No.1銃手ですがオペレーターとしてA級を目指そうと思います 作:宮川アスカ
「くそー! 負けた負けた」
「お疲れ出水ー。ポイントごちそうさん」
個人ランク戦に決着がつき、お互いがそれぞれのブースから出てくる。
「柚月さん強すぎ。てか、あんだけリアルタイムでバイパーの軌道選択できるなら射手やりません? 射手人口増やしましょーよ」
「いやいや。分かってないな出水。銃がかっこいいんじゃん」
謎のドヤ顔を決める柚月の元に、数人の足音が聞こえてくる。
柚月がそちらを振り向くと、こちらに向かって歩いてくる迅達の姿があった。
「あっ、迅さん。待たせちゃってすいません」
「いや、いいよ。俺達も今来たところだし。それに、良い刺激になったみたいだしね」
柚月が迅の視線の先に目を向けると、柚月の事を見る三雲の姿があった。
「ん? あぁ、確かこの前記者会見に出てた、えーとぉ……」
「三雲です。三雲修です」
「あっ! そうそう、三雲くんだ。俺は国近柚月。よろしく」
そう言いながら差し出す柚月の手を、三雲はゆっくりと握り返す。
(力強い目をしているな)
少し引き越しな態度ではあったが、これが、柚月が三雲に抱いた初見の感想。
「柚月さん、俺ともランク戦しましょうよ!」
「あっ、俺も俺もー!」
そんな中、ランク戦の申し出をしてくる米屋と緑川に、柚月は顔の前で軽く合掌する。
「いやぁ、すまんね。俺今から迅さんと用事があるんだわ。また今度な。恨むなら、この実力派エリートを恨んでくれ」
「おいおい、酷くないか?」
ワイワイとふざけあう5人とは別に、迅の言っていた人物が柚月だと知った三雲は目を見開く。
(えっ…… 国近先輩って、銃手じゃ……)
自身が迅に紹介をお願いしたのはオペレーターだ。
先程のランク戦、三雲は最後の方しか見ていなかったが、柚月が使っていたのは銃手用のトリガーであった。
そもそも、前提としてオペレーターはランク戦などしない。
しかし、そんな事を考えているとはつゆ知らず。迅はどんどんと話を進めていく。
「ところで柚月、昼飯食べた?」
「いえ、まだ食べてないです」
「じゃあ、取り敢えず食堂行くか。俺もメガネくんもまだだし。安心していいよ、俺の奢りだから」
「おっ、ラッキー。ありがとうございます!」
ほんじゃあ、またね〜と言いながら手を振り、食堂に向かう2人。その2人を追うため、三雲も出水達に1つお辞儀をして、後をついて行く。
休日のお昼と言う事もあり、食堂にはいつもより多くの隊員が食事や談笑を楽しんでいた。
かくいう柚月達も各々の料理を受け取り、空いてる席に座る。
「それじゃあ、本題だけど。柚月にはメガネくんの、玉狛第二のオペレーターになってもらいたい」
「と言うと?」
ラーメンをズルズルとすする柚月。その質問に、今度は三雲が丁寧に説明していく。
訳あって遠征部隊に入る為に、A級を目指している事。大規模進行を経験し、玉狛第一を務める宇佐美とは別に、自分達の部隊にも専属のオペレーターが必要だと言う事など。
所々、伏せている部分もあったが、丁寧かつ理にかなった意見。そんな説明への柚月の答えはと言うと──
「うん。別に良いよ」
「おっ、やったじゃんメガネくん」
「いや、迅さん視えてたでしょ。なんか胡散臭いですよ」
しかし三雲はというと、予想していた以上にあっさりとした回答に、逆にたじろいでいた。
「ん? どうした三雲くん」
「い、いえ。もっと、断られると思っていたので」
「いやぁね。実は今日、城戸さんに注意勧告くらっててさぁ」
「注意勧告ですか?」
「そっ。まぁ、それについては後で話すとして、どうやら上は俺を遠征に連れて行きたいみたいでね。A級に戻れという命令なわけんですよ。しかも自力で」
酷いもんだよね〜と笑う柚月は、「ただ」と付け加える。すると、その笑顔が悪い笑みにへと変わるのを三雲は感じた。
「どうせ上がるなら、あのスカした顔に一泡吹かせたいじゃん?」
しかし三雲にはどうしても、引っかかる部分がある。
「あの、国近先輩は銃手、なんですよね?」
「ん? そうだよ」
「因みに、柚月は銃手1位ね」
「え? ……1位!?」
「あれ、俺まだ1位だったんだ。里見に抜かされたと思ってた。最近ランク戦やってなかったし」
「いや、里見もランク戦出来ないよ。今他県に勧誘に行ってるから」
「あぁ、そっかそっか」
里見一馬。先程の緑川も所属する、A級4位草壁隊の銃手。柚月に次ぐ銃手ランク2位の男である。
里見の様に自分が何位か全く知らないわけではないが、柚月も基本的には、自分の順位に興味がない。
No.1銃手。そんな男がB級である事は不思議だが、それだけの実力があるのであれば、出水に勝ったのも頷ける。しかし、だからこそ三雲は理解できなかった。
「なんでオペレーターを……?」
「え? もしかして、迅さん言ってなかったんですか?」
「そう言えば、メガネくんには言ってなかったな」
「あぁ、だからなんか噛み合ってなかったのか……」
「ごめんごめん。ただ安心して良いよメガネくん。柚月は、旧東隊。A級1位になった事もある部隊でオペレーターやってたから」
「! ……A級、1位……」
今日の三雲は驚かされる事ばかりである。
旧東隊。ボーダー古参である東春秋を隊長とし、二宮匡貴、加古望、三輪秀次を戦闘員としたボーダーの歴史の中でも最強と名高い部隊である。
当時から銃手として実力者だった柚月をオペレーターとして誘ったのは東だった。
「まっ、そう言われても信じられないよね〜」
「い、いえ。そういうわけじゃ」
ない。とは言えなかった。三雲自身、迅の事は信用しているし信頼している。そんな迅が嘘をついているとは思わないが、そう簡単に呑み込める様な話ではなかった。
「だからお互いテストをしよう」
「……テスト、ですか……?」
「そう。テスト。さっきも言ったけど、俺もA級を目指さなくちゃならない。玉狛第二にそれだけの実力がないと思えば、他の部隊に入った方が合理的。勿論逆も然りだ」
故に、お互いにお互いをテストする。三雲達は柚月のオペレーターとしての、柚月は三雲達の実力を。
「って事で迅さん。小南達が全員揃ってる日ってあります?」
「うーん。直近だと今日と3日後だな」
「じゃあ、3日後。玉狛第一と玉狛第二で対戦をしよう。そこでお互いの実力をはかろうと思う」
「おっ、面白そうだな。レイジさん達には俺から話つけとくよ」
迅はそう言うと、スマホを操作し始める。
「って事だけど、どうする?」
正直言って、玉狛第二の勝ち筋はほぼ薄いと言っていい。三雲達には非常に危険なかけではあったが、ここで腹を括る必要があるのも事実であった。
「……お願いします!」
そう言った三雲の目には、確かな覚悟が宿っていた。