タイガ☆レコード   作:ベンジャー

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マギレコ2期放送記念。


第2話『ともだちはゲスラ』

『お願いキュゥベえ! ういの、ういの病気を治して・・・・・・!!』

 

どこかの病院の屋上で、自身の妹である「環 うい」の病気を治して欲しいとキュゥべえに願ういろは。

 

彼女は自分がキュゥべえに願った光景を夢で見たことで、今まで忘れていた自分の「望み」を思い出し、目を覚ましてベッドから起き上がる。

 

「うい? 私、どうして忘れちゃってたんだろう? どうしてこんな、大切なこと・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

翌日、全てを思い出したいろはは自分がキュゥべえに何を願ったのか、どうしてその願いを今まで忘れていたのか、ゼンとキュゥべえの2人を学校の屋上に呼び出し、彼女は2人に自分の相談に乗って貰っていた。

 

「妹の病気を治すこと。 それが自分の願いだと君は思い出したって言うんだね? これは純粋な興味からの質問なんだけれど、『環 うい』って一体誰だい?」

「はっ? お前がいろはの願いを叶えたんだろ? なんでお前まで覚えてないんだよ。 まぁ、俺も覚えてないんだけど・・・・・・」

 

しかし、自分の願いを叶えてくれた筈のキュゥべえにすらういという人物が誰なのか分からず、自分は兎も角、キュゥべえまで覚えていないっていうのは流石におかしくないかとキュゥべえに疑いの目を向けるゼン。

 

「そんなに疑いの目を向けないでくれよ。 僕は嘘は言っていない。 それに、いろはの言うその妹は本当に実在していたのかい?」

「いろはが嘘ついてるって言いたいのかお前は」

 

キュゥべえを睨み付けながら、いろはが必要もない嘘を言っていると疑っているのかとあからさまに怪訝な態度を見せるゼン。

 

「そうは言っていない」

 

しかし、キュゥべえは首を横に振り、いろはが嘘を言っているなんて自分も思っていないと言葉を返す。

 

だが、ある個体の存在の痕跡を全て消し去るには魔法少女の願いにも匹敵する大きな力が必要だそうで、そこまでして環 ういという存在を消し去る理由がどこにあるのかとキュゥべえは答え、それよりも「環ういがいた」という偽の記憶をいろはに植え付ける方がずっと容易いことだとキュゥべえは言うのだ。

 

だからキュゥべえに取っては本当にういという存在がいたのか疑わしいらしく、にわかに彼はいろはの言っていることを素直に受け入れられないでいたのだ。

 

「誰かがお前にそう願ったって言うのか・・・・・・?」

「いや、僕の記憶の中で、そんな願いを叶えた人物はいない」

「それに、上手く言えないけど・・・・・・これは本物の記憶だと思う。 私の心に空いていた場所がういそのものの形なの!」

 

なんでもいろはが言うには夢で出てきた病院、ういが入院していたという「里見メディカルセンター」という場所は実際に神浜市に存在する病院らしく、彼女は今日そこの病院に行ってういが入院していた記録を調べてみるというのだ。

 

「だから病院に行けば、ういの手がかりが見つかるかもしれない! ゼンくんも、出来れば・・・・・・」

「ついて行きます、超ついて行きます! 一生ついて行きます!」

『お前この娘のことめっちゃ好きだよな』

 

いろはが「一緒について来て欲しい」と言い切る前に全力でついて行くと応えたゼンは、ミニサイズでゼンの肩に乗るタイガにどこか呆れたような口調でツッコミを入れられてしまったが、ゼンは敢えてそれをスルーした。

 

「ありがとう、ゼンくん」

「っ・・・・・・」

 

微笑みを向けるいろはに、ゼンは顔を赤くし、俯き・・・・・・そんなゼンを見てニヤニヤした態度をとるタイガ。

 

『おっ? 顔赤くなってなっちゃって分かりやすい奴だな~!』

「さっきから五月蠅いよ、タイガ!」

「あっ、そうだ! ねえ、キュゥべえ? キュゥべえは神浜市のキュゥべえとも知り合いなの? 子供のキュゥべえなの!」

 

そこでいろはは以前、神浜市に訪れた際に出会った子供のキュゥべえについて尋ねるのだが、キュゥべえはそれを聞いて不思議そうに首を傾げる。

 

「子供の形をした個体? そんなものはない筈だけど・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

それから放課後、いろははゼンと共に里見メディカルセンター行きのバスに乗り込み、2人で自然と同じ席に座ると、そこでいろはの肩にあぐらをかいて座り込むミニサイズのタイガが先ほどのキュゥべえという存在について、彼は一体何者なのかとゼンに尋ねて来たのだ。

 

『そう言えば、あのキュゥべえ・・・・・・だっけ? あいつが魔法少女っていうのを生み出してるんだよな? しっかし、なんか胡散臭い奴だったよな~? なんか無機質って言うか、感情を感じないって言うか・・・・・・一体何者なんだアイツ?』

「てい」

 

しかし、質問に応える前にいろはの肩に座るタイガをゼンはペシッと彼女の肩から叩き落とすと、タイガはいろはの足下にまで真っ逆さまに落下。

 

『うおわぁ!!? いきなり何すんだよ!?』

「勝手にいろはの肩に座るからだろ」

 

するといろはは先ほどから何かブツブツと呟いているゼンの顔を覗き込みながら「どうしたの?」と尋ねると、ゼンはいろはの肩に先ほどタイガが乗っていた為、それを叩き落としたことを説明した。

 

ちなみに、タイガの姿は基本ゼン以外の人に見えることはなく、それは魔法少女であるいろはやキュゥべえも例外ではないようだった。

 

「そう言えば、確かにさっきからなんだか肩が重かったような・・・・・・。 でも、別に私は肩くらい乗ってくれても構わないけど・・・・・・」

「ダメ! 俺がなんか嫌なの」

『お前意外と独立欲強いだろ! って・・・・・・あっ』

 

いろはの足下に落下し、身体を起き上がらせて顔を上に向けながらゼンにもっと文句を言ってやろうとするタイガだったが、その時・・・・・・タイガは顔を見上げた瞬間、何故か身体が硬直してしまった。

 

「んっ? どうしたタイガ?」

『いや、あの・・・・・・ここからだといろはのスカートの中が見えて・・・・・・』

 

硬直してしまった理由、それはどうも場所的にいろはのスカートの中が見えてしまう位置だったようで・・・・・・。

 

そのことからタイガはつい身体が固まってしまい、思わず凝視してしまうことになったのだが・・・・・・。

 

次の瞬間、「ブチッ」と何かがキレる音が聞こえたと思い、視線を音のした方へと向けるとそこには額に青筋を浮かべたゼンが足を振り上げてタイガを思いっきり踏み潰そうとしてくる光景がタイガの目に飛び込んできたのだ。

 

『ぬわあああ!!? ごめん! ごめんって!! 今のはワザとじゃないんだ!!? っていうか大体、お前が俺を落とさなければこんなことには・・・・・・!!』

「ぐっ、それもそうか・・・・・・」

 

タイガにそう指摘されて、ゼンは苦い顔を浮かべながらタイガの言い分に何も言い返せなくなってしまい、確かに自分がタイガを叩き落とさなければこんなことにはならなかったと理解すると、ゼンはそのことを反省し、タイガを手の平に乗せて自分の肩に乗せると、ゼンは頭を下げて「すまなかった」と謝罪する。

 

『いや、不可抗力とは言え俺もなんか悪かったよ』

「ち、ちなみに何色だった?」

『えっ? 黒だったけど・・・・・・』

「マジか、意外と大人っぽそうなの・・・・・・」

「さっきからなんの話してるの?」

『「どひゃああああ!!!!?」』

 

タイガとこそこそ話しているのが気になったのか、いろははゼンがタイガと何か話している風なのは分かったが、それでもさっきから一体なんの話をしているのだろうか尋ねると、いきなり話しかけられたことでタイガもゼンも驚きの声をあげてしまった。

 

「しーっ! ここバスの中だよ? 大声出しちゃダメだよゼンくん!」

「あ、あぁ・・・・・・悪い」

 

大声を出したことでいろはに注意され、ゼンは周りの人達に「すみません」と謝罪した後、改めていろはから「それでタイガとなんの話してたの?」と尋ねられ、ゼンとタイガは大量の冷や汗を流す。

 

まさかタイガを叩き落とした評しに不可抗力とはいえタイガがうっかりいろはのスカートの中を見てしまい、ゼンがそんなタイガに何色かをついつい聞いてしまい教えて貰ったなんて言える筈もなく・・・・・・。

 

「あっ、そうそう! タイガ! タイガのことを教えて貰ってたんだ!」

『そ、そうそう! 俺のことな!』

 

咄嗟に思いついた言い訳として、タイガが何者なのかを聞いていたとゼンは誤魔化すと、それに対していろはは「そうなんだ」と彼女もどこか興味深そうな様子を見せたことでなんとか誤魔化すことには成功し、タイガとゼンはそのことにホッと内心安堵の溜め息を吐くのだった。

 

「そう言えば私も、ちょっと聞いてみたいと思ってたんだ。 どうしてゼンくんはタイガに変身できるようになったのか」

「そ、そうだよ! どうして俺は君に変身できたんだ? 君が俺の身体の中にいるっていうのは分かったけど・・・・・・一体何時から・・・・・・」

『分かった。 教えるよ。 ただ、お前の身体の中に入ったのは、お前が育ててたあのチビスケっていうのが攫われた時なんだ』

「チビスケが攫われた時・・・・・・」

 

チビスケ・・・・・・それは当時、いろはと出会う前だった自分に取ってはたった1人しかいなかった友達のこと。

 

いろはもチビスケのことは話には聞いていた為、チビスケの名前が出たことで彼女はゼンを心配そうに見つめるが・・・・・・誤魔化しに使いはしたもののタイガから詳しい話を聞きたいというのはゼンの本心でもある。

 

だから苦い記憶ではあるが、ゼンはタイガに「話を続けてくれ」と頼んだのだ。

 

『分かった。 でもその前に、いろはにも俺の声が聞こえるようにしといた方が良いよな? 姿は見えなくても、テレパシーで俺の声がいろはに届くようにするからちょっと待ってくれ』

 

タイガはそう言うと、神経を集中させていろはの脳内に直接話しかけることに。

 

『あー、いろは? 俺の声が聞こえるか? タイガだ』

「きゃっ!? 頭に、声が聞こえて・・・・・・」

『どうやら成功みたいだな。 ちょっと不安だったけど、俺の姿は見えなくてもこれでいろはとも会話することができる』

 

タイガはいろはに自分がテレパシーを使って彼女に直接言葉を送っていることを説明し、そのことに納得して貰った後、いろはとゼンは改めてタイガから詳しい事情を聞くことに。

 

『それで、話の続きだけど・・・・・・あの時、お前は不思議に思わなかったか? ネリル星人の力が使いこなせないのに、チビスケを取り返そうとしてあの高度から落下したのに、腕を痛めた程度の怪我で済んだことを』

 

確かにそうだった。

 

レキューム人にしがみついた時、あともう少しで宇宙に出そうというところで自分は空から落下した。

 

しかもネリル星人の能力を使って粒子化することもできないという絶望的な状況。

 

それにも関わらず、腕を怪我した程度で済んだこと・・・・・・ずっと疑問に感じていた。

 

「タイガが助けてくれたのか?」

『あぁ。 その時、光の粒子になって時空を彷徨っていた俺は、お前が友達を取り返そうとする強い思いに引き寄せられたんだ! 何者にも恐れず立ち向かうお前の勇気に! そして俺は、お前の中で自分のパワーが回復するのを待っていたんだ!』

 

その時からタイガはゼンの命を救い、ずっと彼と一体化していたらしく、最近になってようやく失っていた力がある程度回復したことで変身やゼンとの会話が可能になったそうなのだ。

 

「それじゃ、タイガはずっと俺の中に6年ほどいたのか?」

『なんだよ、もっと感動しろよ! 宇宙的な出会いだぞ! 俺はお前の命を救ったんだよ!』

「うーん、なんか実感湧かないんだよなぁ。 それに、何者にも恐れず立ち向かう勇気って・・・・・・俺なんかよりもずっと相応しい奴がいるのに・・・・・・」

 

ゼンは隣に座るいろはを横目に見ながら、自分なんかよりもタイガの力を使うのに相応しい人物がいた筈だと言うが、タイガは「なんでそんなこと言うんだよ?」と不服そうに首を傾げ、同時にいろはも不思議そうな表情を浮かべながら首を傾げる。

 

『選ばれたことを誇りに思えよ! 俺とお前はこれから、この星の平和を守るヒーローになっていくんだ!』

「俺が、ヒーロー・・・・・・?」

 

タイガのその言葉は、ゼンに強いプレッシャーを感じ、「自分はそんな柄じゃない」と言い放ったのだ。

 

「俺はヒーローなんて柄じゃない。 言っただろ、俺はみんなを守るいろはを守りたい、いろはを守るみんなを守りたいって。 俺は誰か個人を中心にあの時動いたんだ。 いろはと出会わなかったら、俺はあの時何もしなかったかもしれない・・・・・・」

「えっ、ちょっと待ってゼンくん。 そんなこと言ってたの? なんか恥ずかしいよぉ・・・・・・!」

 

ゼンがヘルベロスに立ち向かって行った時、まさかそんなことを言っていたとは思えず、いろははなんだか恥ずかしくなって顔を真っ赤にし、両手で顔を覆い隠した。

 

「やめてくれその反応! 俺まで恥ずかしくなるだろ!?」

 

いろはの反応を見て、なんだか自分まで恥ずかしさが込み上がってくるゼンだったが・・・・・・兎に角、話を話を戻し・・・・・・。

 

正直、自分を助ける為に止むを得ない状況だったとはいえ、タイガが自分を選んだことは人選ミスだとしかゼンは思えなかった。

 

確かに、前回の戦いでゼンはタイガの力を借りればこれからはいろはの助けになれるかもしれないと喜んだ。

 

だが、ゼンはタイガが自分と一体化した理由や「この星のヒーローになる」という言葉を受けて、ゼンは自分なんかよりもいろはの方がウルトラマンによっぽど相応しいのではないか、ヒーローの素質を秘めている人物ではないかと思い始め、ゼンは今からでもいろはに乗り換えるべきだとタイガに主張したのだ。

 

タイガの力を手放したその結果、自分がまた無力になるとしても、その方が確実にいろはの助けになれるのではと思ったから。

 

タイガの力がいろはを守る力になってくれると思ったから。

 

「魔法少女の力があるとはいえ、怪獣にすぐに立ち向かう勇気。 宇宙人相手にも優しくしてくれる心。 どう考えてもやっぱりタイガの力はいろはみたいな娘が使うべきだと俺は思う」

 

だからゼンはいろはに譲渡出来るなら、ウルトラマンの力を譲渡したいとタイガに訴えたのだが、タイガ曰く、「それは出来ない」とのことで、彼は首を横に振った。

 

『確かに、いろははウルトラマンに選ばれてもおかしくない勇気と優しさを持ってるとは俺も思う。 だけど、いろはに乗り換えるってことは無理だ』

 

そもそもタイガのパワーが回復したと言っても完全に回復したという訳ではなく、そのパワーが不足している今、いろはに乗り換えたくても乗り換えるなんてことは出来ないし、ゼンと身体を分離させることもできないというのだ。

 

それに何より・・・・・・タイガ自身はゼンこそが自分の力を使うに相応しい人物だと思っているので、そもそもの問題、彼はゼン以外の誰かに乗り換える気なんて毛頭無かったのだ。

 

『だから、お前が他の奴に乗り換えろって言われても、出て行かない。 それに、お前は俺の力を使うに相応しい奴だって信じてるからな!』

「そんなこと・・・・・・」

 

その時、今まで黙ってタイガとゼンの話を黙って聞いていたいろはが、ムスッと頬を膨らませながらゼンの額にデコピンを喰らわせ、ゼンは「いた!?」と涙目になりながら額を両手で押さえる。

 

「ゼンくんは、私のこと過大評価しすぎだよ? ゼンくんはヒーローになれるよ! だって、魔法少女でもないのに、あんな巨大な怪獣から生身で私達を助ける為に立ち向かって行ったんだよ? そんなことが出来る人がヒーローになれないなんて、ある筈ないよ、きっと!」

「いろは・・・・・・」

『そうだぞ、ネリル星人の力がある程度使えるようになったとはいえ、誰か個人の為だとしても、あんなことができる奴はそうそういない。 あの時は俺に変身できることも知らなかったんだしな!』

 

いろはやタイガに強くそう言われるが、やはりゼンは未だに自分に自信が持てないでいた。

 

「そう、なのかな。 俺に、出来るかな。 ヒーローなんて・・・・・・」

「ゼンくんなら、なれるよ。 ヒーローに。」

 

自分がヒーローになんてなれるのかなんて分からない。

 

「でもまぁ、確かに・・・・・・出来ないってやる前から諦めてたら、ダメ、かもね・・・・・・。 乗り換えもできないみたいだし」

 

それでもゼンだってヒーローになれるのなら、なりたい。

 

自分に取ってのヒーロー・・・・・・いろはのようなヒーローになれるなら、なりたい。

 

「自信はないけど、取りあえずはなれるように、頑張るよ」

『その意気だ、ゼン!』

「頑張ってね、ゼンくん!」

 

タイガやいろはがそう後押ししてくれたことで、ゼンは取りあえずはやれるだけやってみてもいいかもしれないとどうにか心に決めるのだった。

 

「あっ、そうだ! そう言えば、タイガに聞きたいことがあったんだけど・・・・・・」

 

そこでいろははあることを思い出し、彼女はどこからともなくニュージェネレーションブレスを取り出すと、彼女はそれをタイガに見せる。

 

「もしかしてこれってタイガの?」

『えっ? あぁ!? それギンガ先輩から預かってたニュージェネブレス!! えっ? なんで? 俺いつの間にか落としてた!?』

 

いろはから教えられてタイガは自分がニュージェネブレスを落としていたことに今さら気づいたようで、ゼンはそんなタイガに「人から預かってたもの落として気付かなかったのか」と呆れたような視線を向ける。

 

「やっぱりタイガのだったんだね。 ごめんね? すぐに返すから・・・・・・」

『いや、良い。 いろはがそれを持っていてくれ。 君の戦いの役にも立つだろうし・・・・・・』

「えっ、でも・・・・・・」

 

いろははニュージェネブレスをタイガに返そうとするが、タイガは別に今返す必要はないと述べ、それに対していろはは「本当に返さなくて良いのだろうか?」と不安げな表情を浮かべる。

 

『良いの良いの! 取りあえず、今だけは君が持っていてくれて良いから。 元々ニュージェネブレスは君みたいな娘達が使う為に開発されたアイテムだし』

「そ、そう?」

 

取りあえずタイガはそれはいろはが持っていた方が良いと言いだし、それにいろはは戸惑いつつも「じゃあしばらく借りるね」と言葉を返すと彼女はニュージェネブレスを改めてタイガから借り受けるのだった。

 

その時、バスの運転手の首筋に突如としてある紋章「魔女の口づけ」が浮かび上がり・・・・・・それは他の乗客達にも浮かび上がったのだが・・・・・・。

 

そのことにゼンもいろはもタイガもなぜか気付くことが出来ず、バスはやがて裏路地のような人気のない場所に到着し、乗客達は一斉に紐で吊された人形のような動きで、バスを降りて行き・・・・・・。

 

同時にその光景を目撃したゼンは不可思議そうに首を傾げた。

 

「おい、タイガ、いろは。 なんかさっきから乗客達の様子が・・・・・・。 それに、ここ本当に目的地か? 普通バスってこんな狭くて薄暗いところ通るもんなのか?」

 

バスがこんなところで停車したことも、乗客達の様子も、ゼンは何もかもがおかしいと感じ、そのゼンの異様な雰囲気には、流石にいろはやタイガも気付いたようで、3人は辺りを警戒し、身構える。

 

「もしかして・・・・・・まさか!」

『兎に角、今は他のお客さん達を追いかけるぞ!』

 

タイガの言葉に頷いたゼンといろはは一緒にバスから降りて乗客達を追いかけると、その乗客達は次々とそこにある渦巻き状の穴に吸い込まれていき、さらには背後に誰かの気配を感じて振り向くとそこには羊飼いのような姿をした3体の使い魔、「羊の魔女の手下」がゼンといろはに迫って来ていたのだ。

 

「やっぱり、魔女!」

『逃げ場を防がれたか・・・・・・!』

「だったら、前に進むだけだろ。 お客さん達助けないといけないしな!」

 

ゼンといろははお互いに頷くと2人は同時に渦巻き状の穴へと飛び込み、それを手下達も追いかけて穴の中へと飛び込む。

 

そのままいろはは魔法少女の姿に変身し、魔女の結界内にゼンと共に降り立つと顔に4つの瞳を持ち、襟にも無数の瞳に下半身からは脚の代わりにハサミの持ち手とフォークの先端が生えた「羊の魔女」が待ち構えていた。

 

また魔女の左右には人間の耳がついた頭部を持つ使い魔らしき存在も確認できる。

 

「魔女の結界に来るのは、2回目か・・・・・・」

 

数日前まではまさか自分が魔女の結界に来るとは夢にも思っていなかったゼンは、別個体のとはいえ二度目の魔女の結界への侵入に感慨深いものを感じ、何気なくゼンはジッと隣に立つ魔法少女姿のいろはを見る。

 

(そう言えば、いろはの魔法少女姿、初めてまともに見れたな)

 

いろはの魔法少女衣装はへそが透けて見えるほどの黒い半透明のボディスーツで、丈が長くないスカートの下に黒スパッツ、上もほとんどスポーツブラ程度の丈しかないタンクトップといった要素から、少し彼女の格好から際どさを感じずにはいられないゼン。

 

「んっ? どうかしたのゼンくん?」

「い、いや、別に・・・・・・」

 

キュゥべえのことは「なんか分からないけど気に入らない奴」という認識だったが、もしいろはの魔法少女の衣装をデザインしたのが彼なら・・・・・・その点についてだけはちょっとだけ感謝せずにはいられないゼンだった。

 

大変眼福ものなので。

 

「うわ~!!?」

 

その時、誰かの悲鳴が聞こえて声のした方にケープやローブのような赤い魔法少女服を着て落ち葉の髪飾りをつけた小柄な少女、「秋野 かえで」が悲鳴をあげながらこちらに向かって走ってくるのが見えた。

 

「あの娘は・・・・・・!」

「魔法少女・・・・・・?」

 

魔女の放つ目玉の爆弾による攻撃をなんとか避けつつ、かえではこちらにまで走ってくると彼女はなぜかいろはとゼンの腕を掴んで一緒に逃げ出してしまう。

 

「うわっ!?」

「えっ!? ちょっと!! おい待て!!」

「ごごご、ごめんなさいごめんなさい!! 私も勝てないから早く逃げよう!」

「待て待て待て!! 今逃げたらダメだ!! お客さん達を助けないと!!」

 

取りあえずタイガの力も借りて超人的パワーを発揮したゼンはかえでといろはを先ずは立ち止まらせようとぐぐぐっと必死にその場に踏みとどまり、それに転びそうになりながらもかえでやいろはも立ち止まらせることに成功。

 

「えぇ!? お客さん!? ってどうして男の子がここに・・・・・・しかももしかして魔女の結界とか見えてる!?」

「特異体質だ!! って何回目だこの説明!?」

 

かえでとは初対面なんだから仕方がないだろう。

 

そこで立ち止まったゼン達は辺りを見回して乗客達を探すと、使い魔達に連れ去られようとしている人々を発見。

 

「「お客さん!! ってわぁ~!!!!?」」

「うぐおあ!!?」

 

だが、直後3人の足下が爆発し、3人は吹き飛ばされていろはとかえでは空中にあった蜘蛛の巣のように張り巡らされた毛糸にくっついてしまい、動きを封じられてしまう。

 

さらに同じように吹き飛ばされたゼンは上半身が地面がやたらと柔らかかったのか、ズボリと地面に嵌ってしまい、身動きが取れなくなってしまったのだ。

 

『あっ、俺これ知ってるぞ。 犬神家ってやつだろ!? 作者は元ネタよく知らないけど!』

(メタ発言してないで助けろタイガ・・・・・・!!)

 

両足をジタバタさせてタイガになんとか助けてくれと頼むが、実体のないタイガには手出しすることもできず、かといって上半身が埋まっている状態では変身も出来ないのでタイガが直接助けることはできない。

 

『いや、粒子化すれば抜け出せるだろ?』

 

ただどうすれば良いのか教えることは出来るので、タイガはゼンにネリル星人なんだから粒子化すれば良いと教え、それにゼンは「そうか!」と納得し、緑の粒子になることで地面を抜け出し、再び人間の姿に戻る。

 

しかし、ゼンは地面から抜け出すことには成功したものの、毛糸に張り付いてしまったいろはとかえでは未だに身動きが取れず、その間に魔女の放った複数の爆弾が2人に放たれてしまう。

 

「いろは!!? タイガ!!」

『おう!』

 

それを見てゼンは急いでタイガに変身しようとするが・・・・・・。

 

「ちょっと待った~!!!!」

 

だが、そこへ黄色い魔法少女服を纏った巨大な鉈のような剣を手に持った少女、「十咎 ももこ」が爆弾を弾き飛ばし、さらにはいろはとかえでに張り付いた糸を切り裂いて2人を解放することに成功すると、ももこは地面に剣を突き刺しながら魔女を睨み付け、勢いよく啖呵を切る。

 

「ウチのメンバーに手出ししようたぁ! 良い度胸だ!!」

「ももこちゃん!!」

「えっ、なにあの娘・・・・・・カッコイイ・・・・・・」

『完全に出遅れたな、俺達』

 

完全に出遅れたゼンだったが、ももこがかえで共々いろはを助けてくれたことに安堵し、そこへ今度はももこ達の近くにいた使い魔を三又槍のトライデントで切り裂いて倒しながら、今度はストライプ柄のワンピースのような魔法少女服を着た少女、「水波 レナ」が現れる。

 

「もう! アンタはまた足引っ張って!!」

 

レナはかえでにそう怒鳴ると、彼女はビクッと身体を縮こませ、肩を震わせる。

 

「ふゆぅ~!」

「早めに片付けるよ、レナ!!」

「は~い」

 

ももこの指示に返事を返すと、レナとももこはお互いに手の平を合わせ、自身の力を仲間に分け与えて強化する能力「コネクト」を発動。

 

水を身体中に纏まったももこは剣を構えながら突進し、魔女の左右にいた2体の使い魔を纏めて倒すことに成功。

 

「うおぉ~!!」

 

しかし、使い魔が倒されると次の瞬間魔女は毛玉のような姿となり、使い魔を倒したももこの存在を無視して魔女は無防備な状態のいろはとかえでに向かって真っ直ぐ高速で突進し、攻撃を繰り出してくる。

 

「嘘!?」

「かえで!!」

『ウルトラマンタイガ!』

 

しかし、ももこ達に見つからないように隠れて「ウルトラマンタイガ」に変身したゼンが魔女といろは達の間に割って入りこむようにして現れると、タイガは両手で魔女の突進を受け止める、そのまま力を込めた右拳によるパンチを魔女に叩き込み、殴り飛ばす。

 

『シュア!!』

「あれは・・・・・・!」

「この前神浜に現れた、光の巨人・・・・・・!? なんで、こんなところに!? ってなんか前見かけた時よりも小さくない?」

 

レナの言う通り、今回、タイガは魔女と大きさを合わせる為に15メートルほどの大きさにしかなっておらず、彼女がタイガの大きさに疑念を抱くのは当然のことだった。

 

『シュア!!』

 

戦闘BGM「ウルトラマンタイガのテーマ」

 

一方で元の状態に戻った魔女は目玉の爆弾を何個もタイガに投げつけるが、タイガ腕を十字に組んで光弾を放つ光弾「スワローバレット」で爆弾を全て貫き、爆弾は空中で爆発。

 

『スワローバレット!』

 

すると今度はまたもや毛玉状になってタイガに向かって突進してくるが、タイガはそれをもう1度両手で受け止めようとする。

 

しかし・・・・・・。

 

途中で魔女は地面を跳ねて空中に飛び上がったのだ。

 

『なに!?』

 

予想外の動きをされたことでタイガには大きな隙が出来てしまい、そのまま魔女はタイガを踏み潰す勢いで空中から急速落下し、魔女と激突したタイガは吹き飛ばされてしまう。

 

『ウアアアッ!?』

 

そこから魔女は何度もタイガの身体の上でバウンドして身体全体を使ってタイガを踏みつけまくるが・・・・・・そこでももこの投げつけた剣が魔女の身体に勢いよく突き刺さり、吹き飛ばされる魔女。

 

「仲間を助けて貰った借りは返したぞ!」

 

起き上がったタイガはお礼を言うようにももこに頷くと、タイガは「ブルレットを使え」とインナースペース内のゼンに指示し、ゼンはそれに頷く。

 

『分かった!!』

 

ゼンはタイガスパークのレバーを引くと左手首に「ウルトラマンブル アクア」を模したブレスレット、「ブルレット」が出現。

 

ゼンは出現したブルレットをタイガスパークにかざす。

 

『ブルレット! コネクト・オン!』

 

すると一瞬、タイガにブル・アクアの姿が重なるとの姿が重なると虹色に光りながら体内エネルギーを貯めた後、両腕をT字型に構えてタイガスパークから発射する水のエネルギーを纏った破壊光線「アクアブラスター」を発射。

 

『アクア・・・・・・ブラスター!!!!』

 

アクアブラスターの直撃を受けた魔女は耐えきれず、火花を散らしながら爆発するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「あの、先ほどは助けて頂いてありがとうございました!」

 

魔女を倒したことでバスの乗客達も無事に解放され、いろはは頭を下げながら自分を助けてくれたももこにお礼を(ついでに小声でゼンとタイガにも)述べるがレナは両腕を組みながら不機嫌そうな態度を取っていた。

 

「アンタ、神浜の魔女は他の魔女より強いって知らないの!? ノコノコ結界に入って来たりしてさ!」

 

どうやらレナが不機嫌なのは昨日出会ったやちよと殆ど同じ理由なようで、そのことにゼンはムッとした表情を浮かべるが、それをタイガが戒める。

 

『そう不機嫌そうになるなよゼン! 昨日の出会ったあの女の人も、この娘も、いろはのことを想って言ってくれてるんだ。 ニュージェネレーションブレスがあるとはいえ、いろはがここにいるあの魔女って言うのと戦うにはまだまだ力不足なのは俺でも分かるからな』

 

タイガにそう言われ、レナややちよの言い方ががあまり気に入らないのは確かだが・・・・・・それでも彼女等の言うようにここの魔女は余所の地域に出現する魔女より強いことを考えると言い返したいところだが・・・・・・彼女達の方が正論過ぎて何も返す言葉がゼンには出てこなかった。

 

さらにレナに注意され、申し訳なさそうにするいろはだが、ももこはそんないろはに対し、「あんま気にしなくて良いよ」と励ましの言葉を

 

「あれで一応心配してるだけだからさ」

「誰がよ!?」

 

タイガと同じように、その辺りのレナのことをフォローするももこ。

 

「君たち、見慣れない制服みたいだけど、見た感じこの街の魔法少女じゃないよね? しかも、かえでの話じゃ、そっちの男の子は魔女や魔女の結界が見えると来た。 ちょっと詳しい事情が聞きたいんだけど・・・・・・良いかな?」

「・・・・・・はい。 ゼンくんも、それで良いかな?」

「俺は構わない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、ゼンといろははももこ達に案内され、「調整屋」と呼ばれる人物がいる場所へと(レナは反対していたが)行くことに。

 

尚、「調整屋」と言うのは魔法少女向けの病院、又は相談所とも言える場所であり、魔女の強いこの街では常識の存在であるらしく、魔力を強化したり、魔法少女を紹介してくれるところなのだそうだ。

 

そして、ゼンといろはが辿り着いたのは「神浜ミレナ座」と言う名の映画館の廃墟であり、映画館の中央部分の部屋にやって来るのだが、そこには誰もおらず、ももこは「あれ?」と首を傾げる。

 

「あれ? 調整屋、今いないのか」

 

一同は部屋の中央に置いてある椅子にそれぞれ腰かけるとももこは改めていろは達がどこから来たのかを尋ねられると、いろははそれに「宝崎です」と素直に応える。

 

「それで? なんでアンタは男なのに魔女や魔女の結界や見える訳?」

 

すると今度はレナが視線をゼンに移し、質問をするとゼンは何時もと同じように「特異体質だ」とだけ応えるが、たったのそれだけでレナが納得する筈もなく・・・・・・。

 

「ちょっと、もうちょっとちゃんと詳しく説明しなさいよ! 何よ特異体質って・・・・・・」

「そうとしか言えないんだよ。 霊感的なものでもあるのか、俺には何故か魔女や魔女の作り出す結界が見えるんだ。 詳しいことは、俺自身にも上手く説明ができない」

 

魔女や結界が見える理由、それは恐らくは自分が地球人とネリル星人のハーフだから、もしくはタイガが自分の身体の中に入り込んでいたからのどちらかが原因なのだろうとゼンは思ったが、そのことをレナ達に言える筈もなく、何よりもあくまで予想でしかないため、ゼンはそれ以上のことはレナ達に何も言わず、黙り込んだままだった。

 

「・・・・・・」

 

しかし、そのような説明で簡単に納得できる筈もなく、レナはそれ以上の追求こそしてこなかったものの未だに疑念の視線をゼンに向けており、ゼンはレナと目を合わせないようにしてそっぽを向くが、それでもレナは睨むように、怪しむようにゼンをジッと見つめていた。

 

(そういう視線、苦手なんだけどな・・・・・・)

 

ゼンは人から向けられる視線というのが少々苦手だった。

 

というのも、世間ではあまり知られてはいないが、この地球にはなんらかの事情で地球に滞在し、密かに暮らしている宇宙人が何人も存在している。

 

しかし、一部のその存在を許さない地球人達は、その地球に暮らす宇宙人達を悪さもしていないのに迫害する者が多い。

 

だからゼンは何時も、学校の教室などでは人の視線にやたらと敏感になり、何時自分がネリル星人の血を引いた人間だと周りにバレるか毎日のようにビクビクしていた。

 

もしバレたら、やはり自分も彼等のように迫害されてしまうのだろうかという不安があったからだ。

 

だからゼンはあまり友達を作りたがらない、迫害されるのが怖いから。

 

最も、それは昔の話でいろはと出会い、自分の正体を知っても優しく受け入れてくれた彼女と触れあったこと、自分自身が成長したこともあり、今ではそこまで人の視線を気にするほどのものでなくなっているのだが・・・・・・。

 

それでもやはり、「疑念の眼差し」というのはあまり気持ちの良いものではないのは確かだ。

 

「あの・・・・・・「あの!!」」

 

だからゼンはレナにあんまりそんな睨まないでくれとレナに頼もうとしたのだが、それよりも早くゼンの言葉を遮って彼を庇うように立ったいろはがゼンの目の前に現れたのだ。

 

「ゼンくんのこと、あんまり睨まないであげて欲しいの・・・・・・。 ゼンくんは怪しい人じゃない。 本当に特異体質なだけで・・・・・・。 ゼンくんは人の視線とか、そういうの苦手で・・・・・・だから!」

「別に睨んでなんか・・・・・・!」

「いや、睨んでた」

「100%睨んでたよね、レナちゃん?」

 

ももことかえでに指摘されたことで、「ぐっ」と黙り込むレナ。

 

そのままレナはゼンから視線を外し、いろははゼンの顔を覗き込んで心配そうに「大丈夫?」と声をかける。

 

「うん、まぁ・・・・・・昔よりかは人の視線って気にならなくなったし平気だよ。 でもありがとう、いろは」

「うんっ。 あっ、それと神浜ってやっぱりそんなに魔女が多いんでしょうか?」

 

そこでいろはは昨夜のやちよやレナ達の会話から神浜はそんなにも他の地域に比べて魔女が多いのかと尋ねると、それに対しももこが手を顎に乗せながら「そうだね~」と困り顔で呟く。

 

「しかも強い上に数も多くてさ。 昔はこんなじゃなかったと思うんだけどね~。 しかも最近はさ、魔女以外にも『ヴィラン・ギルド』なんてこれまた面倒なのが出てきてさ・・・・・・」

「「ヴィラン・ギルド?」」

 

突然出てきた「ヴィラン・ギルド」という聞き慣れない名前に不思議そうに首を傾げるいろはとゼン。

 

ももこが言うには、ヴィラン・ギルドとはその名の通り、悪の宇宙人達で結成された犯罪組織であり、強盗などによる武器や怪獣の不正入手、及びオークションによるそれらの不正転売を行っている組織の名称だというのだ。

 

分かりやすく言えば地球で言うところのギャングや暴力団のようなもので、さらに言えばヴィラン・ギルドは地球を商売しやすい惑星と見なしているそうで、特にこの神浜市オークションのデモンストレーション場として最適らしく、利用しているのだという。

 

最も、まだヴィラン・ギルドは怪獣(ヘルベロスはギルドと関係ないのでノーカン)を出して来たりはしていないそうで現状はみみっちい悪さばかりしているらしい。

 

とは言え、どちらにしても怪獣を出して暴れさせるのは時間の問題であり、ギルドとは関係無いとは言え、以前現れたヘルベロスのことを考えるとほぼ間違いなく、怪獣は魔女の脅威になることが目に見えていた。

 

「しかも、魔女と違って怪獣は結界なんて張らないだろうし・・・・・・困ったもんだよ」

 

さらにももこ的に困るのは、怪獣は魔女のように結界を張らないため、「魔法少女が迂闊に怪獣に対処できない」というのもあり、下手に怪獣と戦えば世間に魔法少女の存在がバレて大騒ぎになってしまうかもしれない可能性があった。

 

また、ここまでももこの話を聞いてゼンが疑問に思ったのは何故わざわざ他の地域よりも強い魔女で溢れかえっている神浜でそんなことをするのかということ。

 

魔女がいたら、怪獣などをもしかしたら結界内に取り込んだり等してギルドに取っては商売の邪魔になるような事態が起こるのではないかとゼンは疑問を感じ、それをももこにぶつけると彼女はその疑問に応える。

 

曰く、それは「むしろだからこそ奴等は盛り上がる」とのことだった。

 

「アイツ等には魔女の結界内を映す技術を持っているらしい。 だから魔女が仮に怪獣を結界内に呼び込んだとしたら、それこそ奴等の格好の的。 怪獣は魔女よりも強い。 でもここの魔女は他の魔女より強いから良い感じに怪獣の強さを引き立ててくれる。 そういう考えで、奴等はこの街をオークション会場に選んだんだ」

 

だから、むしろ怪獣を魔女が結界内に取り組んだのなら、それを出品した宇宙人に取ってはむしろラッキーなことなのだという。

 

と言っても魔女が怪獣を結界内に自分から取り込んだりするのかどうかはまだハッキリとは分からないのだが。

 

「っていうか、ここまで聞いてみてなんだけど、最近現れたって割にはアンタなんでそこまでその、ヴィラン・・・・・・ギルド? とかの情報知ってんのさ?」

「あー、それは・・・・・・この街に住んでるこの手の事情に詳しい情報屋に聞いたからね」

 

取りあえず、ももこから一通りの神浜の事情を聞き終えたゼンは両腕を組みつつ、いろはに視線を向け、「これからどうする?」と声をかける。

 

「正直、思っていた以上にこの街面倒なことになってるぞ、いろは?」

『俺としては、ヴィラン・ギルドってのは放っておけないからこの街に留まりたいところなんだがな・・・・・・』

 

ゼンは予想以上に今の神浜市が中々に深刻な状況であることから、常日頃からいろはに戦って欲しくない、傷ついて欲しくないと思っている彼はせめて事態がもう少し落ち着くまではここに近づかないで欲しいと思っていた。

 

なんだったら自分だけこの街に留まるなりしていろはの代わりにういの情報を集めつつ、ギルドを放っておけないというタイガの気持ちも汲んで怪獣退治に専念するのも良いだろうと考えたが、やはりというべきか、いろはから返って来た答えは「NO」だった。

 

「ゼンくんが私のこと心配してくれてるのは素直に嬉しいよ。 でも、ごめんね・・・・・・。 これはどうしても、投げ出せないことだから・・・・・・」

「まぁ、半ば予想してた答えだったけどな。 だったら俺も最後までいろはに付き合うよ」

 

いろはに頑固なところがあるのは分かっていた。

 

一度こうと決めたことは中々曲げてくれない。

 

だからゼンはこれ以上は何も言わず、最後までいろはに付き合うことを約束したのだ。

 

「あの、私・・・・・・行かなくちゃいけないんです。 里見メディカルセンターっていうところに」

「俺達がこの街に来たのは、そこに行く為なんです」

 

いろはとゼンは神浜が危険な地域であるにも関わらず、ここへとやってきた理由をももこ達に語り始め、そこに行く途中であの魔女に襲われたことを話す。

 

「そっか。 でも、病院? 誰か入院してるの?」

「それが、今もいるかは分からなくって。 でも、そこに入院してた筈なんです。 ういが、私の妹が・・・・・・」

 

そんな風に語るいろはの話を聞いたかえでは「筈?」と不思議そうに首を傾げ、一体どういうことなのだろうかと問いかけると、いろははそこからさらにここに来た理由、妹のういのことについて事細かにももこ達に話し始める。

 

「それで私、消えてしまった妹を探しに神浜市まで来たんです。 私には、やっぱり本当に妹がいたようにしか思えなくて」

「なっ、なによそれ・・・・・・そんなこと信じろっての!?」

 

話を聞き終えたレナは、そんな話をそう簡単に信じられるかと言い放ち、いろはもキュゥべえですら否定したこんなおかしな話、信じられる訳が無いと言うのも彼女自身それは分かっていた。

 

「やっぱり信じられないですよね・・・・・・」

「別に無理に信じて貰う必要はないだろう? そう簡単に信じられない話なのは分かってたことだし」

 

これは元々自分達で調査しようとしていた案件なので、別に誰かに信じて貰う必要は無いし、他の誰かを付き合わせるつもりはゼンもいろはも無かったので、特に信じて貰えなくても問題は無かったのだが・・・・・・そこまで腕組みをしながら椅子に座って話を聞いていたももこが「うん、分かった」と言いながら不意に立ち上がる。

 

「なら、先ずはその里見メディカルセンターだな!」

「はあ!? ももこ!?」

「まっ、これも何かの縁だし、妹捜し手伝ってあげる! 魔法少女は助け合いってね!!」

「なんか聞いたことあるそのフレーズ!」

 

どこかの上下三色ライダーみたいなことを言いながら、ももこが妹捜しの手伝いを申し出るといろはもゼンも面を喰らったかのような顔を浮かべ、2人は互いに顔を見合わせる。

 

「いろはの話を信じてくれるんですか?」

「嘘ついてるようには見えないしね! 私は信じるよ」

「めっちゃ良い人だな、オイ」

「で、でも・・・・・・! 良いんですか?」

 

こんな信じがたい話を信じてくれるだけでなく、手伝いまで申し出てくれるももこにゼンやいろはは感謝するが、レナは「良い訳ないでしょ!?」と立ち上がってももこの申し出を断固として反対。

 

「レナ達の調査はどうなるのよ!?」

「一週間探してるけど何も見つからないんだよ? 今日はお休みでも良いんじゃないかなぁ?」

「はあ!!?」

 

どうやらももこ達は何かを調査をしている途中だったそうで、しかし全くその調査の成果が出ないことからかえでもももこ同様にいろはの手伝いを少しはしてあげても良いのではないかと言うが、そんなかえでをレナは睨み付け、睨まれたかえで「ひう」と小さな悲鳴をあげる。

 

「もしかして、何か取り込み中だったんですか? だったら、無理に付き合う必要は・・・・・・」

「良いの良いの、遠慮しないで! 元々は胡散臭い噂話だしな」

 

ゼンはももこ達が他に大事な用事があるようだったので、わざわざ無理して自分達に付き合う必要は無いと遠慮するが、ももこは首を横に振って別に気にしなくて良いと言葉を返す。

 

「それに、もう他の魔法少女が倒しちゃったのかも。 大体『鎖の魔女』の噂なんてレナちゃんが1番信じてなかったでしょ?」

「うっ、それは・・・・・・」

 

かえでの言葉を受けてレナは口ごもり、同時にももこ達が行っている調査というのは話を聞く限りどうにもその「鎖の魔女」についての調査を行っていたようでももこ達は今、その魔女を追いかけている最中なのだそうだ。

 

「あっ、2人は鎖の魔女って聞いたことある?」

「いや、俺は特に・・・・・・いろはは?」

「私も特には・・・・・・」

 

念のためにその鎖の魔女について尋ねるももこだったが、特にそんな魔女の噂を聞いたことがないゼンといろはは2人揃って首を横に振り、何も知らないことを伝える。

 

「レナ達、その魔女を追ってるの。 その娘達の用事って魔女捜しよりも優先することなの?」

 

やはりというべきか、レナはいろはの妹捜しを手伝うことにどこか否定的であり、怪訝な表情で魔女よりも優先すべきなのかとももこに問いかけ、そんなレナに対しももこは「ちょっと手伝うだけだろ」と言葉を返す。

 

「あっ、私は別に大丈夫です! こんなにお世話になって、まさか妹のことまで・・・・・・」

 

流石にいろはも申し訳無さを感じたのか、レナとももこの間で険悪なムードを感じ取ったこともあり、彼女は慌てて立ち上がって魔女捜しという大事なことの取り込み中だというのに自分の都合に付き合わせる訳にはいかないと遠慮しようとするが・・・・・・。

 

「気にしなくて良いよ。 同じ魔法少女の仲間だもん・・・・・・」

 

そんないろはの言葉を、かえでが微笑みながらそう言って遮ると彼女は椅子から立ち上がっていろはの元に歩み寄り、彼女はいろはに自己紹介を行う。

 

「私は秋野 かえでだよ」

「十咎 ももこ!」

「レナちゃん!」

 

かえでがレナに視線を向けると、レナは腕を組んでツンッとした態度を取ってはいたものの、しっかりと名前をいろはやゼンに教える。

 

「水波・・・・・・レナ」

「私達、この新西区でチームで活動してる魔法少女なんだ。 えっと・・・・・・」

 

一通りの自己紹介が終わると、いろはやゼンはまだ自分達が彼女等に名前を教えていなかったことを思い出し、いろはは少々気恥ずかしそうにしつつ、自分名前を名乗る。

 

「環・・・・・・環 いろはです」

「俺はゼン、光和 ゼンです」

「いろはちゃんに、ゼンくんだね。 よろしく、いろはちゃん! ゼンくん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、一同は里見メディカルセンターへと向かうこととなったのだが・・・・・・。

 

「えっ? じゃあ入れなかったの?」

「はい、環 ういっていう患者は入院してないって言われちゃって・・・・・・」

 

いろはは受付の人にういのことを尋ねたのだが、「環 うい」という患者は今は入院していないそうで・・・・・・それどころか昔入院していたかどうかも調べて貰ったところ、そもそもそんな名前の患者が入院していた記録は無いとのことで結局、病院ではういの情報を得られず、空振りに終わる結果になってしまったのだった。

 

それから、ゼン達はその足でフードコートに立ち寄ることとなり、今はみんなで注文した商品が出来上がっているのを待っている最中でいろはとゼンは何時でもすぐに商品を受け取れるようにレジ付近でそれを待っているところだった。

 

「・・・・・・はぁ」

「残念・・・・・・だったな。 妹・・・・・・ういちゃんについての情報が全く無くて・・・・・・」

「うん・・・・・・」

 

ういについての情報が全く無かったことに、いろはは落ち込んだ様子を見せ、そんな彼女の暗い表情を見てゼンはなんとか励ましの言葉をかけようとするものの、どう言って良いか分からず、ゼンは頭を悩ませる。

 

「あっ、もしかしていろはの記憶違いって可能性は無いか? ういちゃんの存在を疑ってる訳じゃないが、本当は入院してた病院が違うとか・・・・・・」

 

ここまで絶対に妹であるういは存在した、それは間違いないと断言するいろはの記憶をゼンは別に疑っている訳ではない。

 

だが、入院していた記録すらないとなるともしかして入院していた場所が違うのではないかと尋ねるが、いろはは首を横に振り、ゼンの考えを否定する。

 

「私、何度もあの病院に通ってたから分かるの。 間違いなく、ういが入院していたのはあの病院だった。 それに、ゼンくんもよく一緒にあの病院に行って、ういのお見舞いに来てくれてたんだよ? やっぱり覚えてない?」

「えっ、そうなの!?」

 

いろはの言葉に驚きの声をあげるゼンだったが、むしろいろはの妹が病気だと言うのに一度もお見舞いに来ないことの方がおかしいかと思い、ゼンにはその記憶は無いものの、いろははそのことをしっかりと覚えており、彼女が言うにはゼンはういともとても仲良くしてくれていたらしい。

 

「よく覚えてるよ。 2人はコソコソ話していたつもりだったかもしれないけど、ういに私の口説き方とか聞いてたよね、ゼンくん。 恥ずかしかったから当時は聞こえないフリしてたけど」

「なにいろはの妹にとんでもないこと聞いてんの昔の俺!?」

『ってかそれ今バラすこと!?』

 

いろはの突然のカミングアウトにゼンは絶句し、すかさずタイガも「やめたげてよォ!!」と蹲るゼンに同情して叫び、恥ずかしさのあまり蹲るゼンに等身大サイズになった半透明タイガが背中を摩って慰める。

 

『いろは! そういうのは普通心の中に仕舞っておくもんなんだぞ!!』

「えっ、あっ・・・・・・ご、ごめんね? まさかそこまで精神的にダメージ受けるとは思わなくて・・・・・・」

「マジか・・・・・・マジか・・・・・・。 めっちゃ恥ずかしい」

「この思い出もういのことを思い出したと同時に蘇ってきた記憶だったから忘れてたんだけど・・・・・・それにしてもゼンくんって私のこと昔から好きすぎだよね」

「やめろォ!!? 否定はしないけど、なんかこう・・・・・・あーもう!!」

 

真っ赤になった顔を両手で覆い隠しながら悶えるゼンを見ていろはは「ちょっとからかい過ぎたかな」と反省し、「ごめんね? からかい過ぎた」と申し訳なさそうに声をかけるがゼンはプイッとそっぽを向いていろはと顔を合わせようとしない。

 

(拗ねちゃった・・・・・・)

 

そんなゼンをちょっと可愛いと思ってしまい、彼女はニヤつきそうになる顔を必死に堪える。

 

「アンタ等なにさっきからイチャついてんのよ。 話しかけるタイミング逃したでしょうが」

「えっ? あれ? ももこさん?」

 

そんな時、後ろからももこの声が聞こえ、ゼンといろはは声のした方に振り返るのだが・・・・・・そのももこの姿にゼンもいろはも何か違和感を感じ、「んっ?」と首を傾げる。

 

その違和感がなんなのかはゼンもいろはも分からなかったが、どうにもももこはなんだか不機嫌そうな顔を浮かべており、自分達が何かやらかしてしまったんだろうかと不安がる2人。

 

「それよりも席、取れたわよ? ももこ達には場所取りして貰ってる」

「えっ?」

「えっ?」

 

ももこ達には・・・・・・と言われても、目の前にいるのがももこなのではといろはもゼンは一体なにがどうなっているのか分からず、頭に疑問符を浮かべてますます困惑し、すると目の前にいるももこ(?)はキッといろはとゼンを睨み付け、それにビクリとする2人。

 

「あっ、え~っと、ももこさんですよね?」

 

するとそこに丁度トレーに乗った注文が来ると、いろはが手に持っていた待ち番号札を乱暴に奪い取り、カウンターに叩きつけるようにして置くと彼女は注文した商品を手に取っていろはの問いかけにも応えず、困惑する2人を無視してそそくさと2階へと続く階段を登り、そこから立ち去って行くのだった。

 

「なんか、気に障ることしたかな」

『さっきのイチャつきが原因じゃねーの? イチャついてんじゃねえって言ってたし』

 

タイガにそう言われるもののゼンとしては別にイチャついているつもりも無く、どちらかと言うとむしろいろはに自分が覚えてない恥ずかしい過去を暴露されて恥ずかしい思いをゼンがしただけな気がするのだが、それでも端から見たらそう見えるかと思い、取りあえずそれが気に障ったのなら謝るべきだろうと考え、ゼンはいろはに視線を向けると彼女もゼンの考えを汲み取ったのか「うん」と軽く頷いて返事を返す。

 

取りあえず、商品を手に取って2階へと向かったももこをゼンといろはは慌てて追いかけるのだが、2階へと駆け上がるとそこにももこではなく、商品を運んでいるレナの後ろ姿があり、いろはとゼンはまたもやお互いに顔を見合わせ、2人揃って「あれ?」と首を傾げる。

 

兎に角、いろはとゼンはレナを追いかけてももこ達の座る席へと向かうと、先ほどとは違って気前良さそうに「よっ!」と自分達に声をかけるももこの姿があり、先ほどと違ってももこの機嫌が良さそうなことにゼンもいろはもますます困惑してしまう。

 

「レナちゃん、またももこちゃんに変身してたでしょ?」

「してないわよ」

「嘘! さっき見えたもん!!」

 

どうやら先ほど受付で出会ったももこはレナが魔法で変身した姿だったらしく、かえではそれでゼンやいろはを困惑させたことを叱るが、レナは特に反省した様子は見せない。

 

「クラスの奴等がいたの。 ほっといてよ!」

「成程。 魔法でさっきももこさんに変身していたと・・・・・・。 なに? もしかしてクラスメイトと仲悪いの?」

「別に・・・・・・ってなんでアンタにそんなこと説明しないといけないのよ!!」

 

何気なく、先ほどのレナの反応から自分やいろはと同じく、少々失礼かもしれないがレナに「ぼっち」の匂いを感じ取り、ゼンはもしかしてレナはクラスメイトと折合いが悪いのだろうかと彼女に尋ねるが・・・・・・。

 

未だにゼンに対して疑念を払えない上に、今日会ったばかりの奴になんでそんなことを教えないといけないのかとレナは怒鳴りあげ、怒鳴られたゼンはそれに驚いて目を見開き、ちょっと涙目になった。

 

「そ、それもそっか。 確かに他人がズカズカ踏み込んで良い問題じゃなかったかも・・・・・・。 ごめん」

(メンタル弱ッ!?)

 

レナの方もまさかほんの少し怒鳴っただけで涙目になるとは思わなかったのか、少々申し訳無さを感じていたようだったが、上手く言葉が出てこず、ゼンにどう声をかけて良いのか分からなかった。

 

「ゼンくんはレナちゃんを心配してああ言ってくれたんだよ? なのにそんな言い方・・・・・・」

 

そこでかえでからも注意が入り、実際、ゼンがレナにクラスメイトのことを尋ねたのはレナが遠回しにクラスメイトに会いたく無いと言っていたので、もしかしてイジメか何かでも受けているのではないかと心配したからだ。

 

「知らないわよ! っていうかさ、今日会ったばっかりの奴に対してそんなこと心配するなんて・・・・・・アンタやっぱおかしな奴ね」

 

いろはに頭撫でられて励まされるゼンの姿を見ながら、彼女は改めて怪しさ満点であることも相まって「やっぱ変な奴」とゼンのことをレナは認識するのだった。

 

「付き合って貰ったのに、すみません」

 

そこでゼンの頭を撫でながら、折角病院まで付き合って貰ったというのに何も成果が得られなかったことをいろははももこ達に謝罪し、なんとか病院内に入ってういを探す方法を考えると言うのだが・・・・・・。

 

正直、関係者があの病院に入院していない以上、病院内に入ることは難しく、せいぜい忍び込むくらいの手段しか手は残されていない。

 

出来ることならそんな犯罪者まがいのことをしたくはないのだが、ういの手がかりを探すためにはやむを得ないかもしれないし、ここまでういのことに執着しているいろはならそれくらいやりかねないと思ってしまうゼン。

 

ネリル星人の特性を使えば、自分が侵入出来るかもしれないと一瞬考えたゼンだが、もしバレたらいろは以上に病院内が大騒ぎになる可能性を考慮するとやはりそちらもあまり良い方法とは思えず、ゼンは頭を悩ませた。

 

「忍び込むにしても、もうちょっとストレートな方法って無いかな」

「ストレートな忍び込みって何よ」

 

ゼンの発言にレナがすかさずツッコミを入れると、その時かえでが「あっ!」と声をあげて何かを思いついたらしく、彼女が視線をももこと合わせるとかえでの考えをももこも読み取ったようで彼女は「その手があったか!」と言わんばかりにレナに視線をやる。

 

「レナ!」

「レナはやらないからね!」

「そう言わずにさ、いろはちゃん困ってるんだから・・・・・・」

 

要するに、ももこ達はレナの変身魔法を頼りにしようと考えた訳で・・・・・・他人に変身する魔法が使えるならば病院の看護師に変身すれば病院内にも侵入できるとももこやかえでは考えたのだ。

 

「看護師さんに変身すれば病棟にも侵入できるよな!?」

「か、簡単に言わないでよ!? 他の人になりますなんて大変なんだから! それに、バレたら困るのはレナじゃない・・・・・・」

 

いろはの話の信憑性を疑っているレナからしたら、もしも正体がバレた時のことを考えると、そこまでのリスクを背負ってまで看護師に変身し病棟に侵入することなど出来る筈もなかったが・・・・・・そんなレナに対してかえでは不満げな表情を浮かべながら苦言を零す。

 

「レナちゃんどうでも良い時には変身する癖に人助けは嫌がるんだね?」

「どうでも良い時って何時のことよ!?」

 

そんなかえでに対し、眉間にシワを寄せてかえでを睨むレナ。

 

「さっきとか!」

「あんた喧嘩売ってんの!?」

「いろはちゃんはういちゃんを探しにわざわざ神浜市まで来たんだよ!?」

「それだって、本当にいるか・・・・・・」

 

いろはとゼンを間に挟む形でレナとかえではお互いに言い争いを始め、かえではういの存在を疑うレナに対し「いるよ!!」とハッキリと断言。

 

「いろはちゃんはういちゃんの為に魔法少女になったんだよ! 間違える訳ないよ!!」

「・・・・・・他人の願いごとなんて、分かんないわよ」

「レナちゃんいっつも勝手なことばっか言ってさ。 折角魔法少女なのに自分のことばっか!」

「そんなことないよ! レナだって・・・・・・!」

 

そこでレナとかえでの言い争いを仲裁しようとももこが割って入ろうとするが、そんなももこの言葉を「何よそれ!!」と怒鳴るようにしてレナが遮る。

 

「かえでだって、家庭菜園を守りたいとかどうでも良い願いで魔法少女になった癖に!! フン!!」

「っ、おい!! レナちゃん!! 今のは言い過ぎだ!!」

 

そこでゼンが声を張り上げてレナの今の発言はあまりに言い過ぎであると抗議の声をあげた。

 

人の願いというのは他の人から見れば、ちっぽけなものに見えることはよくあることだろう。

 

しかし、他の人から見たらちっぽけな願いだったとしても、それを願った本人に取ってはとても大切で大事なもの。

 

かえでが何を願って魔法少女になったのか、詳しいことをゼンは知らない。

 

だが、それでもどんな願いだろうがそれを「どうでもいい」なんて言う権利など、よっぽど歪んだ願いでもない限り、どこの誰にもある筈が無いのだから。

 

だから、それが許せなかったゼンはかえでとレナの口論の輪の中に思わず割って入ったのだ。

 

自分は部外者ではあるが、それでも口を出さずにはいられなかった。

 

案の定、レナからは「アンタには関係ないことでしょ!?」と言われてしまったが、それでも今度はゼンは引き下がらず、「今のは流石に謝るべきだ」とゼンは主張するが、レナは謝らない。

 

「家庭菜園がどうでも良くなくて・・・・・・何が・・・・・・」

「どうでもよくなんか無いよ!!」

 

そこでかえでがレナの言葉に反論するように、今までの大人しそうな雰囲気から一転して彼女は怒鳴りあげ、彼女は目尻に涙を浮かべながら唇を噛み締める。

 

「お父さんとお母さんと、ぺろちゃんと八っちゃんとドンちゃんと、家族の大切な家庭菜園だよ!」

 

今にも泣き出しそうな声で、かえではそうレナに言い放つと、ももこはそんな2人の様子に頭を抱え、かえでのその泣きそうな顔を見ると、レナは思わず動揺し、戸惑いを見せる。

 

「レナ、別にかえでの家族がどうとか言ってないじゃん。 それに、ぺろとかキモい爬虫類まで並べられても・・・・・・」

「気持ち悪くないよ! ぺろちゃんをバカにしないで!! そんなだからレナちゃん、クラスの友達できないんだよ!!」

「っ・・・・・・」

 

かえでのその言葉に、レナはついつい苛立ってしまった。

 

「そんなこと、かえでには関係ないでしょ?」

「そうだね。 私にはもう、関係ない。 レナちゃんとは絶交だよ!!」

 

かえではそう叫ぶようにして言い放つと、彼女は鞄を手に取ってももこの「かえで!」と自分に呼びかけるその声も無視してその場を走り去って行き、ももこは呆れたような視線をレナに向ける。

 

「お前等、これで何回目の絶交だよ?」

 

どうやら、こういったことはももこ達の間では日常茶万事のようでももこは「ゼンくんの言うようにレナも言い過ぎだぞ」と彼女からもレナに注意を促し、レナは顔を俯かせながら「分かってるわよ」と小さく返事を返す。

 

「あんまり絶交絶交言ってると、鎖の化け物が攫いに来るぞ~?」

 

そんな険悪ムードなこの場を和ませようとしたのか、ももこは両手を広げながら鎖の化け物が攫いに来るとふざけて見たものの、むしろそれは今のレナにとってはただの悪ふざけでしかなく、逆効果だった。

 

「っ!!」

 

キッとレナもまた目尻に涙を浮かべてももこのことを睨み付けると、ももこはそんなレナに圧されてしまう。

 

「ばっかみたい!! 保護者ぶってくちばし突っ込まないでよ!! 過保護!! おせっかい!! バカももこぉ!!!!」

 

するとレナはももこに対し、そう怒鳴りあげた後、彼女も鞄を手に取って即座にその場から走り去って行き、ももこは溜め息を吐きながら「やっちゃったかも・・・・・・」と頭を抱えるのだった。

 

「・・・・・・っ」

 

また、そんなももこ達の一部始終を見ていたゼンは、脳裏にチビスケを連れ去られた時のことをついつい思い出してしまった。

 

きっとこの先一生、チビスケを助けられなかったことを後悔し続けるであろう思い出・・・・・・。

 

自分とチビスケは別に絶交して別れた訳ではない。

 

それでも、こういった友人同士だった人達がお互いに離れて行ってしまう姿をみると、ゼンとしては何か思うところがあり、無性にもどかしい気持ちになって仕方が無かった。

 

さらに言えば、かえでとレナが絶交してしまったのは、自分が2人の口論の間についつい思わず割って入ってしまったせいなのでは無いだろうかとゼンは考えてしまい、責任を感じずにはいられなかったのだ。

 

友達を失う気持ちは、誰よりも分かっていた筈なのに、自分が口出ししてしまったせいでかえでとレナの2人が絶交してしまうのを助長してしまったのかと思うと、ゼンはやるせない気持ちでいっぱいだった。

 

(誰よりも、そういうのが嫌いな筈なのにな・・・・・・)

 

すると、そんな時隣に座るいろはがクイッとゼンの左腕を引っ張り、はっとなったゼンが隣にる彼女に視線を向けるとそこには心配げに自分を見つめるいろはの姿があり、彼女は自分のことなどお見通しと言わんばかりに、ゼンに対して優しく言葉をかける。

 

「ゼンくんのせいじゃないよ。 だから、あんまり自分を責めないで・・・・・・?」

「励ましてくれてありがとっ。 でも、ごめん。 素直にそう思うことができないや」

「ゼンくん・・・・・・」

 

いろはがそう言って励ましてくれるものの、ゼンとしてはやはりどうしても自分のせいなのではと思わずにいられず、素直に彼女の言葉を受け取ることがゼンには出来なかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、もう夕暮れ時で日が沈み始めたことでいろはとゼンは今日は一度家に帰ることとなり、今はももこに駅まで見送って貰っているところだった。

 

「いろはちゃんにゼンくん、ごめんね。 びっくりさせちゃったよね」

「えっ? あ~、そんな、私のせいで・・・・・・」

「いろはのせいじゃないよ。 多分、俺のせいだ。 俺があの2人の間に口を挟んだから・・・・・・」

「あ~、いや、喧嘩はホントしょっちゅうだから・・・・・・」

 

レナとかえでの2人が喧嘩したのは、元はと言えば、自分がももこ達を付き合わせてしまったのが原因だといろはは自分を責め、そんないろはにゼンは「いろはのせいではない」と口にし、少なくとも絶交とした原因を作ったのは自分が途中で口を挟んだのが原因だと相変わらず自分を責めた。

 

そんな2人に、ももこは本当にあの2人が喧嘩するのはよくあることなので2人は気にしなくて良いと彼女は言ってくれるのだが、それでもいろはもゼンも自分に責任を感じずにはいられなかった。

 

「それに、今回はあたしがトドメ刺しちゃったようなもんだしね。 ハァ~」

 

一方でももこも自分に責任を感じているようで、彼女は場を和まそうとちょっとふざけてみたことが返って逆効果となったことに深い溜め息を吐き、そんなももこを見ていろはは何か話題を変えた方が良いのかもしれないと思い、先ほどももこが述べていた「鎖の化け物」についてのことを彼女に尋ねてみる。

 

「あの、そう言えば・・・・・・鎖の化け物って鎖の魔女のことですか?」

「・・・・・・いろはちゃんの学校にはさ、『絶交階段』の噂ってある?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もしもし聞いた?

 

絶交階段のその噂。

 

神浜私立大学付属学校 中等部。

 

東棟の北側、4階から屋上へ続く階段のこと!

 

絶交階段の6段目に自分の名前、7段目に相手の名前を書いちゃえばそれが絶交証明書!

 

未来永劫ず~っと交際を断つことが認められるの。

 

もしも仮に万が一、仲直りなんてしようものなら謝った方が鎖の化け物に攫われちゃう!

 

絶交階段に閉じ込められて無限の階段掃除をさせられちゃうって生徒の間じゃもっぱらの噂・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「絶交階段に名前が書かれた6人の内、3人が行方不明になってるんだ」

「3人も!? それじゃ、噂が本当に?」

 

ももこから一通りのその「絶交階段の噂」を聞いて、いろはやゼンはそれがももこ達が調査していたという案件であることを理解し、いろはは妹捜しを手伝って貰ったこともあり、自分にも手伝えることがあるならと少しでも力になれるようにと協力を申し出る。

 

「ありがとう。 でも、そんな悪いよ。 いろはちゃんだって妹のこと探さないといけないでしょ?」

「それは、そうですけど・・・・・・」

 

ももこはそうは言ってくれるものの、レナやかえでも喧嘩したままで、それを放っておいてういのことに集中なんて出来る筈もなく、だからいろははやはり手伝えることがあるなら手伝いたいと一歩も引かない姿勢を彼女はももこに見せる。

 

「私、自分が弱い部類の魔法少女だって言うのは分かってます。 それでも、少しでもももこさん達の力になりたいんです。 喧嘩したままのももこさん達を放ってういを探し続けるなんて、私には出来そうにないです。 そんなことをしたらきっと、ういにも怒られると思いますし」

「いろはちゃん、でも・・・・・・」

「ももこさんが言ったんですよ? 『魔法少女は助け合い』だって」

「それは・・・・・・!」

 

ももこ的には、本当に自分達のことは気にしなくて良いと考えていたのだが、それでもいろははせめて3人が仲直りするまで何か自分に少しでも手伝えることがあるなら手伝いたいと伝え、そんないろはにももこは困り果てた表情を浮かべるが・・・・・・。

 

「諦めた方が良い。 いろはの頑固っぷりは筋金入り。 一度やると決めたら中々曲げてくれないんだ」

 

そこでゼンからもいろはは「超」がつく程の頑固者なので恐らくこう言い出したら聞きはしないだろうとももこに伝え、確かにいろはのこの様子を見るに、そう簡単に諦めてくれそうにないというのはももこにもなんとなくではあるが、理解することはできた。

 

「うーん、それじゃまぁ、ほんのちょっとだけ・・・・・・いろはちゃんのご厚意に甘えさせて貰おうかな」

 

結局、ももこはいろはの頑固さに根負けしてしまい、彼女からの申し出を受け入れることとなったのだった。

 

「ホント、いろはって意外と頑固なんだからな・・・・・・」

『でもそういうところが・・・・・・?』

「好き! って何言わすんだタイガ!?」

 

なんてやり取りをゼンとタイガが行っていると・・・・・・。

 

「グルアアアアアア!!!!」

 

そこから遠目ではあるものの、突如神浜の街に1体の怪獣が出現し、その突然の怪獣の出現にゼン達は驚き、目を見開く。

 

「また、怪獣・・・・・・!?」

「もしかして、遂にヴィラン・ギルドが本格的に動き出したのか・・・・・・!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分前、神浜にあるとある湾岸地域にて。

 

そこではサングラスをかけた3人の従業員の姿があり、その内の1人がアンテナのついた機械を取り出すと、作業員の1人はその機械を操作してこの場所で何かを起こそうとしているようだった。

 

「脳内神経シンクロ率、95、98・・・・・・100%でロック。 アドレナリン値、あと5秒でリミットまで上昇」

 

そんな彼等の様子を背後から不気味に怪しく青霧が見つめていたのだが、彼等はその存在に気付かない。

 

「怪獣兵器、出撃!」

 

そして作業員の1人が機械のとあるボタンを押すと、近くの海中から皿のようなギョロ目に厚い唇を持つ、トカゲのような怪獣、「海獣 キングゲスラ」が出現。

 

「グアアアアアア!!!!!」

 

キングゲスラは海岸地区の工場の屋根を破壊するとその工場で製造されている好物のチョコレートを食べ始め、そこで働いていた人々は怪獣の出現に怯え、逃げ惑う。

 

「わああああ!!? 逃げろ!! 逃げろぉー!!」

「助けてーーーー!!!!」

 

一方で、キングゲスラを操っている先ほどのグラサントリオはキングゲスラを上手く操れていることに満足し、キングゲスラを操作しているリーダー格の男は他の2人にヴィラン・ギルドに連絡してオークション開始をするように指示を行う。

 

そして、ヴィラン・ギルドの本拠地でもある宇宙船内で「宇宙商人 マーキンド星人」がグラサントリオの宇宙人3人から連絡を受け取ると、早速オークションを開始。

 

『全宇宙のクライアントの皆様! 今回ご用意しました新商品、キングゲスラです! 強力な怪獣の脳にコントロールチップを埋め込み、ウィーンガシャ、ウィーンガシャ! 完全制御を可能にしました!』

 

すると早速このキングゲスラを購入しようと次々にこの光景をモニター越しに見ている他の星にいる宇宙人達が購入金額を掲示していき、落札しようと競争が始まり、オークションが本格的に開催。

 

それと同時に、人気の無い建物の屋上から宇宙人のグラサントリオの3人は意気揚々とキングゲスラを操って暴れさせていたのだが・・・・・・。

 

そこへ・・・・・・。

 

「うおらああああああ!!!!」

 

3人の宇宙人目がけて魔法少女姿となったももこが現れ、彼女は大剣を振りかざして宇宙人達に攻撃。

 

「「「うおわああああ!!!!?」」」

 

咄嗟のことに驚いて3人の宇宙人はそれぞれ三方向に飛び退くことでなんとかももこの攻撃を回避することに成功し、一瞬何が起こったのか分からなかった宇宙人トリオだったが、すぐにここから逃げた方が良いことだけは理解した。

 

だが、しかし・・・・・・逃げようとした宇宙人の1人の目の前にいろはが、もう1人の宇宙人の目の前にはゼンが立ち塞がり、が立ち塞がり、道を塞ぐ。

 

リーダー格の男の前にはゼンが立ち塞がったことで宇宙人達はすぐに逃げ場を失ってしまう。

 

「なんだお前・・・・・・「フン!!」らああああああ!!!!?」

 

さらに有無を言わぬ勢いでリーダー格の男の顔面をゼンが思いっきり殴ると、リーダー格の男は大きく吹き飛ばされて地面を転がり、倒れ込む。

 

「あれ!? ゼンくんも来たのか!? 危ないぞ!?」

 

流石にこんなところに来たら自分達魔法少女が2人も一緒とは言え、危険極まりないと訴えるのだが、ゼンは「大丈夫です」と軽く返事をする。

 

「これくらいの奴等なら、俺でも・・・・・・」

「でも・・・・・・!」

 

その時、宇宙人達がゼンとももこが話し込んでいる隙に今の内に逃げようとこっそりそーっと動き出すのだが、そのことに気付いたももこは大剣、いろははクロスボウを宇宙人達に向けて構え、動かないように要求。

 

「痛い目に合いたくなかったら動くなよ? あの怪獣を操ってるのはお前等か?」

「お前等、話に聞いていた魔法少女って奴等か。 チッ、魔女退治だけやってれば良いものを・・・・・・邪魔すんじゃねえよ!!』

 

すると、ももこの対峙していた宇宙人が本来の姿を現し、レスラーパンツのような模様の入った黒い身体の宇宙人、「武装暴君 マグマ星人」に変わると、マグマ星人は右手に装着した「マグマサーベル」を振るうとももこの大剣を弾き、左手にショットガンのような「マグマショット」を装備するとそこから銃弾を撃ち出す。

 

『マグマショット!』

 

それをももこは間一髪バク転で回避するが、すぐさまマグマ星人は間髪入れずマグマショットから左手にもう1つマグマサーベルを装備すると、両手に装備したサーベルをももこに振るって攻撃を仕掛け、彼女は大剣を盾に見立てて攻撃をガードする。

 

「ぐっ!?」

「ももこさん!?」

 

マグマ星人にももこが反撃されたことに動揺した隙を狙い、いろはと対峙していた宇宙人も本来の姿である「殺戮宇宙人 ヒュナプス」に変貌すると、余所見をした彼女の腹部に蹴りを入れ、いろはは悲鳴をあげながら軽く吹き飛ばされてしまう。

 

「きゃあ!!?」

「いろは!? テメーよくもいろはを!!」

 

いろはを傷つけられたことで激怒したゼンはヒュナプスに向かって殴りかかろうとするが、そこで横槍を入れるようにリーダー格の男がゼンをさっきの仕返しとばかりに殴り飛ばしたのだ。

 

「ぐっ!?」

『ここは任せるぞ。 頃合いを見てお前等もすぐに撤退しろ』

 

ゼンを殴り倒した後、リーダー格の男が本来の姿である宇宙人の姿に戻りながらこの場をマグマ星人とヒュナプスにそう言い残すと2人はその言葉に頷き、いろはとももこをそれぞれ足止めする。

 

それと同時に・・・・・・本来の宇宙人の姿に戻ったリーダー格の男を見たゼンは目を見開き、驚愕の表情を浮かべた。

 

「お前は・・・・・・まさか、あの時の・・・・・・!」

 

何故ならそれは、リーダー格の男がかつて、自分の大切な友であるチビスケを無情にも連れ去ったあの「電波怪人 レキューム人」だったからであり、思わぬ因縁の相手との再会にゼンは激しく動揺せずにはいられなかったのだ。

 

そのままレキューム人はその場から逃げ去るようにその場を立ち去って行き、ゼンは「待て!!」と声を荒げながらいろはの制止も聞かず、レキューム人を追いかける。

 

「ゼンくん!? 待って・・・・・・!!」

 

いろははゼンを呼び止めようとするものの飛びかかって攻撃を仕掛けて来たヒュナプスの妨害を受け、彼女は足を止めてしまい、そうしている間にゼンの姿は見えなくなってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待てつってんだろこの野郎!!」

『ええいしつこいぞ!!』

 

レキューム人は手に持ったコントロール装置を操作すると、キングゲスラをこちらに呼び寄せ、レキューム人はキングゲスラを操ってゼンを踏み潰させようとする。

 

「うわっ!? 危ねっ!?」

 

間一髪、ゼンは粒子化することでキングゲスラの踏みつぶし攻撃を回避し、避けることに成功。

 

しかし、その間にレキューム人には逃げられてしまい、そのことにゼンは「クソ!!」と悪態をつく。

 

「グルルル・・・・・・!!」

 

一方で、ゼンはキングゲスラがこちらをジッと見下ろし、未だに自分に攻撃を仕掛けようとしていることに気づき、タイガはゼンに変身するように促す。

 

『ゼン!! 俺に変身しろ!!』

「わか・・・・・・んっ?」

 

タイガに言われてタイガキーホルダーに手を伸ばそうとしたゼンだったが、その時、ゼンはキングゲスラの顔をジッと見つめると、ゼンの脳裏にキングゲスラのその顔とチビスケの顔がダブり、キングゲスラの口の周りにはチョコレートが付着していることや因縁のレキューム人が操っていることからゼンはキングゲスラに対してある予想を立てた。

 

「お前、まさか・・・・・・チビスケ・・・・・・?」

 

確かに、チビスケとキングゲスラは外見はなんとなく似ている。

 

しかし、だからと言ってまだキングゲスラがチビスケがどうかの確証は無かった。

 

だから、ゼンはそれを確かめる為に、チビスケに教えていた芸をやってみることにしたのだ。

 

「クンクンッパ! クンクンッパ!」

『おいゼン! 何をやってるんだ?』

 

ゼンはそう言いながらキングゲスラに向けて右手を上下に動かしてから手をパーにして見せ、タイガはゼンが一体何をやっているのか分からなかったが、ゼンはそんなタイガに対し、兎に角自分に任せて欲しいと述べ、ゼンはキングゲスラ・・・・・・否、チビスケの名を呼ぶ。

 

「チビスケ~! 俺だよ、ゼンだ!!」

「グウウウ・・・・・・」

 

すると、先ほどまでゼンを睨んでいたキングゲスラの表情はどこか柔らかくなっていき、ゼンはもう1度右手を上下に動かして手をパーにし、それをキングゲスラに見せる。

 

「クンクンッパ!! ほら!!」

 

やがてキングゲスラが大人しくなると、ヴィラン・ギルド内にいるマーキンド星人は急に大人しくなったキングゲスラに困惑し、オークションに参加していた宇宙人達も次々と落札を取りやめてしまう。

 

『どうした!? なぜ動かない!?』

 

それはキングゲスラを操っていたレキューム人も同じであり、必死にキングゲスラを装置でコントロールしようとするが、全く制御を受け付けなかった。

 

『分からん! 脳波が混乱して制御できなくなった!?』

 

そんなレキューム人をニヤリとした笑みを浮かべながら後ろから見つめていた青霧は・・・・・・自分の目元辺りをトントンと叩くと、それに共鳴するかのようにキングゲスラの目が一瞬赤く染まり、大人しくなっていた筈のキングゲスラは突如として頭を抱えて再び暴れ出したのだ。

 

「グルアアアアアアア!!!!!」

「チビスケ・・・・・・!!? 苦しんでるのか・・・・・・!?」

 

チビスケが苦しんでいる・・・・・・そう思ったゼンはすぐに右手に装着されたタイガスパークのレバーを下げる。

 

『カモン!』

 

そこから腰に下げていたタイガキーホルダーを手に取ると、ゼンはタイガに自分に力を貸してくれと頼む。

 

「頼むタイガ! 友達を、俺の初めての友達を・・・・・・助けたいんだ! だから、力を貸してくれ!!」

『言われなくてもそのつもりだ! 行くぞ、ゼン!!』

「あぁ!! 光の勇者、タイガ!!」

 

続けて右手に取ったキーホルダーを左手に持ち替えるとタイガスパークのクリスタル部分が赤く輝く。

 

「バディィィィィ!! ゴー!!!!」

 

そしてゼンは右腕を掲げると光に包まれ、「ウルトラマンタイガ」へと変身したのだ。

 

『ウルトラマンタイガ!!』

『シュア!!』

 

地上に降り立ったタイガはファイティングポーズを取りながら、キングゲスラに駆け出して行く。

 

「グオオオオオ・・・・・・!!」

 

対するキングゲスラも、タイガに向かって突進を繰り出し、2体は取っ組み合いを繰り出すが・・・・・・パワーは僅かにキングゲスラの方が上であり、次第に後方へと押されていく。

 

『うわ!? この!!』

 

そんなキングゲスラの腹部にタイガは膝蹴りを叩きこむとキングゲスラは怯み、続けざまに後ろ回し蹴りを喰らわせる。

 

『シュア!!』

 

そこからキングゲスラの懐に盛り込んだタイガは拳を連続でキングゲスラに叩き込み、最後に一発キングゲスラの顔を殴りつける。

 

「グルアアアア!!!?」

 

するとキングゲスラは全身の棘を赤い光弾状にして連射する「ベノムショット」を放ち、それを受けたタイガは身体中から火花を散らして吹き飛ばされ、倒れ込む。

 

『ウアアアア!!!?』

 

さらにキングゲスラが跳び上がると、倒れ込んだタイガを容赦なく踏みつけ、タイガは苦痛の声をあげる。

 

『グアアアアッ!!?』

「ガアアアア!!!!」

『ぐぅ、ゼン!! あの指輪を使ってみよう!』

『指輪って・・・・・・この前手に入れたやつか! 分かった!!』

 

タイガのインナースペース内にいるゼンはタイガの言葉に頷くと、タイガスパークのレバーを下に下げる。

 

『カモン!』

 

そこからゼンが左拳を突き出すようなポーズを取ると、その左手の中指に前回の戦いで手に入れた「ヘルベロスリング」が出現。

 

そしてヘルベロスリングをタイガスパークにかざすと、ゼンの背後に一瞬だけヘルベロスの幻影が現れる。

 

『ヘルベロスリング! エンゲージ!』

 

それによってタイガはヘルベロスの力を使い、両腕から赤黒い光刃を放つ「ヘルスラッシュ」を自分を踏みつけている状態のままのキングゲスラに向かって放つ。

 

『ヘルスラッシュ!!』

「ガアアア!!!?」

 

ヘルスラッシュを受けたことでキングゲスラをタイガは押し退かすことに成功し、立ち上がると同時にタイガはジャンプして跳び蹴りをキングゲスラに喰らわせ、キングゲスラは大きく吹き飛ばされて倒れ込む。

 

「グルアアアア!!!?」

『よし! このまま一気に・・・・・・!!』

『待ってくれタイガ!!』

 

タイガがそこからさらにキングゲスラを追撃しようとしたが、そこでゼンがタイガを呼び止めことでタイガは動きを止め、ゼンはここからは自分に任せて欲しいとタイガに頼み込こんだのだ。

 

『頼む。 あとは、俺にやらせてくれ』

『・・・・・・分かった』

 

少しだけタイガは考え込んだものの、すぐにタイガは肉体の主導権をゼンに明け渡すとゼンはタイガの身体を借りて右手を上下に動かし、最後に手をパーにして見せる例の「クンクンッパ!」をやり始める。

 

『クンクンッパ! クンクンッパ! ほら、チビスケ! クンクンッパ!』

 

それを見て、キングゲスラもジーッと見つめると、キングゲスラはタイガがゼンであることに気付いた様子を見せ、キングゲスラはタイガの手の動きに合わせて首を自然と上下に動かし始め、最後に口を開くといった動作を見せる。

 

「グングン・・・・・・ガア・・・・・・!」

『そうだよ! 良いぞ、チビスケ!』

 

それにより、キングゲスラは完全に正気を取り戻したようで、タイガに寄り添ってくると、タイガはキングゲスラの頭を撫で、インナースペース内でゼンはキングゲスラに微笑みを向ける。

 

『チビスケ、よく頑張ったな。 偉いぞ!』

 

一方で、タイガとキングゲスラの戦いの様子を見ていたいろはは、過去に何度もチビスケのことをゼンから聞いていたこともあり、彼女もまたその光景を見てキングゲスラのクンクンッパの仕草からあのキングゲスラがゼンが言っていたチビスケであることを理解していた。

 

「そっか。 あの子が・・・・・・ゼンくんが言っていたチビスケ・・・・・・」

 

だから、キングゲスラが大人しくなったことで倒す必要が無くなったことにいろはホッと安堵し、「良かった・・・・・・」と胸を撫で下ろしながら呟くのだが・・・・・・。

 

「良かった、良かったね、ゼンくん・・・・・・」

『ってか無視してんじゃねえよ小娘!!』

 

そこでヒュナプスが背後からいろはに飛びかかって襲いかかり、いろはは慌てて攻撃をなんとか回避する。

 

『貴様等許さんぞ!! オークションを台無しにしやがって!!』

「それは・・・・・・私も同じです。 ゼンくんやゼンくんの友達を苦しめたあなた達を、私も許しません・・・・・・!!」

 

ゼンはずっとチビスケを助けられなかったことを後悔していた。

 

ゼンはそのことにずっと苦しんでいた、悲しんでいた。

 

それを知っているいろはだから、彼等ヴィラン・ギルドを許すことが出来なかった。

 

だから、そんな彼等を全力で叩きつぶす為にも、二度とゼンのような想いをする人が居なくなる為にも、いろははタイガから託された「ニュージェネレーションブレス」を取り出してそれを右腕に装着。

 

『ニュージェネレーションブレス!』

『気合い、根性!! 大満開!!』

 

いろははブレスの力を発動させ、右手の甲に桜の紋章が浮かび上がると、彼女はヒュナプスに一気に接近してオーラを纏った強烈な拳をお見舞いする「勇者パンチ」をアッパーカットの要領で繰り出す。

 

「勇者・・・・・・パンチ!!!!」

『グガアアアア!!!!!?』

 

それを受けたヒュナプスはぴゅーんっと宇宙の果てまで吹っ飛ばされて星となるのだった。

 

またマグマ星人と戦うももこはというと・・・・・・。

 

『マグマブーメラン!!』

 

ブーメラン型の武器、「マグマブーメラン」をマグマ星人はももこに投げつけるが、ももこはそれを大剣で弾き飛ばすとそのまま一気に跳び蹴りをマグマ星人に喰らわせる。

 

『ぐあっ!?』

「これでも・・・・・・喰らえ!!」

『ぐべええええ!!!!?』

 

そのままももこは平らにした大剣を横に振るうとマグマ星人はそれに叩きつけられるように吹っ飛ばされてしまい、海の方へと真っ逆さまにドボンッと落下するのだった。

 

「いろはちゃんの方も、どうやら片づいたみたいだね・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっはぁ~! 甘い甘い甘い!! チョコレートよりも甘いよぉ!? 甘すぎてこんなんじゃ、糖尿病になりそうだ・・・・・・!!」

 

チョコボールを食べながら、タイガとキングゲスラの戦いの行方を眺めていた青霧がそう叫ぶと・・・・・・彼はトレギアの胸部装甲を模した形状をした1つのアイテム、「トレギアアイ」を取り出し、眉間にあたる部分の裏にあるボタンを押すと、トレギアアイはトレギアの仮面部分に似た形状へと変化。

 

それを顔にかざすと、黒と白の電撃のようなものを放ちながら紫のオーラが溢れ出し、青霧は身体に拘束具のようなものが装着された仮面の青き巨人、「ウルトラマントレギア」へと変身したのだ。

 

そして、トレギアの出現に際し、既にオークションどころでは無くなったものの、マーキンド星人は即座にオークションの完全なる中止を宣言し、怯え、慌てた様子でオークションを強制的に終了させるのだった。

 

『と、トレギア!? トレギアだ!? 中止中止!! オークションは終了だ!!』

 

そして、トレギアの出現に気付いたタイガは驚いた様子を見せ、トレギアを強く睨み付ける。

 

『お前は・・・・・・トレギア!? 何故貴様がここに!?』

『君に会いに来た・・・・・・と言ったら?』

『ふざけやがってぇ!!』

 

タイガは拳を握りしめるとトレギアに向かって駈け出して行き、何度も拳を振るうのだが・・・・・・トレギアはのらりくらりとタイガの攻撃を躱し、両手を叩いてタイガのことを煽る。

 

『ほらほら? そんなんじゃ攻撃は当たらないよぉ?』

『オリャアア!!』

 

タイガはトレギアの横腹に向かって左足による蹴りを繰り出すが、トレギアはその足を掴みあげ、タイガの右足を自分の足を引っかけるとタイガはすっ転んで倒れてしまい、トレギアはそんなタイガの腹部を容赦なく右足で踏みつける。

 

『グアッ!!?』

『おやおや? もう終わりかい?』

『んな訳・・・・・・ぐあああ!!?』

 

タイガは自分を踏みつけるトレギアの足を押し退かそうとするが、それよりも早くトレギアはタイガをサッカーボールのように蹴っ飛ばすと、タイガは吹っ飛ばされて地面を転がる。

 

『ぐうう・・・・・・!! トレギア!! お前だけは、絶対許さねえ・・・・・・!!』

『どうしたんだ? タイガ!?』

 

地面を拳で叩きながら、タイガはなんとかその場から立ち上がり、ゼンの疑問の言葉も無視してトレギアに再び殴りかかるもののトレギアはタイガのその全ての攻撃を躱してしまい、反撃として両手先から放つ破壊光線「トレラアルディガ」を放ち、その直撃を受けたタイガは大きく吹き飛ばされ、ビルに激突しながら倒れ込む。

 

『ウアアアアアア!!!!?』

 

それによってタイガの胸のクリスタル、「カラータイマー」も赤く点滅を始め、身体に大ダメージを受けたタイガはまともに立ち上がることが出来なかった。

 

「なんだ? 一体どうなってるんだ・・・・・・?」

 

またももこはそのタイガやトレギアの戦いを見て、今一体何が起こっているのか分からずに困惑し、それは彼女の隣にいたいろはも同様だった。

 

しかし、いろはには2つだけ分かったことがある。

 

それは、少なくともあの青い巨人、トレギアが味方ではないということ、もう1つは、このままではゼンもタイガも危ないということ。

 

(ゼンくん・・・・・・!!)

「あっ、いろはちゃんどこに!?」

 

だからいろはは考えるよりも先に身体が動き、ももこの自分の名を呼ぶ声も無視して彼女は急いでタイガの元へと駆け寄るのだった。

 

『ふわぁ~。 そんなものか。 弱すぎて欠伸が出てしまったよ』

 

トレギアはそう言いながら右手をタイガに向かってかざし、未だに肉体へのダメージで上手く動くことの出来ないタイガにさらなる追打ちをかけようとするトレギアだったが、そこでタイガのピンチを見たキングゲスラが動き、トレギアに立ち向かって行ったのだ。

 

「ガアアアア!!!!」

 

しかし、トレギアはキングゲスラの仕掛けた突進攻撃を頭を左手で押さえつけることで余裕で受け止める。

 

『アハハハ! どうしたチビスケ? 遊んで欲しいのか?』

 

トレギアはキングゲスラの顎に膝蹴りを叩きこむと、続けざまにキングゲスラの腹部に蹴りを炸裂させ、最後に後ろ回し蹴りを喰らわせてキングゲスラを蹴り飛ばし、吹き飛んでキングゲスラは地面へと倒れ込む。

 

「グオオオオオ!!!?」

『やめろ、チビスケ!! 逃げるんだ!! 頼む、逃げてくれ!!』

 

ゼンは必死にキングゲスラに戦うことをやめて逃げるように懇願するが、キングゲスラは決して逃げようとせず、尚も立ち上がろうと戦う意志を見せる。

 

しかし、キングゲスラが完全に立ち上がる前に、トレギアは容赦なくキングゲスラの頭部にかかと落としを決め、再び地面に倒れ込ませる。

 

「ガアア!!?」

『ほらほら、まだ遊ぼうじゃ無いかチビスケ?』

 

トレギアは倒れ込んだキングゲスラの顔を足で踏むと、そこからさらにグリグリとキングゲスラの顔を踏みにじり始める。

 

「グオオオ・・・・・・!」

 

そこからトレギアは足を退け、キングゲスラの頭を掴んで無理矢理立ち上がらせると、トレギアはキングゲスラの背ビレを掴みあげ、それを容赦なく思いっきり引き千切ったのだ。

 

「ガアアアア!!!!?」

『チビスケーーーーー!!!!』

 

弱点である背ビレを千切られたことでキングゲスラは大幅に弱体化し、もはや立つことすら困難な状況となった。

 

『うぅ、気持ち悪いなこれ』

 

身震いしながらトレギアは引き千切ったキングゲスラの背ビレをまるでゴミでも扱うかのようにぽいっと投げ捨てると、トレギアは全身のエネルギーを両腕に集めて打ち出す稲妻状の破壊光線「トレラアルティガイザー」をキングゲスラに撃ち込もうとする。

 

「危ない・・・・・・!!」

 

そこでいろはがニュージェネレーションブレスの力を発動させようとするのだが、それよりも早くトレギアは「トレラアルティガイザー」をキングゲスラ・・・・・・ではなく、未だまともに動くことのできないタイガへと放ったのだ。

 

『っ!!?』

「ゼンくん!! タイガ!!?」

 

そのことに驚き、動きを思わず止めてしまったことでいろははブレスの発動も間に合わず、タイガに光線が迫る中・・・・・・そこへ割り込むように弱った身体に鞭打って強引に立ち上がったキングゲスラがトレギアとタイガの間に割って入り、身を挺してタイガのことを庇って光線の直撃を代わりに受けたのだ。

 

「グルアアアアアアア!!!!!?」

 

光線が直撃すると同時に、キングゲスラは爆発し、そのことにいろはは口元を押さえ、ゼンは目を見開いた。

 

『チビスケええええええええ!!!!!』

「そんな・・・・・・そんな・・・・・・!」

 

目の前でトレギアにキングゲスラを、チビスケを殺されたことでその瞬間・・・・・・。

 

ゼンは自分の中にどす黒い感情が溢れ出すのを感じた。

 

『このヤロオオオオオオオ!!!!!』

 

そんなゼンの感情を表すかのように、彼から黒いオーラのようなものが溢れ出すのだが、そのことにゼンもタイガも気付くことはなく、ただ怒り任せに立ち上がり、タイガとゼンは雄叫びにも似た荒ぶる声を上げながら、トレギアへと立ち向かう。

 

『『うおおおおおおお!!!!!』』

 

タイガはトレギアに向かって右拳を放つが、トレギアはそれを左手で受け止め、逆にタイガの顔面を右拳でトレギアは殴りつける。

 

『グウウ!!? よくも、よくもチビスケを・・・・・・!! その仮面をぶっ壊してやる!!』

 

タイガはトレギアに向かって蹴りを繰り出すものの、トレギアはそれを右手で弾き、目から撃ち出す破壊光線「オプトダクリス」を放ち、タイガの胸部に直撃させる。

 

『ウワアアッ!!?』

 

攻撃を受けたタイガは片膝を突くが、自分を鼓舞させるように右拳で地面を叩きながら立つと勢いをつけてトレギアに向かって駈け出して行き、トレギアに殴りかかるがトレギアはそれをひらりと躱すとタイガの背後に回り込んでタイガを羽交い締めにする。

 

『抵抗すんな!! 反撃すんな!! 一方的にぶん殴らせろこの野郎!!』

『そう怒るなよ。 私が怪獣を殺さなければ、もっと被害が出ていたんだぞ?』

『チビスケは友達だ!! アイツは大人しくなってた!! 殺す必要なんてなかった!!』

『フン、果てしてそうかな? この世界は矛盾に満ちている。 宇宙には昼も夜も、善も悪も無いのに。 あるのはただ真空。 底知れぬ虚無・・・・・・』

 

タイガを羽交い締めにしたままトレギアがタイガの耳元でそんなことを呟いてくるが、ゼンに取ってトレギアのそんな言葉はただの戯言にしか聞こえず、けれども無性に腹正しさを感じ、タイガはなんとかトレギアの拘束を解くと肘打ちを腹部に喰らわせてトレギアを引き離す。

 

『ウゼぇ!! 訳分かんないこと、言ってんじゃねえええええええ!!!!!』

『おっと』

 

お互いに距離を取り、対峙するトレギアとタイガ。

 

『この地球人もお前と同じで未熟だな。 ウルトラマンタロウの息子よ?』

『ぐぅ、俺は・・・・・・『タイガ』だ!!』

 

タイガは身体が虹色に光りながら体内エネルギーを貯めた後、両腕をT字型に構えてタイガスパークから発射する高熱の破壊光線「ストリウムブラスター」をトレギアに向かって発射。

 

『ストリウム・・・・・・ブラスター!!』

 

同時にトレギアは全身のエネルギーを両腕に集めて打ち出す稲妻状の破壊光線「トレラアルティガイザー」を放ち、互いの光線が激しくぶつかり合う。

 

しかし、タイガの光線はすぐにトレギアの光線にあっさりと押し返され、タイガはトレギアの光線の直撃を受けて吹き飛ばされてしまう。

 

『なに・・・・・・ぐああああああ!!!!?』

 

吹き飛ばされ、倒れ込むが・・・・・・それでもタイガは身体への痛みを堪えながらも、フラつきながらもどうにか立ち上がり、ゼンにロッソレットを使うように言い放つ。

 

『ゼン、ロッソレットを使え・・・・・・!』

『分かった!!』

 

ゼンはタイガスパークのレバーを下げると、左手に「ウルトラマンロッソ フレイム」を模した「ロッソレット」が出現。

 

『カモン!』

 

そこからロッソレットにタイガスパークをゼンがかざすと電子音声が鳴り響く。

 

『ロッソレット! コネクト・オン!』

 

そして一瞬、タイガの姿にロッソ・フレイムの姿が重なると赤く光りながら両腕をT字型に構えてタイガスパークから発射する炎のエネルギーで強化されたストリウムブラスター、「フレイムブラスター」をタイガはトレギアに向かって放つ。

 

『フレイム・・・・・・ブラスター!!!!』

 

トレギアは両手を広げ、「敢えてそれを受けてやる」と言わんばかりの姿勢を見せながらタイガの光線の直撃を受け、爆発が起き辺りが光輝くのだが・・・・・・光が止むと、そこには未だ健在のトレギアの姿があり、トレギアは上空に魔法陣のようなものを浮かべると、それを使ってこの場から去ろうとする。

 

『フフフ、アハハハハ! 中々骨のある攻撃だったよ。 これからが楽しみだ。 では、この世の地獄でまた会おう』

 

トレギアは丁寧にタイガに対してお辞儀をすると、トレギアは魔法陣の中へと消えて行く。

 

タイガはそんなトレギアを追いかけようとするが・・・・・・しかし、予想以上に肉体へのダメージが酷く、タイガはフラついてしまい立つこともままならなかった。

 

『逃げんなぁ!! 降りてこい!! その仮面かち割ってやるから降りてこい!! 降りてこおおおおおい!!!!!』

『落ち着けゼン! これ以上はお前の身体が持たない!』

『だけど!!』

 

この場からいなくなったトレギアを追いかけようと声を荒げるゼンに対し、タイガは必死にこれ以上はゼン自身の身体が持たないと落ち着くように宥める。

 

『お前の気持ちは、俺にも痛いほどに分かる。 俺も、アイツのせいで、大事な仲間を・・・・・・!!』

 

タイガは今はもういない先ほどまでトレギアのいた空を見上げながら、握り拳を作ってその手を振るわせ、そんなタイガの言葉を聞いてゼンは「えっ?」と首を僅かに傾げる。

 

『それって・・・・・・』

 

 

 

 

「ゼンくんっ」

 

戦いが終わり、魔法少女の変身を解いたいろはは同じく、タイガから普通の人間の姿へと戻り、変身を解除したゼンの姿を発見した。

 

「いろ、は・・・・・・」

 

その時のゼンの表情はとても悲しそうで、辛そうで、苦しそうで・・・・・・いろははそんなゼンにどう声をかけて良いのか分からなかった。

 

「俺、またチビスケを助けられなかったよ・・・・・・」

「・・・・・・」

「俺はやっぱり、ヒーローなんて柄じゃなかった。 目の前の誰よりも助けたかった奴を、助けられなくて、何がヒーローだよ。 俺に、ヒーローの資格なんて・・・・・・無いんだ」

『お前のせいじゃない。 俺の、力不足だ・・・・・・』

 

チビスケを助けられなかった事実、そのことにゼンは自分を責め、タイガはゼンのせいでは無いと訴えるが、ゼンは首を横に振ってそれを否定する。

 

「違う。 力不足だったのは俺だ。 タイガは俺に力を貸してくれたのに、俺がチビスケを救えなかったんだ。 だから、俺の、俺だけのせいなんだ。 俺が・・・・・・」

「ゼンくん!」

 

未だに自分を責め続けるゼンを、いろははそっと優しく抱きしめる。

 

「いろは・・・・・・」

 

「自分を責めないで」「ゼンくんのせいじゃない」なんて言葉は、きっとゼンに取っては気休めにもならないだろう。

 

だから、励ましの言葉なんて見つからないし、ゼンを慰める方法も分からない。

 

ただこうせずにはいられなかった。

 

一方でゼンはいろはのその行動に一瞬驚くものの、それが彼女の優しさであることは理解することが出来た。

 

「っ、うぅ・・・・・・」

 

チビスケを失い、そんないろはの優しさに触れたことで今までぐっと堪えていた涙がゼンの目から溢れ出し、いろははそんな彼の頭を優しく撫でるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

神浜私立大学付属学校 中等部。

 

東棟の北側、4階から屋上へ続く階段・・・・・・つまり、「絶交階段」のある場所にて。

 

「・・・・・・」

 

そこではかえでがじっとその階段を見つめていた。

 

それと同時にそこにはそんな彼女を不気味に笑いながら遠目から見つめる青霧の姿も・・・・・・。

 

 

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