タイガ☆レコード   作:ベンジャー

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第1話『魔法のある街』

M78星雲、光の国・・・・・・この宇宙を守る光の戦士「ウルトラマン」達の故郷の星。

 

今、その星に向かって仮面をつけた青い巨人・・・・・・「ウルトラマントレギア」が光の国へと向かって飛行していた。

 

『待て!! トレギア!!』

 

そんな彼を2本角の赤き巨人「ウルトラマンロッソ フレイム」、1本角の青き巨人「ウルトラマンブル アクア」の2人が追いかけていた。

 

『鬼さんおいでぇ〜? 手のなる方へ〜♪』

 

トレギアは両手でパンパンと叩きながらロッソとブルを挑発し、ロッソは十字に組んだ腕から炎のエネルギーを集約した破壊光弾を発射する「フレイムスフィアシュート」を、ブルは腕をL字に組み、水のパワーを宿したエネルギーを放つ「アクアストリューム」をトレギアに向かって発射する。

 

しかし、トレギアはそれを難なく躱すが直後に頭上から大剣「オーブカリバー」を振り下ろして来た「ウルトラマンオーブ オーブオリジン」が現れ、トレギアは白刃取りで攻撃を受け止める。

 

そのままトレギアは押し返して両手先から放つ破壊光線「トレラアルディガ」を放ち、オーブはオーブカリバーで防ぐが吹き飛ばされそうになり、それをロッソとブルが支える。

 

『『紅葉さん!』』

『すまん助かった』

 

そしてその隙に光の国に進行しようとするトレギアだが、目の前に胸にはX字のカラータイマーと機械的な外見をした巨人「ウルトラマンエックス」、鋭い目つきが特徴の巨人「ウルトラマンジード プリミティブ」が現れ、トレギアの進行を阻む。

 

『駆逐艦 時雨アーマー、アクティブ!』

『ジードクロー!!』

 

「時雨アーマー」と呼ばれる鎧をエックスが纏うと両手に主砲を持ち、ジードはジードクローを頭上に突き出し、体をドリルのようにスピンさせながら敵へ突撃する「コースクリュージャミング」をトレギアに繰り出す。

 

『コースクリュージャミング!!』

 

だが、トレギアは「イスキュロス・イーバ」というバリアを張り巡らせて攻撃を防ぐのだが・・・・・・バリアはあっさりと砕かれてしまう。

 

だが、それとでもトレギアはなんとか身体をくねらせるようにして直撃は回避・・・・・・しかし、直後にエックスの放った砲撃がトレギアに直撃したのだ。

 

『ぐおっ!?』

 

さらに身体に輝く青いクリスタルのある巨人「ウルトラマンギンガ」、黒い身体にV字の頭部をした「ウルトラマンビクトリー」が現れ、2人同時にパンチをトレギアに叩きこむ。

 

『ショウラ!!』

『ツェア!!』

『ぐあっ!!?』

 

そのままトレギアは近くにあった小惑星にまで叩き落とされ、ギンガ達もその小惑星に降り立つ。

 

『トレギア、もう諦めろ。 お前の野望もここまでだ!!』

 

ギンガ、ビクトリー、エックス、オーブ、ジード、ロッソ、ブルの7人が並び立ち、ギンガはトレギアを指差しながら言い放つのだが・・・・・・。

 

『フン、最後まで諦めず、不可能を可能にするのがウルトラマンだと・・・・・・私は聞いたことがあるのだがね?』

「ふざけるな、お前がその言葉を使うな!!」

『夜空の言う通りだ、トレギア!!』

 

立ち上がりながら、ギンガの言葉にそう返すトレギア。

 

そんなトレギアにエックスと・・・・・・彼と一体化、ユナイトしている「西崎 夜空」が反論し、トレギアは「冷たいことを言うねぇ?」と不敵な笑みを浮かべる。

 

『ウルトラマン達よ。 私からのささやかなプレゼントだ。 受け取りたまえ』

 

そう言い残すとトレギアはその場から消え去り、ギンガ達は急いで追いかけようとするのだが・・・・・・その時、辺り一面に赤いランプのようなものが光る。

 

『しまった!! 罠だ!!』

 

そしてギンガ達のいる場所が突如として爆発し、ギンガ達は爆発に巻き込まれてしまう。

 

『うわああああ!!!!?』

『アハハハ』

 

テレポートしてそれを離れた位置で見ていたトレギアは愉快そうに笑いながら見つめていると、「トレギア!!」と誰かが彼の名を呼び、トレギアは声のした方を振り返ると2本の角の銀色のプロテクター、そして赤い身体をした巨人・・・・・・「ウルトラマンタロウ」がそこにいたのだ。

 

『っ、タロウ!!』

『闇に墜ちた者を、光の国に近づける訳にはいかん!!』

『フン、宇宙の番人を気取るな!! 光が正義だと誰が決めた!!』

 

そう言い放つとトレギアはタロウに向かって行き、同時にタロウもまたトレギアへと向かって行き、両者は激しく激突する。

 

一方、小惑星にいたギンガ達は・・・・・・。

 

爆発のダメージで倒れ込みながらもギンガ達はなんとか立ち上がろうとしているところであった。

 

『コウマ、お前気づけよ・・・・・・。 リーダーだろうが!』

『しょうがないだろ、この辺薄暗いんだから・・・・・・。 っていうか俺の腹から頭退けろ!』

『いった!? 頭ぶつなよ!?』

 

爆弾で吹っ飛ばされた際、ギンガの腹部に自身の頭を置くような形になったビクトリーから文句を言われるギンガだが・・・・・・ギンガはそんなビクトリーの頭を叩きつつ、なんとか立ち上がると・・・・・・。

 

そんな時、彼等の元にまた新たに3人のウルトラマンが現れる。

 

『先輩達!! 大丈夫ですか!?』

 

1人はタロウによく似た巨人で・・・・・・タロウの実の息子でもある「ウルトラマンタイガ」。

 

もう1人は筋肉質でマッチョな黒い身体の巨人「ウルトラマンタイタス」。

 

そして最後に、青い身体の巨人「ウルトラマンフーマ」である。

 

『先輩方、トレギアは俺達が止めます!!』

『油断するな、タイガ。 奴は手強いぞ』

 

ギンガからの警告を受け、タイガは「大丈夫です! 任せてください!!」と力強く答える。

 

『最強のチームワークを披露するチャンスだ!!』

『『あぁ!』』

 

タイガの言葉に賛同するように頷くタイタスとフーマ。

 

『だったら、これを持って行け』

 

すると、ギンガ達が自身のカラータイマーに手を添えて、右手をタイガ達に突き出すと・・・・・・そこから小さな光が放たれ、オーブ、ロッソ、ブルの光はタイガの右腕に装着されたアイテム、「タイガスパーク」の中に宿り、同様にエックスとジードの光はタイタスのタイガスパークに、ギンガとビクトリーの光はフーマのタイガスパークの中へと入って行った。

 

『ついでにこいつも』

 

そう言ってギンガは再び自分のカラータイマーに右手をかざしてそれをタイガに向けると、ギンガの右手から光がタイガの左腕に向かって放たれ、1つのブレス型のアイテムが装着される。

 

『これは・・・・・・!』

『それはニュージェネレーションブレス。 それもきっと、お前達の力になる筈だ』

 

それを受けてタイガは「はい!!」と頷き、視線をタロウと戦うトレギアに向ける。

 

『光の勇者、タイガ!!』

『力の賢者、タイタス!!』

『風の覇者、フーマ!!』

 

一方でトレギアは全身のエネルギーを両腕に集めて打ち出す必殺光線「トレラアルティカイザー」を放ち、同時にタロウも両腕をT時に構えて放つ「ストリウム光線」を発射し、トレギアの光線を相殺。

 

トレギアは再びタロウに向かってトレラアルティカイザーを放つのだが・・・・・・タロウを守るように3つの光がトレギアの技を防いだのだ。

 

『お前達・・・・・・!』

 

そこに現れたのはタイガ、タイタス、フーマの3人であり、3人は一斉にトレギアに向かい戦いを挑む。

 

『見ててください父さん!!』

『『『俺達は、『トライスクワッド』だ!!』』』

 

タイガ、タイタス、フーマの3人が結成したチーム、それが「トライスクワッド」。

 

しかしタロウは「止せ!!」と彼等ではトレギアには勝てないとトライスクワッドの3人を引き止めようとするのだが・・・・・・3人にはタロウの言葉が聞こえておらず、先ず最初にフーマがすれ違いざまに何度も両手に纏った光の手刀でトレギアを斬りつけ、さらに入れ替わるようにして今度はタイタスの拳が何発もトレギアに叩き込まれる。

 

『光の速さで、テメーをぶっ潰す!!』

『賢者の拳を受けてみよ!!』

『ぬがあ、あああ!!?』

 

さらにそこからタイガが両手を頭上で重ねて虹色のスパークを起こし、腰に添えてエネルギーを貯めた後、両腕を両腕をT字型に構えて発射する「ストリウムブラスター」をトレギアに向かって発射。

 

『ストリウム・・・・・・ブラスター!!!!』

『ぬおっ!?』

『どうだぁ!?』

 

直撃を受けたトレギアだったが、トレギアは余裕でタイガの光線を耐えきり、反撃とばかりに両腕を突き出して必殺光線であるトレラアルティカイザーを放ち、その直撃をタイタス、フーマは受けて2人は消滅してしまう。

 

『『ぐあああああ!!!?』』

『なっ! タイタス!! フーマぁ!! 貴様ぁ・・・・・・!! よくも俺の大切な仲間をォ!!』

 

それを受けて大切な仲間の2人を殺されたタイガはトレギアに強い怒りを抱き、怒りのままにタイガはトレギアに向かって殴りかかるが・・・・・・トレギアそれを避けつつタイガの首を掴みあげる。

 

『アッハッハ、熱いねぇ? そういうところは昔のタロウにそっくりだ』

『この!! 離せ・・・・・・!!』

 

そこからトレギアはタイガにほぼ零距離からのトレラアルティカイザーを撃ち込み、それを受けたタイガは耐えきれず、光の粒子となって消滅したのだ。

 

『うああああああ!!!!?』

『タイガぁ!!』

 

それを目撃したタロウは悲痛な声をあげ、トレギアはタロウの実の息子であるタイガを消す去る様をタロウに見せつけることが出来て少しだが満足げな笑みを浮かべるのだった。

 

『フン、良き旅を・・・・・・』

『トレギア、貴様・・・・・・!!』

 

タロウは全身に赤い炎を纏い、それと同時にトレギアも青い炎を全身に纏うと2人は互いに激しく激突し合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはタイガ達のいた宇宙とは異なる別の世界の地球。

 

そこでは1つの橋の下に置かれたダンボールに向かって、真っ直ぐ走ってくる1人の少年の姿があった。

 

少年、「光和(みつわ) ゼン」がダンボールの中を覗き込むとそこにはトカゲに似た生物がおり、ゼンは「チビスケ!」と呼ぶとゼンの存在に気付いたトカゲのような生物、「チビスケ」は顔だけをダンボールから出し、嬉しそうな鳴き声をあげる。

 

「行くよ、クンクンッパ!」

 

ゼンはそう言いながら左手を上下に動かした後、手をパーにして見せるとチビスケもそれに合わせて首を上下に動かした後、口を開くといった動作を見せる。

 

「良いぞチビスケ! すぐに芸を覚えて、お前頭良いな!!」

 

ゼンはチビスケがすぐに芸を覚えてくれることに感心し、チビスケの頭を優しく撫でる。

 

「ご褒美にチョコあげる!」

 

そしてゼンはご褒美としてチョコをチビスケに差し出し、それを美味しそうに食べるチビスケ。

 

だが、そんな時・・・・・・サングラスをかけた黒ずくめの男性が突然現れ、チビスケを乱暴に掴みあげようとして来たのだ。

 

「こんなところにいやがったのか!!」

 

当然、そんな乱暴にされることにチビスケは嫌がり、ゼンも男性の腕を掴んでチビスケから手を離させようとする。

 

「何すんだやめろよ!!」

 

しかし、子供の力で大人の力に勝てる筈もなく、男性はゼンを強引に押し退かし、男性はチビスケを脇に抱えると男性は「電波怪人  レキューム人」という宇宙人の姿に変え、その場から離れようと何かに吸い寄せられるように空中に浮かび上がる。

 

「なっ、待て!!」

 

それを阻止しようと、ゼンはレキューム人を睨み付けながら目が青く光ると、その姿を変えてレキューム人にしがみついたのだ。

 

『なに!!?』

 

ゼンがしがみついて来たのもそうだが、それ以上にレキューム人が驚いたのは・・・・・・地球人だと思っていたセンが、どこか無機質にも見える宇宙人・・・・・・「ネリル星人」と呼ばれる宇宙人に変身したからだ。

 

『お前、宇宙人だったのか!?』

『違う、俺は・・・・・・地球人だ!! ってかそんなことどうでも良い!! チビスケを返せよ!!』

 

ネリル星人は攻撃手段を持たず、能力と言えば短時間のみだが粒子体となって移動し、壁などをすり抜けることができるぐらいであり、それもまだ子供であるゼンにはその能力を上手く使うことができなかった。

 

にも関わらず、彼がネリル星人の姿になったのは地球人の時に比べ、多少身体能力が向上している為であり、チビスケを意地でも取り返す為、この姿となって必死にレキューム人の服を掴んでチビスケを奪い返そうとする。

 

『チビスケを・・・・・・返せ!! チビスケは俺の友達なんだ!! 返せよ!!』

『ふざけんな!! 返すも何もこいつは最初から俺のもんだ!!』

 

ネリル星人の姿になり、人間の時の姿に比べて多少身体能力が上がったとは言えやはりそれは所詮「多少」でしか無く、やがてレキューム人に突き放され、既に遥か上空にいたゼンは真っ逆さまに落ちていくのだった。

 

ネリル星人の能力である粒子化が使えればゼンは助かったのかも知れないが、先ほども説明した通り彼はまだその能力を使うことができない。

 

そのため、このまま行けばゼンは地面に激突し、間違いなく命を落とすだろう。

 

だが、その時・・・・・・例え能力が使えなくても恐れず、全力で友を助け出そうとする彼の勇気に応えるかのように、宇宙を漂っていた赤い光の粒子がゼンを包み込んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの・・・・・・大丈夫ですか!?」

『うっ・・・・・・んっ?』

 

目を覚ますと、自分は草むらに倒れていることに気付き、目の前には心配そうにこちらを覗き込んでくる桃色の髪の少女がいた。

 

『・・・・・・誰?』

「あっ、えっと・・・・・・私、『環 いろは』って言います」

 

どこか戸惑った様子で、ゼンに自分の名前を教える「環 いろは」という少女。

 

そんな彼女の名前と姿に、どこか見覚えがあることに気付いたゼンは・・・・・・未だに意識が朦朧としつつも、頭をフル回転させ、必死に自分の記憶の中で彼女のことを探す。

 

「その、どうしてこんなところで倒れてたんですか? どこか、身体が悪いんですか宇宙人さん?」

 

しかし、思考していた考えは彼女の言う「宇宙人さん」という言葉を聞いたことでストップしてしまい、ゼンは「えっ?」と顔を青ざめさせる。

 

するとゼンは慌てて起き上がり、自分の身体を見てみると・・・・・・ゼンは未だに自分がネリル星人の姿のままであることに気づき、唖然とした。

 

『し、しまった! まだこの姿のまま・・・・・・ッ』

 

その時、不意に、自分の右腕が痛むのを感じ、ゼンは左手で自分の右腕を押さえる。

 

そんなゼンの姿を見ていろはは「大丈夫ですか!?」とゼンに駆け寄る。

 

『君は、怖くないのか? こんな化け物が目の前にいて・・・・・・』

 

地球人は自分達とは異なる・・・・・・それこそ、全く人間には見えない自分のような宇宙人を見たら怖がるのが普通だった。

 

なのに、このいろはという少女は怖がるどころか本気で自分のことを心配そうに見つめており、ゼンはそれが不思議でならなかった。

 

そのことについてゼンがいろはに質問すると、いろははキョトンッとした顔でこう応えたのだ。

 

「怖くないですし、宇宙人さんから見たら地球人こそ怪物に見えるかもしれないじゃないですか。 それに、困ってる人を放っておけないですし」

『っ・・・・・・!』

 

いろははそれが当たり前だとでも言うように、笑みを浮かべながらゼンの疑問に答え、それに驚きを隠せないゼン。

 

彼女の瞳を見れば、それが嘘偽りないものであることが分かり、それが本心であることも分かった。

 

そして、ゼンはジッと彼女の顔を見つめて・・・・・・ようやく彼女が誰なのかを思い出した。

 

(そうだ、環 いろはって・・・・・・俺と同じ小学校に通ってる同級生!!)

 

そこでようやく、ゼンはクラスは違うが彼女が自分と同じ小学校に通っている同級生であることを思い出し、まさか同級生にネリル星人としての自分の姿を見られることになるとはとゼンは驚きを隠せないでいた。

 

「腕が痛むんですか? どうしよう、私今、絆創膏くらいしか持ってない。 コンビニで包帯とか色々・・・・・・! ちょっと待っててくださいね!」

『あ・・・・・・』

 

コンビニで包帯を買う為に、ゼンが声をかける暇もなくその場から一旦立ち去って行くいろは。

 

そこから走り去ってゆくいろはの背中を見つめながら、ゼンは地球人の姿に戻る。

 

「はあああぁぁ〜! まさか環に見られるとは・・・・・・。 チビスケは連れていかれるし、同級生にはネリル星人としての姿を見られるし、今日は人生最悪の日だ・・・・・・!!」

 

ゼンは頭を抱えて、チビスケを連れて行かれたことと、いろははああは言ってくれたが、それでもやはりネリル星人の姿を見られたことのショックは大きく、彼は膝を抱えながら落ち込んでいると・・・・・・。

 

「あれ? 光和くん?」

「っ!? 環!?」

 

先ほどコンビニに行った筈のいろはがもう包帯を手にして戻って来たのだ。

 

「えっ、ちょ、早くない!? さっき包帯買いに行ったんだよね!? なに!? 環はフラ〇シュかなにか!?」

「・・・・・・えっ?」

 

流石に帰ってくるのが早すぎないかとゼンは驚くが、驚きすぎたせいで完全にボロを出し、遠回りにいろはに「自分こそがネリル星人です」と言っていることに気付かないゼン。

 

「光和くん、なんで私がコンビニで包帯を買いに行ったこと知ってるの?」

「えっ? あっ・・・・・・」

 

いろはに指摘され、ゼンは「やってしまった」と言わんばかりの表情となる。

 

しかも運悪いことに、慌てて自分の口を押さえた際にゼンは「ズキリ」と右腕の痛みを感じ、苦痛に満ちた表情を浮かべながら自分の右腕を押さえてしまう。

 

それを見たことで、いろはが抱いていた疑問は確信に変わった。

 

彼こそが、先ほどのネリル星人なのだと。

 

「・・・・・・そっか、光和くん宇宙人だったんだ」

「えっと、あの・・・・・・みんなには、内緒でお願いします」

 

もはやもう隠し通すことはできないと判断したゼンは、頭を下げていろはにみんなには言わないでくれと頼み、いろはは笑みをゼンに向けながら「勿論!」と約束し、彼女はそのままゼンに傷の手当てをしてくれる。

 

「その、優しいんだな。 環は・・・・・・ありがとう」

「どういたしまして。 でも私は、当たり前のことしてるだけだよ」

 

ここまでが光和 ゼンと、環 いろはの最初の出会いであり、そんな出会いを、遠くからこっそりと見つめる白と黒の模様が半々になった服を着た青年がいた。

 

「彼の中で、君が再び目覚める日を楽しみにしているよ、タイガァ?」

 

これはまだ、トレギアの描いた物語の序章に過ぎない・・・・・・。

 

 

 

 

それから・・・・・・いろはとゼンが出会い、数年の時が経った頃・・・・・・。

 

 

 

 

やあやあ知ってる?

 

聞いたことある?

 

「魔法少女」のその噂!

 

魔法少女? おとぎ話?

 

違うの違うよ、ホントの話。

 

白い妖精と契約してなんでもたった1つだけ願いを叶えて貰う。

 

その代わり、魔法少女に任命されて魔女退治をさせられるの。

 

魔女って良い魔女? 悪い魔女?

 

もちのロンロン悪い魔女!

 

人間を捕まえて、お菓子みたいにボリボリ、バリバリ食べちゃうの!

 

そんなのと戦わなきゃいけないの?

 

そうだよ、だから魔法少女は命がけ!

 

魔法少女なんて絶対嫌!

 

怖いのも痛いのも大嫌い!

 

でもねだけどねその代わり、なんでも願いが叶っちゃう!

 

なんでもって、なんでも?

 

なんでも!

 

1つだけなら叶えてくれる。

 

それなら命だって懸けられちゃう。

 

勉強しなくても100点取りたい!

 

沢山食べても太らない身体!

 

あ〜あ、私も魔法少女になりたいなぁ!

 

 

 

 

 

 

 

ゼンといろはが出会って数年の時が流れ、現在ゼンやいろはは成長し、小学生だった2人は中学3年生となっていた。

 

そして今、いろはとゼンはある電車に乗っており、2人は奥の車両の方へと向かって歩いていた。

 

すると、ある1つの車両の中に入ると、そこでは1人の幼い少女が泣きじゃくっており、いろはは少女に向かって駆け寄るとしゃがみ込んで一体どうして泣いているのか事情を尋ねる。

 

すると、少女の後ろを振り返り、次の車両に進む為の扉を指差し、彼女の足下に置かれてある猫を入れて移動するための荷物に視線をやると、なぜ少女が泣いているのかをいろはは理解し、鞄の中にある宝石のようなものに目をやると、その宝石は強い光を放っていた。

 

「行くのか?」

「うん、ゼンくんはその女の子をお願い」

 

いろははそう言うと少女のことをゼンに任せ、自分は奥の車両へとさらに進んでいくため、扉に手をかけ、開けようとするが・・・・・・。

 

「いろは!」

 

直後に、ゼンに呼び止められ、一瞬動きを止めてゼンの方へと振り返るいろは。

 

「あんまり、別のことに気を取られるなよ」

「あっ、うん。 心配しないで? 絶対無事に帰るから」

 

いろははそれだけを言い残すと、扉を開け、中へと入っていくと彼女は殆ど真っ暗な次の車両を通り抜け、さらに奥の車両の扉を開けると・・・・・・。

 

そこには現実の世界ではあり得ないような、黄色い空と、その空には無数のガラクタで出来た橋のようなものが漂う空間があり・・・・・・。

 

「魔女」の作り出した空間「魔女の結界」があったのだ。

 

「っ!」

 

いろははすぐさま鞄から宝石、「ソウルジェム」を取り出すとそれを握りしめ、眩い桃色の光を放つと彼女は清廉な修道女を思わせるケープを被り、編み上げサイハイブーツや黒インナーを纏った姿・・・・・・「魔法少女」へと変身し、橋の上に降り立つ。

 

すると、橋の中にいたと思われる筆で描かれたようなベタ黒のオオサンショウウオのような見た目で六本の足を生やし頭部に巨大な眼のような口を持つ怪物、「石中魚の魔女」がいろはの気配を感じ取ったのか、橋の中から飛び出し、いろははの目の前に現れる。

 

魔女は巨大な口を開き、いろはに襲いかかって来るが彼女はそれを躱しつつ、魔女の背後に回り込む。

 

そのまま彼女は左腕にクロスボウのような武器を出現させて装着し、桃色の矢を魔女に向かって放つが、魔女は素早く徘徊することでいろはの放つ矢をことごとく躱していく。

 

すると、突然空間に3つほど新たな橋が出来上がり、その橋から黒い魚の胎児みたいな姿をした「石中魚の魔女の手下」達が無数に飛び出し、いろはに飛びかかって襲いかかってくる。

 

それをいろははしゃがみ込むことで手下達の攻撃を躱すが、そこの隙を突き、いろはに突進を繰り出す魔女。

 

直撃こそ避けたものの、それによっていろはは吹き飛ばされて橋の上を転がってしまう。

 

「きゃああ!!?」

 

だが、いろははすぐに起き上がり、クロスボウを構えるが・・・・・・。

 

直後、いろはの背後から彼女と似ているが、対象的に黒い衣装を身に纏ったもう1人の魔法少女、「黒江」が駆けつけ、いろはの頭上を飛び越えると両手に持った2つのメイスを魔女の足下に叩きつけ、魔女の足場を破壊する。

 

だが、魔女は背中から翼を広げて飛行し、手下達に黒江といろはを襲わせるが・・・・・・黒江は襲いかかって来る手下達を次々に倒して行き、いろははその間に魔女に強力な一撃を撃ち込もうとクロスボウを構える。

 

「・・・・・・あっ!」

 

だが、その時、空に白猫が漂っていることに気付き、いろははクロスボウを仕舞ってこちらに向かって落ちて来ている猫を両手で受け止め見事にキャッチ。

 

どこも怪我をしていない様子の猫を見て、いろはは安心したように笑みを浮かべる。

 

その時、魔女がこちらに向かって突っ込んできていることに気付いたいろはは黒江と共にここは部が悪いと判断し、一時撤退。

 

結界の外に抜け出し、いろはは黒江と共にあの少女と、ゼンのいた場所に猫を抱えて無事に戻ってくるのだった。

 

「あっ・・・・・・」

 

少女はいろはの元へと駆け寄り、いろはもしゃがみ込んで猫を少女へと渡すと先ほどまで泣いていた少女は・・・・・・嬉しそうに笑顔を取り戻すのだった。

 

「わあ、ありがとう、お姉ちゃん!」

「いろは!! 無事で良かった・・・・・・」

「ゼンくん・・・・・・」

 

そこへゼンもいろはの元へと駆け寄り、彼女が無事であることを確認すると、ホッと一安心し、胸を撫で下ろすのだが・・・・・・。

 

ゼンは少女の抱える猫と、いろはを交互に見て「はぁ」と溜め息を吐いた。

 

「でも見た感じ、魔女を倒すよりも猫を助けることを優先したみたいだな? ハァ、別のことに気を取られるなって言ったのに・・・・・・」

「言っても、それを素直に聞く人じゃないでしょ?」

 

魔女を倒すより、猫を助けることを優先したことにどこか呆れたような黒江とゼン。

 

「だ、だって、この子に取っては、猫だって家族なんだよ? それを放っておくことなんて、私にはできない・・・・・・から」

『そうだぞ、ゼン。 お前だってその気持ちは分かるはずだ』

「んっ?」

 

そんな時、突如としてゼンの耳に聞き慣れない誰かの声が聞こえ、不思議そうに辺りを見回す。

 

「いろはと黒江さん、今なんか言った?」

「えっ? 私は何も・・・・・・」

「私も・・・・・・」

 

ゼンはてっきり、いろはか黒江が何か言ったのかと思ったが・・・・・・よくよく考えれば先ほどの声は男性のものであり、ゼンは辺りを見回すが・・・・・・。

 

やはりこの車両にはいろは、黒江、少女と猫、そして自分しかいないし、自分以外に男はいない。

 

「ね、ねえ、ゼンくんどうしたの? 大丈夫?」

「あっ、うん、多分気のせい・・・・・・。 うん、なんでもない、きっと気のせいだ」

「そう? なら、良いけど・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、いろはは不思議な夢を見た。

 

自分の部屋にいる、自分以外の誰か・・・・・・。

 

その誰かは黒いシルエットのようになっていて、どんな顔をしているのか確認ができない。

 

すると、目の前にノイズが走り、テレビの画面を切るかのように・・・・・・プツンッと目の前が真っ暗になった。

 

「・・・・・・夢?」

 

そこでいろはは目を覚まし、「不思議な夢を見たなぁ」と思いつつ、彼女は起き上がって制服に着替え、学校に持って行く為の弁当を作るのだが・・・・・・。

 

「あっ、またやっちゃった・・・・・・」

 

弁当を作る時・・・・・・自分が魔法少女になって少しした後から、なぜかいろははこのようについつい弁当を2つ作ってしまうことがあり、彼女はまた弁当を2つも作ってしまったと、気をつけなければと反省する。

 

「お母さ・・・・・・」

 

そこでいろはは作りすぎてしまった弁当を母親に持って行かせようと思ったのだが、両親は今、海外出張でいないことを思い出し、彼女は下宿の入居準備ができるまでしばらくは1人暮し状態になっていた。

 

そこへ「ピンポーン」という家のチャイムの音が鳴り、いろはは「はーい!!」と返事をしながら扉を開けるとそこでは制服姿のゼンの姿があり、ゼンはいろはを迎えに来たのだ。

 

「おはよ、いろは」

「ゼンくん! おはよう。 丁度良かった。 またお弁当作り過ぎちゃって・・・・・・良かったらゼンくんに」

「えっ? また2つも弁当作ったのか? それに、俺・・・・・・自分の分の弁当一応あるんだが・・・・・・」

 

いろはは作りすぎてしまった弁当をゼンに渡そうとするが、ゼンは右手に持った弁当袋をいろはに見せ、一応自分もちゃんと弁当は持ってると主張するが、それに対していろはは不満げな顔を浮かべた後、呆れたような視線をゼンに向ける。

 

「どうせ中身、白米ともやしだけでしょ?」

「もやしは栄養や健康に良いんだぞ」

「いやそういう問題じゃなくて・・・・・・」

 

実のところ、ゼンの家は学校に通える余裕こそあるものの結構貧乏であり、ゼンはほぼ毎日のようにもやしを主食にして食べているのだ。

 

確かにもやしは健康などに良いのかもしれないが、流石に食が偏りすぎてるのではないかと思い、いろはは台所に置いてある弁当の1つを持って来て、半場無理矢理押しつける形で作りすぎてしまった弁当をゼンに渡す。

 

「もやしは健康に良いかもしれないけど、それでもちゃんとした食事取らないと、身体が持たないよ?」

「いやまぁ、正直言うと嬉しいし、いろはの手作り弁当食えるほどの幸せはないけどさ」

 

兎にも角にも、ゼンは「貰えるのなら貰うよ」と素直に弁当を受け取り、その後は2人で一緒に並んで通学路を歩き、学校へと向かうことに。

 

「いろはのやりたいこと?」

「うん、魔法少女が・・・・・・私のやりたいことなのかなって」

 

学校へと向かう途中、両親が海外に行く際に留学の話が出ていたのだが、「海外はちょっと」と言うことで留学行きを断っていたのだ。

 

その時は母親に「なにかこっちでやりたいことでもあるの?」と尋ねられ、いろはは「うん、まあそんな感じ」と応えたのだが・・・・・・。

 

その「自分のやりたいこと」がいろははなんなのかはイマイチ、ハッキリすることができずにいたのだ。

 

「そりゃ、いろはがいなくなったら俺も寂し・・・・・・いや、滅茶苦茶寂しいけど」

「うん、私も・・・・・・ゼンくんと遠く離れちゃうのは嫌だけど・・・・・・」

 

そう発言するいろはの言葉にまさかそんな返しが来るとは思わず照れ臭そうな顔を浮かべ、なるべくいろはに自分の顔を見られないようにそっぽを向くゼン。

 

「でも、それだけが理由じゃないような・・・・・・」

「もしかして、いろはのやりたいことって、いろはが忘れたって言う『願い』が関係しているのかもな?」」

 

そもそも、魔法少女になるには「キュゥべえ」というウサギと猫を合わせたような不可思議な見た目をした生物と「契約」をしなければならない。

 

そのキュゥべえに願いを言うことで、その願いを叶えて貰い、少女達は魔法少女に変身できる力を得るのだが、いろはにはキュゥべえに願い、叶えて貰った筈の自分の願いをまるで覚えていないのだ。

 

自分が叶えて貰った願いを忘れるなんて、普通はあり得ないだろう。

 

だからいろはは数日前、キュゥべえの元を訪れて、自分がどんな「願い」をキュゥべえにしたのか尋ねたのだが・・・・・・。

 

彼女の望みを叶えたキュゥべえですらいろはの願いについては「よく分からない」とのことだった。

 

いろはが誰かの為に願いを使ったこと自体は判明しているのだが、その個人名や具体的内容に関しては不明な部分があまりにも多いらしく、いろははキュゥべえになんとか思い出せたりできないだろうかと相談したが、やはりそういったことは現状無いに等しい状態だった。

 

もしかしたら、いろはの願いの一部に願い自体を秘匿したいという内容も含まれていたのかもしれないキュゥべえは推察していたが・・・・・・。

 

「誰の記憶にも残らないように叶えて欲しいって願ったってことなのかな? 自分も含めて? そんなことゼンくんは普通言うと思う?」

「自分にすら隠す願いごとって・・・・・・確かに、普通は言わないよな」

 

自分の人生を懸けた願いなのに、自分でもそれが分からないなんて嫌だといろはは思い、なんとかして思い出す方法はないかと思うが・・・・・・。

 

やはり現状、その方法はない。

 

「信用できんのかね、それ」

 

ただ、前々からゼンとしてはあの「キュゥべえ」とかいう猫ウサギのことをずっと「胡散臭い」と思っており、キュゥべえの言うことが本当かどうか、もしかして本当はいろはがどんな願い事を言ったのか知ってるんじゃないか、何か自分に取って都合の悪いことを隠しているのではないかとどうしても疑ってしまうのだ。

 

「ゼンくんはどうしてキュゥべえのこと嫌ってるの? ゼンくんと同じように、キュゥべえだって私達魔法少女のことを可能な限りサポートしてくれてる子なのに・・・・・・」

「別に嫌ってる訳じゃない。 ちょっと、胡散臭さを感じるってだけだよ。 まぁ、気にしなくて良いよ。 俺の思い過ごしかもしれないし」

 

それでも、いろはとしてはキュゥべえのことを少し悪く言われたことが不満げなようで、どこかムスッとした顔を浮かべていた。

 

「ごめんごめん、今度キュゥべえに会ったら疑ったこと謝るから」

「なら、良いけど・・・・・・」

 

本当は謝りたくはないのだが、いろはをあんまり怒らせたくないので渋々今度キュゥべえと会ったら謝っておくとゼンは彼女と約束するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、下宿先が見つかるまで1人暮らしになることについていろはは担任の教師に呼び出されていた。

 

「環さん、ご両親海外出張確か今週からだったわよね? 大変でしょ?」

「は、はい、そうです」

「1人暮しは何かと大変よね。 何かあったら遠慮せずお友達を頼りなさいね? 大変なのだから!」

 

担任なりに、いろはのことを気遣ってのことだろう。

 

「勿論私も出来る限りのサポートはするわね。 頼ってくれて構わないのよ?」

「はい、ありがとうございます」

 

そんな担任の気遣いに、いろははお礼を述べ、職員室の扉の前で待っていたゼンと合流し、教室に置いてある荷物を取って一緒に帰ろうとするのだが・・・・・・その途中、同じクラスメイトの女子生徒3人がいろはに話しかけてきたのだ。

 

「ねえねえ、環さん家って今親いないの?」

「えっ? うん」

 

急に話しかけられて一瞬驚いたような顔を浮かべたいろはだったが、彼女等の問いかけにはちゃんと応え、またクラスメイトと話すいろはを見てゼンはなぜか急いで彼女から離れて距離を取る。

 

そんなゼンに「なんで距離取るの?」と思いつつ、クラスメイトの3人に「今両親、海外に行ってるから」と伝えると、クラスメイトの1人が「えっ、マジで? それ羨ましいんだけど!」と現在、いろはが1人暮し状態であることを聞いて興奮した様子を見せる。

 

「徹夜でスマホ見放題じゃん!」

「お菓子も食べまくり?」

「門限とかもないんでしょ?」

(いろはのことだから、徹夜もお菓子も門限も守らないってことはないだろうな)

 

いろははしっかり者なので、親がいないからという理由で徹夜でスマホ見放題も、お菓子食べまくりも門限を守らないなんてこともないだろうなとゼンは思いつつ、兎に角これを切っ掛けにいろはが自分以外のクラスメイトと仲良くなれたらなと考える。

 

人付き合いがあまり得意ではないいろはは、こう言ってはなんだがちょっとぼっち気味だった。

 

これに関しては、ゼンも人のことを言えたことではないのだが、彼の場合はそもそもいろは以外とあんまり人と関わる気が起きないだけで、いろはと違って望んでぼっちでいるだけだ。

 

でもいろはは違う。

 

彼女は望んでぼっちでいる訳では無い。

 

それでも人付き合いが苦手で、誰かを助けることでしか他人とコミニュケーションができない彼女には中々ゼン以外の「友人」と呼べる人物がいなかった。

 

そのせいで影で「何考えてるのかよくわかんない」といろはが言われているのをゼンは知っている。

 

ゼンとしては、いろはには自分以外の友人を作って貰い、魔女と戦う彼女が少しでも心安らげる場所が増えてくれればと願っていた。

 

だからゼンは、丁度クラスメイト達がいろはと話しかけて来たのがチャンスだと思い、いろはから即座に離れたのだ。

 

いろはに友達が出来るかもしれないと思って。

 

それで自分と関わる時間が減ったとしても、かつて自分の心を救ってくれたいろはに恩返しが出来るのなら、それでも良いともゼンは思う。

 

そして、生徒Aや生徒B、生徒Cがそれぞれいろはの1人暮し状態を羨ましがっていると、不意に生徒Bが「あっ!」と声をあげ、生徒AとCが「急にどうした?」と尋ねる。

 

「今日さ、掃除当番なんだけどちょっと用事出来ちゃって。 お願い、誰か代わって!」

 

両手を合わせて誰か代わってくれないかと懇願する生徒Bだったが、生徒Aは「アンタ、この前も同じこと言ってたじゃん」と呆れたようにツッコまれてしまう。

 

「あの時はあの時で超絶大ピンチだったんだって!」

「あ、あの! 私、代わろうか・・・・・・?」

 

困り果てていた生徒Bに対し、いろははだったら自分が代わってあげようかと提案すると、生徒Bは「マジで!?」と喜び、いろはの前で両膝を突いて感謝の意を示す。

 

「環さん、お優しい! マジ天使!」

(そこは同感する)

 

生徒Bに、生徒Cは「あんまこいつ甘やかさなくて良いよ?」と言うが、いろはは笑顔を振りまいて「今日用事ないし、帰ってもそんなにやることないから」と言って掃除当番を代わるのをそのまま完全に引き受けてしまったのだ。

 

そんないろはに対し、生徒達3人はお互いに顔を見合わせ、少し戸惑ったような顔を浮かべていた。

 

(はぁ、もうちょっと上手く立ち回れば、友達になれたかもしれないのにな)

 

それを見て「あちゃ〜」とでも言いたげに、またいろはが友達を作るチャンスを逃してしまったなと残念そうにするゼンだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「別にゼンくんまで掃除当番、付き合うことなかったのに・・・・・・先に帰ってても良いよ?」

「いやいや、いろはが残るなら、俺も手伝うよ」

 

放課後の清掃時間に、いろはは床にモップをかけながら生徒達の机の上を雑巾で拭くゼンに別にたった1人で掃除している訳では無く、ちゃんと他にも掃除当番の生徒達もいるので先に帰ってくれてても構わないと言うのだが、それでもいろはだけを残して自分だけ帰るのは気が引ける為、ゼンは自分も残るといろはに言葉を返す。

 

「じゃあ私等、ゴミ捨て行ってくるから!」

 

そこで掃除当番をやっていた他の生徒達がゴミ捨てに行くことをいろはに伝えて教室を出て行くと、それと入れ替わる形でいろはのスマホが鳴り、彼女がスマホの画面を確認すると黒江からの電話だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒江に呼び出され、掃除を早めに終わらせたいろはとゼンは帰りにも乗るための電車に乗り込むことになり、そこで黒江と話をすることになったのだった。

 

「来てくれてありがとう。 昨日も会ったばっかりだったのに、迷惑だったかな?」

「いえ、情報交換は大切ですから」

「そうだよ。 どうせなんだから情報交換以外にもいろはと一緒にどっかに遊びに行ったりとか、誘ってやってくれませんかね黒江さん? この娘俺以外に友達いなくてずっとぼっちなんですよ。 このまま他に友達できないのかなって俺、心配で心配で・・・・・・」

「いや、お母さん!? ゼンくんは私のお母さんか何かなの!?」

 

友達が自分以外にできないことが心配だと嘆き、この際だから魔法少女としての交流だけじゃなく、どうせなら友達としても交流してくれないかと黒江に頼むゼンだが、まるで母親のように心配し、ぼっちであることを暴露されたいろはは顔を真っ赤にして「余計なこと言わなくて良いから!」と慌ててゼンの口を両手で塞ぐ。

 

「えっ、友達・・・・・・? 光和さんって環さんの彼氏じゃなかったの?」

「「違います」」

 

ゼンといろはは何時も一緒にいるので、てっきりそういう仲なのかなと思っていた黒江だったが、ゼンもいろはも「全然違う」と否定。

 

「そ、それよりも黒江さん! 今日は何かあったんですか?」

「・・・・・・」

 

話題を逸らそうとしたのか、いろはは黒江が自分達・・・・・・正確にはいろはだけを呼び出したのだが、彼女は自分達が呼び出された理由を黒江に尋ねるが、黒江が何か言い辛そうな顔を浮かべており、口ごもっている。

 

「・・・・・・えっと、昨日は魔女に会えましたけど、最近は本当に魔女も減って来ましたね。 私達の活躍のおかげかな? なんて・・・・・・グリーフシードが手に入らないのは困りますけど。 こんな私でも、役に立ててるのかなって」

 

尚、「グリーフシード」というのは魔女を倒した際に落とすアイテムであり、これをソウルジェムにくっつけることで減ってしまった魔力を回復したりすることができるのだ。

 

ちなみに、ここら辺でさらに詳しいことを説明すると、魔女や魔女が作り出す結界は一般人が視認することはできない。

 

魔女や結界を感じ取ることが出来るのは魔法少女や魔法少女の素質がある人間のみ。

 

ゼンの場合はそもそも男だし、それを抜きにしたとしてもそのどちらでもないのだが、彼は普通の人間ではない。

 

実はゼンは母親が地球人で、父親は今は亡きネリル星の数少ない生き残りの、ネリル星人なのだ。

 

地球人とネリル星人のハーフという特異な身体をしているからか、ゼンには一般人が感じ取れない魔女の気配などを感じ取ることができる。

 

とはいえ、まだゼンはネリル星人の力を完全に使いこなせている訳では無いが、力が使いこなせたとしても所詮は戦闘能力が皆無に等しいネリル星人なのでいろはの戦闘の役には立てない。

 

せいぜい、並の魔法少女よりも魔女の気配を感知できるというくらいだ。

 

だから、ゼンは基本いろはの主にサポートを担当しているのだ。

 

最も、ゼンはそれくらいのサポートしかできないことに悩んでいるのだが。

 

「・・・・・・環さんは、こんな話聞いたことある?」

 

そこで、今まで黙っていた黒江が口を開く。

 

「『神浜市』に行けば、魔法少女は救われるって」

「救われる? 救われるってどういうことですか?」

「もう魔女と戦わなくて良くなるって」

「っ!」

 

そんな黒江の話を聞いて、黙り込んだままではあるがいろは以上に目を見開き、大きな反応を見せるゼン。

 

「それって神浜市には魔女がいないってことですか? でも、他の地域に魔女がいるなら魔法少女が頑張らないと街が大変なことになるんじゃ・・・・・・」

「詳しいことは、分からないんだけど・・・・・・」

「黒江さん、誰がそんなこと?」

 

イマイチ信憑性に欠けることから、いろはは一体誰がそんなことを言っていたのかと問うと黒江曰く、「みんなが噂している」とのことだった。

 

「噂? 誰かが神浜市に行けば魔法少女は救われるってみんなに言って回ってるってことですか? それってちょっと怪しいんじゃ・・・・・・」

「そういう夢を見た娘がいるの」

 

だからと言って、夢を見ただけでそんな噂になるなんてあり得るのだろうかと疑問に思ういろはだったが、そんな夢を見たのは1人や2人だけではない。

 

もっと多くの魔法少女が、その夢を見たと言うのだ。

 

「夢の中に小さい女の子が出てきて、『神浜市に来て、そうすれば魔法少女は救われる』って」

「そんなの、みんな信じちゃってるんですか!?」

「私もその夢、見たから・・・・・・」

「っ・・・・・・」

 

幾らみんなが見たと言っても、やはりどうにも信じられないいろはだったが、今目の前で自分と話している黒江もその夢を見たと言うのだ。

 

「・・・・・・俺は魔法少女じゃないけど、俺も・・・・・・黒江さんの話を少し信じたいなって思う」

 

そこで今まで黙って黒江から話を聞いていたゼンも、少しでも可能性があるのなら信じてみても良いのではないのだろうかと言いだし、いろはは「ゼンくんまで何言ってるの!?」と驚きの声をあげる。

 

「俺は、出来ればいろはに危ないことして欲しくないんだよ。 魔法少女をやめられるなら、俺は魔法少女をやめて欲しい」

 

ゼンとしては、魔女と戦ういろはのことを何時も心から心配していた。

 

ネリル星人の力を完全に使いこなせるようになったとしても、多少身体能力が超人より高いだけで、せいぜい魔女の手下である使い魔を数体ぐらい倒せるのがやっとだろう。

 

そんな自分はいろはの戦いの助けになることなんてできない、むしろ彼女を助けようと戦いについて行ったところできっと足手纏いにしかならない。

 

いろはの助けになりたいのに、自分は何も出来ない。

 

だから、ゼンはいろはに魔女と戦うことをやめて欲しいと常日頃から願っていた。

 

だが、「大いなる力には大いなる責任が伴う」という言葉がある。

 

力を持った以上、その責任を人は果たさなければならない。

 

力があるのに、その責任を果たさなければ・・・・・・「力があるのにあの時自分が何もしなかったから他の誰かが死んでしまった」なんて最悪の事態が起こってしまうかもしれない。

 

極悪人ならそんなのどうでもいいことだと片付けてしまうかもしれないが、いろはは悪人ではなく、善人だ。

 

それに、彼女は誰よりも優しい心を持っており、困っている人を放っておけない。

 

彼女は決して大いなる責任から逃れようとはしないのだ。

 

だからゼンにはいろはを助けることも、魔女と戦うことをやめさせることもできない。

 

だからこそ、黒江の言うことに賭けてみたいとも思ったのだ。

 

「神浜市に行けば魔法少女が救われる」という噂、これがどういった意味なのかは分からないが、これが「魔法少女の力を失うことで、魔法少女でなくなる」というのであれば、ゼンはこれに賭けてみたいと思った。

 

「環さんは救われたいと思わないの? 魔法少女であることから、救われたいって」

「・・・・・・」

 

黒江にそう問われ、いろはは上手く答えることができない。

 

「魔法少女になった時、環さんは何を叶えて貰ったの? 私は、好きな人と付き合いたいってお願いしたの。 その人とはもう別れちゃったんだけど・・・・・・」

「えっ」

 

黒江の願いを聞いて、一気に気まずくなるゼン。

 

先ほど恋人ではないと否定したものの、男女2人で来るのは流石に嫌味ったらしかっただろうかと不安になるが、そんなゼンの様子に気付いてか、「あぁ、気にしないで!」と黒江は苦笑しながらも気遣ってくれた。

 

「それでね。 その時はそれが一生のお願いだったし、その時はそれ以上に大事なことなんて・・・・・・。 でも、こんなことになるなら魔法少女になんてなるんじゃなかった。 願いなんて、叶わなければ良かった。 魔法少女になったって、死んじゃったらなんの意味もない!」

 

黒江はいろはやゼンに魔法少女になったことを後悔していることを伝えると、その時・・・・・・降りるはずだった駅を通り過ぎてしまったことにいろはが気付く。

 

「あっ」

「環さん達、降りる駅って・・・・・・」

「降りそびれちゃいました・・・・・・」

「んっ、でも俺的にはもう少し黒江さんから神浜市の話が聞きたかったし・・・・・・。 あっ、黒江さんもかして・・・・・・」

 

先ほどの話の流れから、ゼンはもしかして黒江は今から神浜市に行くのではないかと思い、彼女に視線を向けると彼女は無言で頷き、どうやらゼンの予想は当たっていたようだ。

 

『おいゼン! 狙われてるぞ!?』

「えっ?」

 

その時、昨日も聞こえた誰かの声が、ゼンにだけ聞こえると・・・・・・直後、電車に乗っていた目からハイライトが消え、頬や頭、首筋に「魔女の口づけ」と呼ばれるものがついた乗客達が一斉にこちらを向き、自分達に向かって歩いて来たのだ。

 

この「魔女の口づけ」と呼ばれるものをつけられた人間は魔女の意のままに操られてしまう。

 

これを使うことで魔女は人間達を襲い、様々な方法で殺害するのだ。

 

ちなみに、殺害された人達は基本行方不明事件などとして現実では扱われている。

 

だが、今回はどうにも勝手が違うようで魔女に操られているのは確かなのだが、今回はいろはと黒江を分散させる為に彼女等を引き離し、2人の引き離しが終わると乗客達は突然どこからか溢れてきた大量の水のようなもので電車から強制的に弾き出されてしまったのだ。

 

「うわあ!? いろは!!」

「ゼンくん!!」

 

同時に、ゼンも電車から弾き出されてしまい、取り残されたいろははソウルジェムを取り出して魔法少女に変身する。

 

(ゼンくんと完全に離ればなれになったけど、それで良かったかも。 魔女との戦いに巻き込めないもんね)

 

いろははそう考えながら、魔女の気配が感じる場所へと行くために次の車両の扉を開くとそこでは昨日戦った魔女の手下達が待ち構えており、いろははクロスボウを構えて矢を連射し、一気に手下達を倒していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソ!! いろはと引き離された・・・・・・!」

 

なんとかして追いつかなければと思うゼンだったが・・・・・・そこでピタリと足を止める。

 

「・・・・・・追いついて、どうする?」

 

追いついたところで、自分に一体何が出来るのか、精々いろはや黒江の足手纏いになるくらいしかない。

 

足手纏いになるくらいなら、ここでジッとしていろはからの連絡などが来るのを待っている方が・・・・・・。

 

「本当に、役に立たないな、俺・・・・・・」

『だからってこのままジッとしているのかよ?』

「はぁ、またか」

 

またもや聞こえる謎の声。

 

それにゼンは「またか」と呆れたように溜め息を吐き出し、声の主に「お前は一体誰なんだよ!?」と問いかける。

 

『そんなことは今、どうでも良いだろ? それより、お前ネリル星人の力が使えるんだろ? その力を使えば、あのいろはって娘達のところに追いつける筈だぞ?』

「いや、昔よりかはマシになったけど、俺まだ完全に使いこなせてないし・・・・・・行ったところで所詮俺は足手纏いにしか・・・・・・」

 

しかし、声の主は「心配するな」と言い放ち、首を傾げるゼン。

 

『俺がその辺はサポートしてやる! だから追いかけろ!』

「そんなこと言われても、アンタが誰かも分からないし、そんな急には信用が・・・・・・」

『良いから四の五の言わず行く!! ほら、ほら!!』

 

流石にいきなりは信用できないとゼンは言うのだが、あまりにも声の主が五月蠅いため、ゼンは辺りに魔女によって気を失った人以外がいないのを確認すると、ネリル星人の姿に変身し、緑色の粒子となって空中に飛び立ち、急いでいろは達を追いかけるのだった。

 

『お、おぉ? なんか、この状態でも上手くコントロール出来てるな!』

『だから言っただろ? その辺をサポートするって』

 

 

 

 

 

 

 

魔女の結界内に突入したいろはは昨日と同じ魔女と遭遇し、クロスボウで矢を魔女に向かって放つが・・・・・・。

 

魔女は動きが素早く、中々矢を当てることができない。

 

さらに、球体状の魔女の結界は突如として電車から離れ、魔女は結界ごと移動を開始。

 

(これって、結界ごと移動してるの!?)

 

いろはは兎に角、魔女を倒そうとクロスボウを構えるが・・・・・・彼女はそこであることに気づき、動きを止めてしまう。

 

(今魔女の結界が消えたら、下に落ちちゃう!)

 

それは魔女を倒せば当然魔女の作り出した結界も消えてしまうことを意味しており、結界は既に遥か上空にまで飛んでいる。

 

ここでもし魔女を倒して結界が無くなれば幾ら魔法少女に変身しているからと言ってもこの距離で落下し地面に激突でもしたら一溜まりも無いだろう。

 

すると今度は魔女は地上に向かって結界を急速落下させ、そのことにいろはは驚き、悲鳴をあげる。

 

「きゃああ〜!!?」

 

結界はそのまま人気のない駅の天井を破壊しながら落下し、その衝撃でいろはは結界の外から放り出されてしまう。

 

「うぅ」

 

いろはは自分に追い被さる瓦礫をなんとか押し退かして立ち上がると自分と同じように結界から放り出されたと思われる魔法少女に変身した黒江を発見。

 

彼女は急いで黒江の元へと駆け寄る。

 

「黒江さん!!」

 

先ほど結界から放り出された時に負ったダメージなのか、黒江は苦痛に歪んだ表情を浮かべており、いろはは一体どうしたらと悩んでいると・・・・・・。

 

次の瞬間、周囲が石中魚の魔女の張ったものとは別の・・・・・・砂漠のような魔女の結界が形成され、いろはや黒江はその中に囚われてしまう。

 

そして、いろはが先ほどまで戦っていた石中魚の魔女が出現し、いろはに向かって襲いかかって来るのだが・・・・・・。

 

その時、突如としてこの砂漠の結界の主と思われる茶髪のロングヘアと黒いドレスを身に纏った魔女、「砂漠の魔女」が石中魚の魔女の目の前に出現し、片手で石中魚の魔女を掴みあげると、砂漠の魔女はそのまま石中魚の魔女を真っ二つに引き裂いてしまったのだ。

 

「っ!」

 

いろはは黒江を守るためにもクロスボウで砂漠の魔女に矢を何発も撃ち込むが砂漠の魔女にいろはの攻撃はまるで通じておらず・・・・・・。

 

「ダメ、全然効いてない!」

 

砂漠の魔女はいろは達に狙いを定め、彼女達に襲いかかろうとするのだが・・・・・・。

 

「〜♪」

 

不意に、誰かの歌声が聞こえ、それに反応した魔女が後ろを振り返るとそこには通常のキュゥべえよりも一回りほど小さなキュゥべえがおり、魔女は小さなキュゥべえに向かって大量の砂吹雪を放ち、攻撃を繰り出すが・・・・・・。

 

キュゥべえはそれらの攻撃を素早く躱し、いろはの元に一気にジャンプすると、いろはは慌ててキュゥべえを両手で受け止める。

 

「っ!!?」

 

だが、次の瞬間、いろはの頭に強い衝撃が走り、彼女はそこでピタリと動きを止めてしまった。

 

「・・・・・・あっ、あっ・・・・・・!」

「環さん? 環さん! 環さんしっかりして!!」

 

そんないろはに気がついて起き上がった黒江が何度も彼女に呼びかけるのだがいろはは未だにボーッとした顔を浮かべており、そんな彼女等に向かって魔女は腕を振り上げ、攻撃を仕掛けて来る。

 

「っ!?」

「何してんだお前えええええええ!!!!!」

 

しかし、そんな時、どこからかやってきた人間態に戻ったゼンが魔女の顔面を殴りつけ、それによって魔女は少しだけ後退しゼンはいろはと黒江の元にやってくる。

 

「えっ、えぇ!? 魔女を・・・・・・殴った!?」

 

ゼンがネリル星人の血を引いていることを黒江は知らないが、あらかじめ黒江はいろはやゼンからゼンは普通の人間とは異なり、魔女の気配の探知が可能で魔女の口づけの効果を受け付けないということは聞いていた。

 

だが、魔女をブン殴り、多少とは言え生身で怯ませるほどの力があるなんて聞いたこともなかった為、彼女は驚きを隠せないでいた。

 

「見たか俺の超ファインプレー!!」

『おいやめろその台詞を言うのを! あの魔女とか言うの、ちょっと怯んだだけで全然ダメージ受けてないからな!?』

 

声の主の言う通り、魔女はゼンに殴られてほんのちょっと怯み、攻撃を中断しただけでまるでゼンの攻撃は効いておらず、それを見てゼンは「ヤバイ」と冷や汗を流す。

 

「ここは撤退した方が良いかも・・・・・・。 おいいろは! いろは?」

 

ゼンはいろはに声をかけるが、彼女は未だにボーッとしており、呼びかけても返事が無かった。

 

魔女はもう1度いろは達に攻撃を仕掛けようとするが・・・・・・突然どこかから飛んで来た矢が魔女の左腕に直撃し、左腕が破損。

 

どこからともなく青い髪をした槍を手に持った女性、「七海 やちよ」が現れると、彼女は大量の槍を作り出して螺旋階段のように魔女の周囲に浮かせると、やちよは槍の階段を駆け上がる度に槍を魔女にミサイルのようにして放ち、次々槍を魔女の身体に撃ち込んでいく。

 

連続で放たれる槍に魔女は為す術なく、やちよがジャンプして手に持った槍によるトドメの一撃を頭部に喰らい、砂となって爆散するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔女が倒されたことで、結界が消滅するとようやくそこで今までボーッとしていたいろはが我に返り、先ほどまで抱きかかえていたキュゥべえがいなくなっていることに気付く。

 

「・・・・・・?」

「あなた達、どこから来たの?」

 

どこか険しい表情でやちよからどこから来たのかを尋ねられ、いろはは戸惑いつつも宝崎から来たことを伝える。

 

「あ、あの、宝崎から来ました。 助けてくれてありがと・・・・・・」

「ここは神浜西のテリトリーよ? 他の魔法少女のテリトリーで勝手に魔女を狩るのは敵対行為になるって、キュゥべえに教えて貰わなかった?」

 

やちよは地面を指差し、勝手に他の魔法少女のテリトリーで魔女を狩るのは御法度だと厳しくいろは達に注意するが、そんなやちよの態度にカチンッと来たのか、ゼンはやちよに言い返す。

 

「別にあなたの縄張りをいろは達は荒らしに来た訳じゃないんですけど? 最初に戦ってた別の魔女が、ここに連れて来たんですよ。 言うなれば事故です、事故」

 

一応、年上っぽいので敬語で話すゼンだが、その態度や口調からトゲトゲしいものが感じられ、それを感じ取ったやちよはキッとゼンを睨み、それに臆せず、ゼンの方も負けじとやちよのことを睨み付ける。

 

「というか、あなた何者? 魔法少女でもない、ましてや男の人がなぜ魔女の結界の中にいたのかしら?」

「詳しいことは言えませんが、特異な体質・・・・・・とだけ答えておきましょうか」

 

互いに怪訝な顔を浮かべながらも、やちよの疑問に答えるゼン。

 

「え、えぇっと! ダメだよゼンくんそんな態度! どんな理由にしても勝手に来ちゃったんだし・・・・・・! あ、あの・・・・・・! ホントにすみませ・・・・・・」

「神浜市に来れば・・・・・・!」

 

そんな風に、お互いに火花散らし合っているゼンとやちよを交互に見て、オロオロしながらもいろははゼンの態度を注意し、改めてやちよに謝罪しようとするのだが、いろはの言葉を遮り、黒江が自分は例の噂を確かめるために、ここに来たことをやちよに教える。

 

「神浜市に来れば魔法少女は救われるって、そう聞いたから」

「・・・・・・その噂なら私も聞いたことがあるわ。 でも思い知ったでしょ? ここの魔女は他の地域の魔女よりも強いし、数も多い。 救われるのとは正反対よ」

 

しかし、やちよが言うには例の噂はとは全くの正反対の場所であることを伝え、「ここはあなた達が来るべき場所ではないわ」と厳しく言い放つ。

 

「これはあなた達にあげるわ」

 

やちよはそう言って先ほどの2体の魔女の落としたグリーフシードをいろはと黒江に投げ渡し、もう神浜に近寄らないように2人に警告する。

 

「分かったら、もう神浜に近寄らないことね」

「あ、あの・・・・・・」

「まだ何かあるの?」

 

いろはが何かやちよに尋ねようとすると、やちよに強く睨まれてしまい、それにいろはは「ひっ」と小さな悲鳴をあげる。

 

「あ、あの、神浜には子供のキュゥべえがいるんですか?」

 

やちよにビビりながらも、先ほど見たキュゥべえについてやちよに問いかけるが、やちよが言うには「そんなに小さいのは見たことがない」とのことだった。

 

「それに、今神浜にはキュゥべえがいないのよ」

「いない?」

「どういう訳か知らないし、使い終わったグリーフシードは他で回収して貰ってるからいなきゃいないで別に良いんだけど。 その子供キュゥべえがどうかしたの?」

「あの、さっき結界の中でそのキュゥべえに助けて貰って・・・・・・」

 

いろはは結界の中で小さなキュゥべえに助けて貰ったことをやちよに話し、やちよは「そう」とだけ答えるともし会ったら自分の方でお礼を伝えておくとだけいろはに言い残し、いろはは戸惑いつつも頭をペコリと下げ、「よろしくお願いします」とだけやちよに伝える。

 

それからゼン、いろは、黒江の3人は帰ろうとその場を立ち去ろうとするのだが、やちよに「ちょっと待って」と呼び止められる。

 

「神浜に来れば魔法少女は救われるって噂、あなたはどこで聞いたの?」

「・・・・・・夢で、見たんです」

 

やちよの問いかけに対し、黒江はいろはの時と同じようにみんな同じ夢を見て例の噂を聞いたのだとやちよに教える。

 

「・・・・・・悪いけど、他の娘達にも伝えて頂戴。 神浜ではこれ以上魔法少女を増やすつもりもないし、勝手に入ってくるようなら敵と見なすって。 全く、ただでさえ最近変なのが増えたって言うのに・・・・・・」

 

それだけを言い残すと、やちよはその場を立ち去ろうとし、いろは達も家に帰ろうとする。

 

のだが・・・・・・。

 

「おぉいおぉい! まだお開きには早いんじゃないのかなぁ? パーティーの時間は、まだまだこれからですよぉ!」

 

隣の建物のビルからいろは達の様子を伺っていた白と黒の半々の服を着た青年・・・・・・「青霧(あおぎり)」は両手を広げ、小さく呟く。

 

「・・・・・・おいで『ヘルベロス』。 パーティーの時間だよ」

 

その瞬間、突如として空に紫の空間が広がり、紫色の矢の様な光弾の雨「ヘルエッジサンダー」がゼン達のいる建物に降り注いで来たのだ。

 

「危ない!! ゼンくん!!」

 

咄嗟にいろは、黒江、やちよは魔法少女に変身し、いろははゼンをお姫様抱っこで救出し、3人はなんとかギリギリのところで建物からの脱出に成功。

 

「うわっと・・・・・・! いや、俺がお姫様抱っこされんのかよ」

「嫌だった?」

「いや、割とこれはこれで・・・・・・ってそんなこと言ってる場合じゃない! 一体なんだよ!?」

 

すると紫の空間から体中に生えた刃状の突起が特徴の巨大怪獣、「最凶獣 ヘルベロス」が出現し、地上に降り立ってきたのだ。

 

「グアアアアアア!!!!!」

 

ヘルベロスは雄叫びをあげながら背中のトゲ「ヘルスパイク」から放つ紫色の矢の様な光弾の雨「ヘルエッジサンダー」を放ってビルを破壊する。

 

「わあああああ!!!!?」

「怪獣だ逃げろぉ!!」

 

ヘルベロスの出現で街の人々は逃げ惑い、ヘルベロスは容赦なく辺り一帯に火球を放ち、周りを火の海にする。

 

「このままじゃ、街の人達が・・・・・・」

 

いろはは一度ゼンを降ろし、いろははヘルベロスに向かって行こうとするが、ゼンは慌てていろはの肩を掴み、引き止める。

 

「待てよ、いろは! あれは魔女じゃないんだぞ!? しかも、あんな大きい・・・・・・。 あれと戦うつもりなのか!?」

「だって、放っておけないよ!」

「きっとその内、自衛隊とかが来てくれるし、いろはが無理に戦う必要は・・・・・・」

「自衛隊なんて待ってる間に、何人の人が犠牲になるか分からない。 せめて自衛隊が来るまでの時間稼ぎを私がしないと・・・・・・!」

 

いろははそう言ってゼンの腕を振り払い、彼女はヘルベロスの方へと向かって行ってしまった。

 

そんないろはの背中を見つめながら、結局何もできない自分の無力さを噛み締め、ゼンはその場に両膝を突いてしまう。

 

「俺は、やっぱり・・・・・・何も出来ないのか・・・・・・?」

 

先ほど、魔女を殴った時でさえ、ゼンは魔女にまともなダメージすら与えられなかった。

 

声の主曰く、自分がサポートした結果、何時も以上に身体能力が向上し、より常人離れした力が発揮できると言っていたが・・・・・・それにしたってあの結果だ。

 

魔女にロクなダメージを与えることもできないのに、先ほどの魔女よりも何十倍も巨大な怪獣なんかに、自分なんかが立ち向かえる筈もないとゼンは拳を強く、悔しそうに地面に叩きつける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方でいろはは「できる限り人に見られないようにしつつ」ととあるビルの上に立つと、彼女はクロスボウを構えてヘルベロスに矢を連射して放つ。

 

しかし、ヘルベロスにはまるで効いておらず、精々いろはに注意が逸れるくらいしかできない。

 

だが、いろは的には自分に注意が向いてくれるのは良かった。

 

「こっちだよ!!」

 

ヘルベロスはいろはのいるビルに向かって右腕を振るうが、いろはは咄嗟に隣のビルに飛び移ることで攻撃を回避しつつ、ヘルベロスの頭に向かって矢を集中砲火。

 

「ガアアアア!!!!」

 

すると今度は肘の刃を振り抜いて放つ赤い光刃「ヘルスラッシュ」をヘルベロスはいろはに向かって放ち、いろはは回避が間に合わないと思わず目を瞑ってしまうが・・・・・・それを槍を手にしたやちよと、メイスを持った黒江が弾き飛ばしたのだ。

 

「黒江さん!! っと、あなたも・・・・・・」

「あなた、中々無茶するわね。 あんなのに立ち向かうなんて・・・・・・。 まぁ、私としてもあんなの放っておけないし、手を貸すわ」

「来る!」

 

ヘルベロスは口を開いて火球をいろは達に放とうとするが、やちよは撃たれる前にと大量の槍を召喚し、それを一斉にヘルベロスの顔に浴びせることでヘルベロスを怯ませることに成功。

 

だが、そのせいでヘルベロスは激怒し、腕を振るっていろは達のいるビルを攻撃し破壊する。

 

「ひゃああ!!?」

 

間一髪、また別のビルに飛び移ることで3人は攻撃を回避したが、ヘルベロスの猛攻は止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あんな巨大な相手に立ち向かえるなんて、勇敢な娘達だな』

「無謀の間違いじゃないのか」

『・・・・・・それで? お前はこのままジッとしてるだけなのか? 逃げもしないで』

 

声の主にそう言われても、非力な自分に出来ることなんてない。

 

声の主のおかげで身体能力が強化されたと言ってもたかが知れた程度。

 

下手に手を出したところでいろは達の足手纏いになるのは目に見えてる。

 

「俺に何ができる。 俺なんかに何が・・・・・・帰りを待つことしかできない、俺に、何が・・・・・・」

『本当にそうなのか? お前にも、何かできることがあるんじゃないのか?』

「俺に、できること・・・・・・?」

『『自分は何も出来ない』って自分で勝手に決めつけてるだけなんじゃないか? もっと探せよ、自分に出来ることを、今すぐ出来ることが何かを!』

 

声の主にそう言われ、ゼンは確かに自分で「何も出来ない」と勝手に決めつけていただけなのかもしれないと考える。

 

いろは達の為に何ができるかは分からない、でも、もうこれ以上待ってるだけなんて嫌だ。

 

このまま何もせず、チビスケと同じように、いろはというたった1人残った友達を失うかもしれないなんて嫌だ。

 

傷の手当てをしてくれた後、チビスケを連れ去られたことを思い出し、わんわん泣いていた自分をいろはは泣き止むまでずっと傍にいて励ましてくれた。

 

そんな優しさを持つ彼女を救いたい、チビスケと同じようにこれ以上友達を失いたくない。

 

みんなを守るいろはを守りたい、いろはが守ろうとする、みんなを守りたい。

 

だからゼンは、立ち上がって勇気を振り絞り、ヘルベロスに向かって駈け出し、緑色の粒子となってヘルベロスの頭上を目指して向かって行く。

 

「うおおおおおおおおお!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うああっ!!?」

 

ヘルベロスの攻撃によって吹き飛ばされ、地面に倒れ込むいろは、やちよ、黒江。

 

「っ・・・・・・!」

 

特に黒江は先ほどの魔女との戦闘の影響でで3人の中で1番ダメージを受けており、彼女は苦痛に歪んだ顔を浮かべている。

 

「グアアアアアア!!!!!」

 

だが、そんな彼女達に容赦なく、ヘルベロスはそのままいろは達を踏み潰そうと足を振り上げるが・・・・・・。

 

「やめろこの野郎!!」

 

緑色の粒子となったゼンは人間の姿に戻るとヘルベロスの頭の上に立ち、ゼンは拳を振り上げ、ヘルベロスの右目に拳を叩き込み、ヘルベロスに目つぶしを繰り出したのだ。

 

「グギャアアア!!!?」

 

それによってヘルベロスはいろは達を踏み潰すことが出来ず、ヘルベロスはゼンをはたき落とそうと自分の顔を叩くが、ゼンは粒子になることでヘルベロスの攻撃をすり抜け、結果ヘルベロスは自分で自分を殴ることに。

 

「グルアアアア!!!!?」

 

ゼンはもう1度人間の姿に戻って今度はヘルベロスの左目を殴ろうとするのだが、ヘルベロスは大きな雄叫びをあげ、その時に発生した衝撃のせいでゼンはヘルベロスの頭上から落下してしまう。

 

「うわああああ!!!!?」

「っ!? ゼンくん!!」

 

だが、ゼンは光の粒子になることで空中を飛行し、いろは達と少し離れた場所に降り立ち、片膝を突く。

 

「はぁ、はぁ・・・・・・しんど! でも、まだまだ!! 絶対に守る、助ける!! いろはが守ろうとするみんなも!! みんなを守ろうとするいろはのことも!! だから俺はもう、絶対に諦めない!! 俺が絶対に、みんなを助ける!! これ以上、誰かに何かを奪わせたりしない!! だから俺は・・・・・・立ち向かうんだ!!」

 

ゼンが力強く、そう言い放つと同時にヘルベロスはゼンに向かって火球を吐き出してきた。

 

火球はゼンに直撃こそしなかったものの、辺り一帯は炎に包まれる。

 

『そうだ、お前のその立ち向かう勇気! お前の覚悟、受け取ったぜ!!』

 

すると、ゼンの胸から光が放たれ、そこから1つのキーホルダーのようなもの、「タイガアクセサリー」が現れる。

 

『お前がその覚悟を決めるのを、ずっと待ってたんだ! ゼン、あの娘達や、みんなを守るぞ!』

「よく分からないけど、あの怪獣を倒せるのか?」

『あぁ!』

 

その時、ゼンの右手首に1つのブレスレットのようなものが出現すろと、それが変化して黒いガントレット型のアイテム「タイガスパーク」に変化する。

 

『俺はお前で、お前は俺だ! その手で俺を掴むんだ!!』

「分かった!」

 

ゼンはタイガスパークのレバー部分を引くとタイガキーホルダーを右手で掴み取る。

 

『カモン!』

「光の勇者! タイガ!!」

 

続けて右手に取ったキーホルダーを左手に持ち替えるとタイガスパークのクリスタル部分が赤く輝く。

 

『叫べゼン! バディ、ゴー!!』

「バディィィィィ!! ゴー!!!!」

 

そしてゼンは右腕を掲げると光に包まれ、「ウルトラマンタイガ」へと変身したのだ。

 

『ウルトラマンタイガ!』

『シュワッ!!』

 

タイガが地上に降り立つと、周囲にあった炎が吹き飛んで消え去り、その時の衝撃でヘルベロスも倒れ込んだのだ。

 

「良き旅の終わり、そして・・・・・・始まり」

 

また、離れた場所でタイガの登場を見ていた青霧は、ニヤリと不気味に笑いながら、呟くのだった。

 

「あの・・・・・・巨人は、一体・・・・・・?」

 

またやちよやいろは、黒江は目を見開いてタイガの姿を見つめていた。

 

挿入歌「超勇者BUDDY GO!」

 

タイガはファイティングポーズを取りながらヘルベロスに向かって行き、ヘルベロスは拳を自分に向かって来るタイガに振るうがタイガは頭をしゃがみ込ませることで回避し、逆にヘルベロスの腹部を殴りつける。

 

『ショア!!』

 

さらにそこから連続で拳を何発もヘルベロスの腹部に叩き込み、怯ませるが負けじとヘルベロスは左腕に装着された刃でタイガの胸部を斬りつけ、そこから火花を散らすタイガ。

 

『ウアアッ!?』

「ガアアアア!!」

 

ヘルベロスはタイガに掴みかかってくるが、タイガはそれをなんとか振りほどき、後ろ回し蹴りをヘルベロスに喰らわせる。

 

『シュア!!』

 

さらにタイガはヘルベロスの頭を掴みあげ、膝蹴りをヘルベロスの腹部に喰らわせ、ヘルベロスの顔を殴りつける。

 

「グアア!!?」

 

そのままタイガは真っ直ぐヘルベロスに向かって行くが、ヘルベロスは尻尾を伸ばし地面に突き刺して尻尾を地面に忍ばせると、タイガが目の前にまで迫ってくるとタイガの立つ地中から伸ばした自身の刃物がついた尻尾「ブレードテイル」を出現させ、タイガの肩を斬りつける。

 

『ヌアア!!?』

 

その時、タイガの身体のどこからか、ウルトラマンギンガから預かっていた「ニュージェネレーションブレス」が落下し、それがいろはの足下に落ちて来たのだ。

 

「・・・・・・なに? これ?」

 

不思議に思いながらもいろはがブレスを拾いあげると、それは吸い寄せられるようにいろはの右腕に装着される。

 

「え、えぇ!? なにこれ!? いっ・・・・・・」

 

すると、いろはの頭の中にこのニュージェネレーションブレスの使い方と思われる情報が流れ込み、ジッとそれを見つめるいろは。

 

「環さん?」

「どうしたの?」

「これがあれば・・・・・・助けになるかも」

 

ヘルベロスは角からの電撃「ヘルホーンサンダー」をタイガに向かって放ち、タイガは虹色に光りながら体内エネルギーを貯めた後、両腕をT字型に構えてタイガスパークから発射する高熱破壊光線「ストリウムブラスター」を発射。

 

『ストリウム・・・・・・ブラスター!!』

 

それによってヘルベロスの光線を相殺するのだが、続けざまに背中のトゲから放つ「ヘルスパイク」と肘の刃を振るって放つ赤い光刃「ヘルスラッシュ」が繰り出され、それらの直撃を受けて吹き飛ばされるタイガ。

 

『ウワアアア!!?』

『撃ち抜け!! イチイバルの力!』

「わっ、きゃっ!? ガトリング砲・・・・・・? 取りあえずこれで!」

 

ニュージェネレーションブレスの力を使い、ガトリング砲のようなものを出現させたいろはは両手に構えた2丁4門による一斉掃射「BILLION MAIDEN」を放ち、ヘルベロスの顔に集中砲火させ、ダメージを与えることに成功。

 

「グルアアアア!!!!?」

『今だ!!』

 

タイガは空中へと飛び上がると、全身のパワーを右足に集中させ、敵目掛けて急降下して強烈な飛び蹴りを繰り出す「タイガキック」をヘルベロスに炸裂させ、ヘルベロスは大きく吹き飛ばされて地面を転がり、倒れ込む。

 

「グルアアアアア!!!!?」

 

そこからさらにタイガは倒れ込むヘルベロスの尻尾を掴むとそのままジャイアントスイングを繰り出し、投げ飛ばし、ヘルベロスは地面に激突、倒れ込む。

 

「グウウウウウ!!!!」

『スワローバレット!!』

 

それに怒ったヘルベロスは起き上がると背中のトゲから放つ光弾の雨「ヘルエッジサンダー」を放つが、腕を十字に組んで放つ光弾「スワローバレット」でヘルエッジサンダーを全て打ち砕く。

 

『ゼン!! 『オーブレット』を使うんだ!!』

『分かった!』

『カモン!』

 

タイガにそう言われ、インナースペース内のゼンが頷くとゼンはタイガスパークのレバーを引くと左手首に「ウルトラマンオーブ オーブオリジン」を模したブレスレット、「オーブレット」が出現する。

 

出現したオーブレットをゼンがタイガスパークにかざすと、スパークから音声が鳴り響く。

 

『オーブレット! コネクト・オン!』

 

すると一瞬、タイガにオーブの姿が一瞬重なると、ストリウムブラスターと同じポーズを取りながら光の輪を展開して、ストリウムブラスターより威力が高い光線「スプリームブラスター」をヘルベロスに向かって放つ。

 

『スプリーム・・・・・・ブラスター!!!!』

「グルル・・・・・・グアアアアア!!!!?」

 

ヘルベロスはタイガの放つ光線の直撃を受け、火花を散らして倒れ爆発。

 

そして、ヘルベロスが爆発した炎の中から1つの小さな光が飛び出し、それをタイガが掴み取るとインナースペース内のゼンの手に1つの指輪のようなアイテムが現れる。

 

『これは・・・・・・』

『ウルトラマンの力を感じる』

 

兎に角、ヘルベロスは無事に倒され、それを確認したタイガは空へと飛び立って去って行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人気のない場所で赤い粒子が地面に降り注ぐと、粒子はゼンの姿となり、大地に降り立つ。

 

『どうだ俺の力は!?』

「俺が、君になったのか?」

『やっぱ地球は俺がいなきゃダメだな!』

「なんか偉そうだな、お前」

 

そんなゼンの言い草に対して、タイガは「はっ? 誰が偉そうだって?」と怪訝そうな雰囲気で言い放つ。

 

ゼンよりも一回りほど大きい状態の幻影になって。

 

「う、うわあ!?」

 

それに驚き、尻餅を突いてしまうゼン。

 

『なに驚いてんだよ。 さっきまでお前がこの姿だっただろ?』

「そうなんだ・・・・・・」

 

するとそこへ・・・・・・。

 

「ゼンくーん!!」

 

こちらに向かって手を振ってくるいろはの姿があり、彼女は立ち上がったゼンに抱きついて来たのだ。

 

「うおっ、い、いろは?」

 

いろはが抱きついて来たことで顔を真っ赤にするゼン。

 

「良かった、良かったよぉ!」

 

ぐすぐすと泣きじゃくるいろは。

 

「ぐす、ひっく! もう、あんな危ない真似するなんて・・・・・・! ゼンくんが死んじゃうかと思った!! うぅ」

「ご、ごめん。 でも俺なら、大丈夫だから! それに、タイガの力があればこれからは俺も、いろはの助けになれる、かもだし!」

『あっ、オイ!!』

「・・・・・・えっ? タイガ?」

 

未だに泣きじゃくるいろはは首を傾げながら「タイガって誰?」と質問すると、ゼンは右腕に装着されたタイガスパークを見せながら「俺がさっきの巨人に変身してたんだよ!」とあっさりと自分がウルトラマンタイガであることをいろはにバラしたのだ。

 

「俺が変身してたあの巨人、ウルトラマンタイガって言うんだって」

「えっ、えぇ? ゼンくんが・・・・・・さっきの巨人? えっ!?」

 

この状況で、ゼンが嘘を言うような人物じゃないのをいろはは知っている。

 

だからいろはは素直に、ゼンがタイガに変身していたという話を信じ、尚且つ・・・・・・驚きのあまり、自分の涙が引っ込むくらい、大声をあげてしまうのだった。

 

「えっ、えええええええええ!!!!!?」

 

この後、ゼンはタイガに「こういうの普通秘密にしないといけないんだぞ!!」とこっぴどく怒られたのは言うまでも無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから色々とあって・・・・・・というか今日は本当に色々ありすぎて、いろはは物凄く疲れた様子でお風呂だけ入ってすぐにベッドに入り、眠ってしまっていた。

 

だが彼女は、その夜の日も、不思議な夢を見ていたのだ。

 

それは、顔の見えない多くの少女達が線路の上を手荷物を持ってどこかに向かう夢。

 

『私救われに行くの。 夜の内に誰も知らない列車に乗って』

『私救われに行くの。 助けなきゃいけない人達に見つかる前に』

『私救われに行くの。 みんなの為に人生を奪われるその前に・・・・・・』

『『『神浜へ行こう。 私達は、私達のために・・・・・・神浜へと行こう』』』

 

そこにはいろは自身もいたのだが、彼女の場合は他の少女達とは違い、ある特定の人物を追いかけているようだった。

 

その特定の人物は、自分と同じように桃色の髪をしており、自分よりも幼そうな少女だった。

 

『『『神浜へ行こう。 そこでなら、私達は救われる!』』』

 

その幼い少女はふっと立ち止まると、いろはの方に振り返るのだが・・・・・・その顔は黒く、塗り潰されたようになっており、どんな顔をしているのかが分からなかった。

 

ただ・・・・・・次の瞬間、いろはの見ている景色が変わり、彼女が魔法少女になった日の出来事が映し出される。

 

「君たちの願い事を、なんでも1つ叶えてあげる。 なんだって構わない。 どんな奇跡だって起こしてあげられるよ? でも、それと引き替えに出来上がるのがソウルジェム。 この石を手にした者は魔女と戦う使命を課されるんだ」

 

いろははとある病院の屋上で、キュゥべえと向き合い、彼女は・・・・・・キュゥべえに自身の願いを言った。

 

「キュゥべえ、お願い。 『うい』の・・・・・・ういの病気を治して!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ・・・・・・!」

 

そこで、いろはは目を覚ますのだが・・・・・・彼女は目尻に涙を浮かべ、存在がいなくなっていることに気付いた・・・・・・自分の妹の名を呟く。

 

「うい・・・・・・?」




頭の中で構成してた主人公と大分違う。
もっとこう、今までにない主人公にしようと当初の予定ではいろはや家族以外に対しては結構ドライな主人公にするつもりでした。
でも、やはりウルトラマン主人公にする以上、そういうドライなキャラはどうにも書くのに抵抗あるようで・・・・・・結局こんな感じに。
まぁ、覚悟決めるシーンでゼンはじゃあいろはちゃんがみんなを守らなかったら自分もみんなを守らなら無いって遠回しに言ってるような感じですけど、そこから成長して行く的なのを目指したいなと思いまして。
今までまどマギを題材にした作品は書いたことありましたが、マギレコは初。
ただアニメしか観てないんですよね、自分。
一応、アプリでの2部(?)のザックリとした内容は聞いていますが。

ちなみにゼンはちょっとだけホマレ先輩要素入れようと思いまして、ネリル星人とのハーフに。
そういう地球人とウルトラマンって一体化できるの? と思いますが、一応ベリ銀のランとかもヒューマノイドタイプとは言え宇宙人な訳じゃないですか。


トレギアの時と青霧の時とで若干性格が違うのはトレギアがモデルにした人間の影響の模様。

この作品でのニュージェネレーションブレスの設定。
一応、ギャラクシークロスでクリスが使用していたものと同一。
どうやらいつの間にかギンガに渡していた模様。
クリスが使用した時はニュージェネヒロインズを半強制的に強化形態にする能力があったがいろはが使用する場合は彼女達の技の一部が使用できる模様。
なぜいろはが使用出来たかについては開発には平行世界を渡り歩けるウルトラマンディアスが関わっているためとこんなこともあろうかといろはにも使えるようにしていたと思われる。
ちなみにイチイバルの力を使用した時にいろはが驚いたのは使い方は分かってもどんな武器が出るかは分からなかった為。
タイガがブレスを落としたのは初代もゴモラとの戦闘中にベーターカプセル落としてたからです。
あれと同じ感じ。
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