No.1銃手ですがオペレーターとしてA級を目指そうと思います   作:宮川アスカ

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先週エヴァの映画を見たせいか、王子の声がカヲルくんにしか聞こえなかった件について。
因みに自分は石田彰といえばアスラン・ザラのイメージが強いです。


第15話 生意気なルーキー

『堤、半崎を見失うなよ!』

 

「了解! もう追いつきます!」

 

 諏訪への狙撃により全員の居場所が割れた荒船隊。戦闘開始から間もない時間帯での玉狛狙撃により、荒船隊はまだバラけられていない。

 即座に位置を判断した堤が、半崎の事を追う。

 

『下から来る! 気をつけて!』

 

「見えてますよ! 堤さんでしょ?」

 

 上を取れている半崎は堤の居場所をしっかりマークしている。加賀美の言葉にそう返すが、彼を狙っているのは1人ではない。

 

『違う! 玉狛よ!』

 

「!」

 

 加賀美の忠告と同時にバックワームを起動していた空閑が現れ、奇襲を仕掛ける。

 空閑の事を頭から除外していた半崎を空閑のスコーピオンが胸元を横一文字に切りつける。

 

「うぉ!? 速ぇ!!」

 

(急所を外された……もう1発!)

 

 ギリギリ体を反らし、即死は免れる。空閑自身、浅いと感じた為すぐさま2撃目を入れ込もうとするが、それは叶わない。

 

『遊真! 堤さん来てる!』

 

「!」

 

「こりゃ、ダルいっすわ。すんません」

 

『トリオン体活動限界。ベイルアウト』

 

 登って来ていた堤の銃撃。柚月の忠告により空閑はそれをかわすも、半崎を最終的に落としたのは堤。この試合最初の得点は諏訪隊に入る。

 しかし、そこで動きを止めてはいけない。半崎が落とされた事により、空閑のターゲットは堤へと移動する。

 堤もその事は理解しており、すぐさま空閑へと銃弾を撃ち込んでいく。攻撃手を近寄らせるわけにはいかない。

 しかし空閑は、その銃弾をかわし堤に近づいていく。

 

(速い。でもそのくらい動ける事は、もう知ってんだよ!)

 

 空中に避けた所を狙い、両手に持った散弾銃で照準を合わせる。空中では身動きが取れない。半崎に続き空閑も落とされたと思ったが──

 

『トリオン体活動限界。ベイルアウト』

 

 落とされたのは堤。空中に空閑の姿はなく、堤の体が切られていた。

 

 

「おぉー! 今のはグラスホッパー! 空中起動を可能にするジャンプトリガーですね」

 

 武富の実況通り、空閑は堤の照準が定まった所を狙い、グラスホッパーを使い空中で無理やり進行方向を変え、そのまま堤を切ったのだ。

 

「しかし、前回は使っていなかったような気が……」

 

「俺が教えました! 昨日!」

 

 そんな武富の疑問に、緑川がキランとドヤ顔で答える。

 

「あの馬鹿…… ライバル強くしてどうするの」

 

「俺はああいうの、好きだぜ?」

 

「強敵と書いて友と読むかんじですね」

 

 緑川の解説を聞いていた、加古隊の黒江の言葉に、三輪隊の米屋と古寺がそう答える。

 因みに、緑川にお願いしたのは柚月である。柚月が教えてもよかったのだが、やはり空閑のようなタイプは理論より実戦だ。柚月はグラスホッパーを使わない為、緑川に頼んだのだ。対価として今度10本勝負をする事になったが。

 

 

「ごめん柚月先輩。1点のがした」

 

『いや、遊真が残ったなら問題ない。次は穂刈を取りに行こう』

 

「了解」

 

 スナイパーが居ると後々面倒臭い。玉狛は徹底的に荒船隊狙い。

 穂刈が向かってくる空閑を狙撃するが、球の出どころさえ分かっていれば、反応速度次第ではガードできる。しかしその時、空閑の進行を止めるように斬撃が邪魔をする。

 斬撃。この中の攻撃手でいうと笹森だと思われたが──

 

 

「なんと! 荒船隊長が抜いたー!!」

 

 その斬撃の正体は、スナイパーである荒船のものだった。

 空閑の前に立ちはだかる荒船。先程の穂刈の様に、スナイパーは位置が知られては苦しいが、荒船の場合は違う。

 

「荒船は元攻撃手ですからね」

 

 荒船哲次。個人ポイントでイーグレットが8349でありながら、孤月で8266ポイント。つまりマスタークラスの実力をもつ、少し特殊な万能手なのである。

 

 荒船が孤月を抜いた事によって、それぞれの動きが変わる。

 諏訪隊はバックワームを使い、笹森が穂刈を狙い、諏訪が空閑と荒船がやり合っている所をまとめに落とす算段。

 

 

「荒船隊長、空閑隊員と剣比べでしょうか?」

 

「そう単純なものでもありませんね。荒船は本職の攻撃手ではありませんが、ここで空閑を抑えることで穂刈の援護射撃が通りやすくなります」

 

 しかし、荒船の孤月は空閑も予習済み。

 

「なるほど。そっちできたか」

 

「クソ生意気なルーキーだぜ。ぶった斬ってやる」

 

 先に動いたのは空閑。荒船は後ろを向き、バックワームを目隠しに使い孤月でバックワームごと貫くカウンター。

 

「チッ!」

 

 しかし空閑もここはお得意の反射神経でかわす。

 

「うまいですね。バックワームを残しているのは攻撃の手段と見せかけています」

 

「え? 攻撃の手段じゃないんですか?」

 

「恐らくですけど1番の目的は序盤、諏訪に削られた足を隠すためでしょうね。バレてはそこを狙われますから」

 

「なるほど」

 

 

(……なかなか鬱陶しいな。それに2人ともさっきの奴同様、俺の動きを知ってる奴の動きだ)

 

 個の力では空閑の方が上だが、穂刈の援護射撃が上手く刺さっている。孤月とスコーピオンでは耐久の差がありすぎる。持久戦になれば荒船が有利だ。

 

『もう少し堪えてくれ。今、笹森が穂刈を狙ってる』

 

 柚月の言う通り、笹森が穂刈がいる建物付近まで登ってくる。

 

「こちら笹森。穂刈先輩をマークしました!」

 

「この野郎。忙しいんだよ、俺は」

 

 穂刈はそう言うと、笹森から逃げるようその場から離れる。

 

(よし。狙い通りの盤面になった。ここが勝負所だぞお前ら)

 

 荒船隊がどちらもマークされ、諏訪隊もバラけた。柚月が理想としていた展開。この混戦。一瞬の流れを見逃さず最大のチャンスをものに出来た部隊が勝利を握る。

 

 

 試合も終盤。空閑と荒船のエース対決を中心に試合が動いている。

 

「柚月先輩、僕は空閑を援護できる位置に向かいます」

 

『分かった。ただバックワームは使わなくていい』

 

 エース対決は、穂刈が笹森に狙われ援護が出来なくなった今、空閑がジワジワと荒船を追い詰めている。

 

「チッ、国近が言った通りなかなか曲者揃いじゃねぇか。3人とも」

 

 荒船が思うように戦えない1番の懸念点。それは──

 

「いやあ、玉狛の三雲が地味に良い動きをしていますね」

 

 三雲の立ち位置だ。

 荒船隊の2人をどちらも狙える位置に陣取っている。

 

「そして、バックワームを敢えて使わないのが上手いですね。レーダーに映るので、荒船隊の2人は三雲の事を意識せざるおえない。恐らくですけど柚月の入れ知恵でしょうね。こういう心理をついた戦い方、柚月は大好きですから」

 

 三雲自身は弱くとも、その場所に立っているだけで荒船隊を心理的に挟み撃ちにしている。柚月の指示も良いが三雲の距離関係も上手い。完全に見える位置ではなく、チラチラと見切れる位置に立つことで、荒船隊からしてみれば余計に気が散るのだ。

 

「ははっ、やるなぁ三雲くん!」

 

「別にたまたまじゃないですか? 東さんも言ってる通り柚月先輩の指示でしょう」

 

「やっぱり三雲くんには厳しいね。木虎は」

 

 三雲の活躍を目にした嵐山と木虎と時枝。嵐山の言葉に木虎はそう答えるが、残念ながらこれは三雲の成長と呼べるだろう。

 柚月に教わった序盤での雨取の狙撃時の動き方を既に吸収し、次は自分で考え実行しているのだ。

 

 

 一方、穂刈と笹森の方はというと……

 

(どうすっかな。この距離で当たるか? いや、当たんねぇだろうな。走りながらじゃ……)

 

 笹森に当たれば1番理想的な展開だが、それは難しいだろう。

 

(こりゃ、俺死んだな)

 

 そう考えた穂刈は、足を止め横を向く。その狙いの先には空閑と荒船の姿。

 そして放った狙撃は、空閑の左腕を撃ち抜いた。

 

「!」

 

『トリオン体活動限界。ベイルアウト』

 

 空閑への狙撃と同時に、笹森が穂刈を切りつけ、穂刈が落とされる。

 笹森を狙って外すのが荒船隊にとっては1番最悪な展開だ。ならば空閑を狙撃した方が後に繋がる。どうせ死ぬなら確率が高い選択を取る。セオリー通りだが、この状況かで冷静かつ正確に考えられた良い判断である。

 

 

「穂刈隊員が空閑隊員を削った!」

 

「空閑が、崩れた?」

 

「いや、まだだよ」

 

 東の疑念を緑川が否定する。そして、空閑がそんな緑川の言葉を肯定するかの様な動きを見せる。

 

「! グラスホッパー。させるか!」

 

 足元に置いたグラスホッパーを見た荒船は、空閑が上へ逃げると予想し、その前に攻撃を仕掛けるが──

 

「!?」

 

 空閑はそのグラスホッパーを踏まず、後ろの壁を蹴り荒船に突っ込む。

 

「「うまい!!」」

 

 東と緑川の言葉が重なったと同時に、空閑のスコーピオンが荒船の両足を切り落とす。

 

『警告。トリオン漏出甚大』

 

(この場面で、フェイントの為だけにグラスホッパーを……? このチビ、戦いなれし過ぎだろ!)

 

 この隙を見計らって、諏訪が屋根上から2人に銃弾の雨を浴びせる。

 そして、それと同時に笹森がカメレオンで姿を消すのが三雲の目に映る。

 

「空閑! 笹森先輩がカメレオンでそっちに向かってる! 柚月先輩、サポートお願いします」

 

『了解。真後ろの少し左。すぐ来る』

 

「りょーかい」

 

 それさえ分かっていれば、攻撃の際に顔を出した時に仕留められる。そう空閑が考えた瞬間、空閑の体が抑えられ、持ち上げられたまま止まる。

 笹森がカメレオンを使ったのは、バレずに空閑の動きを止めるため。

 

(! そう言うことかよ! なら……)

 

『遊真! 落とさなくて良い。だけど絶対に離されんなよ』

 

『! ……了解』

 

 すぐ様笹森の首を落とそうとした空閑に、柚月はまったをかける。柚月の意図を理解した空閑は背中からスコーピオンを生やし、笹森を落とさぬ様にトリオン供給器官を避け、突き刺す。

 

「諏訪さん! 止めました!」

 

「良くやった日佐人! ぶっ飛ばす!」

 

 諏訪隊の狙いはこれ。笹森が空閑を抑え、諏訪が笹森ごと確実に落とす作成。

 

「けどそれ、抑えられてるのはそっちだぜ? 諏訪さん」

 

 柚月がそう言った次の瞬間、諏訪が引き金を引く前に、雨取の大砲がその場一帯を破壊する。

 その衝撃に笹森の手は離され、同時に空閑もスコーピオンを抜く。そしてそのまま、笹森を切った。

 

『トリオン体活動限界。ベイルアウト』

 

 しかし、射線を塞いでいた建物ごとぶち抜いた為、逆に雨取への射線が通るようになり、荒船が雨取を狙撃する。

 

『トリオン体活動限界。ベイルアウト』

 

 建物が破壊された事によって、姿を隠す事は不可能。

 空閑が仕掛け、諏訪が連射する。

 

(こっちには追う足がねえ。寄って来てくれて助かるぜ!)

 

 空閑がグラスホッパーを使うが、諏訪はそれをよんでいた。空閑が移動した先に銃を向け。あとは引き金を引けばTheEND。

 

 

「諏訪隊長。空閑隊員の動きをよみ切った!」

 

「勝負ありですね」

 

 東の言葉に、多くの隊員達が諏訪隊の勝利を確信した。しかし、東のような実力を持ったB級隊員やA級隊員は違う。

 

「玉狛の勝ちです」

 

「え?」

 

 東の予想外の言葉に武富が画面を見ると、そこには諏訪を狙う三雲の姿が映っていた。

 

「チッ!」

 

 三雲のアステロイドが諏訪を貫く。

 

(最後の最後で、エースが囮かよォ……)

 

『トリオン体活動限界。ベイルアウト』

 

 落とされるのを分かった瞬間、1点でも多く点をとる為に空閑に撃ち込むが、空閑がフルガードし、なんとかベイルアウトを免れる。

 一方で、荒船はトリオン漏出過多でベイルアウト。それに至るダメージを与えた空閑の攻撃に点が入る。

 

「ここで決着! 玉狛第二には生存点の2点が加算されます!」

 

 最終結果は、玉狛第二、諏訪隊、荒船隊の順に6ー2ー1。

 2戦目にして、中位グループでも怒涛の6得点。この結果に室内がどよめく。

 中位グループ夜の部。B級ラウンド戦ラウンド2は、玉狛第二の勝利で幕を閉じた。




祝!お気に入り1000件突破です!自分の中ではやはり1000件が1つのボーダーラインなのでとてもありがたい事です。
これもいつも読んでくださる皆様のおかげです。ありがとうございます!
これからも多くの人に楽しんでいただけるよう精進して参りますので、何卒応援の方よろしくお願いします!
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