イキリTS転生者は純真な幼女にコマされる。   作:さかまき

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5 イキリ転生者は説明回は飛ばす主義だった

「――最上級魔術について話をするためには、この世界の歴史について語らなくてはならないだろうな」

 

 ああこれは、説明回というやつだ。

 ミヤは直感した。説明回は世界観を知るためには重要だが、ミヤは基本的に読み飛ばしていた。ある程度は読むがなんとなくふんわりと理解できればそれでいいのだ。

 話の終わりか次の話あたりでまとめてあれば最高だと思う。

 

 ――スイッチが入ってしまったミヤの思考は散漫だった。

 なんだったらこの回は読まなくても次でマオがまとめてくれそうだな、とかそんな事をおもったが、ミヤにはそもそもこの回というものがなにか解らなかった。

 

「かつて、この世界には魔王と呼ばれる存在が居た。人類の敵だった。この魔王を討伐したのが、初代光王様、今この世界の土台とも言うべき方だ」

 

「勇者かぁ」

 

「すごいんだよ!」

 

 ぴょんとマオがはしゃぐ。

 はしゃぎ過ぎじゃないだろうかというほどはしゃぐ。少しだけミヤはジェラシーを抱いた。

 

「この初代光王様が使っていたのが、光属性の最上級魔術なんだ」

 

「そして、その光王様以外に使える人間はいない?」

 

「察しが良いな。王家の人間は光属性の魔術を使えるが、これまでどれだけ名君と呼ばれたものも、使えたのは上級魔術までだった」

 

 ――まぁ、これもよくある話だ。かつての勇者の代名詞が、今の王家の権勢になっているのだろう。

 

「ということは、王家ってのはすごい権力を持ってるんだね」

 

「それも知らないのか? ……まぁ、君に事情があることは分かる、今は詮索しないでおこう。話が逸れるしな。――そのとおり、今この大陸は、光王国が実質支配しているといっても過言ではない」

 

 恐るべきことに、統一国家である。それも聞いた感じこれまで一度として分裂したこともない、かなりの権威のある王家なのだろう。

 ――とすると、そんな王家の王女が愛称で呼ぶような騎士が単独でここまで来るというのは、色々と察するものがあるが、ミヤは指摘しないことにした。

 この説明が終わった後に不敵にも指摘するつもりだったからだ。

 

「歴史上一人しか使えるものの居なかった光属性の最上級魔術を使える君は、どうあっても世界にとって大きな変革をもたらす存在である、ということは解ってもらえただろうか」

 

「それはまぁ」

 

「おねえちゃんおっきいもんねぇ」

 

「何がだ!?」

 

 えへへ、と笑いながら言うマオに、ファルが過剰反応した。いや、何がなど言うまでもないだろうが、言わずともミヤはとても恥ずかしかった。

 赤面して顔を伏せつつ、なんとか話題を変えようと試みる。

 

「そ、それで!」

 

「おねえちゃんすごいんだよー! 私の顔よりおっきいのー!」

 

「そ、そんなにか……?」

 

「それで!!!」

 

 叫んだ。

 

「すまん」

 

「ごめんなさーい」

 

 ――しかし叫んだはいいものの、一瞬思考がとっちらかったせいで何を話そうとしたのかど忘れしてしまった。

 

「……大丈夫か?」

 

「大丈夫……」

 

 心配するファルをさておいて、必死にミヤは考える。このまま黙っていると、また大きさトークに移行しそうだったからだ。

 そしてなんとか思い出した。

 

「そう、魔術! 魔術っていうのは、それぞれ六つの属性があって、下級から最上級まで別れてるっていうのは、あってるよね!」

 

「お、おう……あってるぞ。そこは知ってるんだな」

 

「……ずっとその検証ばっかりしてたからね」

 

 遠い過去、チートで無双するために必死こいて魔術を検証し、身につけていたあの頃を思い出す。この世界の魔術にはやっかいな特性がある。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そしてこの詠唱は、なんなら即興でも構わないのだ。これがまた難しい。

 

「すでに知っていると思うが、この世界の魔術は詠唱の長さで下級から最上級まで分けられる。まぁ、最上級を使えるのは伝説の魔族と光王様以外にいないのだが」

 

「下級、中級、上級の目安は()()()で決まる。でいいんだよね、息継ぎをして次の詠唱をする度に、等級が変わってくる」

 

「――発動難易度もな」

 

 詠唱をすれば息が切れる。だから、息継ぎをして次の詠唱をする。そしてここがこの世界における魔術師の腕の見せ所だ。詠唱が一瞬でも途切れると、魔力が乱れる。この魔力をうまく制御して次の詠唱につなげるには、技術の習熟と完成の鋭さが必要だ。

 一般的に、一つの中級魔術を使えるように鳴るまで三年かかると言われる。上級ならば十年。()()()()()()()()()()()()だ。

 

 なお、これは抜け道なのだが、息継ぎさえしなければどんな長い詠唱でも下級と変わらない。そして詠唱の長さで魔術は効果を変えるので、下手すれば上級クラスの効果の魔術を下級で使用することも可能だ。

 

 とはいえミヤはそれをかっこよくないと切り捨てた。抜け道を突くのは転生チートの花というやつだが、必死に息継ぎをしないようにしながらとにかく早口で詠唱を唱えきるなど、絵面が転生者じゃなさすぎる。

 ので、別の方法を取ることにした。

 

「ミヤは他の属性の魔術も試したことはあるかな?」

 

「一応、詠唱ありなら全属性使えるよ、まぁどうしたって戦闘だと無詠唱の利便性にはかなわないけど」

 

「光属性が攻防一体の万能型なのもあると思うがね」

 

 ――この世界の属性は六つ、火、水、風、土、闇、光。

 この内それぞれ、特性として火は攻撃、水は非殺傷、風は補助、土は防御に長ける。闇と光は万能だ。そのうえで攻撃的なのが闇、防御的なのが光といえる。

 理由は闇では回復ができず、光ではできるからだ。逆に闇でしかできないこともある。呪いだ。

 

「しかし、技術としては聞いたことがあるが、実際無詠唱とはどのような理屈で行うのだ? 基本的に無詠唱というのは個人の才能が物を言うということは聞いたことがあるが」

 

「声に出さずに頭の中だけで思い浮かべるんだよ、内容を」

 

 ――詠唱とはすなわち、この世界にどう魔術の効果を発揮させるかという指標に過ぎない。長くすればするほど、その効果、影響、範囲は広がり、定まっていく。

 声に出すことで多少アバウトでも世界にそれが伝わって、現象として発現するのが魔術だ。

 脳内で思い描けば無詠唱、言うことは単純だが、実際に現象として何かを起こすには、相応の発想力と天才性が必要だ。

 

 個人の才、というのはそこからも来ている話だ。

 

 ミヤの場合は、この世界の人間よりも現象に対する理解が深い分、現象を起こしやすいということはあるだろう。光という原理を、ミヤはこの世界では誰よりも理解している。

 ただ、それにしたってミヤの理解度は学校の理科の授業程度のものだ。それを最上級の域にまで練り上げられるのは、やはり才能というほかない。

 

「言わんとしている事はわかるが、私にできる気はしないな」

 

「ぬむむー」

 

 マオはなにやらお祈りをしているようだった。ミヤは一瞬ビクっとしながらも、努めて冷静に話を続ける。

 

「ま、まぁそういうわけだから、特別なこと……ではあると思う。実感は、湧いたり湧かなかったりするけど」

 

 ――主にマオの手篭めにされてから、ミヤは自分の中にあった全能感が若干どこかへ行ってしまった。それでも、失礼なことをファルに思ったりするし、今こうして話している内容は説明回の内容だと思って適当に構えているが。

 

 どうせ、後で回収される段階に成ってもう一度説明があるから、理解するのはその時でもいいよな、とか考えていた。

 

「……現状、歴史上に最上級魔術を使えたものは六人しかいない。いや、人……というのもおかしいが、光王様以外は人ではなかったからな」

 

「そうなんだ」

 

「ああ、光王様が大陸を統一する以前は、異種族が大陸に存在しており、竜人、土人、精霊、それから――ああ、そうだ」

 

 そこでふと、思い出したと言うように。

 どうにも、話の雰囲気が変わったことをミヤは理解する。

 

「――ミヤ、もしよければ、私の主――ミリーシャ様に、あってはもらえないだろうか」

 

 ――――光王国第四王女ミリーシャ。

 ファルヴューレの主であり、そしておそらくファルヴューレの態度、立場、フットワークの軽さから導かれることとして。

 

 ()()()()()王女様。

 

「ミリーシャ様にあえるの!?」

 

 一介の保養地の娘であるマオが、これだけ嬉しそうに、そして親しそうに話をすることからも分かる。()()()()()()()()()()()だ。

 とすれば、会うことに是非はない。

 よろこんで、そう答えようとして――

 

 

「――ミリーシャ様ともまたお風呂、入れるかな?」

 

 

「ダメに決まってるだろ!?」

 

 ファルと二人で声を合わせて、マオの良からぬ想いを止めるのだった。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()だよ!」

 

 

 ――――そして思わぬことを口走った。

 

「もー、わかってるよ。夜が楽しみだねおねえちゃん!」

 

 イキリTS転生者はなんだか無性に死にたくなった。

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