No.1銃手ですがオペレーターとしてA級を目指そうと思います 作:宮川アスカ
因みにランキング載ってました。ありがとうございます
ヒュース。アフトクラトルの戦闘員として、大規模進行時に攻め込んで来た彼は、捕虜として現在玉狛支部に隔離されていた。
しかし、預けられた先が玉狛だったのは幸いだろう。捕虜にしては拷問されるわけでも手足を拘束されているわけでもない。
実際に今も、リビングに連れ出され、B級ランク戦の中継を見ている始末だ。こんな自由度の高い捕虜もそういない。
そんなヒュースには、中継を見て理解し難い事がある。それは、何故、柚月を戦闘員として使わないのか。
あの、へらっとした口調。思い出すだけで軽くイラついてくる。ヒュースにとっては忌々しい記憶。
彼の思考は、大規模進まで遡る──
アフトクラトルの大規模進行での目的は、金の雛鳥を探す事。そして、玄界で見つけた金の雛鳥こそが、雨取だったのだ。
そんな雨取を回収すべく行動していたのが、ヒュースとヴィザ。
木崎や鳥丸が足止めするも、アフトクラトルの強化トリガー、さらにその片方がブラックトリガー。木崎も落とされ、万事休すかと思われたところで現れたのが、迅と空閑だった。
迅がヒュース、空閑がヴィザを相手にし、お互いを分断する。
ヴィザは、空閑によりぶっ飛ばされ、ヒュースは地下通路へと落とされる。その落とした張本人に言われた言葉に、目を見開く。
「大事な戦力だろうに。なんでお前は、ここで見捨てられるんだ?」
驚愕、焦り。そして、動揺。
「何を…… ! 貴様! ふざけた事を!」
そんな感情に苛まれ、今まで冷静に戦っていたヒュースに綻びが生じる。
冷静さを失い、迅に突っ込んだその時。
「!?」
彼の足下に、1つの銃弾が撃ち込まれる。
「やっほー、迅さん。忍田本部長の命令で来ちゃった」
咄嗟に足を止めたヒュースが目を上げた先には、迅の後方に立つ男の姿であった。
「おっ、柚月。ナイスタイミーング」
「それで? 忍田本部長には迅さんの指示に従うように言われてますけど」
柚月はそう言うと、迅の隣に立つ。
「お前にはコイツの相手をしてもらいたい」
「足止め? それとも倒す感じ?」
「足止め」
「オーケー。それで迅さんは?」
「俺はやる事ができた。予測が1つ確定したからな」
迅はそう言うと、その場を離れようとする。
「! 逃がすか!」
しかしそれをヒュースが見逃すはずもなく、迅を追おうとするが、それは柚月も同じだ。
「おいおい勝手に行こうとするなよ。悲しいだろ?」
「チッ!」
柚月の放った銃弾を、ヒュースは蝶の楯で防ぐ。
それと同時に放たれた三角形の欠片。
見た事のないトリガーに、柚月は一瞬目を見開く。
(また随分と厄介そうな。何にせよ情報が欲しいな)
柚月はバックステップでその欠片を交わしながら、耳に手をやる。
「妹よ。コイツの情報ちょうだい」
『ほいほーい。今、宇佐美ちゃんに確認するからちょと待ってて』
大規模中、フリーの柚月にオペレーターは居ないため、太刀川隊と並列して柚宇が務めている。柚月だけでなく太刀川隊含め、それぞれが別行動を取っているが、それを捌き切るだけの技量が彼女にはある。
とはいえ、ヒュースの情報は持っていない。1度、宇佐美からデータを貰うとなると、あまり早い情報提供は見込めないだろう。
足止めとはいえ、このまま後手後手に回りながら戦ってもジリ貧だ。トリオン量の差を考えても柚月が削られるのは明白。
「一旦、流れ変えますか」
(! 弾道が曲がった!)
虚をついたバイパー。しかし蝶の楯の守備範囲は広い。反応が少し遅れた位では撃ち抜けない。
ただ、その攻撃を期に柚月が後手に回っていた展開が撃ち合いへと変わる。
(……なるほど。少しずつ分かってきた。ヤツの銃弾の種類は普通の銃弾と曲がる銃弾の2種類。そして普通の銃弾が右手から放たれ、曲がる銃弾が左手から放たれる)
撃ち合いとなってからわずか数分。ヒュースは既に、柚月のトリガーを理解していた。
そして、それを裏付けるかの様にバイパーへの反応速度が上がっている。バイパーが飛んでくるタイミングさえ分かれば、予め警戒がしやすい。
(ふむ。もう対応されてきてるか。頭は相当キレるみたいだな)
柚月がそんな事を考えていると、柚月の目の前からヒュースが消える。
「!」
その次の瞬間、上空から無数の欠片が柚月を襲う。柚月もそれを撃ち落としていくが、その軌道が途中で変化する。
「お返しってか?」
欠片が柚月の腕に刺さるが、これといって特に何も無い。そんな時、柚月の耳に柚宇からの通信が入る。
『敵の情報が分かったよ。そのトリガーは欠片の一つ一つが磁力で引き合い反発する力があるみたい。 当たると厄介だから気おつけて〜』
「マジですか。それちょっと遅かったみたい」
柚月がそう言った瞬間、柚月の腕が地面へと吸い付けられる様に引っ張られていく。
「チッ!」
柚月は軽く舌打ちをすると共に、咄嗟に地面に刺さった欠片を撃ち、同時に天井も撃つ。
地下通路が崩れはじめ、柚月とヒュースはお互い地上へと避難する。
「なるほど。保護色に反発を使った欠片の方向転換。手数も多いし中々に厄介なトリガーだ」
砂煙の中から、コホッと咳をしながら柚月が出てくる。
蝶の楯は地下通路の様な狭いばしょの方が戦いづらいが、それは柚月にも言えること。それに欠片と欠片の距離が近くなるぶん、磁力の引力や反発力が大きくなる。
「その腕、先程の男は迷わず切り落としたぞ」
「いやいや。こちとら獲物が銃なんでね。手が無きゃ困るんだわ」
こういう時、射手は戦いやすいなと柚月は思う。
この欠片は一度取り付けると、どうにも簡単には剥がれそうにない。
この欠片自体に殺傷性は無いため、捕獲、援護に優れたトリガーと柚月は仮定するが、ここに殺傷性を与える方法があるとすると非常に厄介だ。
とはいえ、この捕獲が中々に厄介。柚月の目的は足止めなのだが、この場に貼り付けられては、その任務も叶わない。
案の定、ヒュースが磁力で壁に柚月を引き付けようとするが、柚月は早撃ちで壁を破壊する。
「別に腕落とさなくても、引き寄せる側を破壊すればいいんだろ?」
柚月はそう言い、ヒュースに銃弾を撃つ。
(右が3発、左が2発)
左右で弾の種類を把握出来ているヒュースはアステロイド側に楯を貼り、バイパーに注意を向けるが、その銃弾が軌道を変える事はない。
「ッ!」
咄嗟に反対側を振り向くと、アステロイドだと思っていた方の銃弾が軌道を変えていた。
「まじか。これでも防げるのかよ」
間一髪で蝶の楯で防いだヒュースは思考し、ある1つの可能性に辿り着く。
(! ……なるほど、先程の砂煙か)
先程の、地下通路の破壊。銃弾の通りを良くする為だとヒュースは考えていたが、だとしてもあれはやりすぎだ。頭上が崩れては、地面に引き寄せられていた柚月は脱出出来なかった可能性もあるのだ。
それに狭くて戦いにくいのは、ヒュースも同じ。ならそこまで無理をする必要は無い。つまり、狙いは砂煙を起こすこと。
(あの間に左右の銃を持ち替えていたのか……)
奇策は止められたものの、柚月は攻撃の手を止めない。
ここまでの戦いでヒュースが感じた事は、柚月はバイパーをあまり多様してこない。基本はアステロイドで牽制や誘導をし、決めてとしてバイパーを使ってくる。
アステロイドを蝶の楯で防ぎながら、柚月の左手が引き金にかかるのが目に映る。
(来る……!)
バイパーの軌道は予測が掴めない。蝶の楯で背後まで覆うように守るが、柚月の放った銃弾は、ヒュースの手間でヒュースを避ける様に大きく外に逸れる。
急な出来事に、バイパーを目で追った時、端の方で微かに柚月が銃を持ち替えているのが見えた。
(上手い。この弾は視線誘導か。だが、運が悪かったな。見えてしまえば──)
なんてことない。そう考えた時、ヒュースの体を柚月の銃弾が撃ち抜いた。
「ナッ……!?」
確かにちゃんと蝶の楯で防いだはずだ。にも関わらず、またヒュースの予測と逆側の銃弾が曲がった。
「ばーか。俺がいつ片方ずつでしか撃てないって言ったよ」
柚月はそう言い、べーと舌を出す。
「貴様、まさか……!」
「ご名答〜」
柚月がそう言い、二丁の拳銃から放った銃弾が、ヒュースの両頬スレスレを通り抜ける。
ヒュースは玄界のトリガーを知らない。柚月がわざと最初からずっと、同じ方でしか同じ弾を撃っていなかった為、ヒュースの中では誤認識が生じたのだ。
「お前、頭いいんだろうな。だから思考速度も早い。たがそれ故に」
自分の思考に疑いを持たない。
自身の手の中で踊っていると思った人間に、実は最初から踊らされていたのだ。
「さっきから迅さんの方気にしてるみたいだけどさ。俺の任務は足止めなんだ。集中してくれなきゃ、殺しちゃうだろ?」
柚月はそう言うと、ニヤリと笑う。
「さてどうする? これでもまだ、俺を無視して突破するか?」
その後どうなったかなど、ヒュースが捕虜として玉狛にいる。これが全ての答えだろう。
生駒隊、実は1番カッコイイの水上なんじゃないか説をとなえてる。