No.1銃手ですがオペレーターとしてA級を目指そうと思います   作:宮川アスカ

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ワートリの最新巻を買いに行きたい今日この頃。


第8話 玉狛第一VS玉狛第二②

『京介。千佳の方はどうだ?』

 

『既に目視できてるので問題ありません。意外と離れてなくて助かりました』

 

『分かった。ならそっちは任せる。宇佐美はダミービーコンの解析を頼む』

 

『了解』

 

『なら私達はこのビーコンの破壊ね』

 

『ああ。だが向こうはカメレオンを使ってる。ダミービーコンだけに気をとられるなよ』

 

「りょーかいっ!」

 

 小南はそう言うと、メテオラを使いダミービーコンの破壊にとりかかる。

 ダミービーコンは、内蔵させたトリオンを使い切ると効果を失うが、使用者が千佳である以上、通常よりも効果時間は長いと考えた方が良い。

 さらに、直接破壊しても効果は切れる為、目に見える範囲の物は破壊した方がオペレーターにかかる負担は軽減できる。

 操作権は、オペレーターかダミービーコンの使用者にあり、今回の場合は柚月が手動で操作を行っているのだが、操作と言っても複雑な動きは出来ない。故に、よく見ればレーダーの動きで判別は可能。

 この場合は、両者共にオペレーターの腕の見せどころである。

 

 しかし、ダミービーコンはレーダーを惑わすだけで、ターゲットを目視出来てしまえば、バックワーム同様意味は無い。

 三雲や空閑と違い、雨取はカメレオンを使っていない。

 機動力の差もあり、じわじわと烏丸との距離が縮まりつつある。このまま逃げ続けても、早い段階で追いつかれるのは明白だ。

 

 そして、2人の距離がおよそ50mに差し掛かった時。雨取が、対面する様に烏丸の方を向く。

 

(迎え撃つ気か? それとも、建物を狙って足場を崩す作戦か……)

 

『雨取ちゃん、座標は送った』

 

 烏丸は思考はするが、その足は止める事はない。すると、柚月の通信を後に、目の前にいた雨取の姿が一瞬で消える。

 

(千佳もカメレオン!? いや、ダミービーコンはまだ起動されている。まて、この消え方は──)

 

 次の瞬間、烏丸の目の前に雨取が急に出現する。

 

「テレポーターか!」

 

 しかし気づいた時にはもう遅い。烏丸が気づいた時には、雨取は既にテレポーターからイーグレットに持ち替えており、その銃口が烏丸の腹部を捉えていた。

 

 イーグレットを構えた雨取の脳内には、2日前、柚月にこの作戦を聞かされた時の言葉だけが鮮明に流れる。

 

 ──撃たなくていい。ただ、撃つという意識、殺気をぶつけろ。

 

(殺気を、ぶつける……!)

 

 直後、ゾクリという感覚が烏丸の身体を駆け巡る。

 殺らなければ殺られるという生物としての本能が、烏丸の身体を無意識に動かす。

 しかし、振り上げられた孤月が降りる瞬間、烏丸の脳裏に1つの思考が過ぎる。

 

(まて、千佳は人を撃てないはずじゃ……)

 

 その小さな不安要素が烏丸の判断を一瞬鈍らせる。

 

(悪いなとりまる。その一瞬の迷いが命取りだ)

 

「……まずは1点」

 

「! しまっ……!」

 

 判断が鈍った事による隙。その隙をつくかのように、カメレオンを解き、背後から現れた空閑のスコーピオンが烏丸のトリオン供給器官を的確に貫いた。

 

『トリオン供給器官破損。ベイルアウト』

 

 トリオン供給器官が破壊された事で烏丸がベイルアウトにより飛んでいく。

 戦闘慣れしている人間ほど殺気には敏感だ。更に、その優秀さ故に、瞬時に別の可能性が烏丸自身の判断を遅らせてしまったのである。

 

(ただ、上手いな。そんな中でも的確に雨取ちゃんの左腕を刈り取ってきた)

 

 空閑にやられると分かった瞬間、烏丸は瞬時に雨取の左腕を孤月で切り落としていた。

 スナイパーは、その大きな銃が故、両手を使って撃つのが基本だ。片腕が無くなった状態では、雨取にまともな狙撃は見込めない。

 狙撃が出来ない以上、自主的にベイルアウトするのが得策だが、柚月の作戦の都合上ダミービーコンの使用者である雨取を、ここでベイルアウトさせるわけにはいかないのだ。

 

 

(烏丸先輩がやられた。凄い……。ここまで本当に国近先輩の言った通りになってる)

 

 烏丸が飛んでいく光を見た三雲は、現状を確認する。

 小南と木崎はダミービーコンを破壊しつつ、三雲の動きに探りを入れている。

 

『修。とりまる先輩は片付けた。今からそっちに向かう』

 

『分かった。ダミービーコンも結構壊されて来てる。なるべく早く頼む』

 

『了解』

 

 ここからはスピードがものをいう。カメレオンは使用中、トリオンを消費する。三雲のトリオン量ではそう長くはもたない。さらにダミービーコンも数が減り、宇佐美の解析も大分進んでいる。

 ただ、柚月が上手くダミービーコンを操作している事で、三雲と空閑が早く合流出来る様に、小南と木崎の事を上手く誘導している。

 

 柚月の算段では、三雲と空閑が合流した後の最初の攻撃。ここで、戦いの勝敗が大きく決まる。

 

 

『すみません。千佳のテレポーターに気を取られて、遊真に気がつきませんでした』

 

 ベイルアウト後。作戦室から飛ばされて来た通信が、木崎達の耳に届く。

 

『ごめん私のミスだ。ダミービーコンの解析に集中しすぎて、とりまるくんの方に意識むけてなかった』

 

「いや、気にするな。宇佐美に解析を任せて京介を1人にした俺のミスでもある」

 

「千佳がテレポーターねぇ。まんまと一杯食わされたわね」

 

 テレポーターは、視線の方向に使い手のトリオン体を瞬間移動させるトリガーだ。

 止まっているものならまだしも、走っている烏丸の目の前にピンポイントで移動先を合わせるのは、まだ使いはじめて2日の雨取には不可能に等しい。

 ただ、決められた先に移動するだけなら可能だ。故に、その移動先を柚月が座標として雨取に送ったのだ。

 烏丸が進む距離と速度。雨取が移動する距離と、それにかかるインターバル。それら全てを瞬時に演算するだけでなく、さらにそれを、ダミービーコンを操作しながら行っているのだから化け物じみている。

 

「ダミービーコンの数も残り少ない。恐らくここらで一気に攻めてくるはずだ。そこを迎え撃つぞ」

 

「了解。それにしても、本当このビーコン鬱陶しいわね」

 

 そう言いながら、ふよふよと小南の方に向かってきたダミービーコンを双月で破壊しようとした時だ──

 

『小南! 正面来てる!』

 

「ッ!」

 

 レーダーに1つだけ速い勢いで小南に近づくトリオン反応を、宇佐美は見逃さなかった。

 

 急に目の前に現れたのは、スコーピオンを持った空閑。

 

(これは間に合わないわね)

 

 双月での受け止めは、間に合わないと瞬時に判断した小南はシールドに切り替える。

 

 素晴らしい判断能力の高さ。そう簡単に奇襲は決まらない。

 

 小南に向けて腕を伸ばした、空閑の持つスコーピオン。それを、小南がシールドを張った瞬時に

 

 

 ──手離した

 

 

「「!!」」

 

 

 空閑自身、1つの奇襲で不可能なのは初撃で分かった。ならば、2重に仕掛けるまでだ。

 

「スラスターON!」

 

 1つの力強い声と同時に、三雲がカメレオンから姿を現す。

 

(本命は修か!)

 

 スラスターのブーストを使い、一気に空閑の足下まで突っ込むと、空閑が下に落としたスコーピオンを掴む。

 そしてそのまま、レイガストで自身の身を守りながら、スコーピオンで小南の両足をぶった斬った。

 

 一方で木崎も、三雲がスコーピオンを掴むと同時に、突撃銃によるアステロイドを空閑へと発砲する。

 空閑もそれをシールドで防ぐが──

 

「メテオラ!」

 

「まじか……」

 

 足が切られ、視界が揺らいだにも関わらず、小南による置き土産が三雲と空閑を撃ち抜く。

 先程の烏丸もそうだったが、強い人間は決してただでは死なない。

 

『トリオン活動限界。ベイルアウト』

 

『トリオン活動限界。ベイルアウト』

 

『トリオン漏出過多。ベイルアウト』

 

 一瞬の攻防のすえ、小南、空閑、三雲がベイルアウトする。

 三雲は急所を回避したものの、カメレオン等でトリオンを使いすぎた。

 

「……上手いな」

 

 ベイルアウトにより、作戦室に戻ってきた三雲と空閑の話を聞いた柚月は、思わずそう呟く。

 今回の乱戦。恐らくMVPは木崎だろう。

 エースを囮に使った三雲と空閑による奇襲、小南のメテオラ。多くの素晴らしい判断が見られた中で、命運を分けたのな、木崎が空閑を攻撃した事だ。

 

 目の前で三雲が小南を落とそうとしているのだから、三雲を撃ちたくなるのが普通だ。

 しかし、木崎はあえて空閑を攻撃した。

 何故なら、三雲は放っておいてもトリオン切れでベイルアウトすると分かっていたからだ。一方、空閑はスコーピオンを使っている以上、シールドは片方しか使えない。故に、木崎が空閑にシールドを使わせれば、小南のメテオラがノーガードで刺さる。

 

『雨取ちゃん、ベイルアウトしてくれ』

 

 こうなってしまっては、雨取をベイルアウトさせる方が安全だ。

 これが他のスナイパーであれば、木崎が迂闊に動けば狙撃される為、膠着状態になるだろうが、雨取はそれが出来ない。

 木崎に見つかれば終わり。さらに腕を失っている以上、万が一トリオン切れで落ちても烏丸の得点だ。ならば、木崎が60m圏内に入る前に自主的にベイルアウトした方が安全だろう。

 

『分かりました』

 

 雨取がそう言い、ベイルアウトしたところで団体戦終了。

 

 玉狛第一の生存点も含め、最終スコアは4ー2。

 

 玉狛第一対玉狛第二の団体戦は、玉狛第一の勝利で幕を閉じたのであった。




と言うわけで、オリジナル団体戦。どうだったでしょうか?個人的には非常に難しかったです。
感想など教えてくれると非常にありがたいです。
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