変わるのはリューさんたちの方ですね。ではどうぞー
開幕、助っ人で駆けつけてくれたリューさんによる、ヴェルフの魔剣の攻撃を開始した辺り、それは羽ばたいた。
「お、おい、なんだあれは!?」
そうアポロン・ファミリアの者が言った瞬間、それは城壁を粉々にして出現する。リューも開始前に話してもらったがいまでも信じられない。
「まさかドラゴンに変身する魔法があるなんて」
『『『にゃおにゃおぉぉぉぉぉぉぉ――ッ!!』』』
『ガァァァァァァァァァ――ッ!!』
彼の龍の名は『滅尽龍ネルギガンテ』。その背に乗るアイルーたちは地上に降りて、変身したクレープはそのままネルギガンテで暴れ、アイルーが何匹か、ネルギガンテを乗りこなす。
◇◆◇◆◇
「ふ、不正だ!?こんなの聞いていないぞ!!」
うるさいな~と思いながらヘスティアはアポロンを睨み。なにを言っているか理解できない。
「不正だって?ボクはそんな事をしていない、これはクレープの変身魔法で変身したドラゴンさ。彼らは古龍って呼んでるけどね」
魔石を喰らう事で強化され、棘を放ち、裂傷と言うデバフをまき散らす凶悪なドラゴン。それに変身できるクレープはナンバーツーなのだ。
「ふざけるな、あんなLv1がいてたまるかッ!!」
「誰がLv1って言った?」
「なっ、に………」
アポロンを初め、ロキたちも知っている。ヘスティアのところの猫は、猫だから冒険者登録されていない事を。ロキが一度バカにしようと出向こうとした事もあるほどだ。そこはリヴェリアに止められて怒られた。
だからLvが上がろうと報告する義務は無く、ヘスティアのところの猫、アイルーは全員Lv不明なのだ。だがアポロンを初め、ほとんどの者はLv1か2程度だと思っている。
「な、ならLv2と言うのか。それでもあんな魔法使えるはずが」
「Lv6」
「………はあ?」
アポロンを初め、神々と神の鏡を通して、都市中の人々が口を開ける。
「だからクレープはLv6だよ。あの魔法はLv4で発現したんだ」
アポロンを初めとした神々が絶叫する。Lv6、第一級冒険者と同じ頂にいるアイルー。
ふんっと不機嫌にそれから戦いの様子を見るヘスティア。そこにヘルメスがこそこそ近づく。
「ヘスティア、クレープ君がLv6って言うけど、他の子はどうなんだい? 正直に言うけど君のところのアイルーに、俺の
それを初めて聞くアポロンは何だとと驚愕。ロキも静かに聞き耳を立てる。
「えっと、他にLv6はミルフィーユ、だいふく、せんべえ。Lv5はマカロンを初め20人くらいいるよ」
それに冷や汗を流して、乾いた笑みを浮かべるヘルメス。フレイヤの所はLv7の他に、Lv6が数名と、Lv5が数名いるぐらい。20人も所属していない。
ロキも顎が外れそうなほど口を開き、フレイヤは知っているように気にも留めずに鏡を見続ける。
よく見れば20名以上のアイルーが地面からも現れたり、集団になって攻め込んでいる。その武器は特殊なのか魔剣なのか分からないが、様々な効果を放ち、各々がスキルや魔法でサポートしながら戦って、アポロン・ファミリアの団員たちを蹂躙していく。
アルテミスとヘルメス・ファミリアも驚愕しながら、アルテミスはそれくらいないとああはならないかと納得して、メラルーたちを見つめた。
「そう言えば、もうこの子たちもLv2になる子いるな……」
アイルーたちはLvが上がるのは早いのかと思いながら、鏡を見据えた。
◇◆◇◆◇
「貴様ぁ!?
「恥はどちらにゃ」
その時、二人の猫が現れる。赤毛の猫と白毛の猫が、アポロン・ファミリア、エルフのリッソスを見下ろす。
「町中で魔法や武器を使い、無関係な人を巻きこむ。そんにゃことを平気におこにゃって恥ずかしくないのかニャ?」
「ふざけるな猫ッ!!神意の名の下に行ったのだ、貴様らに言われる筋合いはないッ!!」
「相棒、恥知らずになにを言っても無駄ニャ」
「なら俺たちのスキルで、お前たちに絶望を与えるニャ」
そう言って二匹はすぐさまリューの下に駆け付け、その魔剣に触れる。リューも二匹の猫を腕に付けて【クロッゾの魔剣】を構えた。
二つの魔剣から雷を纏う風と炎が噴き出し、その行為に逆に笑みを浮かべる。
「バカめ、いずれ砕ける魔剣をそうほいほい使うなど愚の骨頂!! 所詮は恥知らずと猫の浅知恵よ!!」
「【
「なに?」
「この子たちのスキルですよ。手に持つ武器はなんであろうと壊れないと言うスキルです」
そして炎と雷と風が合わさり、轟嵐と成って敵を襲う。どれだけその猛威を振るおうと、魔剣は決して砕けない。この二人、イチゴとだいふくのスキルを駆使する。
◇◆◇◆◇
ここまで来るのに、否、ここに来ることにどれほど苦渋を飲んだか分からない。
住処を失い、途方に暮れている時、世界の中心と呼ばれる都市がある事を聞き、そこで幸せに暮らそうとみんなで決めて来たが、誰も信用はしてくれなかった。独自の文化、独自の言語。見た目もあり、誰一人相手にしてくれず、下水道に追いやられ暮らしていた。
だが、あの女神様は違う。自分たちと同じように弾きだされ、一緒に頑張ってくれる家族になったのだ。
家族は守る、だから自分はここまで来た。
「………にゃ」
大剣を掲げ、同じスキル持ちのアイルーが側で武器を構える。笛の音が聞こえる。攻撃力と防御力を上げる笛の音を聞き、スタミナを無限にするスキル持ちの支援を受け、おはぎたちは前に出る。
彼らは我々を愚弄した。家族を傷つけた。大切なものを踏みにじった。
許していい?否ッ!!
彼らアイルーの身体は赤黒い炎が灯り、彼らの様子が変化する。一切合切の手抜き無く、ベルの道を切り開く為に、おはぎは両腕で大剣を持つ。
「フニャァァァァァァァァァァァァ―――ッ!!」
咆哮は響く。猫の咆哮にして、絶対の王者の咆哮が轟く。
その一閃は城壁を、要塞を、冒険者ごと薙ぎ払い、大きな傷を作り、彼らは前進する。
こちらを見てたかが猫と侮り、向かってくる冒険者。
一閃。
ただそれだけで胴体が引き裂かれ、絶命していない事が奇跡と言える。これが神の恩恵の力だ。
「………手加減無用」
そう言っておはぎは大剣を構えながら前進する。彼らビースト隊は、その爪や武器を持って前進する。彼らを止められる者はいない。
◇◆◇◆◇
「うん、なにこれ?」
蹂躙劇、ワンサイドゲーム。ただしそれを行ったのはヘスティア・ファミリアと言う意外な状態に、誰もが唖然と驚いていた。
そんな時、鏡の中のベルが白い光を纏いながら、天井に向かって手を掲げた。
『ファイアボルトぉぉぉッ!』
雷が昇る。炎を纏うそれが建物を吹き飛ばし、オラリオ中が絶叫する。
「すっげぇぇぇなにあれぇぇぇぇ?!」
「あの威力で無詠唱って」
「あの猫とヒューマン欲しいぃぃぃぃぃ」
一薙ぎするだけでひき肉を作るおはぎに、ヘルメスはまたヘスティアに尋ねた。
「これはベル君、Lv2になる際、相当な
ヘルメスはヘスティアの横顔を伺いながら話しかける。ヘスティアは眼中に無い。
ベルがLv3にレベルアップしたと言う話は聞いていない。となれば現在の
いまベルはアポロンの団長、Lv3との戦い始め、互角に戦っている。よっぽど
「Lv1の時点でステイタスの
「おはぎは別に良いよ、何かこの後ギルドに聞かれそうだから。ベル君は言っても信じられない。もうLv1の最大値超えて帰ってきたし」
Lv6の彼らに鍛えられたベルは、もうヘスティアが驚くほど強く戻ってきた。
信じるよ、だから教えてほしいとヘルメスが言うから答える。
「敏捷以外、魔力含めてSS」
「ハハ、冗談だろ?」
「ほら信じない」
「………」
マジと言う顔をするヘルメスに、最後の情報を流す。
「後、おはぎはLv7、最近は伸び悩み始めてるんだ」
「………ハハ、さすがにそれは」
ヘスティアは無言で鏡を見る。ヘルメスはだんだん冷や汗が止まらない。
ヘスティアの言葉を信じる中、敏捷以外アビリティSSであり、そこからランクアップをしたベル。そしていまはその数値を超えて、いまあそこにいる。
そしておはぎというアイルー。
現在、建物を、要塞の壁をスプーンでくりぬくように綺麗に切り取り、破壊してみせた。彼は本当に要塞を破壊する気のようで、彼らの猛攻は止まらない。
「………マジ?」
「ヘルメスうるさい」
そしてヘルメスは、もう一つの話を思い出す。それは自分の眷属たちを救ったアイルー、マカロンたちの仕事だ。
「おいあの猫たち、死になりかけのアポロンの子、集めてるぞ」
「あっ、本当だ。戦場の外で一人一人横にして置いてる」
「なにする気だ?」
魔法らしい詠唱を唱えているアイルーたち。光が降り注ぎ、失った身体の一部を光が包む。そして発光した次の瞬間、その手足や失った体の一部が元に戻っていた。
『『『………はい?』』』
痛みのショックで動けない者、あまりの衝撃に腰を抜かす者。戦えるアイルーが武装を取り上げて治療させていた。
今現在、ひき肉などが量産されているが、その身体を元に戻しているアイルーに、見ている者たちは唖然とする。
「………ああ、即死したり、頭と胴体が分かれてなかったら、例え身体半分失ってても精神力次第で元に戻せるよマカロンは。治療組で一番はマカロンで、他の子は手足を戻すくらいしかできないけど」
それに司会者は「が、ガネーシャ?」と呟き、全員が言葉を失った。
ベルがトドメを刺す。アポロン側の団長が倒されたのに、しばらく状況の把握に時間がかかるウォーゲーム。終了の鐘が鳴り響くまで、ネルギガンテとリューのクロッゾの魔剣は敵を飲み込み、おはぎはついに要塞の中心を破壊した。
その時になってようやく、ヘスティア・ファミリアの勝利で、ゲームは終わるのであった。
死者、重傷者は両軍ゼロ人と言う、恐ろしい結果を残して………
ロキとフレイヤを超える、第一級冒険者を抱えるファミリア。やばいね、邪神の奴が目を付けそう。
三年でLv7。つまり半年の期間でランクを上げたおはぎ。他の子も凄いよ。
マカロンはヘルメスやアルテミスの子たちを助けてます。凄い。
それでは、次回最終回。お読みいただき、ありがとうございます。