No.1銃手ですがオペレーターとしてA級を目指そうと思います   作:宮川アスカ

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ナスカレー


第16話 村上と那須

「さて! 今回の結果を持ちまして、暫定の順位を見ていきましょう。諏訪隊は10位、荒船隊は11位にダウン。一方で玉狛第二は8位に浮上。わずか2試合で中位グループ1位に立ちました!」

 

 武富の言葉に、会場がザワつく。

 

「ではこの試合を振り返って、どうだったでしょうか?」

 

「そうですね。終始玉狛のペースでしたね。玉狛の作戦通りに進んでいたと思います」

 

 東の意見に、緑川もウンウンと頷く。

 

「なるほど。ではやはり柚月先輩の実力が垣間見えた試合でしたね」

 

「ええ。問題はこの作戦を柚月が1から10まで考えたかですけどね……」

 

「? それはどういう事でしょうか?」

 

「うーん。ここで話すのはフェアではない気がしますね。自分から言えるのはここまでという事で」

 

 東にはこの試合をみて引っかかる事があった。柚月ならもっと効率よくやれたのではないかと。確かに面白い作戦だ。結果を見れば玉狛の大量得点に終わったが、この地形、決まった時のメリットは大きいが、その分リスクも大きい。

 そして、東は元チームメイトだった事もあり、柚月の特徴を知っていた。

 柚月はオペレーターをする時、まず最初に戦闘員に選択権を与えるのだ。

 

(もしこれが柚月だけの作戦でないのだとしたら…… 玉狛第二。想像以上に厄介なチームかもしれないな)

 

 東が思考してる内に、武富から次の対戦カードが発表される。

 

「玉狛第二の次の相手は、暫定9位の鈴鳴第一と、暫定13位の那須隊です」

 

 

「! ……また、厄介な組み合わせが来たな」

 

 次の対戦相手を聞き、柚月は若干嫌そうな顔をする。

 

「そんなに強い部隊なんですか?」

 

 三雲は柚月の珍しい表情に、何かあるのだろうかと疑問をもつ。

 

「あー、そうだな。今終わったばっかだけど、少しだけ次の相手の説明しとくか」

 

 柚月はそう言うと、机にミニチュアを置き、その机を囲むように4人が立つ。

 

「いいか? まず、鈴鳴第一と那須隊は両部隊ともに前衛、中衛、後衛が1人ずつ居て、中衛が隊長。違う点で言えば鈴鳴の来馬さんが銃手で、那須隊の玲。あー、那須が射手って事ぐらいだ。つまりウチと殆ど同じ構成と言っていい」

 

「ふむ。なら、今回の荒船隊とかより戦いやすいじゃん」

 

 空閑の言葉に、柚月は首を振る。

 

「いや、そう単純な話でもない。部隊構成が同じ場合、大切になってくるのは大きく分けて2つだ。まず1つ目は部隊としての基盤。仕方ない事だが、ウチはまだそれが薄い。そして2つ目が、戦略だ」

 

 戦略。なら柚月がいる玉狛の方が有利に思えるが、一概にそうとも言えない。

 

「全ての部隊が同じ構成って事は、まず今回の様な作戦は使えない。それに次の戦い、ステージ選択権はウチにない」

 

 地形戦や事前にやる事が明確になっている事での有利性は、3人とも玉狛第一や今回の戦いで理解している。

 ステージの選択権があるかないかで、事前にやれる事は大幅に変わる。

 

「そして、今回の荒船隊や諏訪隊と大きく違うのは、両部隊共に1人で複数の点を取れる点取り屋が居るって事だ」

 

 部隊には基本的に2つの形がある。荒船隊や諏訪隊の様に、1人が複数点を取ると言うよりかは、チームで点数を取る形。逆に玉狛の様に、エースとなる点取り屋がおり、そのエースを軸に周りがサポートをする形。

 鈴鳴第一は完全に後者。那須隊も、どちらかと言えば後者よりだ。

 

「鈴鳴は攻撃手の村上。そして那須隊は射手の玲だ。特に村上は、NO.4攻撃手だからな」

 

 次の試合。玉狛第二にとって、真価を問う一戦となることは間違いないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ランク戦の振り返りも終わり、柚月達が作戦室から出ると、丁度その解説をしていた緑川と、試合を観戦していた米屋と古寺に遭遇する。

 

「じゃあ、今から個人ランク戦行ってくる。修達は先帰ってていいよ」

 

「柚月先輩も早く来てよね!」

 

「おー。先に遊真とやって、体あっためとけー」

 

 グラスホッパーを教えたかわりに、ランク戦の約束をしていた空閑と緑川を見送りながら、柚月は「元気だねー」と手を振る。

 

「古寺の最後の解説聞いたぜ? 良い解説だったな」

 

「ありがとうございます」

 

「とはいえ、本来は宇佐美に言って貰えた所を、悪いな」

 

「いっ、いえ! そんな事は!」

 

 古寺章平。非常に頭脳派で、六頴館における柚月の後輩。1学年の首席であり、3年になった時の生徒会での柚月の席は彼と言われている。

 宇佐美に恋心を抱いているらしく、柚月が少しからかい気味に謝罪をすると、顔を赤くして焦っている。柚月が言えた事ではないが、古寺もまた、恋愛への免疫は低いようだ。

 

「うわっ、玉狛だ」

 

 すると、そんな声と共に2人の人影が、通路の角から現れる。

 

「おっ、歌川と菊地原」

 

「柚月先輩。作戦室で見てましたよ。さっきの試合」

 

 その正体は、風間隊の歌川遼と菊地原士郎。彼らも古寺同様、六頴館の1年生2人組だ。

 

「作戦室って事は風間さんも見てた感じ? なんか言ってた?」

 

「見てましたよ。良い諏訪さんの使い方だって言ってました。ただ、次もこうはいかない。とも……」

 

「いやぁ、流石風間さん。分かってるねぇ」

 

 歌川の答えに、柚月は苦笑いをする。

 

「確かに良い地形戦だったけど、点を取れる駒が空閑だけじゃね。それに、あれ本当に柚月先輩の作戦? 柚月先輩ならもっと安定して勝てたんじゃない? あながち東さんの言葉が正しかったりして」

 

「さぁ? どうだろうな?」

 

「否定はしないと……」

 

 菊地原の言葉に歌川が苦笑いをし、謝罪する。

 

「すいません。コイツ口が悪くて。三雲くん達も気にしないでくれ」

 

「は、はい……」

 

「大丈夫大丈夫。菊地原がツンデレなのは何時もだから」

 

 柚月のツンデレというワードに、菊地原が反応するが、上手いこと歌川に抑えられる。良いコンビだ。

 そんな事をしていると、柚月のスマホに通知が届く。

 

「おっ、レイジさんが迎えに来てくれたらしいけど、修はどうする?」

 

「僕は千佳と一緒に帰ろうと思います。次の相手のログも見ておきたいですし」

 

「了解。じゃあレイジさんにはそう伝えとく。千佳の事はよろしくな」

 

 柚月はそう言うと、スマホを操作し始める。

 

「そんじゃあ、俺らも柚月さんと一緒に個人ランク戦行くか! お前らも行くか?」

 

「すいません。ウチはこれから防衛任務なので」

 

「お宅らほど暇じゃないですよ」

 

「お前はいちいち鼻につく言い方だなぁ、菊地原」

 

 菊地原にヘッドロックをかます米屋を見て、何やってんだか。と思いながら「米屋行くぞ〜」と声をかけ、3人で個人ランク戦のロビーに向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あちゃあ、駄目だ。やればやるほど勝てなくなる。よねやん先輩、トータル何対何?」

 

「21対9だな」

 

「ふむ。それって10本だとどれくらいなんだ?」

 

「7対3。なにお前達、30本もしてたの?」

 

「いやぁ、柚月先輩なかなか来ないから」

 

 柚月達がロビーに着いた少し後に出てきた緑川と空閑。柚月の問に、緑川はポリポリと頭を搔く。

 

 そんな時、とある人物の来訪に、ロビー内がザワつき始める。

 

「よぉ、荒船。今日は上手いこと動いてくれてありがとな」

 

「国近このやろう。まぁ、お前が言ってた事は認めてやるよ」

 

 1人は今回の相手であった荒船哲次。恐らく、空閑との敗戦でアツくなったのだろう。

 

 そしてもう1人が──

 

「ほんで? 村上はどうしてここに?」

 

 そう。次の対戦相手である、NO.4攻撃手。村上鋼である。

 

「お、また人が増えた」

 

「鈴鳴第一の村上先輩だよ」

 

「鈴鳴…… ほう。次の相手の」

 

 緑川の言葉に、空閑は村上の事を見つめる。すると、村上の目が空閑へと移る。

 

「はじめまして。俺は鈴鳴第一の村上鋼」

 

「どうもどうも。玉狛第二の空閑遊真です」

 

「鋼さんが、こっちに来るなんて珍しいっすね。もしかして空閑対策ですか?」

 

 米屋はそう言うと、ポンっと空閑の頭に手をのせる。鈴鳴第一は玉狛同様、本部とは別に支部を構えている為、本部に顔を出す事は珍しい。

 そして米屋の言葉に、村上は小さく頷く。

 

「ああ。国近だけでも厄介なのに、ここまで手強い攻撃手がいるとな。玉狛第二は想像以上に手強そうだ。ただ、緑川がいて丁度良かった。対策、付き合ってくれないか?」

 

 しかし、村上の誘いに緑川は腕でバツ印を作る。

 

「やだね。たった今、遊真先輩とやって想像以上にゴッソリ、ポイント持ってかれてるんだよね。今日はこれ以上減らせないし、柚月先輩も今度で良い?」

 

「ああ。俺の予定が空いてる時ならな」

 

 本来は空閑と柚月。10本10本でやろうと思っていたのが、30本空閑とやった為、緑川としてはこれ以上ポイントを減らす訳にもいかない。

 しかし、ここで空閑には引っかかる事がある。まずは、緑川が負けることを前提で話している事。そして、自分が居るにも関わらず、緑川を選んだ事だ。

 

「鋼さん。俺で良ければ相手しますよ!」

 

「米屋。お前、グラスホッパー使えないだろ?」

 

「ありゃ、そういう事」

 

 余計に分からない。グラスホッパーが目的なら、尚のこと自分でもいい。戦闘での感覚を掴ませない為なのか。幾つか理由はありそうだが、考えても仕方ない。空閑は諦め、村上に直接声をかける。

 

「なら、俺とやろうよ」

 

「辞めとけ空閑。次の試合が不利になるぞ」

 

 しかし、空閑の言葉に最初に答えたのは、村上ではなく荒船だった。

 

「うーん。ここで言うのも言わないのもどっちもフェアじゃない気がすんなぁ。まぁ、柚月さんがいるし、言っても良い気はするが。ただ、荒船さんの言う通り、不利になるのはお前の方だと思うぜ?」

 

 荒船だけでなく、米屋にも止められる始末。見たところ、緑川も同じ意見のようだ。サイドエフェクトで、2人が嘘をついていない事はわかる。ただ、ここまで言われると、空閑としては余計に気になる所である。

 

「こっちとしては願ってもない事だが。ただ、やる前に2つ条件がある」

 

 村上はそういうと、指を2本立てる。

 

「1つ、試合は10本勝負。そして2つ目は、5本終わった時点で、15分休憩を設ける」

 

「おい、それじゃあ、本当に「いいね」……国近?」

 

 完全に、村上有利だと踏んだ荒船が止めに入ろうとするが、柚月がそれを止める。

 

「やろう遊真。多分遊真はやっといた方が良い」

 

 今まで黙って見ていた柚月が許可をだす。村上の事を知っている柚月がそう言うのであれば、流石の荒船達も口出しは出来ない。

 

「それじゃあ、決まりだな」

 

「ああ」

 

 空閑と村上がそれぞれ、ブースへと移動しようとした時、新たな声がかけられる。

 

「あら? 柚月くん?」

 

「……玲」

 

 なんの偶然か。これまた次の対戦相手である、那須隊の隊長。那須玲その人である。

 

「柚月くん。玉狛第二、勝利おめでとう。もう中位グループトップだなんて。本当に強いのね」

 

「ありがとう。でも玲、なんでここに?」

 

「今日は、検査の日だったの。柚月くん達の試合、検査が終わったら見ようと思ってたのだけど、間に合わなかったから結果だけ」

 

 那須がボーダーに入った理由は、トリオンが体の弱い人への薬になるのかと言う研究によるものからだ。

 

「ところでこれはどういう状況?」

 

「あぁ、今から遊真と村上が10本勝負するだ」

 

「あら。それは中々運の良いタイミングで出くわしたみたいね」

 

 そんな那須を見て、空閑は「誰だ?」と首を傾げる。

 

「あなたが空閑くんね。私な那須隊の那須玲。活躍は私も耳にしてるわ」

 

「これはどうも。玉狛第二の空閑遊真です」

 

「でも、私だけデータを収集するのも悪い気がするわね」

 

 そんな那須の言葉に、空閑は村上と同じ提案をする。

 

「じゃあ、俺と勝負する?」

 

「それはありがたいけど、片方とやるのは不平等じゃない?」

 

「すまないが、予定があるんだ。俺はそこまで時間がとれない。残れても、空閑とやった後に10本分くらいだな」

 

 那須はそう言うと、チラリと村上の方を見るが、村上は首を横に振る。

 村上が10本分となると、3人でサイクルを回すのは難しい。まぁ、空閑と村上は、あまり気にしていないのだが。

 ただ、那須が納得するためにも、平等感を出した方が良いと思った柚月が口を開く。

 

「遊真、村上。玲の今の戦闘データが取れればいいか?」

 

「俺はそれでOKだよ」

 

「俺も特に問題ない」

 

 2人に了承を受けた柚月は、那須の方を見る。

 

「じゃあ玲。久しぶりに俺とやるってのはどうだ?」

 

「……いいわね。その申し出、受け取るわ」

 

 ふふっ。と笑う那須の了承と共に、空閑と村上だけでなく、柚月と那須のランク戦も決まったのであった。




最近、1話辺りの文字数増えてきたけど、このままで大丈夫ですかね?
個人ランク戦の描写は書くか分かりません。多分ストーリー進めながら、B級ランク戦の時にでも軽く触れるかも位の感覚でいます。
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