アイルーの女神   作:にゃはっふー

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猫は良いよね。


エピソード・アイルー

 迷宮都市オラリオ。怪物を生み出すダンジョンを封印するようにその真上に建築された都市であり、ダンジョンが生み出すモンスターが持つ魔石を世界に売り、富と名声を生み出す場所。世界の中心、なんでもある都市と言われた場所で………

 

「うわあぁぁぁんうぅぅぅぅヘーファイストスーゥゥゥゥ」

 

 泣きながら雨に打たれて彷徨う女神がいた。彼女の名前はヘスティア。最近になり下界に降りた神の一柱である。

 

 なぜこんな事になっているかと言えば自業自得である。神友である女神の下でぐうたら過ごして、その友神の堪忍袋の緒が切れて追い出された。

 

 働く事が分からない女神は、どうしていいか分からず途方に暮れた。いや、どうすればいいかは分かる。下界に下りた神が唯一許されている力、神の恩恵(ファルナ)を人類、子供たちに授ける事で養ってもらうと言う方法。

 

 だが零細派閥のヘスティアの下に来てくれる者はいない。養われている時に探せばよかったのだが、彼女はぐうたら過ごしていた。反省しても後の祭り。雨に打たれながらおいおい泣き、雨宿りできるところを探していた。

 

 そして地下の、下水道の入り口を見つけ、仕方なくそこに雨宿りする。本来なら雨が降っている時にそんなところに行くのは間違っているが、ずぶ濡れの状態で往来の下にいたくないと思ったヘスティアはそこで雨宿りする。

 

 それが転機だったのだろう。

 

「あれ………」

 

 なにやら奥が騒がしい。何やら危ない雰囲気ではあるがそこは神、持ち前の好奇心に負けて奥を覗き込む。

 

 そこにいたのは、

 

「にゃおにゃお」

 

「にゃー」

 

「よちよち」

 

「あー」

 

 二本足で活動する猫の集まりであった。それを見てなんだろうとただの猫では無いのは分かるヘスティア。彼らはアイルー、獣人の一種であり、猫人(キャットピープル)の先祖とも言われる種族である。

 

 ボロボロの衣類を着こみ、段ボールなど廃材を使い家を作り、火を熾して暖を取る彼らは、ここで生活をしていた。

 

 しばらく覗き込むと赤ん坊をあやす母猫がヘスティアに気づき、何匹かがヘスティアを取り囲む。

 

「にゃー」

 

「にゃおにゃお」

 

「うわっ、な、なんだよ。ここにいちゃだめなのかい?」

 

 アイルーに見つかり、取り囲まれたヘスティアは半泣きになると、それは違うと言いたいのか、手を引いて火の側に座らせた。

 

 その後はお母さんっぽい母猫がスープを持って来て、それをヘスティアの前に出してくれる。

 

「君たち、ここにいていいんだね」

 

「にゃーあ」

 

 彼らは独自の言葉を持っているが、こちらの言葉は分かるらしい。ここで暮らしているアイルー家族に拾われたヘスティアは、しばらくここに暮らしだす。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 しばらく暮らしているヘスティア。実は心配になった神友が眷属を使って都市中探しているとも知らず、母アイルーから赤子を預かり、あやしているところであった。

 

「にゃにゃ」

 

「ん? どうしたんだい?」

 

 アイルーたちがヘスティアの前でなにか話し合って、服の裾を引っ張る。なにを言っているか分からないが、彼らの一匹は横に倒れ、背中を向ける。もう一匹はその上に乗り、背中をいじる行為をしていた。

 

「んっと………神の恩恵(ファルナ)の儀式かな?」

 

 そう言うとみんながそれそれと言わんばかりににゃおにゃお言いだす。どうやらヘスティアに頼みたい事があるらしい。

 

「もしかしてボクの恩恵(ファルナ)が欲しいのかな?」

 

「にゃ」

 

 頷かれたヘスティア。しばらく考え込むが、自分でいいか聞くが、頷くアイルーたち。

 

 ヘスティアは早速、アイルーたちに神の恩恵(ファルナ)を与え、彼らは飛び跳ねる。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ここ最近になって、ダンジョンに妙なうわさが流れる。曰く、ダンジョンで力尽きて死んだと覚悟した冒険者が、猫の鳴き声を聞きながらダンジョンの入り口に放り出されていると言う噂。猫が階層主と戦っている様子を見たと言う噂。

 

 階層を通る武装した猫の集団等々。猫に纏わる噂が後を絶たなくなる。

 

 地上ではヘスティアの名義で買った土地に、屋敷を立てたヘスティア。アイルーの赤ん坊を抱えながら、毎日自分の眷属が帰ってくるのを待つ。

 

「アイルーって意外に強いんだね」

 

「にゃー」

 

 ギルドに冒険者登録しようとしたが断られたアイルーたち。それでもダンジョンに潜って魔石とドロップアイテムを持ち帰り、生計を立てている。

 

 アイルーの強さはヘスティアしか知らないまま、そこそこの年月が過ぎて、一人の少年がヘスティア・ファミリアの門を叩くことになるのであった。




もしも続き書くならダイジェストだな。

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