50階層、灰色に染まった木々がある荒野。この階層は
ロキ・ファミリア。
「煙はこっちなのに、どうして見つからないのかしら……」
難しい顔をして上を見る。煙が一つ立ち上り、それに向かって進んでるのに、通り過ぎていたり、道を外れたりする。
「ここに来られるのは別に私たちだけじゃないんだけど」
わざわざ最高派閥であるロキ・ファミリアの遠征に合わせてこの階層に来るファミリアがいるとは思えない。何者か分からない以上、接触するなりして情報を持ち帰って欲しいと団長に言われ、そちらに向かって進んでいるのだがどうしてもたどり着けない。
「なにかの魔法かスキルかな?」
「たぶんそうだと思うけど、何者なのかしら?」
そう考え込むアキたち。その時にキャンプベースの方が騒がしいのに気づく。
「なに?!」
よく見ると極採色の芋虫が、キャンプ地を襲っているのを確認できた。仲間たちのピンチにすぐにそちらへと向かっていく。
「………にゃ」
その時、一匹の猫が彼女たちを見ていたのだが、彼女たちは気づかない。
◇◆◇◆◇
地上にある教会をベースに改築されたホーム、別名『炉の猫屋敷』は賑やかだった。アイルーと言う種族の幼い子が庭で遊び、赤ん坊が何匹か楽しそうにうくうく動く。
ヘスティアはお母さんアイルーたちと布おむつを干しながら、ホームの庭で帰りを待っている。
「神様、みんな。ただいま戻りました」
「お帰りベル君っ♪ 今日はいつもより早いねえ」
「ちょっとダンジョンで死にかけて」
ベルが来ると幼いアイルーたちがてとてとと歩み寄り、ベルの言葉にヘスティアはびっくりする。ベルはまだおむつが取れていないアイルーたちに手を振る。
アイルーたちにほっとするベル。ベルは唯一、冒険者登録できた団員である。一応団長と言う立場にあるが、アイルーたちとは別に活動している。いまベルほどの子は、アイルーの中にはいないのだ。
ベルはアイルーの事を、村で良く知っているので凄いなと素直に思った。彼らはすでに中層より下で活動していて、僕も早く追い付きたいと努力している。
ヘスティアもベルのアイルーに対しての反応を感じ取り、団員に迎え入れたところもある。こうしてベルとアイルーは仲良くダンジョンアタックをしていたのであった。
アイルーたちが作ってくれた『フレイムナイフ』を愛用しているベル。すぐに鍛冶師アイルーたちに武器を渡してメンテしてもらう。
その後は帰ってくるアイルーと共に恩恵の更新だ。ベルはアイルーたちが普段どこまで潜るか知らないが、今日持って帰ったドラゴンの牙を見て、物凄い迫力に胸躍らせた。
「まあおはぎたちはね、最初のアイルーだし、これくらいできるさ」
そうヘスティアは慣れた手つきで見ながら、赤ん坊アイルーたちがぺしぺし触る。
◇◆◇◆◇
怪物祭、ベル以外のアイルーはここでガネーシャ・ファミリアに頼まれて、風船配りなどをしていた。
ヘスティア・ファミリアで活動している事を知ったガネーシャが、怪物祭、モンスターフィリアを手伝ってほしいと依頼を出して、アイルーたちは纏まったお金が入ると喜んで手伝った。
アイルーはせっかくだからとカッコイイドラゴン装備や可愛らしい装備に身を包み、子供たちに風船を配る。お母さんアイルーは子供たちを遊ばせつつ、アイルーの手料理。ピザを出していた。
「ふう、ベル君はダンジョンらしいけど、こっちを手伝ってもらった方がよかったかな?」
そう思いながら仕事していると、そのベルが姿を現した。なんでもシルと言うウェイトレスを探しているらしい。財布を忘れて、お祭りに来たとか。
「君、なにげに手が早いね」
そう不満そうに告げて、ヘスティアが手伝う事になる。アイルーだけの店だが、三年もやっていれば、多少の事は喋られる。
「いにゃっしゃいませニャ」
「にゃおにゃお」
そう働いていると、騒ぎが起きる。
「も、モンスターだ!?」
騒ぎを聞き、アイルーたちはすぐさま行動に移る。まずは最初に見つけたのは、ハードアーマードと言うアルマジロのようなモンスター。
身体を丸めて屋台を壊そうとするそれに接近して、受け止める一匹のアイルー。
「えっ………」
屋台の隙間、そこにいた子供は驚きながらそれを見る。
「にゃ………ニャアァァァァァァッ!!」
雄たけびをあげ、それを空高くへと投げ飛ばす。丸まっていたハードアーマードは体勢を崩して、そこに一閃、断頭台のように刃が振り下ろされた。
「おはぎっ! おはぎっ!」
「………ニャ」
明らかに猫が持つ物では無い大きな大剣を片手で持ち、背中に背負うおはぎ。
ここからは彼らの言葉で会話される。
『状況を報告しろ』
『ああっ、どうもガネーシャ・ファミリアのところで問題が遭ったらしい、モンスターが逃げ出したッ! 他の一軍はどうした?』
『安心しろ、全員避難所や他の所で活動している』
『戻ってきたところ悪いがここを任せていいか』
『ああ、安心しろ』
そう言って大剣を片手に、モンスターの群れを薙ぎ払うおはぎ。他の所でもアイルーたちによる攻防戦が始まり、ベルのところではシルバーバックと戦う事になる。
おはぎはモンスターたちの行動に疑問に思いながらも前に出て戦う中、それを見た。
『なんだこの極彩色モンスターは』
見たことも無い、絵の具をぶちまけたような色の食人花に驚きながらも、戦う者を見る。打撃が効かず、苦戦しているところ、おはぎは腰に差している剣を取り出し、金髪の剣士へと投げ渡す。
それを受け取ったアイズは、誰かと周りを見るよりも早く、食人花を叩き斬るのであった。
◇◆◇◆◇
「アイズたんはそのまま残りのモンスター倒しに行こうか」
「うん、あっ、この剣」
最後はレフィーヤの魔法により、凍り付けになった食人花。それを倒し切り、ロキに言われ、別行動に移る中で、アイズは剣の持ち主を探す。
誰の物か分からないが、よほどの名刀らしき剣をなぞる。返さなきゃいけないが、その剣を渡した人は見つからず、仕方なく持ち運ぶことにしたアイズ。
のちに見たことの無い技術で鍛えられていて、そう簡単には壊れない一級品と知り驚く。誰が貸してくれたのか、アイズはいまだに知る事はできなかった。
◇◆◇◆◇
「ベールーベールー」
「こら、ベル君の上に乗っちゃだめだ」
幼いアイルーたちはシルバーバックとの戦いで一息つくベルに張り付いてくる。ベルは苦笑しながら、大きな大剣を背負うアイルーたちが訪ねて来る。
「おおっ、おはぎ、みんな。お帰りなさい」
「にゃ」
強そうなアイルーたちが集まり、ベルは頭を下げる。にゃおにゃお言うアイルーの言葉に、ねぎらってくれてるんだよとヘスティアは言う。
「その、ありがとうございます」
「にゃ」
親指を立ててサムズアップ。その後はヘスティアの頼みでしばらくの間、ベルを鍛える為に予定を組むことにした。
「普段は皆さんはなにしてるんですか?」
「ダンジョンに籠って素材とか剥いでるんだ。ウチは君が来るまで、質屋とかにドロップアイテムとか卸さないと、お金が手に入らないからね。素材の方が重要なんだ」
薬草とか、ダンジョン内で採取される物やドロップアイテムが重要だったらしい。それを聞き、へえと感心するベル。
「にゃおにゃ」
「うん、しばらくはベル君がいるから、下まで潜らないって」
「ありがとうございます、おはぎさん、皆さん」
「にゃ」
こうしてアイルーに鍛えられるベル。アイルーの作る料理を口にして、必死に頑張る。しばらくしてエイナが防具を心配してベルをヘファイストスが経営する店を紹介したり、リリルカと言うサポーターと出会ってホームで保護をする。
18階層でベルを救出する為に、アイルーたちがヘスティアを担いで運んだりして連れていったり、激動の日々を過ごすのである。
「どうしたんだいおはぎ?」
18階層から帰還して、赤ん坊アイルーたちの面倒を見るヘスティア。おはぎたちが話があるようだ。
「メラルー、住処SOS。助けに行きにゃいですニャ」
「メラルー? アイルーの親戚か何かかな? 良いよ、早く帰って来てね」
『『『にゃ』』』
「ああ、念のためにマカロンたちを何人か連れて行くと良いよ。なにがあるか分からないからね」
「にゃ」
これが英断であり、アルテミス・ファミリアを救うことになる。
メラルーたちはその後、助け出されたアルテミスたちが世話します。イタズラ好きはアルテミスが治すでしょうね。
ちなみにマカロンのおかげで死者は出ていません。凄いですね。
アイルーの名前を考えたのはもちろんヘスティア。俺もこれくらいモンハン上手になりたいぜ。
それでは、お読みいただきありがとうございます。