No.1銃手ですがオペレーターとしてA級を目指そうと思います 作:宮川アスカ
あとは香取と遊真のグラスホッパーでの戦闘シーン。作画めっちゃ良かった。
三門市の中学校、高校には、多くのボーダー隊員が在学している。
トリオンというものは、歳をとる毎に段々と衰えていくものなのだ。故にボーダーの殆どは未成年と言っていい。
勿論、大学に籍を置いている者もいるが、中高と比べればその数は少ない。
そんな中、1番層があついのは高校生だろう。
普通校であり、殆どの隊員が在籍している三門市立第一高等学校。中高一貫の名門お嬢様学校である星輪女学院。成績優秀なボーダー隊員が多く、大学進学の際の選択肢を残したい隊員が通う六頴館高等学校。
勿論他にもあるが、ボーダーの高校生が通う学校を大きく分けると、この3校になるだろう。
そして、柚月が通うのは進学校。六頴館である。
「国近、今からボーダー本部行くんだが一緒にどうだ?」
放課後。柚月が教室を出ようとした所で、同じクラスの荒船に声をかけられる。
B級部隊、荒船隊の隊長。その体育会系の見た目の割に頭も良い。まさしく文武両道。
「荒船。すまん、今から生徒会室行くんだわ」
「生徒会!? お前が生徒会室に行くなんてどういう風の吹き回しだ?」
「おいおい、酷い言われようだな」
柚月の言葉を聞いた荒船は、ありえないとでも言いたさげな顔で、柚月の事を見る。
「まぁ、ちょっとね。用が済んだら本部に顔出すつもりだからそん時にでもまた」
「分かった。じゃあまたな」
一通り話し終えた後、荒船と分かれ、柚月は生徒会室へと足を運ぶ。
「おいーっす。……って、誰もいないじゃん」
生徒会室と書かれた扉を開けると、そこには誰の姿も見られない。
とは言え、誰かいないと駄目というわけでもない。適当な場所に荷物を置き、鞄から取り出したノートパソコンを開く。
六頴館では、最高学年の首席は生徒会に入らなくてはならないという、なんとも不思議なルールが存在する。
確かに内申は良くなるが、受験を控えている3年生にとってはありがた迷惑なことこの上ない。
そして、その学年1位というのが、この国近柚月という男なのである。この男、実は非常に頭が良い。
一般の生徒からしてみると、柚月が学年1位である事はありがたい話である。
先程も言ったが、受験期に生徒会などやってる暇なんてない。その分、ボーダー隊員である柚月は、ボーダー推薦で三門市立大学に進学できる。実際に柚月はそうするつもりである。
進路調査で担任にそう話した所、あまりいい顔はされなかったが……
それもそのはずだ。六頴館は進学校。これだけの頭脳があるのであれば、学校側からしてみれば、より良い大学へ行って欲しいのが本音だろう。
ただ別に柚月は勉強がしたいわけではない。この高校に入ったのだって、いつボーダーが無くなってもいいように、と思って入学しただけだ。
とまぁ、こんな感じで柚月は基本的に適当な性格だ。生徒会に入っているとはいえ、顔を出す事はほとんどない。先程の荒船の反応もそれが原因だ。
まぁ、周りも柚月がそういう人間だと知っている為、特に文句を言う者もいない。
では、そんな柚月がわざわざ生徒会に何しに来たのか。それは、とある映像を見る為だった。
その映像とは、B級部隊、吉里隊と間宮隊の対戦映像。この2部隊は、2月1日に行なわれる、B級ランク戦ラウンド1の玉狛第二の対戦相手なのである。
柚月としては、この後本部に行くことから、出来ればその前に映像を見ておきたかった。とは言え、1度玉狛支部を経由するのは遠回り。
その場所として生徒会室が選ばれたのは、言ってしまえば柚月の気まぐれだ。
まぁ、生徒会長と副会長がボーダーの人間という事で、気兼ねなく見れるという事もあるが。
「さて、どうやって戦うか……」
パソコンに流れる映像を見ながら、柚月は思考する。
因みに、玉狛第二の初戦、三雲はおやすみ。大規模進行の時の怪我がまだ万全ではない為だ。
そんな中で柚月の提案により、玉狛第一との団体戦を行ってしまい、特に大きな問題は無かったが、医者にはこっぴどく叱られ、ドクターストップを受けた記憶が、柚月の頭に鮮明に蘇り、思わず苦笑いをしてしまう。
三雲はあまり気にしていない様だったが、なんとも申し訳ない話である。
さてさて、その事は一旦置いといて、柚月がログをみて思った事が1つある。
「うーん。これ作戦いらんな。てかそっちの方が合理的だ」
吉里隊と間宮隊はB級といっても下位グループだ。別に侮るつもりは無いが、単純な力量の差が明白な以上、下手に作戦を考えるより空閑で正面突破する方が圧倒的に楽だ。なら下手に小細工して、手の内を晒す必要もないだろう。
柚月はパソコンを閉じ、大きな欠伸を1つ。暖房の影響もあってか、眠気が襲ってくる。意識が遠のいて行く中で、なんとなく、あの団体戦の日の記憶が頭に流れるのを感じた。
「いやー、負けた負けた。ごめんな3人とも」
「いやいや。レイジさん達相手にこの記録は誇って良いと思うよ」
対戦も終わり、リビングに集まっていると、ぼんち揚げを食べながら、迅がそう言ってくる。
そんな中、ふと机の上に乗ったお皿を見て、柚月は疑問に思う。
「誰かお客さんでも来てたんですか?」
お皿の数は4つ。おそらく対戦を見ていたのは、林藤と迅と陽太郎。そうなると1つ余るはずだ。
「ああ、特別ゲストが見に来てたんだけど、あんま気にしなくていいよ。柚月には近々話すから。それで? メガネくん達はどうだった?」
「正直俺も驚きましたよ。特に最後の乱戦で見せたアイデアには驚きました。俺は空閑くんを囮に使う事と、小南の方を落とす事しか指示していませんでしたから。3人とも俺の予想をいい方に超えてくれました」
「それなんだけど、特に最後の乱戦。柚月先輩にしては随分と賭けにでた作戦だったんじゃないの?」
柚月の答えに続くように、小南が質問をする。
小南の言うとおり、上手く行ったから良いものの、今回の作戦は1つでもミスれば失敗に終わるものだ。
「まぁ、普通じゃやらない作戦だからな。ただ、今回の場合は実力差が離れすぎだ。後手後手に回っても1点も取れずに敗北するだけ。なら、若干賭けになっても点を拾いにいくべきだろ」
「まぁ、実際今回の戦い、最後にレイジが修を攻撃してたら遊真が残って、玉狛第一が負けてた可能性だってあるしな。それに千佳の腕が残ってりゃ、ほぼ確実だ」
林藤は口にくわえていた煙草を手に持ち、ハハッと笑う。
B級ランク戦では、下位、中位、上位とグループ分けされており、今回の様な圧倒的な実力差での戦闘と言うのはあまりない。
それに、ランク戦は三つ巴か四つ巴だ。その場合、この様な無理な戦いをする必要はあまりない。
しかし今回は、そのどちらとも当てはまらない。
ランク戦で上位に上がる為に必要なのは、生き残る事ではなく点を取りにいく事だ。
同じ負けでも、勝率の高い方を取る。柚月からしてみれば、こんなものは作戦の基本だ。
「それで、柚月はもう修達の仲間なのか?」
今回の団体戦についてあれこれ話していると、雷神丸に乗った陽太郎が、そんな事を聞いてくる。
「さあ? どうだろうね。それを決めるのは三雲くん達だ」
柚月の中では、三雲達に対する答えは既に出ている。あとは、今回の団体戦で三雲達がどう思ったかだ。
そんな柚月の言葉を受け、三雲は空閑と雨取の事を見る。正直、三雲の中では答えはもう決まってる。しかし彼らはチームだ。仲間の意見は必要なもの。
「俺は良いと思うぞ。作戦は然る事乍ら、オペレーターとしての技術も高いとみた。それに何より柚月先輩は良い人だしな」
「修くん、私も良いと思う。柚月さんは優しいし、教えるの上手だし」
2人の意見を聞いて、三雲は少し安心するも、力強く頷く。
「ああ、そうだな。国近先輩、改めてオペレーターとして玉狛第二に加入してください!」
「了解した。こちらこそよろしく頼む。やるからには絶対にA級に上がるぞ」
柚月はそう言うと、3人と拳を合わせた。
うっすらと視界が広がっていくのが分かる。まだぼやけているものの、脳が段々と覚醒していく。
「……やべ。寝落ちしてたか」
柚月が目を覚ますと、もう既に外は暗くなっていた。
未だ、起ききっていない脳を使いながら、本部に向かう為の準備を始めると、聞き馴染みのある声が聞こえてくる。
「まったく。久しぶりに生徒会に来たと思えば居眠りとは」
声の方向を見ると、蔵内と綾辻の姿があった。
B級部隊の王子隊の射手であり、我らが生徒会長でもある蔵内和紀。紳士。
A級5位嵐山隊のオペレーターであり、副会長でとある綾辻遥。芸術意外完璧なマドンナ系女子。
「蔵内、つじはる。……おはよう。飴いる?」
「わぁ! ありがとうございます!」
ゴソゴソと鞄から飴を取り出すと、綾辻が嬉しそうに飴を貰う。一方の蔵内も、小さくため息をつきながらも飴を受け取る。
「柚月先輩、パソコンで作業してたみたいですけど、何してたんですか?」
「ん? いやぁ、ちょっとね」
「それより、教室を閉める時間だ。俺達はこれから本部に行くつもりだけど、国近も行くか?」
「おっ、行く行く〜」
柚月はそう言うと荷物を纏める。
1月も終盤。寒い冬の夜空の下に映るのは、楽しそうに歩く3人の人影だ。
サブタイトル思いつかないから、思いついたら適当につけときますね。