No.1銃手ですがオペレーターとしてA級を目指そうと思います 作:宮川アスカ
柚月がログを見に行き、少し時間が経った頃。柚月と出水のランク戦を思い出し、三雲はふと、とある質問を投げかける。
「あの、国近先輩は、銃手用のトリガーで合成弾を撃っているんですか?」
「うーん。半分正解で、半分不正解かな」
「というと?」
宇佐美の回答に、今度は空閑が首を傾げる。
「良い機会だわ! この際だから、アンタ達に柚月先輩の銃手としての強さを教えてあげる! 安心しなさい。修の質問に対する答えもこの中に入ってるから」
「なんで小南先輩が自慢げなんですか?」
「う、うるさいわよとりまる!」
「まぁ、柚月先輩に1番負けてるのって小南な気がするしねー」
「んな!? そ、そんな事ないわよ! 今やれば私の方が!」
「小南先輩、つまんない嘘つくね」
「ゆーまー!」
うがー! と空閑の頬を両手で抓る小南を見て、木崎は小さくため息をはく。
「落ち着け小南。話が進んでないぞ」
「はっ! そうね。じゃあ、改めて柚月先輩の強さを説明するわ。柚月先輩の強さのポイントは大きく分けて3つよ」
小南はンンと咳払いをすると、指を3本立て、その内1本を折り曲げる。
「まずは、戦略脳や心理戦。咄嗟の状況判断力の高さね」
自分がどう動けば、相手がどう動くか。相手は今何がやりたいのか。自分や相手にとってのメリットやデメリットは何か。それは合理的なのか。それら全てを考えた上で、戦略を立て、相手を自分の術中にハメる。
「まぁ、この辺は柚月先輩がオペレーターとして部隊に加われば嫌でも分かるわ。そして2つ目はトリオン操作」
「の前に、2つ目と3つ目を説明するには、銃手用トリガーをおさらいしながらの方が良いかもね」
小南の話に付け加える様に、宇佐美はガラガラとホワイトボードを持ってくる。
「トリガーって汎用型以外にも、その人にあった改造型のトリガーがあるってのは知ってるよね」
「木虎が使ってるワイヤー銃みたいなやつですよね」
「米屋先輩が使ってる槍もそうだよな」
「その通り。ああいうのって、エンジニアの人とかと相談して作ってるんだけど、柚月先輩が使ってる拳銃も改造型なんだよね」
米屋の場合だと、自身のトリオンの少なさを補う為に、孤月特有のリーチを確保しつつ、トリオンコストの低い槍を使っている。
上に上がれば上がる程、自身の長所を活かす為、短所を補う為に改造型を使っている者も少なくない。
では、柚月のトリガーは何が改造されているのかと言うと──
「まず1つ目は、弾速をその都度自由に調整できるの」
「それって、射手みたいにって事ですか?」
「そうだけど、柚月先輩のはもっと精密な所まで弄れるよ」
「精密な所?」
「うん。発射された弾丸の弾速を、途中で速くしたり遅くしたりできるの」
撃つ前に、銃弾に何m先で速くして、何m先で遅くするという行為を、柚月のトリガーではできるのだ。
しかしここで、三雲の中で疑問が生まれる。
「……そんな凄い改造ができるのに、なんで皆使ってないんですか?」
「修、銃手の強みを言ってみろ」
「ええと、弾丸の射程を伸ばせる事。後は、攻撃までのモーションが速い……あっ!」
「そういう事だ」
烏丸の言葉で三雲は理解する。
弾速の設定をすると言う事は、射手同様、撃つまでの工程が1つ増えると言う事だ。
それに、射手にはセンスが必要だ。勿論、銃手も射手も一長一短だが、挫折して射手から銃手に移る者も多い。
そんな中で1番センスが必要とされているのが、バイパーなどの様なリアルタイムでのトリオン操作。多くの者がここで挫折をする。
撃つまでの速さが銃手の1番の強みとは限らないが、リアルタイムで弾速を設定できる程のトリオン操作能力があるなら、はなから銃手などやっていない。
「けど、撃つまでの過程が1つ多くなるのも事実ですよね。ならなんで国近先輩は銃手用トリガーを?」
「そこが柚月先輩の強さの2つ目よ。あの人は、その過程をほぼノータイムでやってるわ」
「そんな! ノータイムで!?」
小南の言葉に、三雲だけでなく、空閑も雨取も驚愕の色を表している。
しかしそれも無理は無い。飛んでいる途中で弾速を変えるという事は、射手が行っている弾速へのトリオンの振り分けより遥かに精密な事の筈だ。
それをほぼ一瞬でやり遂げる。それを可能にしているのが、小南が言っていた強さの2つ目。圧倒的なまでの、トリオン操作能力の高さなのである。
「さて、最後に3つ目。これが修が最初に言っていた合成弾に関係があるわ」
「銃手用のトリガーで合成弾を撃つとなると、あらかじめ合成弾専用の銃を使わなきゃいけないんだけど、柚月先輩は使ってないの」
宇佐美はそういうと、ホワイトボードにスラスラと文字を書いていく。
メイントリガー
アステロイド(改)(拳銃)
バイパー(改)(拳銃)
シールド
FREE TRIGGER
サブトリガー
アステロイド(改)(拳銃)
バイパー(改)(拳銃)
シールド
バックワーム
「特に変えてなければ、これが柚月先輩のトリガーセットだね」
宇佐美の言う通り、柚月のトリガーセットは、アステロイドとバイパー。合成弾の文字は無かった。
そもそも銃手に合成弾を使う者はあまりいない。
銃手用トリガーは、射手と違い、あらかじめ設定した2種類の弾しか撃てない。つまり、弾丸となる種類は、最大2種類までしかセット出来ないのだ。
合成弾専用銃では、合成弾以外が撃てなくなってしまう為、非常に融通が効かないのだ。戦況によって攻撃や援護にまわる銃手にとっては、融通が効かないのはあまり良いものとは言えない。
「という事は、国近先輩は合成弾を撃っていない? 僕の勘違いか……?」
「いや、修の言っている事は間違っていない。実際、柚月は合成弾を使っている」
木崎の言葉に、余計に分からなくなる三雲だが、1つの可能性が浮上する。
「もしかして、それも改造型トリガーの機能なんですか!?」
「御明答。細かく言うと、改造されてるのは銃弾だね」
「銃弾……」
その都度弾速を設定できる改造は、銃型トリガー自体に行っているが、合成弾を撃つ為に改造されているのは、そこから放たれる銃弾の方。トリオンを覆うカバーを改造しているのだ。
「この改造された銃弾はね、メインとサブの改造された銃弾どうしがぶつかると、合成弾になるの」
最近入隊した修達は知らないが、この改造トリガー自体は結構前からある。しかし、とある欠陥によりお蔵入りとなった為、柚月以外誰も使っていない。
というか、この改造がお蔵入りになった事によって、次に作られたのが、今の合成弾専用銃だ。
「欠陥なんてあるのか? 合成弾専用銃使わなくても合成弾が撃てるなら万々歳じゃん」
「アホねゆうま。じゃあ、聞くけど、自分が撃った弾に、その後撃った弾が当たると思う?」
その答えはNOだ。それにいち早く気づいたのは、雨取であった。
「同じ弾速の弾。後ろの弾が前に追いつく事なんてありえない。ですよね」
「おぉ〜。流石スナイパー! 千佳ちゃん正解!」
「ふむ。言われてみれば確かに。やるな千佳」
「えへへ」
宇佐美や空閑に褒められた事で、照れた雨取の顔がほんのり緩む。
そして、雨取の答えによって、三雲の中のピースが綺麗に埋まった。
「そうか。国近先輩には、弾1つ1つの速度を設定できるから……!」
「そういうこと〜。修くんと遊真くんも分かったみたいだね!」
改造型の銃弾だけでは、絶対に実現され無かった合成弾。しかし、柚月の改造型トリガーを使えば、それが可能になるというわけだ。
「つまり、この合成弾こそが、柚月先輩の強さの3つ目よ」
「なるほど。柚月先輩は、合成弾を
最初にも三雲が質問していたが、これだけ強力なトリガーを誰も使わない理由なんて明白だ。
使わないのではない。使えないのだ。
ノータイムで実行できるトリオン操作に、寸分たがわず同じ位置に弾丸を撃つ精度。どちらか片方でさえ、できる人は少ない。それを両方ともできる隊員など、ボーダー中を探しても恐らく柚月くらいだ。
これこそが、柚月がNo.1銃手と言われる所以。
ただ、入隊時、彼が銃手を選んだ理由は簡単だ。
才能があったからとか、そんなんじゃない。
ただ、その時FPSにハマっていたから、銃がかっこいいと思ったから。ただそれだけである。
前回、妹登場まで書くって言ってたのに、柚月の強さについてしか書けませんでした。すいません。
色々な作品書いてるけど、やっぱり、文字数感覚はまだ掴めませんね。