No.1銃手ですがオペレーターとしてA級を目指そうと思います 作:宮川アスカ
ランク戦ロビーに、珍しい男が足を運んでいた。
桃色に近い茶髪に、茶色い瞳。身長は170cm程。高くも無ければ低くもないと言った身長。モテるかモテないかで言われれば、モテる部類の容姿をしている。
そんな彼の名前は、国近
そんな柚月の目には、1人の少年が映る。
「あれ? 出水じゃーん」
ソファーに座る少年に、柚月はヒラヒラと手を振る。
出水公平。またの名を弾バカ。A級1位である太刀川隊の射手である。
「柚月さんじゃん。どうしたんですか? ランク戦来るなんて珍しいですね」
「まぁ、ちょっと色々事情があってね。出水は1人?」
「いや、3人です」
そう言いながら出水が指差すモニター画面には、米屋陽介と緑川駿の戦闘映像が流れていた。
弾バカの出水、槍バカの米屋、迅バカの緑川。3人で一緒に居る事が良く見受けられるこの3人は、ボーダー内では結構有名なA級3バカだ。
ただ、誤解はしないで欲しい。彼らはA級3バカと言うだけあって、バカではあるが3人ともA級部隊所属。実力は本物である。
「3人でローテしてるんで、今は順番待ちです」
「そっかそっか。じゃあ、どう? 俺とやらん?」
「え!? 良いんですか!?」
「うん。俺もこの後、迅さんと予定あるし5本勝負でどう?」
「オッケーです。やりましょう!」
個人ランク戦。B級ランク戦とは違い、個人のポイントをかけた試合。勝負形式は色々あるが、今回の試合形式は5本勝負。
柚月、出水がお互い別のブースに入り、仮想空間へと転送される。
『ランク対戦。5本勝負。開始』
無機質な女性の声によって、勝負が開始される。
先にアクションを取ったのは柚月だった。
一瞬にして、拳銃型トリガーを二丁抜き、出水に撃ち込む。
「やっぱ、はえ〜」
それに対して、出水はシールドを張る。
柚月は銃手、出水は射手だ。個人ランク戦の様な、お互いが対面した状態からよーいドンで始まる勝負では、射手がガードを張るのは定石である。
理由は簡単。銃手の方が射手より攻撃までのモーションが速いからだ。
射手は基本的に、キューブを『分割』→『狙う』→『撃つ』という3ステップが必要なのに対し、銃手は『狙う』→『撃つ』という2ステップ。
柚月のトリガーは、弾速を上げるための粉塵剤にトリオンを振り切っていない為、弓場の様に銃弾が見えない程では無いが、撃つまでの速さは同等、もしくはそれ以上である。
出水はシールドを張りながら、後退し、次の攻撃を考える。
幾ら銃手の方が攻撃が速いとはいえ、隙は必ず生まれる。
が──
(! 弾速が延びた!)
柚月が放った銃弾が途中で不自然に、まるで伸びたかの様に速くなる。
そして、シールドの手前で動きを変える。
「バイパーかよ!」
流石は出水。普段自分が扱っているだけあって、弾の変化に非常に敏感である。
瞬時に背面にシールドを展開し、間一髪で攻撃を防ぐ。
「おっ、今の反応できるか。やるなー出水」
攻撃が防がれた事によって、柚月が感心している次の瞬間。出水によって放たれたアステロイドに撃ち抜かれ、柚月の体は蜂の巣になっていた。
『国近、ベイルアウト。1ー0 出水リード』
出水の勝利を知らせるアナウンスと共に、柚月の体はベイルアウトにより飛んでいく。
「え?」
勝ったはずの出水も、何がなんだか分からない顔をしていた。
では、その柚月はと言うと……
「……やっべぇ。自分が撃った精度に満足してシールド張るの忘れてたわ」
ベイルアウト先のベッド形マットから起き上がり、ポリポリと頭をかく。
普通では絶対有り得ない事だが、彼は至って真面目に言っている。これがマスターランク。いや、これではもはやマスターランク(笑)である。
そんな事をしている間に、再び仮想空間へと転送が始まる。
「うっし。まぁ、トリオン操作の感覚も鈍ってないし。次からは1本も落とさん」
『2本目。開始』
ピーと言う、開始を知らせる音が鳴った次の瞬間。
──ドドドドドン
かわいた銃声音だけが鳴り響く。
「……いや、ほんとに。久しぶりに見たけど、やっぱ、その合成弾、反則でしょう……」
柚月の銃弾は、出水の急所にあたる部分を正確に撃ち抜いていた。
『出水、ベイルアウト。1ー1』
一瞬。本当に一瞬の出来事であった。
出水は1本目同様、確かにシールドを張っていた。しかし、そのシールドは破壊された。
弾丸トリガーというのは、威力に殆どのトリオンを使えるブレード系のトリガーと違い、威力の他に射程と弾速にもトリオンを振り分ける必要がある。
その為、銃手と射手は、互いに火力が低いという欠点を持っているはずなのだ。
それに、出水のトリオン量はボーダー内でも上位に入る。幾ら威力を決める弾体にトリオンを振っても、シールド込みの出水を一瞬でベイルアウトに持ち込むのは不可能に近い。
ただ……
合成弾、特にギムレットならそれが可能だ。
なんせ、出水は先程のバイパーが脳裏に焼き付いていた。1点に集中したフルガードなら耐えれたかもしれないが、バイパーを警戒して広げられたシールドでは、それを耐える事は難しい。
1発目をアステロイドではなく、あえてバイパーにする事によって、相手の次の行動を誘発する。
「よし。どんどん行こうか」
相手の心理をつく。これが国近柚月のスタイルの
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「おい、出水さんがB級とランク戦してるらしいぜ!」
「? へぇ。けどそんな珍しい事じゃないだろ」
「いや、それがB級がリードしてるらしい」
「!? まじか! 俺達も見に行こうぜ!」
「おう!」
三雲と迅がボーダー本部の通路を歩いていると、近くにいた隊員の話声が聞こえてくる。
A級1位部隊の射手と言う事もあり、三雲も出水の事は知っていたし、大規模侵攻の時も助けてもらった人物だ。
さらに、対戦相手が自分と同じB級と言う事で、話に興味を抱くのも必然である。
「……すごいですね。B級であの出水先輩を……」
「そうだね。俺らもちょっと行ってみようか」
「え? 待ち合わせは良いんですか?」
「大丈夫大丈夫。多分そいつ、そっちいるから」
迅はそういうと、ランク戦ロビーへと足を運ぶ。
三雲もそんな迅を追う様に歩き、ランク戦ロビーに入った瞬間一瞬驚愕する。
普段から人が集まっているランク戦ロビーに、さらに人が集まっていた。
その殆どの視線が向いているのは1つのモニター。
そこには、ランク戦真っ只中の、出水と柚月の姿が映っていた。
「あっ! 迅さん!」
そんな中、ロビーに入って来た迅を、米屋と共にモニターを観戦していた迅大好き迅バカである緑川が見つける。
「おっ、駿、米屋。久しぶり」
「どもども。メガネくんも久しぶりだな」
「お久しぶりです」
玉狛支部はボーダー本部とは別に拠点を持つため、ボーダー本部に来る事はあまりない。特にこの2人はランク戦ロビーに来る事自体まれだ。
出水、米屋、緑川は、大規模侵攻で入院した三雲の見舞いに来てくれるほどに、三雲にとっては良い先輩、そして良い後輩であった。
「それにしても、凄い事になってるな〜」
迅はそう言いながらモニターを見上げる。
「そうなんだよ! 俺とよねやん先輩がランク戦終わって出てきたらもう始まっててさー!」
「ちくしょー! 俺も柚月さんとランク戦したかったー!」
抜け駆けだ! 抜け駆けだ! と騒ぐ2人。すると、ロビー内に女性の声が流れる。
『出水、ベイルアウト。5本勝負 1ー4。勝者、国近』
興奮冷めやらぬ空間に反した、無機質な女性のアナウンス。
三雲の目に映るのは、出水 1ー4 国近の文字。
驚愕と疑心が半々だった彼の心の内に残ったのは、驚愕だけであった。
読了ありがとうございます。さてさて、柚月の強さの秘訣はあと何個あるんでしょうかね。
種は散らばらしておきましたので、ネタばらしは後ほど〜