赫き彗星が白兎と共にダンジョンに行くのは間違ってるだろうか   作:エルにー

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たっっっっいへんお待たせしました!
家の用事で色々とあったので遅れました。なるべく週に一回以上で投稿できるようにします。


05 決戦前夜。月乙女の夢

バルside

 

矢をとった俺はヘスティアたちのところに戻った。そしたら丁度母親が感謝の言葉を言っていた。

 

「本当にありがとうございます。なんてお礼を言えばいいのか……」

 

バル「気にしないでくれ。それより、あのモンスターを知っているか?」

 

「いいえ……辺りの村も襲われていて、私達もいきなり……」

 

なるほど……

 

ヴェルフ「あんなモンスター見たことないぞ」

 

ベル「オラリオの外だからかな?」

 

ヴェルフとベルが話しているとヘルメスが近づいてきた。

 

ヘル「バル。わかってると思うけど……」

 

バル「矢をあまり使うな、だろ。わかってる。状況も大体わかった。まさか、本当にそんなことがあるなんてな……」

 

ヘル「そこまでわかっちゃうか……兎に角、頼むよ。気づかれたくないしね」

 

バル「時間の問題だろうがな」

 

真相がどうあれ。今回の件は相当厄介だ。

 

俺とヘルメスが話しているうちにアルテミス主導で親子のために何かしたみたい。

 

 

 

「さようなら──!神様──!」ノシ

 

手を振る女の子に俺たちも手を振りかえして応える。

 

バル「……さて。アルテミス」

 

俺は全力の笑顔でアルテミスを見る。

 

アル「ど、どうした?す、少し顔が怖いぞ、オリオン」

 

アルテミスが怯えてるように見るが、それはどうでもいい。

 

バル「正座」

 

短く3語だけ言った。

 

アル「い、いや、訳を……」

 

バル「正座」

 

アル「その……」

 

バル「正座」

 

アル「……はい……」

 

根負けしたアルテミスは正座をした。

 

バル「人助けはいい。俺も否定はしない。だが、だからといって食料を全部渡す必要はあるのか?俺はまだいい。一ヶ月何も食べなくても問題ない。だけど他は違うぞ」

 

アルテミスはベル達を見る。

 

アイ「ご飯」

 

レン「流石に何かお腹に入れたい」

 

リリ「リリは空腹です」

 

ベル「あはは……僕もお腹減ったかな……」

 

ヴェルフ「……」コク

 

ヘス「これは流石にフォローできないよ、アルテミス……」

 

アル「本当にすみませんでした!」

 

ヘスティアの言葉がトドメを刺して、アルテミスは土下座で謝罪した。

 

バル「ハァ……アルテミスってこんなにもポンコツだったのか……」

 

思わず明後日の方向を見てつぶやいた。

 

リリ「ポンコツ」

 

アイ「ポンコツを司るポンコツ女神」

 

レン「お前らな……」

 

ヘス「ハァ……なんでこうなったんだろうな……」

 

ベル「前は違ったの?」

 

ヘス「あぁ、怖いぐらい毅然として、女傑と言うか……天界じゃ沐浴を覗かれただけで……」

 

 

アル『恥を知れ。この、豚ども!』

 

『『『ありがとうございまーす!』』』

 

 

ヘル「いや〜、そんなこともあったな〜。うんうん」

 

バル「バカだろ」

 

懐かしむヘルメスに対して俺はそう切り捨てる。

 

ヘル「ま、そろそろ日も暮れるし、ここに泊まって明日出発しよう」

 

ヘス「えぇっ!?食事は!?」

 

ヘル「今日は我慢だな」

 

ヘス「そんな〜〜……」

 

アル「す、すまない!」

 

うなだるヘスティアにアルテミスはさらに頭を下げる。はぁ、仕方ない。食料を調達しないと。

 

ベル「あっ、バル兄。あれ」

 

俺はベルの指差した方を見た。そこにはご都合主義とでも言えばいいのか、丁度いいものがあった。

 

バル「これならなんとかなりそうだな」

 

「「「えっ?」」」

 

 

 

パチパチッ

 

俺は火に通した木の実、マサラの実を枝を使って取って上の部分を切って開けた。

 

「「「おおぉぉ」」」

 

中には美味しそうなスープが入っていた。

 

ヘス「いっただきまーす!」モグモグ

 

「うっまーい!」

 

ヘル「なるほど、マサラの実か。熱すると中の果肉が溶けて芳醇な果汁となる。まさに森のレストランやー!」

 

各々このスープを美味しく食べてるようだ。

 

ヴェルフ「よく知ってたな、これ」

 

バル「知識として知っていただけだ。それに、見つけたのはベルだし」

 

リリ「流石はベル様です!」

 

ベル「あはは……」

 

アル「オリオン。あなたは博識なのだな」

 

このセリフ。夢の中でもあった……。

 

バル「知識を蓄えるに越したことはないからな。それより、食べないのか?」

 

俺は全く手をつけてないマサラスープ(今名付けた)を見て言う。

 

アル「いや、私は……」

 

バル「……そうか」

 

アイ「……」

 

ベル「……」

 

やばいな。アイとベルに感づかれたかもしれん。

 

アル「アーン」

 

バル「……はっ?」

 

色々と考えているとアルテミスがスープをすくったスプーンを差し出してきた。アーンと言う声付きで。

まぁ、付き合ってやるか。

 

バル「アーン」モグ

 

うん。やっぱり美味いな。帰る時にいくつかお土産で持ち帰ろう。

 

ヘス「ほうほうほ〜〜う」ムフフ

 

リリ「気持ち悪いですよ、ヘスティア様」

 

ヘス「気持ち悪いとはなんじゃ!もう」

 

ベル「……(バル兄……何を隠しているんだろう……)」

 

スッ トンっ

 

バル「アイ?」

 

アイ「……撫でて」

 

バル「やれやれ」ナデナデ

 

アイ「んっ……」

 

一言言おう。むすっとするアイも可愛かった。

 

 

 

ヴェルフ「しっかし、あのモンスターはなんだったんだろうな」

 

リリ「サソリ型のモンスターはいますけど、あれは見た事ありません。バル様は?」

 

バル「ないな。あっちの世界にもいないぞ。そもそも、魔石があったし。何か知っているか?ヘルメス」

 

俺がそう言うとアルテミスを除いた全員がヘルメスを見た。

 

ヘル「……ことの始まりはモンスターの異常な増殖が確認されたことだった。原因を調べるために多くのファミリアが遣わされたが──」

 

バル「──全て消息を絶った、か」

 

最後の部分だけを俺が割り込んだ。

しかし、消息を絶った、か……生きている可能性は低いな。

 

ヘル「場所は彼の地エルソス。そこの遺跡には、ある封印が施されていた」

 

いた、ね。

 

ベル「封印?何をですか?」

 

ヘル「(おか)を腐らせ、海を蝕み森を殺し……あらゆる生命から命を奪う──」

 

アル「──古代、大精霊達の力によって封印されたモンスター、アンタレス」

 

アンタレス。それが今回の敵。

 

アル「だが、奴は長い時をかけて深く、静かに力を蓄え……ついに封印を破った」

 

ヴェルフ「封印を破ったって……」

 

リリ「それじゃぁ……」

 

ヘル「あぁ、今回の件はオラリオも重く受け止めていてね。俺のファミリアを派遣したんだ。そこで同じ目的で赴いていたアルテミスと出会った。そして、援軍を呼ぶためにオラリオに戻ったと言うわけさ」

 

なるほど。そう言うことか。

 

ヘル「その点で言えば君たちは過剰と言ってもいいぐらいの援軍だよ。」

 

ヴェルフ「じゃぁ、レンは……」

 

ヘル「彼はエネルギーを操作できる能力を持っている。それを使えばアンタレスによって犯された地を戻せるかもしれない。ただ──」

 

アル「──例え君たちでも、あの槍でなければアンタレスは倒せない。そして槍に選ばれたのは」

 

アルテミスは俺をまっすぐ見る。

 

アル「あなただ」

 

毎度、重要な役割を担うもんだ。

 

ヘル「なあに、大丈夫。槍さえ有れば全てうまくいくさ!ほら、明日に備えてもう寝よう!」

 

ヘルメスは空気を変えようと明るく言う。だがな、それが最高ではないことはお前もわかっているはずだ、ヘルメス。

 

 

side out

 

 

ヘス「……という訳で、バル君達と会ってからは色々と起こったよ」

 

アル「驚いた。天界で1番の犬猿の仲だったヘスティアとロキが仲良くしてるとは」

 

ヘス「まぁ、そう言う反応をするよね」

 

アル「しかし、ヘスティアがファミリアを持つとはな」

 

ヘス「人数は少ないけど、オラリオじゃトップクラスのファミリアだよ。昔のボクじゃ考えられないよね。最初はバル君とベル君。それでも実力はトップクラスだったね」ニガワライ

 

アル「ヘスティア」

 

ヘス「なんだい?」

 

アル「あなたはオリオンの事をどう思っているんだ?」

 

ヘス「バル君かーー。うーん……お兄ちゃんみたいな感じ?実際、義兄でもあるけどさ」

 

アル「そういえば、オリオンの弟と恋仲だったな」

 

ヘス「うん。ベル君はボクが一番愛する子供でもあり、恋人。ベル君も愛してくれてるけど、ハーレムだから一番ではないんだよね〜」

 

アル「そこも驚いた。ヘスティアは絶対にそういうのは反対だと思ってた」

 

ヘス「そんなのはどうでもよく思ってしまうんだ。ベル君は半龍だから普通に比べて果てしなく生きる。その分一緒にいられるけど、いつか、ベル君が死んじゃった時は凄く辛いんだろうね……」

 

アル「恋、か……私はオリオンといるとドキドキする。あの笑顔が頭の中にこびりついて離れない。この気持ちはなんなのだろう」

 

ヘス「……それはアルテミスが自分で気付く必要があるね。しかし、君は変わったね」

 

アル「そうか?」

 

ヘス「あぁ、不変の神々のはずなのに君は変わった。かくいうボクもだけどね」

 

 

 

ベルside

 

ベル「バル兄」

 

ヴェルフとレンさんが眠りについて、僕はバル兄に話しかけた。

 

バル「どうした?」

 

ベル「……」

 

バル「ベル?」

 

どう言えばいいのだろう。率直に聞いてもバル兄は答えてくれないだろう。だからといって回りくどく言うわけにもいかない。

そもそも、僕はどうしてバル兄に声を掛けてしまったんだろう?

 

ポン

 

ベル「あっ……」

 

バル「言いたい事は大体わかってる。だけどすまん。今は答えられない。ただ言えることは、今回は俺の成長が試されるのかもしれないな」

 

バル兄の……成長……?

 

バル「俺が全て一人でやるわけじゃないが、俺が何か困っていたら助けてくれ。兄として恥ずかしいが」

 

バル兄は申し訳ない顔をして言う。

そんなことないよ。僕たちはいつもバル兄に助けられている。だから

 

ベル「今回は僕たちに助けさせてよ。ほんの少しかもしれない。だけど、僕たちを頼ってよ。恥ずかしくなんかないよ」

 

バル「フッ、ありがとうな。さ、もう遅い。寝るぞ」

 

ベル「うん」

 

どれだけ助けられるかわからない。だけど、バル兄を助けられるならそれでいいかな。

 

 

side out

 

 

ヘル「ハァ……ままならないなぁ……」

 

 

 

 

バンッ

 

ロキ「なんやて!?オラリオを出れへん!?それどう言うことや!」

 

フィン「どうやら、ギルドの命令らしい。オラリオの中にいるように厳命されてしまったよ」

 

ロキ「うちは港に用あるっちゅうねん!」

 

フィン「当然中止だね」

 

ロキ「なっ……どう言うことや、ギルドの連中!アホか!!」

 

レフィ「(オラリオから出るのが禁止……でも確かバルさん達が外にいるはず……どう言うことだろう?)」

 

アイズ「……(何か嫌な予感がする……ベル達は大丈夫かな……)」

 

 

 

バルside

 

また飛んで数日、飛竜にはヴェルフとリリ、ヘスティアとヘルメス。そしてアルテミスとアイが乗って俺とベルとレンは飛んで進んでいる。

険しい山谷を超えると、目的地が近いとわかることが起こった。

 

ヘス「なっ……」

 

レン「これは……」

 

俺はそれを見て眉間に皺を寄らせた。

 

ベル「森が、死んでいる……」

 

アル「アンタレスの仕業だ。そして、あれがエルソスの遺跡」

 

死んだ森、文字通り死の森の奥に建物が見えた。そこが目的地なのだろう。

 

キイィィン

 

バル「!?(矢が共鳴した!?っ!)」

 

アル「来る……」

 

アルテミスがそう言った瞬間、空から大量の光の矢が降ってきた。

 

ヘス「これは……」

 

バル「避けろ!ベルはヘスティアとヘルメスに当たりそうな矢を撃ち落とせ!レンはヴェルフの方を!」

 

「「了解!」」

 

ドドドドドドドドドドッ

 

ガキンッ キンッ

 

矢が地面に当たる音と弾く音が聞こえる中、俺はひたすら迫り来る矢を弾いていた。

 

しばらくすると矢の雨は止み、飛竜は着陸していた。

 

バル「大丈夫か、アルテミス、アイ」

 

アル「あぁ、なんとか……」

 

アイ「ん、バルのおかげで傷ひとつない」

 

バル「ならよかった。ベル!レン!」

 

ベル「こっちは大丈夫!」

 

レン「こっちもだ!」

 

リリ「大丈夫です!ただ、飛竜は……」

 

飛竜3匹とも大事に至る怪我はないが、弾ききれなかった矢が掠ったりしていた。翼にも掠っていて、飛竜自身の疲労で飛ぶのは難しいだろう。

 

ヴェルフ「なんなんだ、さっきの光は……」

 

アル「おそらくは私を……彼の持つ槍を狙ったのだろう」

 

いや、狙いはアルテミスだった。やはり本当に……

 

ギギッ ギチギチッ

 

バル「チッ、本当にうざったい奴らだな!」

 

気がつけばサソリのモンスター囲われていた。

 

ヴェルフ「なんだこいつら。この間のやつか?」

 

リリ「いえ、大きさも形も違います」

 

おそらくアンタレスの影響を強く受けているのだろう。

そう考えていたその時

 

?「【ルミノス・ウィンド】!」

 

ドォンッ ドォンッ ドォンッ

 

ベル「この声は……!」

 

砂埃が止むと。

 

リュー「大丈夫ですか」

 

ベル「リュー!」

 

リュー「ベルさん。まさかこんなところで会うとは」

 

ベル「用事はこれだったんだね。一週間以上前だけど、弁当美味しかったよ」

 

リュー「い、いえ、あれでもまだまだですし……」

 

ベル「リューが作ってくれたのが嬉しかったよ」ニコ

 

リュー「え、あ、その……はい……///」

 

ヴェルフ「いきなりイチャつかないでくれないか?」

 

まぁ、いいじゃないか。ふとリューの後ろを見ると見慣れた顔があった。

 

バル「アスフィ」

 

リリ「ヘルメス・ファミリア!」

 

アスフィ「お久しぶりです。バル様」

 

バル「色々と忙しそうだったから2週間以上だな。会えなくて寂しかったぞ」

 

アスフィ「そ、その……私も寂しかったです……///」

 

ヘル「アスフィもイチャつかないでよ」

 

アスフィ「っ!」ギッ

 

アスフィはヘルメスを親の仇でも見るような目で睨む。

 

ヘル「おぉ〜怖い怖い。可愛い顔が台無しだよアスフィちゃん。いやマジで待って。謝るから!すみませんでした!」

 

最初はからかっていたヘルメスは、アスフィが取り出したある物を見て顔を蒼白させて誤り出した。

因みに、ある物っというのは爆鱗だ。

 

アスフィ「バル様が槍を抜いたのわけですか……」

 

アスフィは俺の背中に背負ってる矢を見ていう。

 

ヘル「アスフィ。状況は?」

 

アスフィ「悪化する一方です。森の侵食は広まり、モンスターは今も増殖中。近隣の村はすでに壊滅しています」

 

ヘル「遺跡へのアタックは?」

 

アスフィ「門に阻まれ、すでに失敗に終わっています」

 

ヘル「君とリュー君でも?」

 

アスフィ「……出来ないことはないと思いますが、遺跡が倒壊するかと」

 

ヘル「そうか……」

 

バル「……面倒だな。だが、もしかしたら……」

 

ヘル「何か策はあるかい?」

 

バル「策と言っても門を溶かすだけだ。できるかわからないがな……」

 

その後、翼が無傷だった翼竜は空から、俺たちは残った翼竜と一緒にヘルメス・ファミリアのキャンプ場に向かった。

後ろの方でアルテミスとヘスティアに何かあったみたいだが……

 

 

 

アスフィ「ここはまだ正常ですが、じきに侵食されるでしょう。我々はここを拠点として、遺跡へのアタックを続けています」

 

俺たちはアスフィに連れられてヘルメス・ファミリアの拠点に着いた。

 

バル「色々と大変だな」

 

アスフィ「えぇ、本当に……」

 

ふむ……

 

バル「帰ったら1日なんでも聞くぞ。今回はアスフィが一番苦労しているからな」

 

アスフィ「……ありがとうございます」

 

俺の提案にアスフィは微笑みを浮かべて受け入れた。うん。妻を労わるのは夫の務めだからな。

 

さてさて、どこかに泉でもないかな。久しぶりに龍の状態で水浴びをしたい。っと、確かリリ達が向かった泉があったな。他にないか探すか。

ヘルメスが何か企んでそうだが。

 

 

 

ヘル「っ」ブル

 

 

 

川づてに進み、そこから森の中入った。木々を抜けて水のあるところに出ると。

 

バル「っ」

 

思わず見惚れてしまった。居たのは水浴びをしているアルテミスだった。さすが女神だけあって、容姿は美しい。綺麗なストレートの青髪。シミひとつない陶器のような白い肌。っと、これ以上女性の裸を見るのはダメだな。

俺は振り返って離れようとしたが

 

ガサ……

 

アル「誰だ!」

 

不幸にも物音を立ててしまった……せめて言い訳でも言おう。

 

バル「すまない。水浴びをするために泉を探していたらここに出た。すぐに離れる」

 

そう言ってその場を離れようとしたが

 

アル「待ってくれ」

 

アルテミスに呼び止められてしまった。

アルテミスはワンピースを着て水辺に立っている。どうしてこうなった。

 

アル「アハハハ……あなたは本当に運がいい。昔の私だったら即矢で射殺していた。」

 

バル「ヘスティアの言っていた話は本当だったんだな」

 

アル「さぁ?それはどうだろう」

 

バル「そう。昔のヘスティアはどんな感じだったんだ?大体は想像できるが」

 

アル「そうだな……結構ぐうたらで、面倒くさがり屋だった」

 

バル「そこは今も変わってないな」

 

アル「あとは、神殿に引き篭もっていたな」

 

バル「ほう、引きこもりか」

 

アル「私が遊びに行くと、それは嬉しそうで、まるで遊んでほしい子犬のようにはしゃいでいた」

 

バル「容易に想像できるな」

 

アル「ハハハ、ヘスティアは相変わらずだな」

 

 

 

 

 

ヘル「ヘスティア」

 

ヘス「っ」

 

ヘル「どうしたんだい?こんなところで」

 

ヘス「ただの散歩だよ」

 

ヘル「ふーん。使えもしない槍を持ってかい?」

 

ヘス「あっ」

 

ヘル「……ふー、もうわかってるだろう?ヘスティア」

 

ヘス「っ……本当に……本当にこの槍じゃなきゃダメなのか?」

 

ヘル「ダメだ」

 

ヘス「もっと他に方法があるだろう!ベル君にバル君もいる!レン君にアイ君だって……」

 

ヘル「ヘスティア!」

 

ヘス「うっ……」

 

ヘル「方法はないんだ。時間も、方法も」

 

ヘス「だって……今のアルテミスは……昔と違って、違うけど……すごく……アルテミスがかわいそうだよ……」

 

ヘル「だから槍を沈めようとした?」

 

ヘス コク

 

ヘル「優しいな、ヘスティアは(だからこそ、君に期待しているんだ、バル。君ならもしかしたら、そう思ってしまうんだ)」

 

 

 

 

バル「……」

 

アル「いつも一緒に泣いて、一緒に喜んで、笑顔を分けてくれるヘスティアに、慈愛を恵む彼女に私は憧れていた」

 

バル「俺は、いつもぐうたらで、ベルのことになると面倒になるが、主神として、家族としてヘスティアは好きだ」

 

アル「……すまない。あなたを巻き込んでしまって……」

 

バル「……」

 

アル「あなたには、過酷を押し付けることになる」

 

バル「……問題ない。どんなモンスターだろうと、滅ぼすだけだ。絶対に、お前を守る」

 

俺はアルテミスを真っ直ぐ見て言う。

 

アル「フフ、まるで英雄のようだな」

 

バル「一応、オラリオを守った英雄でもあるんだがな」

 

アル「あぁ、そういえばそんな話があったな。よく覚えていない」

 

……これまでからすると、アルテミスは分身のようなもののようだ。不安定さから見ると、慌ててやったから記憶も全部引き継いでないようだ。

 

バル「でもまぁ、俺もまだまだだ。本当の英雄は、誰をも笑顔にして、どんな困難も乗り越える。悲劇のヒロインなんかも作らない。そんな英雄に比べたら、俺なんか足元にも及ばない」

 

オラリオに行く前から度々ベルから英雄譚を聞いた。真実であるかはともかく、やはり英雄はすごい。俺も、英雄に憧れているんだろうな。

 

アル「わかった気がする」

 

バル「ん?」

 

アル「ヘスティアも、みんなもなぜあなたといると楽しそうで、信頼しているのか。あのヘルメスもあなたには全幅の信頼を置いている」

 

バル「それはそれで気持ち悪いな」

 

アル「フフフ、たしかにそうだな」

 

ふと、アルテミスは少し足をすすめる。

 

アル「私は貞潔の神。男女の恋愛など許さず、関わることさえ忌み嫌っていた」

 

それが、アルテミスと言う神の性質何だろう。

 

アル「だがある時、子供達に言われてしまった。『恋は素晴らしいと』」

 

バル「……」

 

恋は素晴らしい、か……あぁ、確かにそうだ。人を愛する心。それはすごく心地いい。

 

アル「今なら、それが少しわかる」

 

アルテミスはそう言って俺に手を差し出す。その姿はすごく美しかった。

 

アル「踊ろう」

 

その言葉に俺は応えた。応えないといけないと思った。

水の中に足をすすめ、アルテミスの手をとって心ゆくままに踊った。アルテミスはすごく楽しそうだった。そんな綺麗で、可愛いアルテミスを見てるのは俺と、空に浮かぶあの月だけだ。

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

知っているか?

 

何が?

 

下界の神々は1万年分の恋を楽しむそうだ。

 

1万年分?それは果てしないな。

 

フフフ、人は死んだら一万年後に生まれ変わると言われている。だかららしい。

 

神は執念深いんだな。

 

そうかもしれないな。生まれ変わるあなた達、子供達との悠久の恋。素敵ではないか?

 

あぁ、素敵だな。

 

オリオンの場合は違うがな。

 

俺の場合は1万年と言わずに10万、100万、それ以上を共に恋を楽しむ。俺自身、寿命はないとはいえ、どこまで生きれるのかわからないしな。

 

世界が終わる。その時までかもしれんな。

 

そんな時が来たら、俺は全力で世界の終わりを止めようとするだろうな。

 

フフフ、容易に想像できてしまうな。

 

オリオン

 

どうした?

 

 

 

 

あなたに出会えてよかった

 

 

 

 

月明かりの中、心ゆくまで踊る男女。男は覚悟を決め、女は自身の思いを自覚し、夢を……

天彗龍の覚悟と月乙女の夢。フフフ、素敵ですね。

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

ヘル「hdばうxjdbxyshbzysgsyじゃ!!」

 

バル「なぁにやってんだ、あいつ」

 

リリ「リリ達の水浴びを覗こうとしたのが悪いんです!」

 

アイ「ベルとヴェルフ、あとレン以外の男達が共犯」

 

ヴェルフ「出来るわけねぇだろ。てか、バルとベルは怒らないのか?自分の恋人の裸を覗こうとしたんだぞ」

 

バル「怒ってるに決まってるだろ」ゴゴゴ……

 

ベル「うん。僕もね」ゴゴゴ……

 

ヘル「dんhxjsんsjsj!」ブルブル……

 

バル「さぁて、ヘルメス。あっちで楽しいお話をしようか」ニゴォ

 

ベル「大丈夫ですよ。怖くなんかないですよ〜」ニゴォ

 

イギャアアァァァァァ!!

 

ちゃんちゃん

 




今回はここまで。
ずっと投稿できなくてすみません。週に一回投稿できるように頑張ります。

今回はどうですかね。久しぶりにアスフィとリューが登場しました。この章に入ってから現れていませんでしたし。
恋って、いいですよね〜。私は数年間してませんが、恋愛系の作品はすごく見ます。
一万年後に生まれ変わる恋人。どこで生まれるかわからないですし、巡り会えないかもしれない。そんな恋を楽しむ神はすごいですね。当然ですけど、その感覚は一生かかっても理解できないでしょうね。


さて、この章も後少しとなりました。後二話ぐらいですかね。ちょっとおまけでアルテミスの1日みたいなのを書きたいですけど、それは番外編での単発でいいですかね。
さてさてさて、次回予告をどうぞ。
ヒャイイイィィィ ヒュウウウゥゥゥ
んっと、ここでは初めましてだな。アルテミスだ。次回予告でよかったよな?
ついに始まる遺跡へのアタック。その遺跡の中で明かされる真実。
オリオンはアンタレスを倒せるのか。そして月乙女、私を救えるのか……。
次回、決戦アンタレス。天彗龍の覚悟
楽しみにしてくれ。
シュドオオオオォォォン

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