アイルーの女神   作:にゃはっふー

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ベル君の戦いなどは変わりなく、命は重力の檻を使用したり、ヴェルフはダフネと戦ったりします。

変わるのはリューさんたちの方ですね。ではどうぞー


第5話・アイルー

 開幕、助っ人で駆けつけてくれたリューさんによる、ヴェルフの魔剣の攻撃を開始した辺り、それは羽ばたいた。

 

「お、おい、なんだあれは!?」

 

 そうアポロン・ファミリアの者が言った瞬間、それは城壁を粉々にして出現する。リューも開始前に話してもらったがいまでも信じられない。

 

「まさかドラゴンに変身する魔法があるなんて」

 

『『『にゃおにゃおぉぉぉぉぉぉぉ――ッ!!』』』

 

『ガァァァァァァァァァ――ッ!!』

 

 彼の龍の名は『滅尽龍ネルギガンテ』。その背に乗るアイルーたちは地上に降りて、変身したクレープはそのままネルギガンテで暴れ、アイルーが何匹か、ネルギガンテを乗りこなす。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「ふ、不正だ!?こんなの聞いていないぞ!!」

 

 うるさいな~と思いながらヘスティアはアポロンを睨み。なにを言っているか理解できない。

 

「不正だって?ボクはそんな事をしていない、これはクレープの変身魔法で変身したドラゴンさ。彼らは古龍って呼んでるけどね」

 

 魔石を喰らう事で強化され、棘を放ち、裂傷と言うデバフをまき散らす凶悪なドラゴン。それに変身できるクレープはナンバーツーなのだ。

 

「ふざけるな、あんなLv1がいてたまるかッ!!」

 

「誰がLv1って言った?」

 

「なっ、に………」

 

 アポロンを初め、ロキたちも知っている。ヘスティアのところの猫は、猫だから冒険者登録されていない事を。ロキが一度バカにしようと出向こうとした事もあるほどだ。そこはリヴェリアに止められて怒られた。

 

 だからLvが上がろうと報告する義務は無く、ヘスティアのところの猫、アイルーは全員Lv不明なのだ。だがアポロンを初め、ほとんどの者はLv1か2程度だと思っている。

 

「な、ならLv2と言うのか。それでもあんな魔法使えるはずが」

 

「Lv6」

 

「………はあ?」

 

 アポロンを初め、神々と神の鏡を通して、都市中の人々が口を開ける。

 

「だからクレープはLv6だよ。あの魔法はLv4で発現したんだ」

 

 アポロンを初めとした神々が絶叫する。Lv6、第一級冒険者と同じ頂にいるアイルー。

 

 ふんっと不機嫌にそれから戦いの様子を見るヘスティア。そこにヘルメスがこそこそ近づく。

 

「ヘスティア、クレープ君がLv6って言うけど、他の子はどうなんだい? 正直に言うけど君のところのアイルーに、俺の眷属(子供)たちが助けられてね」

 

 それを初めて聞くアポロンは何だとと驚愕。ロキも静かに聞き耳を立てる。

 

「えっと、他にLv6はミルフィーユ、だいふく、せんべえ。Lv5はマカロンを初め20人くらいいるよ」

 

 それに冷や汗を流して、乾いた笑みを浮かべるヘルメス。フレイヤの所はLv7の他に、Lv6が数名と、Lv5が数名いるぐらい。20人も所属していない。

 

 ロキも顎が外れそうなほど口を開き、フレイヤは知っているように気にも留めずに鏡を見続ける。

 

 よく見れば20名以上のアイルーが地面からも現れたり、集団になって攻め込んでいる。その武器は特殊なのか魔剣なのか分からないが、様々な効果を放ち、各々がスキルや魔法でサポートしながら戦って、アポロン・ファミリアの団員たちを蹂躙していく。

 

 アルテミスとヘルメス・ファミリアも驚愕しながら、アルテミスはそれくらいないとああはならないかと納得して、メラルーたちを見つめた。

 

「そう言えば、もうこの子たちもLv2になる子いるな……」

 

 アイルーたちはLvが上がるのは早いのかと思いながら、鏡を見据えた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「貴様ぁ!? 同胞(エルフ)でありながらよりにもよってあの忌まわしい魔剣を手にするなど、恥を知れ!!」

 

「恥はどちらにゃ」

 

 その時、二人の猫が現れる。赤毛の猫と白毛の猫が、アポロン・ファミリア、エルフのリッソスを見下ろす。

 

「町中で魔法や武器を使い、無関係な人を巻きこむ。そんにゃことを平気におこにゃって恥ずかしくないのかニャ?」

 

「ふざけるな猫ッ!!神意の名の下に行ったのだ、貴様らに言われる筋合いはないッ!!」

 

「相棒、恥知らずになにを言っても無駄ニャ」

 

「なら俺たちのスキルで、お前たちに絶望を与えるニャ」

 

 そう言って二匹はすぐさまリューの下に駆け付け、その魔剣に触れる。リューも二匹の猫を腕に付けて【クロッゾの魔剣】を構えた。

 

 二つの魔剣から雷を纏う風と炎が噴き出し、その行為に逆に笑みを浮かべる。

 

「バカめ、いずれ砕ける魔剣をそうほいほい使うなど愚の骨頂!! 所詮は恥知らずと猫の浅知恵よ!!」

 

「【砕けぬ狩猟魂(ノークラッシュ・ウェポン)】」

 

「なに?」

 

「この子たちのスキルですよ。手に持つ武器はなんであろうと壊れないと言うスキルです」

 

 そして炎と雷と風が合わさり、轟嵐と成って敵を襲う。どれだけその猛威を振るおうと、魔剣は決して砕けない。この二人、イチゴとだいふくのスキルを駆使する。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ここまで来るのに、否、ここに来ることにどれほど苦渋を飲んだか分からない。

 

 住処を失い、途方に暮れている時、世界の中心と呼ばれる都市がある事を聞き、そこで幸せに暮らそうとみんなで決めて来たが、誰も信用はしてくれなかった。独自の文化、独自の言語。見た目もあり、誰一人相手にしてくれず、下水道に追いやられ暮らしていた。

 

 だが、あの女神様は違う。自分たちと同じように弾きだされ、一緒に頑張ってくれる家族になったのだ。

 

 家族は守る、だから自分はここまで来た。

 

「………にゃ」

 

 大剣を掲げ、同じスキル持ちのアイルーが側で武器を構える。笛の音が聞こえる。攻撃力と防御力を上げる笛の音を聞き、スタミナを無限にするスキル持ちの支援を受け、おはぎたちは前に出る。

 

 彼らは我々を愚弄した。家族を傷つけた。大切なものを踏みにじった。

 

 許していい?否ッ!!

 

 彼らアイルーの身体は赤黒い炎が灯り、彼らの様子が変化する。一切合切の手抜き無く、ベルの道を切り開く為に、おはぎは両腕で大剣を持つ。

 

「フニャァァァァァァァァァァァァ―――ッ!!」

 

 咆哮は響く。猫の咆哮にして、絶対の王者の咆哮が轟く。

 

 その一閃は城壁を、要塞を、冒険者ごと薙ぎ払い、大きな傷を作り、彼らは前進する。

 

 こちらを見てたかが猫と侮り、向かってくる冒険者。

 

 一閃。

 

 ただそれだけで胴体が引き裂かれ、絶命していない事が奇跡と言える。これが神の恩恵の力だ。

 

「………手加減無用」

 

 そう言っておはぎは大剣を構えながら前進する。彼らビースト隊は、その爪や武器を持って前進する。彼らを止められる者はいない。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「うん、なにこれ?」

 

 蹂躙劇、ワンサイドゲーム。ただしそれを行ったのはヘスティア・ファミリアと言う意外な状態に、誰もが唖然と驚いていた。

 

 そんな時、鏡の中のベルが白い光を纏いながら、天井に向かって手を掲げた。

 

『ファイアボルトぉぉぉッ!』

 

 雷が昇る。炎を纏うそれが建物を吹き飛ばし、オラリオ中が絶叫する。

 

「すっげぇぇぇなにあれぇぇぇぇ?!」

 

「あの威力で無詠唱って」

 

「あの猫とヒューマン欲しいぃぃぃぃぃ」

 

 一薙ぎするだけでひき肉を作るおはぎに、ヘルメスはまたヘスティアに尋ねた。

 

「これはベル君、Lv2になる際、相当な潜在値(ちょきん)があったみたいだね?」

 

 ヘルメスはヘスティアの横顔を伺いながら話しかける。ヘスティアは眼中に無い。

 

 ベルがLv3にレベルアップしたと言う話は聞いていない。となれば現在の能力値(アビリティ)と過去の能力値(アビリティ)を合算した結果がこの戦いに反映されている。

 

 いまベルはアポロンの団長、Lv3との戦い始め、互角に戦っている。よっぽど能力値(アビリティ)が高かったに違いない。それはおはぎと言うアイルーも言えたものだろう。

 

「Lv1の時点でステイタスの能力値(アビリティ)はどれくらいだったんだい? 口外しないと約束するから、どうか教えてはくれないか?」

 

「おはぎは別に良いよ、何かこの後ギルドに聞かれそうだから。ベル君は言っても信じられない。もうLv1の最大値超えて帰ってきたし」

 

 Lv6の彼らに鍛えられたベルは、もうヘスティアが驚くほど強く戻ってきた。

 

 信じるよ、だから教えてほしいとヘルメスが言うから答える。

 

「敏捷以外、魔力含めてSS」

 

「ハハ、冗談だろ?」

 

「ほら信じない」

 

「………」

 

 マジと言う顔をするヘルメスに、最後の情報を流す。

 

「後、おはぎはLv7、最近は伸び悩み始めてるんだ」

 

「………ハハ、さすがにそれは」

 

 ヘスティアは無言で鏡を見る。ヘルメスはだんだん冷や汗が止まらない。

 

 ヘスティアの言葉を信じる中、敏捷以外アビリティSSであり、そこからランクアップをしたベル。そしていまはその数値を超えて、いまあそこにいる。

 

 そしておはぎというアイルー。

 

 現在、建物を、要塞の壁をスプーンでくりぬくように綺麗に切り取り、破壊してみせた。彼は本当に要塞を破壊する気のようで、彼らの猛攻は止まらない。

 

「………マジ?」

 

「ヘルメスうるさい」

 

 そしてヘルメスは、もう一つの話を思い出す。それは自分の眷属たちを救ったアイルー、マカロンたちの仕事だ。

 

「おいあの猫たち、死になりかけのアポロンの子、集めてるぞ」

 

「あっ、本当だ。戦場の外で一人一人横にして置いてる」

 

「なにする気だ?」

 

 魔法らしい詠唱を唱えているアイルーたち。光が降り注ぎ、失った身体の一部を光が包む。そして発光した次の瞬間、その手足や失った体の一部が元に戻っていた。

 

『『『………はい?』』』

 

 痛みのショックで動けない者、あまりの衝撃に腰を抜かす者。戦えるアイルーが武装を取り上げて治療させていた。

 

 今現在、ひき肉などが量産されているが、その身体を元に戻しているアイルーに、見ている者たちは唖然とする。

 

「………ああ、即死したり、頭と胴体が分かれてなかったら、例え身体半分失ってても精神力次第で元に戻せるよマカロンは。治療組で一番はマカロンで、他の子は手足を戻すくらいしかできないけど」

 

 それに司会者は「が、ガネーシャ?」と呟き、全員が言葉を失った。

 

 ベルがトドメを刺す。アポロン側の団長が倒されたのに、しばらく状況の把握に時間がかかるウォーゲーム。終了の鐘が鳴り響くまで、ネルギガンテとリューのクロッゾの魔剣は敵を飲み込み、おはぎはついに要塞の中心を破壊した。

 

 その時になってようやく、ヘスティア・ファミリアの勝利で、ゲームは終わるのであった。

 

 死者、重傷者は両軍ゼロ人と言う、恐ろしい結果を残して………




ロキとフレイヤを超える、第一級冒険者を抱えるファミリア。やばいね、邪神の奴が目を付けそう。

三年でLv7。つまり半年の期間でランクを上げたおはぎ。他の子も凄いよ。

マカロンはヘルメスやアルテミスの子たちを助けてます。凄い。

それでは、次回最終回。お読みいただき、ありがとうございます。

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