中、右手で襟元を掴んでいるジークリンデさんが左拳を振り上げているのが見えた。

鉄腕の打ち下ろしなんて直撃したらたまったものじゃないな。

 

「ふっ!」

「な、くっ!」

 

倒れた俺を見下ろすようにしていた彼女に向かって、投げられている間に両手に展開した剣を振り上げる。

地面を支点に肘を曲げて振り上げたから早めに切り返せた。が、それでも咄嗟にバックステップで逃れた彼女には届かなかった。

 

…幸い砂地だから対して痛くも無かったな。

一息吐いている場合でもないから、接近される前に跳ね起きて、同時に手にしていた剣を適当に投げる。

 

「うわっ!と…」

 

例によってこっちの体勢が整う前に追撃に出ようとしていたらしいジークリンデさんは、あっさり武器を投げ捨てると思ってなかったのか俺が投げた剣を鉄腕の拳で殴って破壊する。

まともにガードしたら素通り気味に殴られる訳か。さすが破壊者。

仕方ない、ここはエフスからのプレゼントを使わせて貰うか。

設計データさえあれば、千変万化するリベリオンに組み込んだ…

 

「ソードウイング…シュート!!!」

 

昔スカリエッティが作ったらしい、魔法下手でも使いやすい対魔導師近、中距離装備。

背中に展開された8本の剣翼の内、4本を操作射出。2本を両手に持って投擲。

残り2本を手に持って駆けだす。

彼女は鉄腕の装甲部分を素早く使って向かってきた剣を全部弾き飛ばす。

そこに丁度追撃する形で右手の剣を振り下ろしたが、当然のように左手の甲で弾くようにして折られる。

右を振り下ろしたのだから左手は後ろの方にある。普通に剣を持っているなら…振るなら、追撃にタイムラグがある。

だが、持っているのはソードウイングの1本。

 

左手の剣を手放した俺は、操作で剣を射出した。

 

「っ!?」

 

追撃しようとしていた右拳で、咄嗟に向かってきた剣を破壊するジークリンデさん。

すげぇ反応だが、さすがに予定外の攻撃を捌いた為隙が出来る。

 

 

「前、下、前下Pコマンドっ!!!」

 

 

開いた顔目掛けて、俺は握った左拳を下から振り上げながら跳躍した。

どうせ顎狙っても綺麗に当たると思わなかったため胴体ど真ん中を狙ったが、丁度鳩尾に入り、そのまま彼女を打ち上げながら拳が胸元を滑るようにして顎にも入る。

おぉ多段ヒット。狙わなくてもたまにはなるもんなんだな。

 

なんて、一人呑気な感想を抱いていると、打ち上げられていた彼女がそのまま空中で背後に一回転し…

 

 

 

寒気がした。

 

 

 

直後、咄嗟に飛行で普通に真横に飛んだ俺の居た位置を、破壊の一撃が薙ぎ払っていった。

着地しようとする彼女に合わせて俺も飛行魔法を切り下降する。

 

降りた所で分かったが、両手が恐ろしいほどの力を湛えていた。

殲撃…だったか。

 

「ようやくとっておき…か。不足は無いな、」

 

 

 

Side~ミカヤ=シェベル

 

 

 

技術的には大した事はないはずなのだが、逆にそれが原因なのか行動が読めない上に戦闘そのものには異常に慣れているらしい彼によって、とうとう殲撃を抜くまでに至るジーク。

雫ちゃんに弄られて以来、黒のエレミアを自力制御できるようにとしてきた為、今も意識は普通にあった筈だが…

 

 

 

私は…いや、この場のほぼ全ての彼の知り合い以外は、彼の異端ぶりを舐めていた。

 

 

 

殲撃を湛えた右手を開いたまま振り抜いたジーク。直撃すれば当然スプラッタ確定のその一撃に対して彼は…防御でも、カウンターでもなく…

 

 

ジークの右手を左手で掴んで、ジークの左肩に押しこんだ。

 

 

触れるもの全てを破壊する彼女の力。

それをまさか、『彼女に触れさせる』事で勝利しようなんて、普通…と言うか、異常だろうが何だろうが誰も考えない。

 

大体、モロに右手を掴んだ彼の左手は、バリアジャケットも肘辺りまで吹き飛んでおり、掌からはだらだらと血が流れ出している。

データ表示されないが、間違いなく骨折もあるだろう。馬鹿げている。

 

だが、殲撃を押し込まれてよろけたジークに対して、ブースターを展開した右腕の拳を握った彼は、ブースターを吹かしながらその拳を全力で振り抜いた。左が肩から上がらなくなったジークはその拳を頬に直撃して、思いっきり吹っ飛ばされて砂地に横に倒れる。

 

対して、倒れたジークの前で右拳を握った彼は…

 

「で、まだやるか?」

 

高らかに宣言する彼の姿を見て、思う。

油断、と言う訳じゃない。勝ち誇っている訳じゃない。

 

だが…本当にまだやるとジークが起き上がっても、おそらく全く動揺しない。

 

それはある意味、一番恐ろしい事だった。

隙もつけない、心も折れない、ショックさえ受けない、やることは異端ばかり、賭けに近い事に成功しても平然としている。

 

戦力や戦闘では倒す事は出来そうな彼だが、人間的に彼を『倒す』手が見当たらないのだ。

 

右腕を突きながら起き上がろうとするジークだが、頬にあんな一撃を直撃したためか頭がぐらついているのだろう。オマケに…

 

「フォトンバーストっ!!!」

 

カウントルールなんてものが無い試合の為、容赦なく放たれた砲撃の直撃を食ったジークは、今度こそそのまま倒れた。

 

 

 

Side~フェイト=T=ハラオウン

 

 

 

「凄いな、フォート。」

 

いい勝負はできると思っていたけど、まさかフォースドライブすら使わずに勝利するとは思わなかった。

彼女の攻撃にしたって当たってはいたんだ。

ただ、無理をしてではなく、ダメージを食らうのが当たり前と過ごしてきたような異端者と戦う経験なんてものが無かったんだろう。

連携崩しとしての性能が異常に高いフォートの戦い方を前に、強い人ほど錬度が高い、牽制打撃や単発射撃が逆にあまり意味を成さない。

せめて泥仕合の経験が多ければまだフォートともやりやすかったのかもしれないけれど、普通の相手だと試合にもならない位の差だからそんな経験は無いんだ。

下が砂地だったとは言え、怖いな本当。

 

 

次は…二回戦最後、フレアとシグナムだ。

 

 

フレアの応援をしたい。

けど、正直普通にシグナムの方が不利だと思うから、それだと『徹底的に叩き潰せ』って応援みたいにすら思えて微妙だ。

 

でも、シグナムだって速人達と戦えるようにって色々考えてきたし、そう簡単には行かないはずだ。

 

フィールドは…通常闘技場の金属板。

戦艦など、建造物によっては床の素材が石やコンクリートじゃない場合も多いので用意してあるものだ。

 

『本日午前最終試合!フレアさん対シグナムさん!レディー…ファイトッ!!!』

 

アクアの声と共に試合開始。

…したはずなのだが、二人は動かない。

 

無言でカートリッジをロードするシグナム。レヴァンティンから炎が吹き上がるが、それでも動かない。

 

動かない…のだが…

 

緊張する。

 

変わり映えしない状況なのに、盛り上げ役で司会をやってるアクアが一言も挟めていない現状が、全てを物語っている。

 

 

二人とも、一撃に全力を込める気だ。

 

 

腰を沈めて突きの体勢をとっているフレアと、猛る炎を宿したレヴァンティンを右手に真っ直ぐ立つシグナム。

 

そして…

 

 

 

「おおぉぉぉぉっ!!」

 

 

 

駆けたのはシグナム。レヴァンティンの間合いに入る直前…

フレアが、黒い光を湛えた槍を突き出した。

 

槍の方が間合いが長い。オマケにフレアの突きは防げる防御なんてほぼ存在しない。

剣が届く前にシグナムが貫かれる結果が想像できた。けど、シグナムは左手に逆手で持っていたレヴァンティンの鞘で直撃を外しながら身体を僅かにそらす。

鳩尾に向かっていた槍の先端は、シグナムの右胸下部のジャケットを裂きながら貫いていく。

 

直撃を回避したシグナムはそのまますれ違いに燃え盛る剣を振り下ろす。

全力で突きを放ったフレアに向かっていったその一閃は、突きの勢いをそのままとめずに前足を崩しながら前転に入ったフレアの背中を掠めるように通り過ぎた。

互いに通り過ぎる事になり、仕切りなおし…

 

かと思った次の瞬間、低位置を薙ぎ払うように、反転しながら振るわれたフレアの槍によって、シグナムの左足が捕らえられた。

 

互いに向き直り構えるが、左足のふくらはぎに直撃を受けたシグナムは、前においた右脚に重心をかけている。

飛行魔法で空戦機動に持ち込めば足をやられていても大きなロスは無いけど…航空剣技と言う位で、地上で振るう剣と違う点が多々ある。空対空ならいいけれど、フレアが付き合って飛んでくれなきゃただの逃げ手にしかならない。

 

「焔乃大蛇!!」

 

だからか否か、シグナムは炎を纏ったレヴァンティンのシュランゲフォルムを短距離高速操作する。

高速で迫る剣の先端に対して、フレアは槍の先端を構えて触れさせると、手首を使って槍に蛇剣を絡め取っていく。しばらくすると、伸びきったレヴァンティンを全部巻き取って遠目にフランクフルトのようにすら見える形状の塊になった。

 

「ブレイク…ブースト!!!」

 

そのままで、全身に砲撃魔法を纏った状態での突進突きを放つフレア。

絡めとられ繋がっているレヴァンティンを手にしている状態で左足を負傷しているシグナム。取れる手段は限られているが、それでも突進してきたフレアの槍の先端をレヴァンティンの鞘で捉えた。

が…砲撃を纏った突進の一撃を、片足を負傷した状態で振るった鞘の一撃で逸らしきれる力はなかったのか、結局直撃して吹き飛ばされた。

 

レヴァンティンを手離し吹き飛ばされて転がるシグナム。

素手のまま立ち上がろうとするが…

 

鳩尾に吸い込まれるように入った槍の一撃をジャケットの防御力だけで受けて無事で済むわけも無く、結局立ちきれずに膝を折った。

 

『ぇ…あ…っと!思わず言葉を忘れてましたっ!!凶悪な全力の一撃同士の交錯から、一瞬の出来事!フレアさんが準決勝進出決定だあっ!!!』

 

決着がついてようやく息を思い出したように吸い込んでから声を張り上げるアクア。

 

拍手、歓声は起きたものの、まばらだった。理由は分かる。

生きた心地がしないからだ。

 

…最初の交錯、どっちか直撃してたらスプラッター映像間違いなかった。

私も試合好きだし、本気で戦うのが好きなのはいいんだけど…血戦は勘弁して欲しいなぁ。

 

とは思いながら、剣友と夫になる人の試合なのだと自覚した段階で、多分一生無理な願い事なんだろうと気付いた私は、とりあえず落ち着けるよう大きく息を吐いた。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 




当たり前にやってるものの、管理世界でもこれで事故ったら逮捕とかになるんでしょうか(滝汗)。しかもやってるのが公務い(以下略)。
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