イキリTS転生者は純真な幼女にコマされる。   作:さかまき

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2 イキリTS転生者は純真な幼女にコマされた

「――いや、まったく助かりました!」

 

 年老いた老人が、村の代表を名乗りミヤに挨拶をしていた。

 ここは村の一番大きな建物にある食堂――のような場所。大人数で食事を摂ることができるが、食堂というよりはパーティ会場のほうが近いかもしれない。

 この世界のことを全くしらないミヤは、そんな感想を抱いていた。

 

「お姉ちゃん、すごいんだよ!」

 

 座り込んで代表――村長で問題ないだろう――彼の話を聞いていたミヤの腰に、マオが抱きついている。可愛らしいな、と思うもののミヤは一向にそれを気にせず村長と話しをしていた。

 

「ご無事で何よりだよ」

 

 現在ミヤは村長にこの場所へ通されて歓待を受けている。若干年老いた壮年の女性たちがせわしなく動き回り、料理を用意してくれている。

 ここに来るまで、子供の姿はマオ以外に見かけなかったな、と頭の片隅でミヤは考えていた。

 

「本当に助かりました。貴方は我々の命の恩人です」

 

「いやいや、いいんだよ。それにしても――」

 

 そういいながら、ミヤの脳裏に浮かんだのは、“こんな辺鄙な村”という単語だった。ミヤは大変失礼な性格であった。が、しかし、きちんとコミュニケーションを取る相手には、言葉は選べるタイプであった。

 

「なんですかな?」

 

「ああ、いや――ここはどういう場所なんですか? 食堂、って感じもしませんけど」

 

 即座に話題を変える。ワイバーンはまとめてしばき倒した以上、今のミヤの興味はこの村だ。山奥の辺鄙な村。そんな印象を受ける場所で、この建物は非常に豪勢な作りをしていた。

 素朴な木の家屋であるが、あきらかに装飾が都会の大きい城とか、屋敷に使われるものが見受けられる。何より、村長の服装もそうだが、貧しさが感じられない。

 若干くたびれて入るものの、綺麗に洗濯された清潔なもので、こんな田舎の村にはそぐわない。

 

 不思議な場所だ――とミヤは思った。

 

「それは、まずはこの村の役割から説明したほうがいいでしょうな」

 

 そう言って、料理が運ばれてきたのを契機に、村長も席につく。マオも、なんでもない様子でミヤの膝の上によじ登り、ぐっと体を預けてきた。

 ニコニコと、笑顔でミヤを見上げてくる。それに笑みを返しながら、ミヤは村長の話に耳を傾けた。

 

「――ここは、王族の方もいらっしゃる、古い歴史を持つ湯治場なのです」

 

「なるほど、温泉宿」

 

 それも、王族というからには偉いのだろう。そりゃあこれだけ豪勢かつ素朴な作りをしているというものだ。王族の隠れ家、というやつだろうか。

 

「初代光王様が世界を統一されてから、この地は光王様の安らぎの場所として連綿と続いてきいました。我が国で、最も長い歴史を持つ湯治場と言われています」

 

 ――光王。世界統一。

 色々と気になる単語が出てきたのを心のなかでメモしつつ、今は目の前の食事、村長との会話だと箸を伸ばしつつ続きを促す。

 

「この場所も、そんな王族の方々を歓待するための場所として用意されているのです。時折、王族以外の方もいらっしゃいますが、基本的には王族の方々のための場所ですね」

 

「なるほど」

 

「現に、明後日には第四王女ミリーシャ様がいらっしゃいます。我々も、歓待に気合を入れていたのですが――」

 

「明後日って――本当にギリギリセーフじゃん」

 

 というか、そんなときにこうして自分は歓待を受けていていいのだろうか、という気もする。とはいえ、村の危機を救い、王女の危機も救ったのだから、それくらいの歓待は当然なのかもしれないが。

 

「何、この村は王族のための村、この程度ではどうということはありません」

 

 気にするな、という村長にこちらこそと礼をいいつつ、ともかくミヤは舌鼓を打つ。

 

(遺跡の料理より全然美味しいな……というかちょっと故郷の味を思い出す……)

 

 長く食べていなかった温かみのある食事、それを噛み締める。どこか故郷――というか現代の味を思い出させるそれは、ミヤにとっては絶品以外の何物でもなかった。

 

 外の世界に出てくるまでがひどすぎた、とも言う。

 ――ミヤは、満足の行く魔術が使えるようになるまで、ある遺跡で暮らしていたのだ。そこはベッドが石製で固く、食事がどういうわけか出てくるのだが、どれもまずかった。

 

「そうです、ミリーシャ様がいらっしゃるまで二日猶予があります。明日には街に帰るにしても、今日はゆっくり休まれるのがよいのではないでしょうか」

 

「……うん、つまり?」

 

 ゆっくり休んでいけ、という提案はまったくもってありがたい提案だ。しかし、この村ではその意味が少し変わってくる。なにせここは湯治場、温泉があるのだ。

 

「はい、我が村自慢の温泉を、堪能していただければと」

 

「本当ですか!?」

 

 思わず食い気味に乗り出して、膝に乗っていたマオを胸で押しつぶしてしまいそうに成った。この胸部はこれまでの人生にはなかったものなので、未だに扱いに慣れていない。

 

「ふおおおおおお」

 

 何やらすごい声を出すマオに謝罪しながら、ミヤは改めて問いかける。

 村長は、快くうなずいてくれた。

 

「やった!」

 

 ――これまで、ミヤはこの世界に来てから風呂に入っていない。ずっと水属性魔術――ミヤは最上級魔術の無詠唱は光属性でしかできないが、他の属性も詠唱すれば使用できる――で体を洗うしかできていなかったのだ。

 ちゃんとした温泉に入れる、それも王族御用達。本当に願ってもない提案である。

 

「ミヤ様はそれだけのことをしたのです、誇ってくだされ」

 

「いやいや、そんな――」

 

 なんて会話をしながら、ふと自分の膝に乗っているマオに視線を向ける。先程胸で押しつぶしそうになってから、じっと自分のことを見つめていた。

 まだ怒っているのだろうか――そう考えて、しかしそうではなさそうだと表情から察する。

 そして――

 

「……一緒に入る?」

 

 ふと、マオにそう提案した。

 

「いいの!?」

 

「大丈夫?」

 

 一応、村長に確認する。王族の入るような風呂だ。不敬とかなんとか、気にする必要があるかもしれない。

 

「ええもちろん、王族の方がいらっしゃらないときは、村のものが使っていますから」

 

 ――返答に、結構適当だな、と思いつつ、

 

「やったー! ミヤお姉ちゃんと一緒にお風呂―!」

 

「んっ、そんなに嬉しいの……?」

 

 そういって、ばっと飛びついてくるマオに、ミヤはくすぐったさを覚えながらも頭を撫でる。微笑ましい子供の様子に、どこか母性をくすぐられるような――

 ――いや、ミヤは元男性である、幾らなんでも母性を覚えるのは早すぎる。しかし……などと考えながら、しかしミヤは気がついていなかった。

 

 この選択が、彼女の人生を大きく変えるものになる、と。

 

 いや、そうではない。

 

 この選択こそが、

 

 

 彼女の人生の最も大きな分岐点だと、このときはまだ、思ってもいなかったのだ――――

 

 

 <><><>

 

 

 ――小鳥のさえずりとともに、少女は目を覚ます。

 気だるげな朝、重たい視界と、どうにも動かない体。シーツの擦れる音がする。ここは――? 思い出せない、寝ぼけているのか、視界が定まらない。

 というよりも、意識が浮上していることに、一瞬少女は気が付かなかった。

 

 ――そんな意識に急に吹き付けられたのは、寒さだった。

 肌寒い、布団をかぶって寝ているはずなのに? 異世界だから? いや、この世界の文化レベルはそこまで低くない、第一この場所はあの豪華な屋敷の一室で――

 

 ――いや、そもそもどうしてその一室に自分はいるのだ。

 

 第一、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ?

 

 記憶を、記憶をたどる。そもそも、自分は風呂に入ったはずなのだ。体を清めて、疲れを洗い流したはずなのだ。だというのに、無性に気だるい。

 起き上がりたくない。

 

 状況が把握できないのである。なんとか寒さに引きずりあげられた意識で状況を確認する。自分は、ミヤ。異世界転生してきた元現代人。

 異世界転生のテンプレに従い、初めての依頼で山奥の村を助けた――まではよかった。

 

 その後、その村で温泉を堪能して、そう、堪能した。

 ――そこからの記憶がない。

 別に酒が入っていたわけではない、なにか特別なことをした覚えもない。だが――

 

 ――と、自分の体を見下ろして、

 

 そして、

 

 

 自分が何も身に着けていないことに気がついた。

 

 

「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――へ?」

 

 疑問符。

 ハテナマークが無数に浮かぶ。

 豊満な胸が、幼さが残るが肉感的な肢体が、全て顕になっている。思わず視界を周囲に向ける。ベッドの済に、バスローブのようなものが見えた。そうだ、風呂に入る前にこれに着替えるようにとおばさんに渡された覚えがある。

 それを、マオと二人で受け取って――

 

 そう、マオだ。

 

 マオ――――いや、

 

「マオ様」

 

 何故か、脳内で彼女の呼び名がそう固定されていた。疑問に思うはずが、それよりも早く――刺激が、あった。

 

 

「――んぁっ♥」

 

 

 聞いたこともない声とともに、体中がゾクゾクと感じたこともない刺激で震えた。疑問符、疑問符、疑問符。ハテナマークハテナマーク、何が起きているのかわからない。

 何かが体に触れている。視線を向けた、すぐに分かった。

 

 幼い少女の手だ。

 

 自分の胸に沈んでいきそうなほどの小さな手が、――マオ様の手が、自分の胸を掴んでいる。

 

「え? え? え????」

 

 そして、マオ様も服を身に着けていなかった。幼気な肢体。成長途中ではあるが、決して未成熟というわけではない、少しだけ女性を感じさせる体つき。

 そんな少女が、ミヤに抱きついていた。甘えるように、もてあそぶように。

 

「んぅ……ミヤおねえちゃん……もっと、しよ?」

 

 寝ぼけた少女、甘えるような声で、しかし。

 

 

 マオ様はミヤを軽々と押し倒す。

 

 

 なぜ? 抵抗できなかったのだ。

 ミヤは、マオ様に、――完全に、心の底から屈服している。

 

 いや、

 

「――――はい♥」

 

 

 陥落している。

 

 

 自分でも思っても見なかったような女の声に、ミヤは即座に驚愕しながらも、目を覚ましつつあるマオ様に――獣に向かって、懇願する。

 

「ま、まってマオ、待って――!」

 

「んもー、おねえちゃん、マオ様、でしょ?」

 

「はひっ」

 

 口ほどにもなかった。

 即座に組み伏せられたミヤは、そこでようやく自覚する。

 

 思い出した、とも言う。

 

 昨日の夜、マオと二人で入浴し、最初はマオの女体に若干の邪な考えを抱きつつ感動していたミヤは、しかし気がつけば――マオに背中を洗われた辺りから、自身の女体を蹂躙されていた。

 そもそも女性経験がない元男。そもそも敏感すぎたミヤの体。

 

 そして、

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 これら三つを持って、気がつけばミヤはマオのものになることを誓っていた。

 マオ様、マオ様、ご主人様。

 とんでもないものを目覚めさせ、更にはその餌食と成ったミヤは、かくしてここに()()()。完膚なきまでに、女性として、いやそもそも人間として、一つ下のランクに。

 

「じゃあ、ミヤおねえちゃん――――続き、しよっか?」

 

「あ、あ、あ、あ、あ――――」

 

 ――異世界転生者ミヤは、イキリチート転生者である。正直なところ、あそこで相対したゴロツキなどモブか何かとしか考えない、助けた村の村長にしたって、ミヤにとってはお助けNPC程度の感覚である。

 そんなミヤにとって、マオは言ってしまえばヒロイン。それも自分を慕う女の子の中のひとりだろう、という感覚だった。

 

 それが、

 

 今、

 

 そんなミヤの認識が、ガラガラと音を立てて崩れていく。

 

 これは、そう――

 

 

「やぁ――――――♥」

 

 

 ――イキリTS転生者が、純真な幼女にコマされる物語だ。

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