やあ、今日も空が綺麗だ……トートもといジェフティだよ……
さていつも通り私は鳥の姿で木の枝の上で人間を見ながら空を眺めている訳だが……
最近妙なんだよな……これが。
淀んだ空気が蔓延してきてると言うか……そろそろ血生臭い妙な事件が起きそうでな。
妙と言えばこの間の堕天使に殺された人間と途中から出てきた悪魔だが……悪魔はあのあと人間の死骸を何処かに持って行ってしまったが、あれをどうするつもりなんだろうな。
いや、まあ……分かってはいるんだが……どうも私は最近の流行りってやつに疎くてね。
これでも私はオジサンだ。
…………それはさておき、まぁ殺された筈の人間が生きてる事について触れるとしようか。
最近、悪魔の間でリアルチェスが流行っているらしい。
なんだったか……そう、レーティングゲーム……だったか?
で、イービルピース……だったか?そいつはどんな種族でも悪魔に転生させることができるだなんて言うトンデモ性能を持つ駒で、まぁ、つまるところだ、人間に使ったんだろうな……駒を。
晴れて人げ……私の暇潰し対象になっている訳だしいつまでも人間じゃアレだな……そうだな……なんとなくオーフィスに似た感じが漂ってるしな……弱いドラゴンで良いか。
さて、弱いドラゴンは悪魔になった訳だが……どうやら弱いドラゴンは自分が悪魔になっちまったことに気づいていない様だ。
悪魔も悪いヤツだよなぁ……勝手に転生させておいて説明ナシ、これじゃあはぐれた悪魔として天使とか祓魔バカとか堕天使に滅されるぞ……?
ほら、あんな感じ……に?……おぉ!?
殺されかけてるし……大丈夫かね、あれ……
ん~……大丈夫じゃないな、こりゃ……
「どれ、元人間の弱いドラゴン君を助けてやるかね……」
堕天使は悪魔を滅するべく光の槍をその手に握り締め、悪魔へとにじり寄った。
光の槍が悪魔を貫こうとしたその刹那、ナニかが堕天使を吹き飛ばした。
「な……何……?」
悪魔が堕天使が吹き飛んだその先を見据えると、そこには奇妙な人型の生物(?)が堕天使を踏みつけていた。
「悪いね、この悪魔君は元人間だ……人間となれば元であろうが私の教え子……永智の鳥の弟子だ」
永智の鳥……悪魔はそう復唱する。
その生物(?)は巨大な鷲の様だが生物感のしない足と翼、人間の頭、体、腕で構成されており、普通に人間の着る様なパーカーやジーパンを着用していた。
「ぐっ……永智の鳥……だと!?」
堕天使は何とか起き上がると、人型の生物(?)を凝視した。
「あ、シャラップ ユー……喋んな、耳障り」
人型の生物は堕天使を軽く蹴飛ばした。
「ぐっ……!?」
堕天使は近くの石垣に衝突し、石垣を破壊した。
「やあ、弱いドラゴン君……悪魔になった気分はどうだい……っと、君はまだ悪魔になった事を知らないんだったかな?」
弱いドラゴン?悪魔?コイツは何だ?悪魔は混乱していた。
しかし人型の生物、つまり神の書記 トート、永智の鳥 ジェフティはそんな悪魔を置いて話続け……はしなかった。
「まぁ、私は相手の思考が読めるしね……」
無限の龍 オーフィスの様な事を言うジェフティ……
しかしながらオーフィスが意思を読めるのは、ジェフティ限定である。
「それにお迎えが来たみたいだよん」
悪魔がふと振り返ると、そこには……
「今度こそ着いてきてもらうわよ……」
「せ、先輩?」
「あ゙ぁ~……それは無理な話だねェ……」
そう言うとジェフティは逃げ出そうとした堕天使の頭を(手で)掴み、軽くシェイクした。
「グッ…ガッ………ウググッ……」
「う~ん……どうしてくれようかな、コレ……」
ジェフティは一頻り堕天使を振り回すと、堕天使を空高く持ち上げた。
ここのシーンだけで嫌なビジョンが見えた人は少なくないだろう。
「グッ……ウロボロス……ドラ…ゴン……オーフィスと………対になる者…………!伝えなければ……!!!」
途切れ途切れに自分を奮い起たせる様に言う堕天使……しかし現実は非情である。
「ふ~ん……誰に?」
「アザゼル様にだ……永智の鳥の存在を、伝えるのだ!!!」
「あぁ、そいつは無理だ……」
ジェフティの冷たい声……そしてグシャッ……と、何かが潰れる音……厳密には骨と肉が潰れる音がした。
「悪いね、神の書記は神が嫌いなんだ……つまるところ天使も堕天使も嫌いなんだよねぇ……ごめんねェ、思いっきり独断と偏見だねェ……」
本気で悪いとは欠片も思っていない。そんな声……
ジェフティは堕天使の肉塊を見ると、流し目で集まってきた悪魔達をチラ見した。
「もう無責任な真似はやめて欲しいな……」
じゃないと……そう続けたジェフティは堕天使だった肉塊をプランプランと悪魔のいる方向につき出した。
堕天使のなれの果てを見た悪魔達は、犬猿の仲とは言えど、顔を歪めた。
「そんな顔するけど……彼はこうなるところだったんだよね……う~ん、恩知らずってやつ?非常に残念!」
いつの間にか堕天使だった肉塊は灰になっていた。
明らかにジェフティの犯行だが、ジェフティにこの様な芸当ができたのは、過去に燃やされた経験があるからである。かなり苦労したのだ。
「昔の人間はそうじゃなかったのにねぇ……ま、その時私あんまりフレンドリーじゃなかったけど……」
ジェフティが大きく腕を回すと、いつの間にか妙な人型の生物から人間の姿になっていた。
「最近は肩が凝る……そう言えば昔はよくアイツが肩を揉んでくれていたね…………だからと言って会いたいとは思わないけど」
クルリと後ろを向くと、ジェフティは消えていた。