その後、暗殺者がアマゾネスを殺す事件が発生するが、アイルーたちが都市を駆け巡り、全て防げた訳では無いが、被害を軽減させた。
ラキア戦には勝手に参加したアイルーがいたぞ。彼らはラキア兵を見つけては狩って、身ぐるみ剥いだらアマゾネスに渡したんだって。
そして彼らはウィーネと出会う。
なぜ迷った、その時、私はそう思った。ウィーネ、異端児、ゼノスと呼ばれるモンスター。
彼女を拾ったベルに対して頭を痛めたが、彼女は我々と同じでは無いか。
なのに、私は暴れているウィーネを見て、一瞬だが迷ってしまった。ベルは迷わなかったのに。
私一人なら構わない。だが家族を巻きこむ事を悩んだ私、それでも動いたベル。どちらが正しいのか分からないが、私はこの選択に悩み、苦しむ。
なにがLv7だ。家族を見捨てようとしてなにを言うか。
いまみんなでウィーネたちを助けようとする流れができてる中、私は考える。モンスターを守る事が、それが正しいか考えている。
『おはぎ』
その時、非戦闘員であるマザーを初め、みんなが私を囲っていた。
『家族を助けようぜ兄弟』
『また下水道暮らしになろうと、構わない』
『ウィーネ姉ちゃんを助けておはぎっ!!』
『俺たちの所為で悩ませてすまない。だけど、俺たちはベルの意見に賛成だ』
『家族を守ろう、おはぎ』
『みんな………』
家族の言葉に、私は絶句する。彼らはもう、答えを出している。
『……私は』
『おはぎ』
『母さん』
マザーが肩を叩き、優しく微笑む。
『私たちを理由にしてはダメ、あなたは何時だって、みんなの為に前に出て戦った』
Lv1の時、インファントドラゴンから仲間を守る為に一人で戦った。
Lv2の時、中層のモンスター大量発生を一人で食い止めた。
Lv3の時、病気にかかった仲間の治療費を稼ぐ為、トレジャーキーパーと一人戦った。
Lv4、Lv5、Lv6もだって、一人仲間の為に戦った。おはぎと言うアイルーは、仲間の為に、前線で戦い続けたのだ。
『だからこそ、あなたの強さは家族の為に発揮される。なら後は簡単、ウィーネを、新しい家族を守る為なら、なにがあっても大丈夫』
『俺、まだウィーネ姉ちゃんと遊びたい』
『アタチも』
『お空の下で、姉ちゃんの仲間と一緒に遊んでみたいよおはぎ』
『お前たち………』
『だからね』
そう静かに、小さなアイルーが近づいてくる。
『また下水道暮らしだって、お家が無くなっても良いから、家族は一緒が良いよ。おはぎ』
それにおはぎは黙り込む。これがLv7か、笑わせる。私より強い者が、ベルがいるでは無いか。
ならばこそ、私はもう迷わない。覚悟を決めた、決意を固めた、責任を背負った。それがこの称号だと、私がするべきことと信じて………
◇◆◇◆◇
「てきしゅーーてきしゅーーー!!」
「ヘルメス許すニャーーー!?」
「出てけ嘘つきーーー!!」
「痛い痛い。ヘスティア、このアイルーたちをどうにかしてくれっ!?」
ヘルメスが挨拶に来る。この神はベルの名声を回復させるため、
ヘスティアはその光景を見て、すぐにみんなを引かせた後「トドメはボクが刺す!!」と叫び、ドロップキックを放つ。アイルーたちは歓声を上げた。
「そう言えば、君の所のおはぎ君はいないけど、彼はどうしたんだい?」
「君が信用できないから、あの後、すぐに合流しに出向いたんだ。すれ違いになったけどねっ!!」
倒れたところに畳みかけるように殺到するアイルーたち。髪の毛を引っ張り、剣を鼻の穴に捻じ込んだりしている。アスフィは助けない。
おはぎはいま彼らと共に行動している。それを知り、ヘルメスは
それにはアスフィを通して嘘でないと知り、渋々彼らアイルーはクノッソス攻略に出かけ、強制依頼にベルたちは行ける範囲まで潜る。
油性ペンで髭を描かれたヘルメスはおはぎには気を付けるように、ヘスティアは最後の慈悲を与える。後からの話になるだろうが、彼はいまヘルメスを敵として認定しているはずだからと
「あっはは、気を付けるよ。さすがにLv7に命を狙われたくないからね」
「Lv7ね………」
「ん、どうしたヘスティア」
「うざいヘルメス。さっさと去らないと他のアイルーを呼ぶぞ」
こうしてクノッソス攻略の際、手を貸した。
◇◆◇◆◇
結果から言えば、最後の最後でしてやられた。
フィンはそれを受け入れ、それでも被害が軽いのは全てマカロンのおかげと考えている。正直ディアンケヒト・ファミリアのアミッドがいなければ瓦解した瞬間はいくつもあり、彼女並み、あるいはそれ以上の治療師たち、マカロンたちのおかげで楽々人口迷宮の踏破は完了した。
「不甲斐ないのは僕の作戦ミスだ。最後の最後で神が殺されるなんて」
そう考えながら、ロキ・ファミリア内であちらこちらに動くアイルーたちには感謝する。ディオニュソス・ファミリアは助けられなかったが、それ以外のファミリアに被害は無い。彼らを見捨てたから、当然と言えば当然だ。
フィンはその敗北を受け入れ、次の手を考える。まだ終わっていない戦いに、後悔で目を閉じていてはいけない。
マカロンの指示で何人か、ベル側のヘスティア・ファミリアの救出へとすぐに駆り出されたらしい。彼らも無事に生還したと聞く。
これで彼らは自由に動ける。マカロンたちの治療作業が済み次第、すぐに動かなければいけない。戦いは終わらない。
◇◆◇◆◇
最後の決戦、クノッソスと言う人口の迷宮内で彼らは古代の秘術と堕ちた精霊を使い、
そこにヘルメスからの言葉を聞き、立ち上がるヘスティア・ファミリア。リリが通信機、
六つの戦場でアイルーたち、ヘスティア・ファミリアがその力を振るう。
一つはハイエルフの陣営。リヴェリアとフレイヤ・ファミリアの白黒の剣士が活躍する場所に来るのは、魔剣を持つ者たち。
「行くぜだいふくッ!!」
「遅れるなイチゴッ!!」
そのスキルで手に持つ武具は決して壊れないイチゴだいふくのコンビ。赤と白のアイルーに続くのは、決して砕けない魔剣を打った鍛冶師、ヴェルフ。
「
その広範囲の攻撃に、三身一体の穢れた精霊は成す術無く、リヴェリアたちの反撃が始まる。
一つの局面はドワーフの戦士ガレスと、ヘファイストス・ファミリア団長である椿が担当する戦場。そこに重力の防壁を生み出す命が現れると共に、笛を持ったアイルーたちが現れる。
「みんな行くニャよぉぉぉぉッ!!」
奏でられる笛に、フレイヤ・ファミリアの
「なんだ?」「バフか」「体が軽い」「ほう、良い演奏だ」
圧倒する連携で穢れた精霊を完封していた彼らは、さらに畳みかけるようにその基礎能力を上げる。そこに後衛を守っていたガレスたちも上がり、攻めに転じていた。
一つはアマゾネスの国から来た、カーリー・ファミリアの者たちと、ロキ・ファミリアのティオナとティオネのところ。カサンドラとダフネは、ビースト隊とクレープを引き連れて現れた。
仲間を搭乗させてネルギガンテへと変貌したクレープが食ってかかる中、ダフネがアイルーたちを統率して、一斉に攻め始める。
『拡散爆弾それそれ~♪』
「攻撃が止んだらクレープは突撃、弾の準備ができたら再度集中攻撃しなさいっ!」
一つは勇者の戦場。フィンが駆け巡る戦場に、冷気が降り立つ。
穢れた精霊の氷魔法が凍り付き、炎も雷も、光すら凍り付く戦場に、一体の龍が降り立つ。
「全く、なんて魔法が発現してるんですか」
白銀の翼に尻尾。顔を少し羞恥で紅くする
魔法【イヴェルカーナ】。凍てつく白銀の龍へとその身を変える変身換装魔法。詠唱が長く、戦闘では使いにくそうな魔法だが、その威力は高く、リリが手加減していてもいるだけで戦場を凍り付かせようとする冷気が、穢れた精霊を襲う。
尾の刃で近づく攻撃を弾いたりと、リリは各ヘスティア・ファミリアに指示を出しながら、戦場に指示を出すフィンの負担を軽くする。
そして一匹の猫が、ベルと合流して捕らえられているデメテル・ファミリアの者たちを助けに動く。ロキ・ファミリアと合流して、彼らを助けていた。
◇◆◇◆◇
こうして戦場は二転三転する中で、六体いる穢れた精霊以外に、堕ちた精霊はまだいて、巨大な爆弾となり、都市を破壊しようとしていた。
それだけでなく、その精霊を守るように一体の精霊がそこにいたのだ。
「ヴォ、ヴォルガングドラゴン!?」
階層を撃ち抜く砲撃を持つドラゴンに寄生した穢れた精霊がせせら笑う。爆弾と化した精霊は魔力を吸い上げながら、刻一刻と時間が迫る。
「そ、そんな、一匹だけでも厄介なのに、それが二匹………」
絶望を発見したロキ・ファミリアに襲い掛かる。ラウルと言う男ですら、この局面を変えるのは無理だと思ったとき、リーンと言う鈴の音が鳴り響く。
「ッ!?」
セイレーンの
「僕があれを倒します」
そう静かに宣言する彼の手の中に、白い輝きが集まる。
「だから」
それは現れた。
彼と同じ、レイに運ばれてきた一匹の獣。
大剣を背負い、ビーストの炎を纏う一匹の戦士。
「残りはお願いします」
ヴォルガングドラゴンの口に炎が集まり、その頭部に寄生する女は笑う。
放たれる閃光は灼熱の焔、それがラウルたち冒険者に襲い掛かるが………
「………任せるニャ」
轟音が響く。
迫る閃光が真っ二つに割れるのを見た。
たった一つの剣で炎を切り裂き、一匹の猫が前に出る。
「いまの私はLv7にあらず」
そう静かに呟き、その目に、光が宿る。
「我、覚悟を決め、Lv8の頂に到達したニャり」
そう猫が宣言した時、ヴォルガングドラゴンは縦に斬られた。
◇◆◇◆◇
悲しき妖精がいた。
その妖精は仲間を見捨てなかったばかりにその身を穢され、怪物と化し、邪神に良いように使われる。
分身魔法を使い、うまく周りの目を誤魔化していた彼女は、その魔法を行使して、二つの心に分かれて一体は信じる邪神へと向かい、一体はそのまま安息の終わりを待ち望む。
消え去る彼女にその友人である、そう高らかに宣言できる少女の目に、奇跡の治癒魔法を使うアイルーを見た。
「お願いですっ!!フィルヴィスさんを」
「………」
消えかけるフィルヴィスは静かに目を閉じ、マカロンは静かに考え込む。
「私の魔法は生きている者を助ける魔法です。この人は半分の身体は怪物にされていて、どうなるか分からないですよ」
マカロンはすでにモンスター、ゼノスに治癒魔法を使っている。牛の彼の腕は治ったが、いまの状況は違い過ぎる。
「レフィーヤ………」
「お願いです、それでも、どんな姿でも、どんな罪を背負っていても、私は、私は………」
彼女は罪を背負った。邪神に唆されたとは言え、数えられない罪を犯した。
それでも、マカロンはその魔法を行使する。
詠唱をすぐに唱える。マカロンもまた、生きるべき者を救う為に魔法を行使する為、周りの静止を聞かず、一人の友を想う少女の為に、己の限界を超えた魔法を使う。
かくして、各自の戦場も終わりを迎え、
◇◆◇◆◇
全ての戦いが終わり、お祝いをヘスティア・ファミリアのホームで開く。
関係者たちを呼んでのお祝い、アイルーたちの手料理を振る舞う。
「神ヘスティア、マカロンの力は治療院で使うべきものです」
「引き抜き禁止だっ!」
アミッドは引く気も無いらしい。戦いの中で見せた治療術に、完全に目を付けられた。
「はい、フィスさん」
「………レフィーヤ」
とある黒髪に紅い瞳の少女エルフは、黄昏ながらその風景を見ていた。どうして小学生ほどの背丈なのか不明。今後の治療の為、ヘスティアの下で過ごすことにしている。
レフィーヤはなんとも言えないフィスに静かに微笑む。
「いまだけ、いまだけです。もうフィルヴィスさんはいません。ですけど、あの人がしたことは消えない。一緒に頑張りましょう」
「………ああ」
元の姿とはいささか違うが、彼女はレフィーヤの手を取り、アイルーたちのもとにいる。
その様子を見るおはぎ。ただ静かに、Lv8と言う領域に来た彼は、この先を見ていた。
『もう迷わない、私は家族を守る。その為に、私はここにいるんだから』
そう決意するおはぎはヘスティアにだっこされて、みんなの輪の中に置かれる。ロキが酒飲みパーティーを初めだし、収拾がつかなくなり始めていた。
こうして一つの戦いは終わった。だがおはぎたちの冒険は終わらない。何時の日か、家族全員で祝うその日まで、おはぎは、アイルーたちは戦い続ける。
『さあ、一狩り行くぜッ!』
彼らの歩みは止まらない………
フィルヴィスはこの戦いで死亡しました。残ったのはほんのひと欠片、少女は新たにフィスと名乗り、レフィーヤと共に罪を見つめながら進んでいきます。
分身魔法は消滅してます。おや、クレープはこちらを見てますね。
マカロンのLv上がってそう。
それでは、お読みいただきありがとうございます。