No.1銃手ですがオペレーターとしてA級を目指そうと思います 作:宮川アスカ
「ボーダーの皆さんこんにちは。海老名隊オペレーター、武富桜子です。B級ランク戦、新シーズン開幕! 初日、夜の部を実況していきます!」
元気の良い少女の声が、B級ランク戦の観覧室に響く。
「さて、本日解説していただくのは、俺のツインスナイプ見た? で同じみの、A級5位、嵐山隊の佐鳥先輩」
「どもども〜」
「そして、本日がデビュー戦。玉狛第二の三雲隊長でーす」
「ど、どうも」
お調子者の佐鳥とは逆に、武富に紹介された三雲はガチガチに緊張していた。
ドクターストップで出れない三雲は、解説席に呼ばれていた。柚月の話では、ランク戦に関する事は佐鳥が何とかしてくれるから、玉狛第二の事を聞かれたら答えれば良いと思うよ。との事だったが、緊張するものは緊張する。
B級ランク戦。上位、中位、下位と7チーム1グループに分けられ、そのグループ内で、三つ巴、もしくは四つ巴が行なわれる。
点のとり方は、敵チームの隊員を一人倒すと1点。最後まで生き残ったチームには生存点ボーナスが加算される。
前シーズン上位だったチームには、順位に応じた初期ボーナスがつき、最終的に1位と2位だった部隊は、A級への挑戦権が得られる。
そんな事をしているうちに、間宮隊、吉里隊、玉狛第二の8人が転送完了。
玉狛第二のデビュー戦ということもあり、今回は玉狛第二にフォーカスを当てていくようだ。
「玉狛第二はどの様な作戦を?」
「オペレーターに任せてあります」
「なるほど。オペレーターと言いますとやはり大注目は、玉狛第二に電撃加入を果たした国近柚月先輩ではないでしょうか。国近先輩といえば、銃手1位。さらにはA級8位、片桐隊の片桐隊長の師匠という話もあります」
ランク戦の出場メンバーは当日に発表される。つまり、柚月の玉狛第二への加入は今日初めて、全隊員の元へ知らされたというわけだ。
「そうだねぇ。柚月先輩の事は、スコーピオンとカメレオンを主軸としたステルス部隊の風間隊と、ウチや三輪隊みたいな既に4人いる部隊以外は殆ど声掛けてたんじゃないかな。真木さんや加古さん、二宮さんなんかは特に欲しがってたみたいだしね」
「となりますと、やはりオペレーターでの加入というのは予想していなかったのではないでしょうか」
「うーん。どうだろうね。柚月先輩は旧東隊での実績もあるし、オペレーターでもおかしくはないけど、やっぱり戦力的には銃手として欲しい人が殆どだっただろうね」
「なるほど。それにしてもこれだけのオファーの中で勝ち取るとは。やりますね三雲隊長!」
「い、いえ。迅さんの紹介ですけどね。僕も正直驚いてます」
三雲自身、柚月がここまでの人気を誇っている事を、今の今まで知らずにいたのである。凄い人だとは分かっていたが、ここまでとは流石に予想していなかった。
「とこで三雲隊長。吉里隊、間宮隊は共に3人なのに対して、玉狛第二は2人。数の不利と言う点はどうでしょうか?」
「……それは大丈夫だと思います」
数が少ないというのは不利な要素の1つだが、三雲の目に疑いの色はない。
『遊真、間宮隊と吉里隊は合流した。一気に落としに行こうか』
「了解」
それもそのはず。数で優劣が左右されるのは、実力が均衡している場合のみだ。
吉里隊は空閑が攻撃してきた所を狙おうとするが、年季が違う。
ほんの一瞬で、流れる様に3人を一撃で落としていく。
「はっ……はやぁ!! 吉里隊、あっという間に全滅!? 空閑隊員、B級隊員の動きじゃないぞぉ!」
武富の驚愕の声と共に、観戦者達の間でざわつきが生まれる。
勿論、吉里隊のベイルアウトは間宮隊も見えている。
「あいつ、緑川に勝って噂になってたやつだぞ」
「まともにあたるのは良くないねぇ」
間宮隊はそう言うと、建物に身を隠し動こうとしない。
(待ちか……)
レーダーが動かないのを見て、柚月はそう判断する。
待ち。あえてバックワームを使わずレーダーに映ることで相手を誘い込み、寄ってきた所を全員で攻撃する。
間宮隊は全員が射手。いくら空閑の動きが早くても、追尾型のハウンドを3人で撃てばある程度は有効的な攻撃になる。
しかしそれを、のこのことやらせるような柚月ではない。
『千佳。その建物撃って』
「はい」
柚月の指示通り、雨取の砲撃が、間宮隊が隠れている建物をぶち抜く。
いくら建物で身を隠し、射線が通らなくても、雨取にとっては関係ない。
場所さえ分かれば、手前の建物ごと吹き飛ばせば良いだけの話だ。
建物が破壊された衝撃で間宮隊が宙を舞った所を、吉里隊同様、空閑が一気に片付ける。
「しょ、衝撃の展開! 最後は雨取隊員がアイビスで障害物を粉砕。と言うか…… 威力がおかしいぞ!!」
B級ランク戦でも異例の事態。一瞬にして玉狛第二が6人を倒し、生存点を含め8点を獲得。
よって暫定順位はB級最下位の21位から、12位まで一気にジャンプアップ。初戦でいきなり中位グループへと躍り出た。
「さて、驚愕のデビューを果たした玉狛第二でしたが、国近先輩の方はあまり光りませんでしたね」
「まぁ、実力差が実力差だったしねぇ。けど次からは柚月先輩の本領が見れると思うよ?」
次回からは玉狛第二は中位グループでの対戦となる。中位グループでは今回のような単純な戦いは通用しない。ちゃんと部隊として成り立っている。
「桜子ちゃん。次の玉狛第二の対戦相手は?」
「えーっとですね…… おぉー、第2戦の相手は暫定10位、荒船隊。そして同じく8位、諏訪隊ですね!」
「って事は、次回のステージ選択権は順位が1番低い玉狛第二にあるから、より面白くなりそうだね」
「なるほど! 突如としてB級に現れた新星の戦い! 次回も大注目です!」
『──次回も大注目です!』
ランク戦が行なわれたその日の夜中。とある部屋に流れる武富桜子の声。しかしそれは、ランク戦の時のような生音ではなく、ラジオのような機械から流れている様な音。
「私、柚月が玉狛入ったなんて知らなかったんだけどー」
「そりゃあ、言ってなかったしな」
カチャカチャと鳴り響くコントローラーの音。ここは国近家、柚月の部屋。隣に座る柚宇の言葉に、柚月は適当に返す。
祝勝会を終え、家に帰った柚月は、柚宇とゲームをしていた。
お互いテレビ画面を見ながら、無機質に会話をこなす。
そんな中、柚宇がチラリと時計を見ると、丁度長針と短針が12を指していた。
「あっ、日付変わってる。ハッピーバースデー柚月」
「本当だ、ハピバ」
日付けが変わり、2月2日。今日は柚月と柚宇の誕生日である。
「じゃあ、俺これやったら寝るわ」
「えー、早くない?」
「明日出かけるんだよ」
「誰と?」
柚宇の質問を聞いて、柚月は若干視線を逸らす。
「……玲」
「え!? 那須ちゃん!? もしかしてデート!?」
「ッ〜! 違う。ただ遊びに行くだけだ」
「はいはい。分かった分かった。それじゃあ楽しんでね〜」
珍しく恥ずかしがる柚月を見て、柚宇はからかう様にニヤニヤしながら柚月の部屋を出ていくのであった。
柚月は陽太郎の提案で3人の事を名前で呼んでいます。
元の部隊が三輪以外全員、年上だっただけに、実は部隊の仲間を下の名前で呼ぶのに憧れてたとか。いないとか。