流れて漂い……島国に辿り着いた私……トートかジェフティか……
いつの間にか鳥になれるようになっていた私は、木の枝で眠り、木の枝で空を眺めるようになっていた。
新種の鳥だか何だかで一時期騒ぎになり、研究者を名乗る人間がやって来る度に私はその場から立ち去った。
そしてようやく安息の地に辿り着いた。
どこの公園だか何だか……木の枝に約5年、未だに研究者を名乗る人間はやって来ない。
私は静かに空を眺める……ついでにやって来る人間も。
オーフィス?アイツからの監視は撒いたさ……アイツからの視線はもう感じられない。
さて、今日はどんな1日になるのやら……
うん万年も生きてきて、私はだいぶ淡白な性格になってしまった様だ。
今では彼女の事を思い出すと少々泣きそうになってくるが、良い思い出だったと笑い飛ばせたりもする。
これが誰かに殺されただとか不幸な事故だったらどうだろう、私は塞ぎ込んで何も考えてないね。空も見てないだろう。
しかし現実はどうだろう、彼女は寿命で死んだのだ。それも104だなんて普通の人間よりもかなり長生きだ。
私はかなり長生きしてきてこう思っている。彼女が幸せだったかはこの私であっても分からないが、私は彼女が最期まで笑顔だったのを覚えているとね。
そんなわけで私は思い出の空を見るのと同時に誕生してからここまで成長してきた人間を観察するのもひとつの趣味のひとつになっていた。
最初は一人にしてくれ……と随分と投げやりな理由から文字を教えたりだなんてしたが、まあ案外人間というのは面白い。
それ、来たぞ……
人間は人間以外も愛す事もあるらしい、人間は、人間以外も家族として迎える。
今来た人間も、堕天使だかを家族に迎えようと準備している……接吻でもする気か?
若いというのは良いものだ。
さて……若い者達はそっとしておいて私は空を見るとしようか……
はて、何か妙だな……
ん?ああ、先程来た人間と堕天使なのだがな、少し様子がおかしい。
堕天使の奴光の槍なぞ持って……あれでは人間を殺そうとしている様にしか……待てよ?…………殺す?
あ奴、人間を殺そうとしているのか?
それは……頂けんな。
どれ、人間を手助けせねば……
眩しく光る槍を持った女は、そのまま青年を刺してしまった。
「悪く思わないで頂戴ね……」
女はニヤリと笑うが、その笑みも直ぐに冷めてしまう。
「あ~あ……出遅れたか……」
この声とその主によって……
人間を助けようと行動に移した時には既に遅く、人間は刺されてしまった。
「あ~あ……出遅れたか……」
ん?喋れるのかって?
まあ、大分前に人間の真似をしていたら喋り方は思い出してしまった。
木の枝から地面への着々早々多数の質問が私に襲い掛かってきた。
Q「あなた何者?」
まあ、これは至極簡単だろう
A「年老いた鳥ですよ」
間違ってない。老いてはいないが……
Q「何故気配がなかったの?」
これも割と簡単だ。
A「それは、この老いぼれの……知恵と経験の賜物ですよ」
これも間違いではない。
何故なら私は人間に存在がばれないように気配を消し続けていたし、それ以前に力でどうにかなった。
知恵と経験である。
Q「消えてくれるかしら」
勿論、無論、言うまでもなく
A「それは無理な相談ですな……」
槍が大量に飛んできたので時を操り、欠伸をしつつ再び木の枝に登る。
助けようと思った人間は死んじまったし、もうこれ以上バカな真似をする必要は無いね。
「消えた!?そんな馬鹿な……どこにっ何処に隠れた!!!」
煩いな……
なんてこった、私は大分機嫌が変わりやすい短気な性格の様だ。
人間の楽しそうなドンチャン騒ぎにはビクともしなかった私の耳は、たかが堕天使一匹の蚊のような鳴き声に大きく反応し、こうして私に苛々を溜め込ませている。
今にも私は怒りのままに死者の書で彼女を生きたまま最期の審判にかけてしまいそうだ。
いかんいかん、自重せねば……
「どこっグッッ」
…………おっとこれは……どうしたことか?
何ァ故私は堕天使にアイアンクローなぞ……
「不愉快だ……」
これは私の声か?
おお、どうやら私はご立腹の様子……怒りのままにこの堕天使を地面に叩き付けて問題はあるか?いや、無い。
「グァッッア!?」
おっと……自業自得とは言えどこれは痛そう……
まあ、自業自得だし……このまま力を解放しても問題無いかな。
「ギャァァァァァアッ!?」
おお……足がもげちゃった……
やっぱり足をハサミで切断されるなんて、経験したくないよね。
まあ、私は鳥だったときにうっかり捕まってチョン切られかけた経験あるけどね。
切られずに衝撃だけで……まぁ少々痛いだけだったけど。
それが力となって今堕天使の足をチョンパした訳だ。
いやぁ……グロイグロイ…………ん?
「あららぁ……逃げたかぁ……」
目を反らした隙に逃げられてしまった。
「どうするかなぁ……追い討ちするかなぁ……」
しかし……人間死んでるし……堕天使の返り血浴びちまってるしな……何が寄ってくるやら……
そうだな……例えば人間、堕天使と来れば天使か悪魔くらいだが……この紙の魔法陣は悪魔だなぁ……うむ、悪魔だな。面倒だ。
こりゃ本気でどうするかなぁ……
「こりゃ、逃げる一択だな……」
「待ちなさい」
そうはいかない辺り、この世界は面倒臭く造られたな……と、思ってしまう。
まあ、そんなの私には関係ないがね。いや、割とマジで。
鳥になって逃げれば良い、簡単な事だ。
「ま、待ちなさい!!!」
な、簡単だろ?
悪魔には私が空へと舞い上がり消えたように見えているだろうが、実際のところは木の枝の定位置に戻っただけだ。
まあ、これでもう悪魔に私を探し出すことはできない。
少なくとも私から姿を現さない限りね。
そこら辺は適当にちょちょいとね。