ギルドとは一般人と冒険者の間に立ち、双方の問題を解決したり、頼み事を受け持ったりする組織。荒くれ者が多い冒険者を管理して、彼らが持ち帰る利益を都市に渡す役割がある。
ファミリアとして活動する際、ギルドに登録する義務があるのだが………
「ですから、アイルーとは言え猫の冒険者と言うのは」
「そんな、ボクのファミリアの家族なのに、冒険者登録できないと言うのか君は!?」
ヘスティアが憤怒して、後ろにいるアイルーは泣き真似をする。アイルーの数は30匹、Lv1が30名いるのだが、ギルドは冒険者登録させてくれなかった。
アイルーはモンスターでも動物でも無い。一応獣人と言う種類に入るのだが、一般人にとって猫と変わらない感覚だ。
登録できない為に、ギルドにて魔石やドロップアイテムの換金ができないヘスティア・ファミリア。だが商人が経営する店などには卸せる。要相談だし安定はしないだろうが、タダでは無いのが救いであった。
「それじゃ、無理しないで帰ってくるんだよおはぎ」
「にゃッ!!」
気合いを入れる、ヘスティアに『おはぎ』と名付けられたアイルーを筆頭に、ボロボロの防具に武器を持ったアイルーたちがダンジョンへと向かう。
最初のスタートは他の冒険者よりも絶望的であり、だがアイルーの胸には希望の灯火が宿っていた。炉の女神がくれた恩恵が、彼らの明日を照らしてくれているのだ。
◇◆◇◆◇
最初、ダンジョンにアイルーが潜る様子に驚く冒険者は多かった。30名ほどの猫たちが集まり、ダンジョンに潜る様に驚く。とある金髪の剣士はモンスターと呟くが、ハイエルフの魔導士が勉強不足に嘆き、後で雑学の勉強をさせるようになる。
ダンジョンに入ったアイルーたちは5人一組に別れ、各々が階層をにゃおにゃお言いながら探索する。残念な事にギルドの庇護下に無い為、全て1から始めるアイルーたち、地図作りまでしながら、出て来るモンスターに警戒しながら奥へと進む。
こんな事を半年間かけて進み、10階層へと足を踏み込む頃、彼らは頭角を現す。
スキルの発現、魔法の発現、彼らに個性と言うものが現れ出し、各々がしっかりと自分の役割を全う。行動範囲を広げていた。
◇◆◇◆◇
とある冒険者の話をしよう、彼らは異種族の混合パーティであり、自分らは優秀と自負する若手冒険者だ。
彼らの中で
「7階層のキラーアント、彼奴ら瀕死になると仲間呼ぶじゃん。それを利用してモンスター集めて倒そうぜっ!!」
そんな事は自殺行為だ。と言う者はいなかった。彼らは先輩に連れられて中層まで渡り、何度も帰ってきた優秀な冒険者であった。
キラーアントくらい、何匹集まっても倒せる。彼らはそんなことを思ってしまったのだ。
リーダーの男性は良いなそれと呟き、ドワーフの戦士はキラーアントくらい何匹集まっても薙ぎ払うまでよと豪快に笑う。
エルフの魔法使いも
かくして有言実行を行うパーティ。その後は後悔と絶望に彩られる。
キラーアントの幼体をわざと倒さずに、フロアも他の冒険者に横取りされないように隅っこで活動。最初の時は10匹や20匹ほど現れても問題なく対処できていた。
いつからか、傷付く事が多くなり、そろそろまずいと言って幼体を倒して引き上げようとするが、津波のようにキラーアントが押し寄せて来て、彼らは絶望する。
100匹以上のキラーアントが現れ、リーダーが倒れるのを見たエルフの魔法使いは死を覚悟した。
身体に張り付くキラーアント、腕に無数のキラーアントが牙を突き立て、絶望の中に倒れていく。
(アドバイザーの人と先輩の言葉、ちゃんと聞いておくべきだった………)
数時間前の自分を殴りたい衝動の中、静かに目を閉じる時、それは聞こえた。
「にゃおにゃおっ!!」
「にゃーッ!!」
「フニャーッ!!」
――猫……?
そう首を傾げそうになりながら目を閉じ、意識を手放した。
…
……
………
それから彼らは医務室で目を覚ました。
なにがなんだか分からないが、話を聞くとダンジョンの入り口で寝っ転がっていたらしい自分たちは、その後はガネーシャ・ファミリアに運ばれて医務室に連れてこられたらしい。
――……助かった? そうエルフの魔法使いは首を傾げ、腕を見て驚く。
キラーアントによって切り刻まれて、中の骨まで出ていた腕は、綺麗なままである。服だけはズタズタであり、血の跡はしっかりある。だから医務室まで連れてこられたのだが、傷跡は一つも見つからなかった。
「俺、腕千切れたはずなのに………」
最後の猫の幻聴はなんだったのか、私たちを助けてくれたのは誰なのか。
首を傾げながら、血まみれの服を着こむ冒険者たちはこの教訓を胸に、無謀な事はしないと決めてダンジョンに潜る。
それと猫には少し優しくしよう。エルフの魔法使いはダンジョンに向かうアイルーたちを見ながら、そうひっそりと思うのであった。
◇◆◇◆◇
ヘスティア名義で借りた土地で、カーンカーンと言う音が鳴り響く。ヘスティアは気を付けて借りた為に音の問題ない、アイルーが武器を作る為に鍛治をしていた。
なんでも〝キラーアントの牙と甲殻〟を大量に入手したため、防具や武器に鍛えていたのだ。
アイルーの中に何匹か、鍛治関係のスキルに目覚めた者がいる。発展アビリティ【鍛治】に近いスキルで、そのアイルーたちが武具を担当していた。
「にゃ!!」
「にゃ~お♪」
「にゃ」
新しい防具や武器に騒ぐアイルーによしよしと撫でるヘスティア。幼年期アイルーたちもパチパチと拍手したりしている。
「にゃ~お」
そんなヘスティアに今日の稼ぎ分を渡すアイルーたち。最近は『ノームの万屋』に買い取ってもらえるので助かっているらしい。
「ありがとう、君たちの取り分や冒険に使う分は引いてるね?」
「にゃ」
「うん分かったよ、食費引くから来てくれないかな『マザー』?」
「にゃ~あ♪」
お母さんアイルー、マザーとご飯代を引くヘスティア。後はローンでお金を引いて、残りは貯金する事にしている。
外で鍛錬するアイルーもいれば、中で休んでる子、本を読む子。幼稚園児アイルーは赤ん坊と共にすやすやベッドで寝ていた。
今回帰ってきたアイルーの
30匹もいるから大変だが、毎日更新している。
「ふう、ん?」
ヘスティアが一休みしていると、とんとんと扉が叩かれた。
「はーい」
扉を開けると、キャラバンのような馬車が止まっていて、何匹かのアイルーがそこにいた。
「入団希望者かい?」
「にゃッ」
元気よく挨拶するアイルーに、良く来てくれたとヘスティアは喜んだ。
キャラバン全部を引きこみ、またアイルーが増えるヘスティア・ファミリア。赤ん坊もいる中で、その子たちの面倒を見ながら、ヘスティアは幸せな日々を過ごしていた。
ちなみに若手冒険者の体験は、時間が経つにつれて中層などまで伸びて行きます。全員手足を失ったなど記憶があるのに、気が付いたら18階層かダンジョン入口にいたと証言してます。
お読みいただき、ありがとうございます。