結局必要なのは努力   作:名無しの権左衛門

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努力すれば、結果がついてくる。


結局必要なのは努力

「はーい、異世界転生しましたー」

 

:何言ってんだよ

:どういうわけ?

:お前は何を言っているんだ?

 

 自分は開き直ってそういった。

 

―――

 

 時は10分前。石碑の前に自分は立っていた。

いや、何言ってんのって思うかもしれないが、まあ待ってくれ。

自分も混乱してるからさ。

 そう、石碑だ。

 その石碑には穴が3つ開いていて、そこには鉄であることが丸わかりな長刀。

二つ目は栄養食と書かれた魔法瓶。三つ目はカメラ?

 

パンパカパーン

 

「おめでとう! 君は選ばれた人間だよ! 平和ボケした人間でも、ちゃんと老衰

できるくらい平和に生きれるスキルあげたから、楽しんでね!」

 

 石碑からクラッカーの中身が噴出して、半透明な板が出てきた。

そこには自分という一人称と、各種能力が書かれていた。

 

 

0自分:18歳

天の配剤:平等化(自分を含む全ての敵のアビリティとスキルを自分と同じにする)

アビリティ:なし

スキル:なし

 

始まりの長刀:手になじむ。軽量かつ頑丈。刃こぼれしない

栄養食:一日に必要な栄養と水が入っている。0時で再度まんたん

カメラ:地球のようつべに配信できるぞ。すぱちゃは、こっちの資金にできる。

    ”楽しませてね! by OutSide”

 

 ふざけてんの?

 この草原には何もいないし、ところどころに気が生えているくらいだ。

右も左もわからないのに、こんなところに放り出されてさぁ。

着の身着のまま、どこのお店か服の名前もわからない。

 寒くはないし、お腹もこの肩にかけてある魔法瓶のおかげで腹は満たせられる。

 それでも不安だ。

 

 だから自分は、このカメラを使うことにした。

賑やかしができていいかもな。

 

 

「いぇーい……もうLIVE中継されてる」

 

 配信中なんて文字が出ているし、勝手に字幕でセリフが翻訳されてる。

カメラには家庭用と同じく、レンズと一緒に録画している画面がある。

更にこのカメラ、浮いては勝手についてくる。

 てかスプラッタ系は大丈夫なんだろうか。

 もしも出血したらまずくないか?

 

:初見

:何これ

 

 あー、まじー?

そういうわけで、あいさつしました。

 

―ー

 

「では、町に向かっていきますねー」

 

:虚無配信?

:なにがしたいんだ

 

 コメントが徐々に増えてきた。

 それを確認しながら、適当にぶらついてみた。

するとゴブリンが出てきた。

 

 

2ゴブリン:5歳

天の配剤:なし

アビリティ:なし

スキル:なし

 

 棍棒を持ってきていたけれど、そんなステータスが表示されてしまって拍子抜けしてしまった。

 なーんだと思いつつ、近づいていくと奴は棍棒で殴りかかってきた。

でもその殴ろうとする素振りはなくて、棍棒をもったまま突撃だけしてきた。

なんかよくわからなかったので、長刀でざっくりやってしまった。

 

 あれ?

 

 形而上学的生物(実存)だからか、攻撃するとき精神的な抵抗がなかった。

とにかく切ってみると、一太刀で切り捨てることができた。

更にゴブリンは、真っ二つになるとエフェクトを出しながら素材といえる奴をドロップした。

 よかったーグロはなかったんだねー。

 

「えーと、ゴブリンでした。町に向かいますね」

 

:よくできたモデルだなー

:VRゲーム?

:よくわかんないテンションだなぁ

 

 ドロップに手を翳すと、その場から消えてしまった。

 

「えーとインベントリ、いやカバン?」

 

 カバンというと、ステータスと同じような板が出てきてそこにゴブリンのドロップ品が表示された。

皮と耳と棍棒が入っている。

容量はどれくらいなんだろうか?

 どこにも容量の限界値がかかれていないから、無限なのかな?

 こいつを閉じたら、どこか町がありそうなところに向かって歩き始める。

 

「えーと、この異世界に来たばかりでよくわかりませんが、自分の名前はまだ

決めていません。都度決めていきます」

 

:本当に異世界?

:面白い冗談だ。

:へー、なかなか珍しいな

 

 お、歩いていくと、スライム3匹が行く手を遮ってきた。

ぶよぶよしてるなー。

 

4スライム:2歳

天の配剤:なし

アビリティ:なし

スキル:なし

 

 お、ステータスが出てきた。

平等化のおかげで、相手の能力がかき消されている。

 ゲームだとつまらないかもしれないけれど、現実的に考えたら非常にありがたい。

もしもこれが現実であれば、スライム等はその特異性を持って俺を殺しに来るだろうから。

平等化によって、殺意も捕食行動もよくわからないものに変わってしまえば、

こんなに癒されることはない。

 

「ぶよぶよしてますね。えい」

 

 そんな形而上学的生物を、一太刀で切り捨ててやった。

 

2自分:18歳

天の配剤:平等化

アビリティ:なし

スキル:なし

 

「レベルは2になりましたね。出てきた核と細胞壁は、スライムのものですね。

売れるのかな?」

 

:サクサク進むな

:本当だったらもっと苦しいのか?

:平等化が強すぎる

 

 確かになー。

 

「本来ならスキルもアビリティもあるのでしょうが、今の俺は雑魚なので

周囲の敵性生物全てが雑魚になってしまうのでしょう」

 

 おかげでスライムはプルプルしてた。

助かったわー。

 

 しばらく歩いていくと、スライムが集まってキングスライムになった。

しかし自分を感知したら、再びプルプルし始めた。

何をしたいのかよくわからなかったので、適当に一太刀で切り捨ててやった。

 すると王冠と核を手に入れた。やったー。

 お腹がすいたけれど、魔法瓶で回復できた。

 

:キングスライムが雑魚w

:どう見てもBOSS

:おっかしーなー

:サクサク(物理)だなw

 

 ドロップを手に入れて、歩いていくと小さな町が見えた。

入り口には衛兵がいて、商人の入場手続きをしていた。

 

「すみませーん、ここって入れます?」

「入れるが、金を払いな」

「持ってないんで、これで」

「待ってな、換金してやる」

 

 そういって待っていると、ゴブリンとスライムの素材が換金されて返ってきた。

 

「入場料を引いている。すぐにギルドへカードを発行しに行って来い。

入場時の手続きが簡単になるぞ」

「ありがとうございます」

 

 自分はすぐに近くにあるギルドに向かっていって、傭兵ギルドに登録した。

本当ならば冒険者でもいいのだろうが、敵全員がポンコツになるのでこいつでやったら

何とかなるんじゃないかと思ったんだ。

 手数料1000は、キングスライムの核でやりくりした。

 この時は作る前だったので、買いたたかれた。

それでも、2000は戻ってきたからよかった。

今日の宿代は手に入ったぞ。

 

「これで、ギルドの依頼ができますね」

 

:やったぜ

:やったぜ

:結構買いたたかれるな

:追い出されないよりましだろ

 

 それな。

 

 とにかく今日は宿屋で、ゆっくりして休もう。

そして活動は次の日からにしよう。

 

 

―――

 

「おはようございます。朝食ですよ」

 

 朝と夜にご飯がある宿屋で休んでいてよかった。

 ゆっくりと横になると、意外と疲れていたのか睡魔に負けてしまったんだ。

次の日はすっきり爽快なんだけど。

 

「ありがとう」

 

 今日は街中の探索とギルドの依頼をこなそうと思っている。

 

「この町は、南端の町カスタードらしいです」

 

:おいしそう

:バターとかマーガリンとかありそう

:町? どう見ても、村なんですがそれは

:村にしても人が多いな

:服が綺麗だなぁ。縫合技術高そう

 

 今朝は涼しく過ごしやすい気温で助かった。

着の身着のままだから、寒いのとか勘弁してほしかったんだ。

そういや服買いに行かないと。

でも手持ちの資金がなぁ。

 今はギルドでお金を稼ぐしかないなぁ。

 

 そうだ。行先を視聴者に決めてもらうのもいいかもしれない。

その前にこの町に何があるか聞いて来よう。

 

「ちょっとギルド行きますね」

 

 歩いていくと、何やらこぎれいな人たちが一つの方向に走っていく。

何だろうと思ってその方向を見てみると、サーカスみたいなテントが張ってあった。

自分は走っていかない人に聞いてみた。

 

「あのすみません」

「あら、なにかしら?」

「一体なにが始まろうとしてるんです?」

「あれは奴隷の朝市よ」

「奴隷?」

 

 奴隷を知らなかったことに驚いたのか、色々説明してくれた。

それに加え、あのサーカステントは市場らしく、奴隷のほかに動物・植物や物など

ただのバザールだということが分かった。

 

「奴隷とかって安いんです?」

「ここのは安いわよ。

でも買うのはやめておきなさいな」

「どうしてです?」

 

 なんでもここの奴隷は最終の状態らしく、色々使われた後のカスらしい。

商品価値がないものをさらに売って、残ったものはここから西にある森で捨てるんだと。

その森の中には、大きな穴があって誰も這い上がってこれないらしい。

だからゴミ捨て場になっているんだってさ。

 

 ひどい話だ。

 

「いつまでやってるんです?」

「一週間はやってるわね。腐っても奴隷ですもの。売りたいに決まってますわ」

「そうなんですね、あ、お時間を取らせてしまいごめんなさい。

色々教えてもらいありがとうございました」

「いえいえ、困ったときはお互い様ですもの。

では、至福の一時を」

「はい」

 

 至福の一時は、最高の一日を過ごしましょうってことなのかな?

 

 朝市はまた明日でもいいや。

 

 えーと、ギルドに行って、この町に何があるかを尋ねた。

 

「この町には、協会・孤児院・このギルド・奴隷朝市・町市場・自警訓練所がありますよ」

 

 うーん、色々あるなあ。

 

 受付の人に感謝したら、カメラに向かっていう。

 

「この町を探索しようと思っているんですけど、どこか行きたいですか?」

 

:奴隷朝市

:奴隷朝市

:自警訓練所

:孤児院

:奴隷朝市

 

 みんな奴隷が気になるみたいだけど、お金がないんだよね。

冷やかすというのもちょっと気が引けるような気がする。

 

「では自警訓練所いきましょうか」

 

:なんでだよ!

:多数決じゃないのか

:よし!

:奴隷朝市なんて後六日も開いているんだからいいだろ

 

 なんかわがままだなぁ。

でもたっぷりと時間があるし、次は奴隷朝市にいけばいいかな。

 

「今はお金がないので、奴隷朝市にはいけません。

訓練所を見たら、そのままギルドで依頼を受けて資金稼ぎします」

 

 

 これで溜飲を下げてほしいな。

 

 村な規模の町を歩いていると、ちょっとばかり武骨な建物が見えた。

ここが訓練所みたいだ。

中を見てみると、そこでは数名の教官と数十名の青少年が武器を取って素振りをしていた。

 

「あと100回で、【槍】ランクがEになるぞ! ラーク、お前は後一万回で【槍】ランクがDになる。ほら、頑張れ!」

「「「はい!」」」

「おう!」

 

 へー、この世界だとステータスが認知されていて達成数までわかるのかー。

便利だなあ。

 お、あの筋骨隆々な人がラークって人かー。

どれどれ観察してみよう。あのスライムたちの様に、ステータスが見えるかもしれない。

 

9ラーク:16歳

天の配剤:なし

アビリティ:人間 回復速度E 

スキル:槍E 裁縫E 建築D 体術D

 

 おー、強い。

周囲の人も見たけれど、この人が一番強いと思う。

教官も強いけど、年齢が高いから経験でしか補えなさそう。

 

22ヴェルム:48歳

天の配剤:なし

アビリティ:人間 教導

スキル:槍D 勘D 選定力D

 

 48歳でこれかぁ。この村大丈夫かな?

一応奴隷商人にとって、非常に都合がいいみたいだし色々守ってもらえそう。

ただ商人どもは、需要と供給がないと行動しないからやらないかも。

 

「視聴者の皆さんは、見えてますかね? あのステータス。EとDしか見えませんが」

 

:見えてるな

:ばっちり

:弱い……のか?

:うぷ主の天の配剤がぶっ壊れなのがわかる

:確かアビリティとスキルを自分と同じにするんだっけ

:そそ

 

「平等化ですね。うーん、一度ギルドの人に聞いてみましょうか」

 

 彼らの鍛錬を少し見て終わったら、ギルドの方へ赴いた。

そこで聞いたのは、アビリティとスキル・天の配剤についてだった。

当然の様に見えていたステータスだけど、ギルドの受付嬢が言うには

全人口の3割は見えているらしい。

 

「ステータス見えるんですね。大体10人中3~4人の方が見えるようですよ。

それで、アビリティやスキルですね。

天の配剤は、神様がその人に与えた使命とか運命ですね。

アビリティは、先天的なものが多くて種族に関しての決定がほとんどです。

スキルは後天的なものが多くて、日常の生活の助けなものが多いです」

「自分、アビリティやスキルもないんですが、これは?」

「へ~珍しいですね。たまにいるんですよ、神様の加護から抜けてる人。

魔物は神様の人類統治のために生まれているので、抜け落ちはないんですが

別の宗教や無宗教の人に多いんですよ」

「抜けてるとどうなるんです?」

「えーとですね。急に運動をすると筋肉が剥離しますが、加護を受けていると

剥離しませんしいつでも戦闘できますよ」

「つ、強い」

「はい。あとアビリティも大事なんです。これがなくなると、私達何もできなくなるんですよ。覚えておいてくださいね。ステータスが見えるなら、アビリティを最初に確認して、詳細を確認しておいてください。それが生き残るコツです」

 

 色々教えてくれたけど、自分の平等化が加護を受けている人にとって如何に残酷か判明した。

なるべく敵対してほしくないなぁ。

 

「ありがとうございました」

「どういたしまして」

 

 次の場所を決めないとなぁ。

 

―――

「では、次はどこに行きましょうか。

今太陽が真上なので、ごはんを食べてからになりますが」

 

:奴隷市場

:協会

:協会

:まって、何で教会じゃないの?

:あ、ほんとだ

:協会

 

「協会に行きますか」

 

 その前に昼ご飯を食べる為、そこら辺の市場を歩いてみた。

でもそこに売ってあるのは、日常用品とか素材ばかり。

 

「あのー昼ご飯を食べられる場所ってないですか?」

「なら協会に行ってみな」

「ありがとうございます」

 

 焼き鳥屋のおっさんが、協会に関してちょっと教えてくれた。

あそこは國に属する人たちの共同組合らしくて、町の規模に合わせて色んな

サービスを受けられるらしい。

 此処にはないけれど、王都や帝都には温泉なるものがあるらしい。

 

「温泉。火山があるんだなー」

 

:異世界の火山は竜が住み着いてるんじゃないのか?

:活火山は火山ガスが出るから危ないぞ

:温泉としての基準があるのか、それともお湯を大規模に使っているから温泉なのか

:山に大規模なものを作れるのか

 

 

 話を聞いたら、焼き鳥5本買って食べてすぐに協会に向かった。

 

 協会は見事な大赦だった。

大規模な木造建築で、結構な人が行きかっていた。

村と思ったのは外界への出入口付近なだけで、奥へ進んでみたら町として言えるくらいには雑多になっている。

 

「あれ、解体もしてるんだ」

「おう兄ちゃん、ここは初めてかい?」

 

 いかつそうな人が話しかけてきた。

おっかなびっくりだけど、聞く手間が省けたよ。

 

「あ、はい。ギルドと協会を利用するのは初めてで」

「ははは、よくある話だ。なんせ、大陸の向こうでは、

協会の役割をギルドで担ってるらしいからな!

でもここじゃ違うぜ」

 

 なんでも仕事の斡旋や仲間の紹介っていう、完全な仕事のものとして

ギルドが役割を担っているんだとさ。

そして協会は、ギルドがやるべきこと以外を全て行い、国やギルドに世話になっている多くの団体・個人の寄付によって成り立っている。

 もちろん国の税金によって、建物や設備の保全体制は整っているようだ。

 

「へぇ、役割分担しているんですね」

「おう! おかげで、ギルドは仕事の選別を的確に行って、

情報の調査も事前に行うことで、事故死を減らすことに成功しているんだ」

 

 そもそもこの大陸では、ギルドも協会もなかったらしい。

でも大陸中に道路がつながってからは、経済云々で国営から民間に下ろされたんだとか。

今でも国税で賄っているんだけど、どれは国営じゃないのかな?

 

「基本的にギルド長が選別しているし、職務怠慢と汚職化を防ぐためにギルド選挙もある。

いい時代になったもんだ! それに国の監査ってのも突然前触れもなくやってくる。

これもギルドと協会が、長年俺達国民に愛され続けてる秘訣なのさ」

「相互体制がうまくかみ合ってるんですねー」

 

:いい関係性じゃん

:民主主義……

:一種の大企業だな

:国が支えているってことは、それだけ魔物の脅威が高いんだろうな

 

 自分はおっさんに、この国の郷土料理をふるまってもらった。

スライムのゼリーやコボルトのもも肉を使った料理だ。

 ゼリーはコラーゲンやその他栄養が、豊富に含まれていてビタミンというものが

熱で溶けだしにくいから栄養食として他大陸の注目を集めているらしい。

 

「この国ってビタミンの概念があったんですね」

「おう。ていっても、つい最近のことさ」

「情報が出回るの早いですね」

「それがギルド・協会の相互体制の強みの一つ。情報が出回りやすい反面、

噂も広まりやすい。情報であふれてるが、それが嘘かどうかを見抜く”目”が必要なのさ」

 

 現代世界かな?

この世界のインターネットは、より信憑性の高いものが選ばれそうだけど、

魔物の危険度も相まってあることないこと言われそうなまである。

それに社会的に死ぬも早そうだなー。

 

「そういえば、なんで他大陸からスライムが注目されてるんです?」

「ああ。他大陸のスライムは、捕食する前に溶かすんだとよ。

でもここのスライムは、包み込んで捕食するんだ。全身が酸に包まれてるより、

俺達人間みたいに消化器官だけ、消化酵素が発生するやつの方が加工しやすいだろ?」

「確かに」

 

 ガンガゼ・ゴンズイ・カツオノエボシとか。

外にやっているやつらよりも、食肉加工される鳥とかの方がいいよなって話。

ふぐはちょっと……勘弁してください。

 

:ジャガイモ並みに優秀かよその食材

:コラーゲン? 産業革命が来たら、即座に美容液に使われそうな存在だなw

:膝に使おうぜ

:映像でもわかるけど、爺さんでも大剣担いでるし相当膝にやさしい世界なんだろうな

 

「コラーゲンって膝にやさしいんですけど、それとおじいさん方の大剣担いでいるのにはナニカ因果関係があるんでしょうか」

「ありゃスキルの影響だな。まあ、体の痛みってのは、【頑強】スキルを取れば簡単に治る」

「どうやってとるんです?」

「【頑強】Fランクは、何らかの筋トレを25回すればつくぞ。まあ、あんまり効果はみとめられんなあ。

少なくとも100回で、E。1万回回でDになる。筋トレしなくても、それ相応の筋肉負担があれば、簡単につくぞ」

 

21ロウラン:58歳

天の配剤:なし

アビリティ:人間 案内

スキル:棒D 頑強C 生活D 採取E 口車E

 

 あ、勝手に見てしまった。ってか、最初から出てたんだけど。

 

「あ、すみません、ステータスが」

「おう、気にするな。よくあるこった」

 

 笑い飛ばしてくれた。気のいいひとだ。

何か謝罪として奢ろうとしたら、ステータスの一つや二つみたって変わらないとまで言われた。

なんでもわかっていても対処できなければ、意味がないんだとさ。

それはそうなんだけど。

 さすがに親切にしてくれた人に、無遠慮にするのは気が引けるわ。

そういうわけで押し通ったら、ギルドランクをFという新入生からEという初心者に昇進してくれと言われた。

ここら辺の魔物は弱いが、今では自警団とあの老練な方々しかいないんだとか。

 

 そんなわけで、すこしでも強くなってほしいんだと。

 

 泣ける。

 

:親切すぎる

:日本だったら疑うわ

:魔物はびこる相互協力が必要な世界だし、親身になるのは仕方ないだろ

:おい、主。この人とは仲良くしとけよ

 

 いわれなくても。

 

「お、そうだ。ステータスが見えるなら気をつけときな。

この大陸だと、レベル・名前・年齢、天の配剤・アビリティ・スキルの順だ。

だが他大陸だと、この順番が違う。

この大陸は宗教上、このアビリティ・スキル恩恵があるが他大陸は違う常識が働いている。それは人間だけでなく、渡り魔鳥といった遠距離を移動する鳥や回遊魚に属する魚の魔物も含め、それぞれの生まれた領域のスキルルールに従っている。

だから、常に油断はするなよ」

 

:ひでぇ世界だ

:生物も巻き込んだ宗教か

:言語が違うってレベルじゃねえぞ!?

;ステータスが見れないと死ぬレベルだこれ!

:鑑定が絶対的優位性を取れないってのも珍しいなw

 

「わ、わかりました」

「辛気臭い顔すんなって!」

 

 色々と世間話を聞いた。薬草がどんなのとか、あそこの席にいるべっぴんさんは、

この村で一番強い吸血鬼とか、あそこのバーのおやじは東方の魔族とか。

 ってまって、魔族いるんだ!?

記憶では専ら仇役なんだけど。

 

「魔族を敵って、おめでたい風習だな」

 

 笑ってくれたし、バーのおやじもきらりと眼鏡を光らせて子供でも飲めるジュースをくれた。

チップの風習はあるけど、大金はいらないんだと。

感謝の気持ちというくらいらしい。

 

:なんだこのやさしいせかい

:おいしいやさいせいかつ

:乙

:周囲の敵も、結構弱いらしいしある程度の緊張感があるんだろう

:むしろ厳しかったら、ここまで朗らかにはいられまい

 

「君、名前は?」

「ないんです」

 

 あれ、一気に周囲の空気が冷えた気がした。

バーのおやじが、厳しい目をしている。あれ、間違えた?

 

「で、親御さんは?」

「いません。いつの間にかこの町の近くに居ました」

 

 嘘偽りなく答える。

 

「なるほど。なるほど……ちょっとギルド長と話をしてきます」

「アッハイ」

 

 え、何。あの人、ものすごい瞳孔眼開きだったんだけど。

更にとあるべっぴんさんも絡んできた。

 

「おーおー寂しかったなー。お姉さんが慰めてあげる!」

「あ、えと、有難うございます?」

「まったくおめでたい奴だぜ。だが、困ったときは協会にこいよ。助けてやる」

「不思議な奴だと思ってたが、なるほど、そういうわけか」

 

:涙が出るわ

:あったけぇ

:あのマスターぶちぎれてたな

:やっぱこの町、何かあるぜ

 

「さてお前さん、不思議がってるとこ悪いが、この町の忌み名を教えてやる」

 

 右目に眼帯をつけた屈強なおじさんが、こちらに歩み寄ってくる。

厳しめの表情で、びくついてしまったけれど自分は悪くない。

 

「ここは新入生にとっての始まりの町であり、全ての者の終わりの町でもある。

全てに見切りをつけた者たちが集い、全てを見据えようとする者たちが集まるまちだ。

お前も終わらせられたのだろう。だが、終わりもあれば始まりもある。

共に精進しようじゃないか」

 

 握手を求められたので、やった。

え、何もないよね? さっきのバーのマスターみたいなことがなければいいんだけど。

 

「私はマスターとは違うぞ?」

 

 そう言い含めて去っていったけど、どう考えても試みられてるじゃないか!?

違う心を見られてる!

 

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

 色々もみくちゃにされて、名前を付けられそうになったけどそれは一人前になってから

にしてもらった。

ちなみに、一人前はDランク。

遠いね。

 

 自分は表出て、ロウランさんに行きつけの安くて快適な宿を紹介してくれた。

ここらの宿は、全て協会と提携を結んでいて孤独なギルド労働者を宿泊させる代わりに、魔物や特殊な素材を卸してくれるようになっている。

勿論お金は必要だけれど。

 

「最後は狩りに出ておしまいにしますか」

 

:結構かかったな

:常時配信してるけど、かなり濃かったw

:これからも明日からも頑張れよ

:俺は寝る

:乙ー

 

「そんなに遅くなってるんですね。おやすみなさい」

 

 自分はそのまま外に向かおうとすると……。

 

「ようそこの兄ちゃん、ちょいと待ちな」

 

 なんか、ガラの悪い人が前後から挟み込んできた。

まずいかも。

 

:はい、異世界あるある来ましたー

:初心者狩りか

:いびられますな

:死ぬなよ

 

 だ、大丈夫。この長刀があれば……。

 

:死亡フラグ乙

 

「いい武器持ってんじゃねえか。面貸しな」

 

 

―――

 

 夜のとばりが下りた今、町の目の前にある平原に来ました。

門番さんは寝てました。

おいおいおい! なんでこんな時に寝ているんだよ。

 そこのいかつい兄ちゃんが、門番さんの近くに座り込んで何かを置いているんだけど。

 

「よそ見すんじゃねえ」

 

 槍で脅されて導かれてきたのは、スライムの目の前。

その時、ローブを羽織った人が出てきて、自分とスライムに何かをかけた。

バフ? デバフ?

自分のステータスを見ても、全く判明しないんだけど。

どうすればいいんだ!?

 

「おい。あのスライムを殺せ」

「え!?」

「ぐずぐずするな、死にたくなければ殺せ。

でなければ、お前が死ぬぞ」

 

 自分はスライムの目の前にでる。

いかつい兄ちゃんたちは、自分とスライムを囲んで逃げられないようにしてる。

これが一騎討というやつか……!

初心者狩りは、こんなに恐ろしいものだったんだ。

 

:俺達が知ってる初心者狩りじゃない

:あれ、こんなやつだったっけ?

:あれれ~? おっかし~ぞ~?

:大丈夫。いつもの通り、一撃必殺だ!

 

「いつも通り。いくぞ!」

 

 長刀で攻撃した。普通ならここで一刀両断なのに、スライムに弾かれた。

 

「!?」

 

 一瞬のスキ。その時、スライムが体当たりしてきた。

 

「まず!?」

 

 長刀を振るって奴の攻撃を防ごうとした。

そしたらヒットして、ゴロになった。

セカンドくらい。

でもすぐに自分に向かって転がってきた。

 自分もすぐに立ち上がって、逃げるように回避したんだけど意味がない。

速い!

 

「うおおお!!」

 

 だめだ! 弾力が高すぎて跳ね上がっちまった!

スライムは直上! 急降下爆撃!

 

「いっ!?」

 

 背中に鈍痛。

竹刀で叩かれたような痛みだ!   竹刀って何?

じゃなくて

 

:後ろ!

:後ろだ、主!

:カメラが戦場を見渡してるからわかりやすいわ

:来るぞ!

 

「うおおお!?」

 

 自分は長刀で、地面の砂と石をすくい上げながら後ろを切る。

べちゃっていい音がなった。

適当に逃げてスライムの方を見ると、砂がかかってどろどろだった。

すぐに刃で切りつけると、スライムが消えて素材だけになった。

 

「はーっはーっ」

 

 し、死ぬかと思った。

さっきの振り返り攻撃で、肩が外れそうなくらい痛かったし、

逃げるときに足首をひねった。

 この平原、かなり足場が悪い。

 今更ながら、思い知った。

 

 そして自分は、多数の足音を耳に入れた。

そういえば初心者狩りだったな。

忘れてた。

 荒れる息を整えることもできないまま、武器を構えようとする。

でも、それを相手はさせてくれなかった。

 

「「「誠にすみませんでした!!」」」

「へ?」

 

:はじめからその気がなかったのか

:ひるまにすでにいたぞ? 映像に移ってた

:ふつうは、ギルドに入った時からだろうし

:へー、こんなこともあるんだ 

:ほんきじゃなかったんだな?

:まあ、そんな気はしてた

:みるからに怪しかったし

:むずかしいかおすんな

:めずらいいこともあるもんだ

:もうこんな展開はやめてほしいな

 

 コメント欄が凄いことになってるけど、眼前のことで精いっぱいだ。

どゆこと?

 

「あんたの覚悟、本気みたいだな」

「この世界、生きていけるぜ」

 

 ボスみたいな人がそういう。

話を聞いてみると、新入生を直々に死の恐怖を味わわせるためのボランティアなんだそうな。

 理由として、始まりの町といわれてるし奴隷市場もあるし、周辺のまものは弱いから

そこらのへんのぼっちゃんが試しにクエストをやることがある。

その時、渡り鳥の魔物が襲い掛かってきてご子息が死んだり、この平原が湿地認定されている

のを知らない新入生がぬかるみに足を取られて、スライムに殺されたりと昔は

そういうのが頻発してた。

 そういうわけで、彼らは新入生を劣悪な環境+相手の速度と防御を底上げし、

新入生を攻撃デバフと5分間死ぬことはない魔法をかけたんだと。

 

「死なないだけで魔法が切れたら死ぬし、掛けなおしも一時間の魔法中和期間を設けないといけない。

つまり最低限の保険だな」

「待って。魔法って毒なの?」

「あ、そういえば捨て子だったな。いいぜ、帰り際に教え――」

 

 ドスンという音が後ろから聞こえた。

 

 魔法が毒ということに気がとられているときだったので、全くどうしようもできなかった。

本当にここはスライムが多い。

だからこそ、スライムが寄り集まってくる。

 

「まて、満月は魔物を活性化させる!」

「昼間の国王スライムじゃねえ! 帝王スライムだ!

捨て子、そして全員逃げろ! 俺はしんがりをする!」

「兄貴!?」

「兄貴が残るなら俺も!」

「馬鹿野郎、ここで死なせてたまるか!」

 

「どうします、視聴者のかた」

 

:10分は経過した。死ぬぞ

:大丈夫、殺せるさ

:殺すなら、殺される覚悟を持て

:おい、ばかやめろ

:大丈夫。レベル22程度じゃ、あの45レベルに勝てない

 

 そう、視聴者も見えているんだ。あいつのステータスが。

 

45帝王スライム:0歳

天の配剤:帝王

アビリティ:スライム 合体

スキル:統制E 体当たりE 水魔法E 解除F 頑強D

 

:出番だぞ

:スキルがなくなっても、素の強さは負けてるんだよなあ

 

「かかってこい、相手になってやる!」

 

「捨て子!?」

「バッカお前、俺の見せ場を!」

「ドロウ! あいつに強化魔法を!」

「え、毒は!?」

「魂の分解と筋肉剥離は別の概念だ、行け!」

「了解!」

 

 身体の奥底から、熱を感じる。

なるほど、これが強化魔法。

デバフと違って、いいなあこれ。

 

 まあ、負ける気はしない。

 

 死亡フラグじゃなくて、自分がここで負けたら後ろの兄貴たちや

町のロウランさんやマスターたちが死ぬ。

いや、マスターさんはレベル70行ってたから大丈夫だろうけど。

 でも、あのぺっぴんさんでも、レベル40だった。

 そんなわけで、じぶんはここを守らないといけない。

 

 平等化とか魔法で、頭おかしくなってると思う。

だけど、兄貴たちのおかげで、覚悟はできた。

 

[-------]

 

 スライムが咆哮を上げる。

自分は再度ステータスを見やる。

 

45帝王スライム:0歳

天の配剤:帝王

アビリティ:なし

スキル:なし

 

 よし。

 

 行くぜ、一撃必殺。兜割!

そんな技ないけどな!

 

 結果として帝王スライムは、ぱっかりわれた。

そして色んな素材に変化することになる。

核やスライムの身、王冠、王水を手に入れた。

 

:結構な敵だったのに、それっぽっちかよ。

:王水は毒だろ

:やっぱ長刀強いな

 

「す、すげえ」

「期待できそうな新入生じゃねぇか」

「妙だな」

「ああ」

「今はとにかく帰ろう。行くぞ」

 

 自分は素材をすぐに回収して、すぐに町に戻ることになった。

ただその時、魔法についてとかこの町について色々聞いた。

 

「それで毒って何です?」

「ああ。この大陸では、魔法というものは人間の体内に存在する魔力を消費して使うものなんだ。

魔力そのものは、外気に存在する毒物を人間に備わる分解物が作用して作り出しているといわれている。

だから他大陸のように、魔力を回復するポーションは存在しないんだ」

 

 さらにこの中和された魔力がないと、他者からかけられた魔法を中和できずに死ぬんだって。

怖すぎだろ。

だから魔法使いは、その中和された魔力の総量が多い人物じゃないとなれないらしい。

そうじゃないと、かけられた魔法の中和で手いっぱいになり身体が疲労困憊状態になるんだとか。

 

「えーと、じゃあ、あの5分間死なない魔法と強化魔法は、中和期間的にまずかったんじゃ」

「部位が違うから大丈夫。5分間死なない魔法は、人間が死ぬとき魂が分離することを利用したものなんだ。

つまり魂を分離させなければいいから、魂事態に魔力を送り込んでる。

とどのつまり、魔法は自分の中和魔力を使って他者の中和魔力に干渉するっていう技術なんだよ」

「何それ凄い」

「だろ?」

「てことは、水魔法とかも外部にある魔力を使うってことですか」

「そういうこと。ただ、こちらは事情が変わるから、技術力も魔力量も必要になるよ。

同じ属性じゃないと、魔力は操れないから」

 

 つまり、熟練者じゃないと人間から人間にしかかけられないってわけか。

でもスライムもできたよねってなった。

だがスライムの構成物質は、人間の細胞とほぼ同じらしいので普通に効くらしい。

うそーん。

 

「さあ帰ってきたぞ」

「ああ。 捨てられた街、アロウコースト。俺達の言葉で、酌量の沿岸街」

「え、罪人」

「つまりはあの大穴に神性を抱いて雨ごいし、植民地時代の少数民族・反乱分子の処刑、今では奴隷貿易や死刑判決者の最終処分場。

恩赦や斟酌[しんしゃく]・顧慮[こりょ]された奴は、ここで生きているってわけだ」

「ちなみに大穴には、ここ数千年の憎悪が祓われてないから近づくなよ?」

 

:おいおい。これ、行けってことかい

:いやー魔法に毒かー。珍しい解釈だな

:なんか掲示板の勇者のSSにあったな。回復薬でラリったりする戦士とか

:あれはいいSSだった

:今はただ、勝利を喜ぼうぜ

 

 つ、疲れた。

スライムとの死闘と帝王スライムとの茶番。

たった二つだけのことだけど、どちらもぬかるんでいた湿地なのが悪い。

 此処に来るとき、そこまで湿地じゃなかったんだけどな?

 あそこだけ特別だったのか、スライムが影響してそうなったのかな?

 

「よぉ、お帰り」

「おう」

 

 兄貴たちが、いつの間にか起きていた門番さんとあいさつして中へ入っていく。

 

「よお、新入生。ギルド初心者のための心得教室はどうだった?」

「疲れました」

「帝王スライム、強かっただろ? ゆっくり休んでくれ」

 

 足首とか痛いんだよね。

このまま兄貴たちは、ギルドに行って帝王スライムを討伐したことを伝えに行くらしい。

自分はどうすればいいんだろう?

 

「このまま協会と提携してる宿に休ませてもらいに行きな。

ロウランのおやじに案内してもらったろ」

「そうだったそうだった」

 

 今日の色んな事は、後日に回して今はゆっくり休んでくれとのことだった。

ありがたい。身体がもうボロボロなんだ。

自分はすぐに案内してくれた宿に歩いて、そのまま軽食を取って休んだ。

 




次は異世界あるあるの奴隷でも作ろうかな
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