タイガ☆レコード   作:ベンジャー

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第3話『動き出したウワサ』

キングゲスラ、チビスケの一件から1日が経って翌日。

 

ゼンといろははレナが現在、行方不明となっているという連絡をももこから受けたことで今日も神浜へとやってくることとなり、今は電車に2人で乗って向かっているところだった。

 

「ゼンくん、無理して来なくても・・・・・・」

 

しかし昨日の夜はあまり眠れなかったのか、ゼンの目の下には隈が出来てしまっており、髪もボサボサでまるで生気を感じさせない雰囲気を彼は纏っていた。

 

チビスケを失って、まだ1日しか経っていないのだ。

 

ゼンがこういった状態になるのも無理は無いだろう。

 

そのことからいろはは心配げな視線をゼンに向けながら、辛いなら無理に一緒に来なくても良いと彼を気遣った言葉を彼女はかけ、そんな風に自分を心配してくれるいろはに対し、ゼンは「無理なんかしてないよ。 全然大丈夫」と笑って見せる。

 

「ゼンくん・・・・・・」

 

しかし、その笑顔は誰がどう見ても無理矢理作っているようにしか見えず、そんなゼンに、いろはは自分は一体何が出来るのだろう、ゼンの為に何か自分に出来ることは無いのだろうかと彼女は必死に考えるのだが・・・・・・。

 

そうこうと考えている間に神浜市の駅に到着してしまい、ゼンのことを後回しにしてしまうのは気が引けるものの、取りあえずは先ずはももこやかえでと合流しようと思い、いろははゼンと一緒に電車を降りると、2人でももことかえでの待つ場所へと向かうのだった。

 

「まだ家にも帰って無いってさ。 全くアイツ、どこ行ったんだ!?」

「いろはちゃんにゼンくん、わざわざ来て貰ってごめんね?」

 

ももこやかえでと合流すると、どうやらももこの話を聞く限りではレナは昨日、かえでやももこと喧嘩別れして以降彼女は未だに家にも帰宅していないようで、そんな風に自分達に心配をかけるレナに苛立つように不満を口にし、かえではわざわざ遠くからいろはやゼンが来てくれたことに申し訳無さそうにしつつも感謝の言葉を述べる。

 

「それに、なんかゼンくん疲れてるみたいだし・・・・・・それなのにわざわざ来てくれるなんて・・・・・・」

「別に、疲れてる訳じゃ・・・・・・」

 

ゼンの様子がおかしいことはかえでも、それにももこもすぐに気付くことができ、ももことかえでの2人はゼンに何かあったのだろうかと心配するが、ゼンは「全然大丈夫だから!!」と無理に明るく笑い、彼は兎に角今は自分のことよりもレナのことだと主張し、話題を元に戻す。

 

「取りあえず、レナの行きそうな場所を手当たり次第当たってみようか」

 

それからゼン達はももこの言う「レナの行きそうな場所」をあっちこっちと行きながら日が暮れるまで探し回ったのだが、それだけの時間を使ってこれだけ探してもレナの姿は一向に見つからず、最後に彼女の行きそうな場所としてとあるゲームセンターへとゼン達は向かうことに。

 

「っていうか、レナちゃんって他人に変身できるんだよな? 昨日の状況を考えるに、彼女は今誰かに変身して身を隠してる可能性が高いんじゃないのか?」

 

これだけ探しても見つからないのは、それはレナが魔法で他人に変身しているからではないかとゼンは推測し、それを聞いたかえでやももこも確かにレナなら有り得ると納得し、いろははそんな2人にレナが他人に変身していた場合、何か見破る方法は無いのだろうかと尋ねる。

 

「一応、あるにはある。 ある程度の準備は必要だけど見た目だけならレナは完璧に他人に変身することが出来る。 でも、目の色だけは変わらないんだ」

「確か、レナちゃんの目の色は・・・・・・」

 

レナの瞳の色は「青」、つまり、目の青い人間を探せばもしかしたらそれはレナが変身した人物なのかもしれないとゼン達は考えるのだが、しかし、目が青いからといってそれが必ずしもレナかどうかであるかは分からない。

 

たまたま目の色がレナと同じであるという可能性もある。

 

だが、それでもレナであるかどうかを見分ける重要な手がかりになるのは明白であり、兎に角目の青い人物を不審に思われるとしたとしても片っ端から探してレナなのかどうかを話を聞いたりして今は確認して行くしかないと思い、ゼン達は手分けをしてゲームセンター内でレナを探し回る。

 

「あっ」

 

そんな時、レナを探していたいろはがレナやかえで、ももこと同じ制服を着ている銀髪の少女の姿を発見し、もしかしたらレナのことを知っているのではないかと思い、回り込むようにしてその少女の前にいろはは立ち塞がる。

 

「なに?」

 

いきなり目の前に立ち塞がられたことにその少女は困惑し、自分に何か用なのだろうかと尋ね、いろははレナのことを聞こうとするのだが・・・・・・。

 

「えっ、えっと・・・・・・」

 

が、ここでコミュ障爆発。

 

いろははどう話を聞こうとか、その為にはどんな言葉を出せば良いのか分からず、グズグズと手間取っていると、不意に彼女はその少女の目が青いことに気付き、さらに彼女の持つ鞄にはレナが持っていた鞄についていたのと同じキーホルダーがあったのだ。

 

そのことから、いろははもしかしてとジッとその少女の顔を見つめる。

 

「レナちゃん!!」

 

直後、少女の背中にかえでが抱きつくようにしてやって来ると少女はいきなり自分に抱きついて来たかえでに驚き、戸惑う様子を見せる。

 

「な、なんのこと? 私の名前は『五十鈴 れん』で、レナじゃない・・・・・・」

「誤魔化しても無駄なんだから!!」

 

かえではそう言いながら「五十鈴 れん」と名乗る少女が鞄にしているのと同じキーホルダーを自分も鞄につけているのを見せつけると、そのれんと名乗った少女・・・・・・というよりも、五十鈴 れんという少女に化けたレナはもうこれ以上は言い逃れは出来ないと思い観念したのか、変身を解除して元の姿に戻ると、レナは踵を返してかえで達から逃げ去ったのだった。

 

「あっ、逃げるなぁーーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲームセンターから逃げ出したレナをかえでは追いかけ、ももこはゼン、いろはもかえでの後に続くようにして一同はレナを追いかける。

 

やがて、とある橋の上まで来ると先行してレナを追いかけていたかえではそこでなんとかレナの腕を掴み、ようやく捕まえることに成功。

 

「・・・・・・なんか用?」

 

かえでに捕まえられたレナは、逃げるのを観念したのか特に暴れる様子もなく、腕を掴まれたまま彼女は不機嫌そうにかえでにそう問いかける。

 

「なんで逃げるの? 『モカウサギ』のマスコット! 絶交なんて嘘じゃない! 逃がさないんだから! 昨日だって、私謝ったよね・・・・・・。 足りなかったらまだ謝るよ。 仲直りできるまで何度だって・・・・・・!」

 

目尻に涙を浮かべながら、かえではそう必死にレナに訴えかけ、自分はレナと仲直りがしたいという気持ちと想いを彼女は必死に伝えようとするのだが、それでもレナはかえでに「離して」とかえでの言葉を一蹴してしまう。

 

「離さない!! レナちゃんと仲直りできるまで、離さないから!!」

 

しかし、それでも、例えレナにどう言われようとかえではレナとちゃんと話をして、仲直りできるその時まで、彼女は決してその手を離そうとはしなかったのだ。

 

「レナちゃんごめんね? レナちゃんのこと怒らせてばっかだね。 でも私、絶対レナちゃんの友達だもん・・・・・・」

 

かえではそう言いながら、レナの腕を両手でさらに強くギュッと握りしめると、彼女は俯かせていた顔を上に上げてかえでは必死に自分の想いをレナへと伝える。

 

「レナちゃんに嫌われたって、私レナちゃんと仲直りするもん!!」

 

「レナと仲直りすること」、そのことだけは、かえでは絶対に譲ろうとはせず、そんな2人の様子をゼンやいろは、ももこは黙って見守っていたのだが・・・・・・。

 

そんな時、レナの耳に、「ジャラジャラ」と鎖が擦れるような音が聞こえ、それと同時にタイガも何かを感じ取ったようでタイガは慌ててゼンにそのことを伝える。

 

『ゼン!! 何かいる!! 周りに、何か・・・・・・気をつけろ!!』

「えっ、何かって、なんだよ・・・・・・!?」

「ゼンくん・・・・・・?」

 

タイガに「周りに何かいる」と言われてゼンは辺りを見回したのだが、周囲には特に別段何も変わったことは無く、いろはやももこ、かえでも何かに気付いた様子は無い。

 

その為、タイガの言っている「何か」というのが一体なんのことか分からず、ゼンは頭の中が疑問符で埋め尽くされるほど困惑したのだが、そこでゼンはレナだけが、「何かに」怯えているかのように身体を震わせて後退っていることに気づき、ゼンは急いでレナの元へと駆け寄る。

 

「レナちゃん! どうしたんだ? 何か見えるのか・・・・・・?」

「レナちゃん・・・・・・?」

 

ゼンやかえでがレナに声をかけても、彼女からは返事は無く、ただ彼女は目を見開いて一定の方向を怯えてずっと見つめていた。

 

ゼンやかえで、いろはにももこもレナが怯えてずっと見つめていると思われる場所に視線を向けるのだが、やはりそこには何もおらず、それはウルトラマンであるタイガですら認識することは出来なかった。

 

だが、レナだけには「見えて」いたのだ。

 

目の前に溢れかえった霧の中から、現れたフードを被ったボロボロの人形のような怪人達の姿が。

 

怪人達は複数体現れると、彼等はまるでレナを責め立てるかのように言葉を発し始めたのだ。

 

『友達? おっかしいな?』

『絶交したよね? 確かにしたよね?』

『絶交階段に名前、書いたよね?』

 

そう、レナは・・・・・・彼女は自分達の学校にある階段、ウワサにあった「絶交階段」のある場所に、彼女は自分と、かえでの名前を書き込んでしまったのだ。

 

『折角絶交してやったのに』

『友達のフリして、好き勝手ばっか、言いやがって・・・・・・』

『アイツのせいで文句ばっかり言わされる!』

(なんだ・・・・・・? なんか聞こえる・・・・・・!?)

 

自分が宇宙人の血を引いているからか、もしくはタイガと一体化しているからか、はたまたその両方だからか、タイガの言っていた「何か」の姿は見えないが、誰かがレナやかえでを責めるように何かを言っていることだけは確かにゼンの耳にも聞こえていた。

 

しかし、声が聞こえていたとしても、やはり周りに何がいるのか、どこにいるのかサッパリ分からず、ゼンには対応の仕様が無かった。

 

「違う、違う・・・・・・!」

 

一方でレナは怪人達の言葉を必死に否定しているものの、怪人達は黙らない、黙ってくれない。

 

『アイツのせいでみんなに嫌われる』

「違う、違うの・・・・・・!!」

『アイツがすぐ謝っちゃうから・・・・・・』

「やめて・・・・・・!!」

『レナが謝れないのはかえでのせい・・・・・・』

「そんなこと思ってない!!」

 

レナは怪人達の言葉を頭を抱えるようにして悲痛な声を上げてこれ以上何も言わないで欲しいと怪人達に訴えかけるが、怪人達は辞めてはくれない。

 

(好き勝手ばっか言ってんのは、どっちだよ・・・・・・!!)

 

恐らく、状況から考えるに、以前ももこから聞かされていた絶交階段にレナは自分とかえでの名前を書いてしまったというところまでは、ゼンも予想出来た。

 

だとしても、そういったものは書いた本人の気の迷いだったり、本心じゃなかったりすることが殆どで、きっとレナも気の迷いで絶交階段に自分達の名前を書き込んでしまったのだろう。

 

レナがかえでから逃げていたのも、もしかしたら名前を書き込んだ後に我に返り、彼女を守る為にレナはかえでから敢えて逃げていたのかもしれない。

 

かえでの性格なら、きっと自分に謝りに来るだろうと思って・・・・・・。

 

だからこそ、そんな怪人達の言い草に、ゼンは自分の中で怒りが込み上げてくるのを感じずにはいられなかった。

 

かえでやレナと出会って、自分は彼女達のことをまだよく知らない。

 

それでも1日一緒に過ごして見て普段どういった感じで2人が互いに接して過ごしているのか、軽く想像することくらいは出来た。

 

だから、ゼンはこう思わずにはいられなかったのだ。

 

「お前等がこの2人の何を知ってるんだ」と・・・・・・。

 

ゼンだって、レナとかえでのことを何も知らないのは事実だ。

 

だけど、怪人達のように知ったか振ったかのような口調で、レナやかえでを責めるのは決して許せるものではなかったのだ。

 

しかし、そんなゼンの心境など、怪人達にとって知ったことではない。

 

「レナちゃ・・・・・・」

『もう二度と、友達には・・・・・・』

『戻らない・・・・・・』

 

最後に怪人達はレナの声を発しながらそう言うと、レナにしか見えない大量の鎖が現れてかえでを包み込み・・・・・・彼女は、かえでは忽然とその場から最初からいなかったかのようにいなくなってしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数年前、里見メディカルセンターのある病室にて。

 

そこではいろはに似た幼い少女である「環 うい」と、ういの友人であるメガネをかけた少女である「柊 ねむ」、そして茶髪のロングヘアーの少女、「里見 灯花」の3人が今日も今日とて入院中の彼女達は病室で過ごしているところであった。

 

「わあ、ホントに走った!」

 

その部屋では灯花が制作したと思われる機関車が黒い煙を上げながら部屋の中を走っており、ういはその小さな機関車が走る姿を見て歓喜の声を上げるのだが、灯花としては「むしろこれくらい当然!」とでも言いたげな態度を取っており、この程度出来て当たり前だと主張した。

 

「あっけなさすぎて詰まんない! こんな簡単なことに何千年も気づけなかったなんて、大人ってほーんと頭悪すぎ」

 

どうやらこの機関車、ただの玩具などでは無いようで動いている原理としては機関車とほぼ同じらしく、灯花は人類はどうしてこんな簡単に機関車を作れるのにこんなにもかかったんだと疑問に思ったことを呟くのだが・・・・・・。

 

直後、走らせていた機関車は大量に詰まれた本の山に突撃してしまい、本の山は崩れ、機関車は本の中へと埋もれてしまった。

 

あの機関車は小さいとは言え動いているのは原理は機関車と同じ・・・・・・つまり、『火』を使っている。

 

そんなものが大量に置かれた本の中に突っ込めばどうなるのか・・・・・・、そう、当たり前だが当然燃える。

 

そのため、崩れた本から煙がプスプスと上がり、炎が吹き上がったのだ。

 

幸いなことにすぐにスプリンターが起動して炎をかき消してくれたおかげで、そこまで被害が及ぶことは無かったのだが、当然ながら3人は看護婦にこってりと怒らせ、頭にタオルをかけられた状態でしばらく正座させられた。

 

「灯花、今君がした暴虐非道な行いは焚書坑儒にも匹敵する文化的損失として構成に記録されるに違いないよ・・・・・・」

 

小説家志望である為か、本を大量に燃やした原因である灯花に対し、ねむは物静かな物言いではあったものの、その声色には確かに怒気が含まれていたのだが、灯花は特に悪びれる様子はなく、むしろそれどころか彼女は本が燃えやすい素材なのが悪いと主張を始めたのだ。

 

「無くなって困る物なら消失するような素材に書き留める方が悪いんじゃないかにゃー?」

「病室内で消失するリスクを考えているほうが特異だよ」

 

灯花の言葉に対し、ねむはメガネをクイッと上げながら反論するのだが、そんな風に言い争う2人をういは慌てて仲裁に入る。

 

「2人とも、こんな時に喧嘩しないでよ~!」

 

目の前で看護師が部屋の掃除をしているというのにここで喧嘩なんてしてしまったらきっと反省してないと思われてしまう。

 

だからういは灯花とねむに喧嘩しないでと訴えるのだが、ねむは構わず言葉を続ける。

 

「自分の過ちを認めたがらない人間と付き合って得る物は無い。 灯花、君とは絶交だ」

「頭の硬いねむなんか、わたくしの方から絶交だよ~っだ!」

「もう! 何回絶交したら気が・・・・・・」

 

未だに言い争うねむと灯花にういは声を張り上げそうになったのだが、そこで騒いでいたところを看護師に改めて注意され、強く叱られてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「灯花ちゃんとねむちゃん・・・・・・」

 

あれから結局、忽然と消えてしまったかえでを夜遅くまでゼン達は全員で探したのだが、結局見つからず、その日は解散となってしまった。

 

そして、いろはは今、眠りから目を覚ましたところなのだが・・・・・・。

 

先ほど見たあの夢・・・・・・。

 

あれは、過去の自分の記憶であることをいろは目を覚まして即座に理解することができた。

 

入院していたういには、友達がいたのだ。

 

ういと同じように病院に入院して過ごす友達が。

 

(2人は、今どこへ・・・・・・)

 

それが「里見 灯花」と「柊 ねむ」の2人であり、彼女等2人のことを思い出したいろはは・・・・・・あの2人は一体どこにいるのだろうと考え込むのだった。

 

 

 

 

 

 

ゼンといろはの2人は、行方不明となったかえでを探す為に今日も神浜市に訪れており、神浜市の駅では髪がボサボサの状態のももこと、遅れてやってきたレナが迎えに来てくれていた。

 

「ちゃんと学校行ったか?」

「・・・・・・行ったわよ」

 

レナはかえでがいなくなったことに責任を感じているのか、彼女は暗い表情を浮かべており、そんな彼女の心情を察したからか、ももこが気遣うように学校に行ったのかと問いかけると、レナはぶっきらぼうならがもサボらず、ちゃんと学校へと行ったことをももこに伝えた。

 

それから一同は神浜ミレナ座へと向かうこととなり、映画館の中央部分の部屋までやってくるとそこには以前いなかった「調整屋」とやらをやっている銀髪の少女、「八雲 みたま」がロングヘアーの黒い髪の少女、「梢麻 友」と向かいあって今は何やら取り込んでいるところだった。

 

「息を吸って~。 吐いて~、深呼吸~。 ゆったり~、身を任せて~」

 

友はみたまに言われた通りのことを繰り返し行うと、みたまは「それじゃ」と一声だけをかけて友の持っているソウルジェムにそっと指先で触れる。

 

「ソウルジェムに、触れるわよ・・・・・・」

「あっ・・・・・・!」

(なんかエロい声聞こえた・・・・・・! なんかエロい声が聞こえた・・・・・・!!)

 

カーテンで遮られてはいたので、みたまと友が一体何をしていたのかは分からなかったが、友が妙に色っぽい声を出したことでそのことにゼンは激しく動揺し、一体カーテンの向こうで何してるんだ、自分はここにいて良いのかと思ったが・・・・・・。

 

「取り込み中か」

「はあ? こんな時に・・・・・・」

 

そんな感じで落ち着いた様子で椅子に腰かけるももこやレナが自分を追い出そうとしたりせず、割と平然としている辺り、カーテン越しにいる2人は別に自分が想像したようなことはきっとしていないのだろうと思い、なんとか落ち着きを取り戻す。

 

「・・・・・・」

 

最も、いろはからは物凄いジト目で見られたが。

 

「うふ♪ ごめんなさ~い。 急なお客さんだったのよ」

 

それから友はみたまに頭を下げてお礼を述べ、ミレナ座を出て行くとみたまはあらかじめももこから連絡が行っていたというのに取り込み中になってしまったことを謝罪し、出していたカーテンを引っ込める。

 

「それより~、今日はまた新しい女の子を連れて来たの~?」

 

みたまはそう言いながらいろはへと歩み寄ると彼女はいろはに顔をジッと近づけ、みたまは興味深そうにいろはを見つめると最後に「ふふ」と妖艶な笑みを浮かべ、いろははそんなみたまに思わず圧されてしまう。

 

「なんかこの人、いろはを見る目が・・・・・・なんか・・・・・・」

『エックス先輩や兄弟子がちょっと前まで一体化してた人の仲間に似たような雰囲気の人いたなぁ』

 

どうにもみたまがいろはを見る目なんというかやらしい・・・・・・というのも変だが、それに近い視線を向けているように感じたゼン。

 

それと同時に、タイガもかつて先輩ウルトラマンのエックスや兄弟子の「ウルトラマンメビウス」が少し前まで一体化していたという人物の仲間に、「可愛い女の子が大好き」な女性がいたことを思い出し、戦いを学ぶ為の一環として映像で見たり、エックスやメビウスの話で聞いた程度のことだが、みたまからその女性とどうにも同じ匂いというか雰囲気を感じずにはいられなかったのだった。

 

だが、ゼンやタイガがそんなことを考えていると、今度はみたまはこちらの方に顔を向けて来て、一瞬ビクッと震えて思わず身構えるが、みたまは「そんなに怖がらなくて大丈夫よ~」と間伸びした声でゼンに笑いかける。

 

「ももこから一通り話は聞いているわよ~。 なんでもあなた、魔法少女どころか、女の子ですらも無いのに魔女の結界や魔女を認知できるらしいわね~」

 

すると今度はいろはの時とは違い、本当に興味本位といった感じでまるで品定めされるかのように身体中、穴が開くんじゃ無いかというくらいジロジロ好奇の目で見られ、ゼンはそれに激しく動揺してしまった。

 

そして気持ちが一気に悪くなり、吐きそうになった。

 

「うぷっ・・・・・・」

 

ゼンが最も苦手とする疑念の眼差しをみたまが向けている訳では無いが、それでも人の視線というものがそもそも苦手な上、好奇の眼差しというのも苦手なので、そのせいで気持ちの悪くなったゼンは徐々に顔が青ざめていき、気持ち悪さのあまり崩れ落ちるように両手と両膝を地面に突き、右手で口元を押さえる。

 

「えっ、ちょっ、どうしたの大丈夫!?」

「ゼンくん!!」

 

流石にいきなり体調を崩したゼンの姿を見て、みたまも自分は何かしてしまったのだろうかと流石に狼狽え、ゼンが気持ち悪そうにしているのを見たいろははこんなこともあろうかと持参していたポリ袋を持ってゼンの元に駆け寄ると、袋をゼンに渡し、彼の背中を摩ってあげた。

 

「ごめんなさい。 ゼンくんは人の視線とか、そういうのが苦手で・・・・・・」

「えっ、そうなの? それは、私こそごめんなさい。 流石にジロジロ見すぎたわね・・・・・・」

 

いろはにゼンは人の視線が苦手であることを教えられ、みたまは確かにジロジロ見すぎてしまったと反省していろはやゼンに謝罪すると、いろはに背中を摩って貰ったおかげでなんとか吐かずに済み、気持ち悪さも引っ込んだゼンは「いえ」とだけみたまに返事を返す。

 

「やめてと俺がさっさと言えば良かっただけなので、気にしないでください」

「そう? でも本当にごめんなさいね? あっ、自己紹介が遅れたけど、私は『調整屋』の八雲 みたまよ~」

「あっ、光和 ゼンです」

「えっと、環 いろはです」

 

みたまが自己紹介をしてくれたので、自分達もと彼女にゼンもいろはも自分達の名前を教え、お互いに自己紹介を先ずは済ます。

 

「いろはちゃんは~、調整は初めて?」

「へっ?」

「調整しにきたんじゃないって」

 

みたまの言う「調整」というのがなんのことか分からなかったが、今日は別にその「調整」とやらをやりに来た訳では無いのでももこがみたまに説明する。

 

「やちよさんは?」

「そろそろ来ると思うけど~? 噂をすれば・・・・・・なんとやらね~」

 

その時、後ろの方からコツコツと誰かが歩いて来る音が聞こえ、音のした方へとゼンといろはが顔を向けるとそこには最初にほぼ事故で神浜に訪れた時に出会った少女・・・・・・ギリ未成年だから少女、「七海 やちよ」がやってくると、彼女の顔を見た瞬間いろはは冷や汗を流して気まずい表情となり、ゼンも「うわ、出た!?」と内心焦りに焦った。

 

そんな気まずい思いをしている2人を一瞬睨んだやちよだったが、彼女はすぐに視線を2人から外してももこの元にまで歩いて行くと、やちよはかえでが行方不明になったことについてももこに話を伺ったのだ。

 

「かえでが攫われたって?」

「あぁ。 ずっと追ってた奴にやられた」

「強いの?」

「魔女を誘き寄せる段階で躓いてるんだ」

 

ももこはやちよにかえでが攫われ、彼女を攫ったと思われる魔女についてのことをやちよに相談し、ももこは「絶交階段の噂って知ってる?」とやちよに尋ねる。

 

それに対し、やちよは「えぇ」とだけ応え、肩にかけていた鞄から一冊の太めのノートを取り出し、それを机の上へと置いた。

 

「付属校の噂よね?」

「へぇー。 やっぱり詳しいな」

「私が詳しい訳じゃないわ。 ももこも知っている筈よ?」

「そう言わずにさ、今回は力を貸して欲しいんだ。 助けて欲しい・・・・・・」

 

ボサボサ頭をみたまに櫛で直して貰いながら、ももこはやちよにかえでを取り戻して助ける為に、魔女を倒す為に彼女に協力を仰ぐと、やちよもかえでが捕まっているならと言うことでももこ達への協力を承諾する。

 

「かえでが捕まっているなら、協力はするわ」

「悪いな・・・・・・」

 

しかし、やちよはももこへの協力は一応引き受けたものの、キッといろはとゼンの方に顔を向けて睨むようにジッと2人の顔を見つめると、それにゼンはビクッと肩を震わせ、いろはは冷や汗を流した。

 

「けど、足手纏い達とは一緒に行動したくないわね」

「その娘は環 いろはちゃん。 もう1人はいろはちゃんのツレで光和 ゼンくん。 2人ともかえでのことを心配してついて来てくれてるんだ。 そんな言い方ないだろ?」

 

厳しく、言葉を言い放つそんなやちよに対し、ももこはいろはもゼンもかえでを心配してワザワザ遠いところから来てくれたというのにそのような言い方はないだろうと不満を漏らすが、やちよは特に悪びれる様子は無い。

 

「戦えない魔法少女を連れて行くのは危険だって言ってるのよ」

「やちよさんより弱い魔法少女はみんな足手纏いって言う訳?」

 

そんなやちよの言い草が気に入らないのか、レナはやちよを睨むようにしながらトゲのある言い方をするのだが、やちよはそんなレナの態度は特に気にすることもなく、彼女は「そうね」とレナの言葉を肯定する。

 

「かえでが攫われてるのよ!?」

「まだ被害者が増えるのがお好み?」

 

レナとしてはかえでを救う為にも戦力は少しでも多い方が良いという考えなのだろう。

 

しかし、やちよは自分よりも弱い魔法少女は足手纏いだからいらないと言って来たのだ。

 

しかも、やちよの言う自分よりも弱い魔法少女と言うのはこの神浜市にいる魔法少女の殆どが当て嵌まってしまうこととなる。

 

何故ならこの場にいる魔法少女の中では魔法少女としては1番のベテランということもあり、それほどまでにやちよの戦闘力は神浜市の魔法少女の中でもトップクラスなのだ。

 

この中で彼女とまともに渡り合えそうなのはせいぜいももこくらいだろうか。

 

そのため、彼女と同格、もしくはそれ以上の力を持つ魔法少女なんて数えるほどしかいない。

 

だからレナは、やちよの求めるもののハードルが高すぎると不満げな態度を見せ、やちよとレナはお互いに睨み合うが・・・・・・ふっとやちよがレナから視線を外して、今度はいろはの隣にいるゼンの顔に視線を向けると、それに対してゼンは又もやビクリと肩を震わせた。

 

「それに、そこの男の子、あなたは以前会った時、特異体質・・・・・・とか言っていたけど、魔女や魔女の結界が見えるだけで、戦えはしないのよね? 魔法少女についての事情も色々詳しいようだけど・・・・・・。 なんの力も持たないあなたは、そこにいる娘よりもハッキリ言って邪魔でしかないわ」

 

やちよはゼンを睨むように見つめながら、彼女はバッサリとそう言い捨てると、ゼンの方もやちよの顔を睨み付け、唇を噛み締めて何かを言い返そうとするのだが・・・・・・ゼンは、何も言い返すことが出来なかった。

 

今のゼンにはウルトラマンの力があるので、決してなんの力も持たない・・・・・・なんてことは無いし、タイガの力を借りれば自分も戦えるし、生身での戦闘力もタイガが一体化してくれたおかげで強化されてる。

 

しかし、タイガに釘を刺されていることもあって「自分にはウルトラマンの力がある」なんて言える筈も無く・・・・・・。

 

何よりも、それを抜きにしても今のゼンには「タイガの力を借りても、チビスケを救えなかった時のように、また自分は誰も救うことが出来ないのではないか?」という考えが頭の中に過ぎり、こんな調子で無ければやちよと初めてあった時のように、多少言い返したかもしれないが、今はその気力すらも起きなかったのだ。

 

そもそも言い返したところでやちよに論破される未来しか見えないが。

 

「っ・・・・・・。 確かに、あなたが言いたいことは分かります。 言ってることも理解できます。 俺じゃ、なんの役に立たないって。 それでも・・・・・・!」

 

それでも、ゼンだってかえでを助けたい、どうにかして力になりたいと思うのはここにいる全員と同じ気持ちだった。

 

それは単純に知人が消えてしまったからという理由ではなく、かえでが消えてしまったことは自分自身にも責任があるとゼンは考えていたからだ。

 

かえでが魔女に攫われたのはレナが絶交階段に自分とかえでの名前を書き、かえでがレナに謝ってしまったからだろう。

 

しかし、かえでとレナの口論の中に自分が思わず下手に口を挟んでしまったことも、かえでが攫われたことの一因だとゼンは考えたのだ。

 

だから、ゼンはあそこで口を自分が挟まなければ少しは・・・・・・否、もっと違った未来になったのではないかと彼は思わずにはいられなかった。

 

そのため、ゼンは自分はやちよの言う通り、邪魔でしかないかもしれない・・・・・・それどころか、役立たずのポンコツかもしれないが・・・・・・。

 

「かえでちゃんがいなくなったのは、俺にも責任があります。 約束します。 絶対にあなた達の邪魔はしません! 自分の身は自分で守れます! だからどうか、俺にも協力させてください、お願いします!!」 

 

それでもかえでを助ける為に、自分と同じ『友達を失う』辛さをレナに味あわせない為に、自分と同じ、悔しくて、苦しくて、腹正しくて、悲しい想いをする人間を少しでもこれ以上増やさない為に、ゼンは何か手伝いたいと彼は必死にやちよに頭を下げて協力させて欲しいと懇願したのだ。

 

「・・・・・・」

 

しかし、やちよは決して首を縦には振ってはくれない。

 

いろはの時とは違い、魔法の力も持たない一般市民であるただの人間を巻き込むことには流石のももこも賛成はしてはくれなかった。

 

そして、やちよは呆れたような溜め息を吐き、改めていても邪魔だと言う意志を伝えようと言葉を発しようとしたその瞬間・・・・・・。

 

「はいは~い!」

 

そこでももこの髪を整え、彼女の髪をポニーテールに結び終えたみたまが両手をパンッと強めに叩くと、やちよは出かかっていた言葉を引っ込め、全員の視線がみたまの方へと集まる。

 

「喧嘩はそこまでよ~? 取りあえず、いろはちゃんはいろはちゃんのソウルジェムを調整しちゃうって言うのはどうかしら~?」

「へっ?」

 

なんでも、みたまが言うにはソウルジェムを自分が「調整」すれば今まで引き出せなかった力が引き出せるのだそうだ。

 

さらにももこ曰く、調整を行い、経験をそれなりに積んでいけばきっと神浜の魔女とも渡り合えるようになるとのことらしい。

 

「それならやちよさんとしても、文句は無い筈だ」

「ハァ・・・・・・。 分かったわ。 それならそれで自由になさい」

 

みたまやももこの2人に説得されたことで、やちよは溜め息を吐きつつもいろはが自分達と同行することをなんとか承諾。

 

しかし、いろはは魔法少女で、これからみたまがソウルジェムを調整することもあってギリギリ彼女の同行事態はやちよに許されたが・・・・・・だからと言ってゼンの同行までもが許された訳では無い。

 

この場において、ゼンがウルトラマンタイガに変身できることを知っているのはいろはのみ。

 

彼女だけならばゼンの同行を許したであろうが、ゼンがネリル星人と地球人のハーフであることすら知らないやちよは勿論、ゼンは普通の人間だと思っているももこだっていろはの時とは違い、そう簡単にはゼンの同行を許してはくれなかった。

 

何も言いはしなかったが、それはレナも同じ意見だろう。

 

「流石に、言い方はちょっと悪いかもだけど、なんの力も持たないゼンくんを連れて行くのは、流石にゼンくんが危険すぎる」

「でも・・・・・・!」

 

それでもゼンは引き下がりたくは無かった。

 

こんな事態になってしまった一因が自分にもあるのなら、自分がタイガになれることを抜きにしても何かしらの力になりたい。

 

先ほども述べたように、彼は自分と同じように、誰かに友達を失ってしまう辛さを味あわせたくはない。

 

いろは達のことを信じて無い訳では無いが、だけど、自分を庇い、生かしてくれたチビスケの犠牲を無駄にしたくはない、自分と同じような人間をゼンはこれ以上増やしたくないのだ。

 

それが生き延びた自分がやらねばならないことだと思ったから、それがチビスケを二度に渡って守れなかった自分の罪滅ぼしになると思ったから。

 

だからゼンは必死に食い下がった。

 

「あの、私からもどうか・・・・・・お願いします!」

 

そんな彼の気持ちを汲んでか、椅子から立ち上がったいろはも、頭を深く下げてゼンの同行を許して欲しいとももこ達に頼み込んだのだ。

 

まさかいろはまでそんなことを言い出すとは思っていなかったのか、そのことにももこは目を見開き、「いろはちゃんまで・・・・・・」と困り顔を浮かべる。

 

「ゼンくんのことは私が絶対に守ります! それで足を引っ張ったりもしないようにします! いえ、絶対に足を引っ張りません!」

「だけど、いろはちゃん・・・・・・」

「ごめんなさい。 でも、ここでゼンくんが何もしなかったら、きっとゼンくんはこの先、一生後悔すると思うんです! だから、どうか・・・・・・私からも、お願いします!」

 

一度頭を上げて、もう1度深くいろはが頭を下げると、彼女に続くようにゼンも必死に頭を下げ、「お願いします!」と頼み込むが・・・・・・やはりと言うべきか、やちよもももこもそう簡単には首を縦には振ってはくれなかった。

 

しかし、そんな時・・・・・・意外なところからいろはとゼンを援護するように、ある人物が口を挟んできたのだ。

 

「実は~、ゼンくんのことは前々からちょっと噂に聞いてたんだけど・・・・・・神浜に最初に現れたあの黒い怪獣相手に、生身で立ち向かって行ったそうじゃない~? それに~、ヴィラン・ギルドの宇宙人を相手にもそこそこやりあえたって話も聞いたことあるわよ~?」

 

間伸びした声で、みたまがゼンはヘルベロスやレキューム人相手に生身で立ち向かい、ヘルベロス相手には生身だと言うのに生き残ったこと、レキューム人相手に善戦したことを話し出し、ゼンやいろははみたまが「なんでそんなこと知ってんだ」と疑問に思ったが、それでもここでみたまの口添えは大変有り難いものだった為、ゼンもいろはも特に咎めるようなことをしなかった。

 

「生身で怪獣にって・・・・・・ヴィラン・ギルドの宇宙人ならまだしも、なんでそんな危険なことを!!」

 

流石に生身で怪獣に立ち向かったことの件についてはももこに少しばかり怒られてしまったが、当時、その現場にいて緊急事態ということもあっていろはや黒江と協力してヘルベロスの対処に当たっていたやちよは確かに思い返せばよく見えはしなかったが、ヘルベロスの頭の上に人影のようなものが見えたことを思い出し、あれがゼンだったことを瞬時に理解すると、「なんて無茶なことをしたんだ」と呆れた視線を彼に向けた。

 

「だから私が思うに、ゼンくんはそこまであなた達の足手纏いにはならないと思うのよね~? むしろ何かしらの力になる可能性の方が大きいと、私は思うわよ?」

 

みたまにそう言われ、少しばかり考え込むももことやちよだったが・・・・・・。

 

「ハァ、しょうがないなぁ。 まぁ、調整屋までもがそこまで言うんなら・・・・・・」

 

最終的に、みたまの助力もあり、ももこもやちよも、そしてレナも「魔女が出てきたら急いで隠れて貰う」ということを条件にゼンが同行することについては一応納得して貰い、そのことにゼンもいろはも喜んで「ありがとうございます!!」と再び頭を下げて感謝の言葉を送るのだった。

 

「だけど、1つだけ言っておくことがあるわ。 そこのあなた」

 

しかし、ゼンの同行が決まった直後、やちよは今度はいろはの方へと声をかけ、彼女の元まで歩み寄り、いろははやちよの出す威圧感に若干尻込みしつつも「はい」と戸惑い気味に応える。

 

「もし弱いまま変わらなければ、あなたが目的の為に誰かを犠牲にし続ける。 それだけは忘れないで・・・・・・」

 

忠告のような、助言のような、そんな言葉をやちよがいろはに言い残すと、いろははそんなやちよの言葉の意味を深くは理解することが出来なかったが、それでもそれがとても大切なことであることだけは理解することができた。

 

「・・・・・・はい」

 

だからいろはは、やちよの言葉に対し、「はい」と真剣に応えると、その後は早速みたまにソウルジェムを調整して貰うことに。

 

ソウルジェムの調整が終わると、一同は早速かえで、レナ、ももこが通い、絶交階段の噂のある「神浜私立大学付属学校 中等部」へと向かうこととなったのだが・・・・・・。

 

「ゼンくんゼンくん」

 

ただ、その前に少しだけみたまに呼び止められ、彼女に手招きされて「なんだろう?」と思いつつも先ほどの口添えの件についてお礼が言いたかったのもあり、ゼンはみたまの元へと歩み寄ると・・・・・・。

 

彼女はそっとゼンの左腕を掴んで、抱き寄せるように耳元に顔を近づけると、みたまはボソッとあることを呟いた。

 

「えっ、あっ、ちょっ、みたまさん!?」

「あの娘達のことよろしくね~? 『光の勇者』さん?」

「っ!?」

 

みたまが耳元に顔を近づけてきた際、ゼンは一瞬はそれに驚いてドキッとして何をされるのかと緊張したが、みたまの言った「光の勇者」という言葉を受けて、ゼンは目を見開くのだが・・・・・・みたまはすぐにゼンから離れると、彼女は不敵な笑みを浮かべて見せる。

 

「みたまさん、なんで・・・・・・」

「ほらほら、女の子を待たせたらダメでしょ~? 早く行った行った~!」

 

みたまの言う「光の勇者」という言葉について問いただそうとしたゼンだったが、みたまは誤魔化すようにゼンをくるりと後ろを向かせて背中を押すと、レナに「早くしなさいよ!!」と急かされたこともあり、ゼンは渋々みたまに詳しく聞くことを諦めていろは達と共に絶交階段のある場所へと向かうのだった。

 

「ゼンくん、鼻の下伸びてるよ?」

 

ただその際、みたまが抱き寄せるようにしてゼンの耳元に顔を近づけて何かを囁いていた光景を見ていたいろはは、ムスッと頬を膨らませ、あからさまに不機嫌そうにする彼女に、手の甲を軽く抓られてしまった。

 

と言っても全然力が入っていないため全く痛くは無かったが。

 

「イテテテ!? 伸びてない! それに・・・・・・」

「それに・・・・・・?」

「今言うことじゃないから、かえでちゃん救った後に言うよ」

 

それにイマイチ納得できなかった様子のいろはだったが、確かに今優先すべきはかえでの救出なので、彼女は後で絶対さっきの続きを聞かせて貰うことを約束し、今度こそ絶交階段の元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

神浜私立大学付属学校の、中等部校舎。

 

ここの生徒であるももこ、レナは兎も角、ゼン、いろは、やちよは部外者である為に一同は他の生徒や教師に見つからないようにコソコソと立ち回って絶交階段のある場所へと向かい、人目を避け、ようやく辿り着くことが出来た。

 

「・・・・・・そんな顔しなくても、笑い飛ばせる日が来るって! また仲の良い、友達に戻れるさ! あたしが保証する!!」

 

ももこは不安げな顔を見せるレナを励ますようにそう言葉をかけるのだが、レナはももこの言葉に返事を返すこともなく、ただ顔を俯かせているだけだった。

 

そして、絶交階段と思われる場所にももことやちよが早速絶交階段の6段目と7段目に自分達の名前を書き込み、名前を書き終えたやちよは自分のソウルジェムを取り出して名前を書いたことで魔女が何かしらの反応を見せて来るだろうかと思ったのだが、特にソウルジェムが何かしらの反応を示すことはなかった。

 

「魔女反応は無し・・・・・・」

「絶交階段に名前を書いて、仲直りをする! 現れた魔女を叩く! あたしとやちよさんなら、襲われてもただじゃやられないだろ?」

 

ならば当初の予定通りやちよとももこの2人は敢えてワザと絶交階段に名前を書くことで絶交し、その後すぐにお互いに謝ることで仲直りをして魔女を誘き出す作戦へと実行する為に、やちよ、いろは、ももこ、レナはそれぞれのソウルジェムを取り出し、魔法少女の姿へと変身。

 

変身を完了させたいろは達+ゼンは今なら屋上に誰もいないだろうし、他の誰かを巻き込むこともないだろうという理由から屋上へと向かうこととなり、ももことやちよは早速お互いに謝罪を行い、仲直りをして魔女を誘き寄せる作戦を決行。

 

「よし、行くぞやちよさん!!」

 

いろはやレナ、ゼンが見守る中、先ずはももこは頭を下げてやちよに謝罪の言葉を送った。

 

「やちよさんごめん! あたしが悪かった・・・・・・。 ごめん、ごめんなさい。 許してください。 絶交は取り消しにしよう」

『「いや、めっちゃ棒読みぃ!!?」』

 

謝罪したは良いものの、ももこの謝罪の言葉には反省の色どころかまるで感情が宿っておらず、ゼンやタイガはその予想以上のももこの棒読みっぷりにそんなので魔女が誘き出されるのだろうかと疑うが・・・・・・案の定、魔女は姿を現してはくれなかった。

 

「何も起きないかぁ・・・・・・」

「そりゃそうでしょうよ。 こう言ったら失礼かもですけど、ももこさんめっちゃ棒読みだもん。 あんなのに引っかかったらただのバカだよ、魔女」

 

ゼンから謝罪の演技が下手すぎるとボロクソに言われ、レナからもちょっと冷ややかな目で見られてしまった為、少し泣きそうになったももこだったが、こんなところで立ち止まってはいられないので今度はやちよの方から自分に謝ってくれと頼むと、やちよは「分かったわ」と頷き、彼女もまた頭を下げてももこに謝罪の言葉を送った。

 

「ももこ、ごめんなさい」

『「感情がまるで籠もってない・・・・・・」』

 

流石にももこの棒読みほど酷くは無かったものの、ももこ以上に感情の籠もっていないやちよの謝罪にゼンやタイガは苦笑し、いろはも「来ませんね・・・・・・」と呟く。

 

「やっぱりダメかぁ」

「本当に喧嘩してないとダメってこと?」

「まぁ、普通はそうでしょうね。 やっぱり流石にあんなのに騙されるほど魔女もバカじゃないってことです」

 

結果、やちよやももこの作戦は失敗に終わってしまい、ゼンもあんなおざなりな演技では魔女だって騙される訳が無いと少々辛辣な評価を下し、そこで少しばかり考え込んでいた様子のいろはが「あの」とおずおずとしながら手を挙げ、魔女を誘き寄せる役目を自分が引き受けることは出来ないかと提案してきたのだ。

 

「私とゼンくんの名前を書いて、私がゼンくんに謝って、魔女を誘き寄せる方法じゃダメですか?」

 

ももこややちよがダメとなると、絶交階段にまだ名前が書かれていない自分とゼンが名前を書き込み、自分が謝ることで魔女を誘き寄せるのではダメだろうかと意見を出し、少なくともももこややちよよりかは感情を込めて謝罪出来ると思ったので、いろはは自分が囮になることを提案したのだが・・・・・・。

 

「えっ」

 

しかし、いろはのその提案に対して例え嘘だとしても彼女と絶交するなんて絶対に嫌だったゼンは、彼女のその提案に絶句し、今にも泣き出しそうな顔を浮かべるのだが・・・・・・。

 

それでも、今優先すべきなのはかえでの救出であるため、ゼンはここで自分が嫌がるのはただのワガママだし、嘘でも自分がいろはと絶交して魔女を誘き出し、かえでを助け出せるのならやるべきだろうと考え、彼は目尻に浮かべた涙を拭いながらもいろはに「分かった」と絶交階段に自分の名前を書き加える決意を固める。

 

「ごめん、ゼンくん」

 

いろははそんなゼンの心情を察してか、彼女は申し訳無さそうにゼンに謝るのだが・・・・・・。

 

「ダメよ、許可できないわ」

 

しかし、ゼンが絶交階段に名前を書くことを決意したは良いものの、それは許可できないとやちよが言いだし、そんな彼女の意見に、ももこも同意するように「そうだな」と頷いてきたのだ。

 

「えっ、なんで?」

 

ももことやちよの2人がいろはとゼンが絶交階段に名前を書き込むことを許可しなかったのは、いろははソウルジェムをみたまに調整して貰ったとは言え神浜の魔女とやり合うにはまだまだ経験値の浅い魔法少女。

 

少なくともこの中では1番弱い魔法少女だ。

 

そんな彼女が絶交階段の魔女に襲われたとして、ももこややちよのように対処出来るのかと言われれば正直難しいところだろう。

 

なのでやちよもももこもいろはやゼンが絶交階段に名前を書くことを許可しなかったのだ。

 

ならばどうするのか・・・・・・と考えていると、その時、レナがポツリと呟いた。

 

「やっぱり、レナがやるしかない」

「レナにだって危険だ!」

 

そもそもかえでが攫われた直接的な原因は自分で、絶交階段に名前を書いたのも自分。

 

ならば自分がやるしかないとレナは判断し、責任を取る形で彼女は自分が魔女の囮になると言い出したのだ。

 

確かに、レナは一応いろはと比べれば神浜の魔女ともある程度戦い慣れているし、かえでよりも強いと自負するくらいには戦闘力もそれなりにある。

 

「それに何かあっても、ももこが守ってくれるんでしょ?」

「・・・・・・」

 

しかし、レナは引き下がらずももこにそう言うと、ももこはそこから少しばかり、考え込んだが、レナの意志が強固な物であることを感じ取ると、彼女は「分かったよ」とレナが魔女の囮になることに渋々許可を出し、やちよの方も特に咎めるようなことはしなかったのでこの役目は満場一致でレナに託すこととなったのだった。

 

「約束する。 絶対にかえでを助けだそう!」

「・・・・・・かえで、ごめん・・・・・・」

 

学校の屋上で、レナはそこから見える街を見下ろしながら、今この場にはいないかえでに謝罪の言葉を送る。

 

「ごめんなさい。 絶交するとか言ってごめん! レナ、かえでと仲直りしたい!!」

 

レナはそう言って、今ここにはいないかえでに謝ったのだが・・・・・・特に何かが起こる訳でもなく、ももこと違って棒読みでも無ければやちよと違って感情がまるで籠もってないなんてこともなく、誰がどう聞いても見た感じではしっかりとレナはかえでに謝ったようにしか見えなかった。

 

にも関わらず、魔女が現れる様子は一切無く、ももこも「なんでだぁ?」とそのことに首を傾げた。

 

「心からの言葉じゃないとか・・・・・・」

 

魔女が現れないのはレナもしっかりと心からの本気の謝罪では無かったからではないかといろはが予想を立てるのだが・・・・・・。

 

そう呟いた直後、レナはそんないろはを強く睨み付け、睨まれたいろはは「あっ、いえ!?」とビクリと震えた。

 

「結構しっかりと謝ってたと思うんだけどな・・・・・・。 相対的に前の2人の謝罪の演技が酷すぎてまともに見えるだけなんだろうか?」

「なぁ、ゼンくん。 もしかして私が棒読みだったり、やちよさんの謝罪に感情が籠もってなかったことしばらくネタにしていく感じか?」

 

やちよは特に演技の酷さには気にしてはいなかったが、ももこは先ほどから自分達の大根役者っぷりに妙にツッコんでくるゼンに不満げな顔を浮かべるが、ゼンとしては別に弄りネタのように使っている訳では無く、ただ単に思ってことを口に出しているだけで別にそういうつもりは一切無かった。

 

「あっ、いや、すいません。 でも本当に酷かったんで・・・・・・」

 

しかも、先ほどのレナの謝罪が本当に心からの言葉では無かったのだとしたら余計にももこややちよの演技の酷さが浮き彫りになってしまうため、それ故にゼンもその辺が少しばかりに気になってしまったのだ。

 

「大根で悪かったなチクショウ・・・・・・」

「というか、そもそもそんなすぐに『仲直りした~い』って気持ちになる訳ないでしょ!?」

 

そこでレナは「心からの言葉じゃない」と言ったいろはのことを睨みはしたものの、案外彼女の言っていたことは的を得ていたようで実際に先ほどの謝罪はしっかりと感情こそ込めたものの言葉だけは上っ面だけの物だったようで・・・・・・。

 

そんな捻くれたことを言うレナに、ももこは苦笑交じりにどこか呆れたような視線を彼女へと向けた。

 

「レナなぁ? そういうところだぞ?」

「仕方ないじゃない。 気持ちは変えられないわよ!」

「かえでが戻って来なくても良いのか?」

「そんなこと言ってないじゃない! なんでそう思うのよ!? なんでみんな・・・・・・そんなことばっかり言うのよ!!」

 

屋上の手すりに触れながら、顔を俯かせ、苛立ったように声を荒げるレナ。

 

「かえでには、帰って来て欲しいわよ! このままいなくなったら、ますますレナが悪者になるじゃない! いつもいつもいつもいーっつも!! 謝るのはかえで! 怒るのはレナ!! かえでは善人面してニコニコして、そうやって良い子しながらももこに守られてれば良いのよ!」

 

相も変わらず先ほどからずっと顔を下に向けたまま、ポツリ、ポツリとその青い瞳から涙を流しながら、彼女は心の中のものを吐き出すように荒げた声を発するレナ。

 

「かえでがいなければ、こんな気持ちにはならなかったのに!! かえでなんて嫌い、嫌い、大嫌い!!」

 

泣き顔を晒しながら、レナは叫ぶ。

 

「帰って来ても、絶対に仲直りなんてしない。 今度の今度こそ絶対に絶交する! かえではもう、レナと友達でいなくて良いよ・・・・・・」

 

それは別に、かえでを責めた言葉では無かった。

 

「かえで、ごめんね・・・・・・」

 

こうなってしまったのは、かえでが悪いからでもなく、かえでが謝ったからでもなく、こんな事態を招いたのは・・・・・・。

 

「今まで、友達でいさせて・・・・・・」

 

それは、かえでを自分の友達でいさせてしまった自分自身。

 

かえでが自分の友達でいさせなければ、こんなことにはならなかった、かえでだけを危険な目に合わせることもなかった。

 

全て悪いのは、かえでと友達になってしまった自分自身が原因で、だからレナは、かえでが帰って来たら今度こそ本当に絶交すると言ったのだ。

 

もう二度と、こんなことが起こらないようにするために。

 

「レナなんかの友達にして、ごめんね・・・・・・?」

 

それは先ほどと違い、レナ自身の心からの言葉であり、そこには嘘も上っ面の言葉も何も無い、ただの本心から出た本気の言葉。

 

そして・・・・・・全くの嘘も誤魔化しもない心からの謝罪のその言葉を、レナが口にした直後・・・・・・異変は起こった。

 

『お前のせいで』

『レナのせいで』

『お前のせいで!』

『かえでのせいで!!』

 

直後、レナの耳にかえでを連れ去ったあの怪人達の声が聞こえ始め、レナはその声の主達に対し、怒鳴るように「黙ってよ!!」と叫ぶ。

 

しかし、怪人達の声はそこから次第に強くなっていき、幾つもの影のようなものがレナの周囲を囲むと学校の屋上の床から・・・・・・レナを閉じ込めるように幾つもの階段が溢れ出るように出現したのだ。

 

「飛び乗れ!!」

 

ももこの指示に従い、ももこ自身とやちよ、いろはと彼女に腕を掴まれたゼンは階段に慌てて飛び移る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

噴水の水のように溢れ出た幾つもの階段の中に閉じ込められたレナは、いつの間にか自分の部屋の、自分のベッドの上で膝を抱えて座っており、彼女は虚ろな目をしながら自分が推している水名区を拠点に活動する歴史と浪漫の刀剣アイドル、さゆさゆこと「史乃 沙優希」のライブ映像をテレビでただひたすら視聴していた。

 

それは魔女の力なのか、どうして自分は先ほどまで学校の屋上にいたのに、自分の部屋に戻って来ているのか、レナは何故かそのことに一切疑問を持たない様子でアイドルのライブ映像を観ながら、彼女の脳裏に数日前にかえでがまた自分に謝って来た時の光景を思い出していた。

 

『レナちゃん、今日は絶交するなんて言ってごめんね? 沢山酷いこと言って、ごめんね・・・・・・。 レナちゃん、人見知りなところあるって知ってたのに』

(どうして、かえでばっかり謝るの? なんでレナは謝らないの?)

 

その時のレナはただ不機嫌そうに腕組みをして黙っているだけで、レナは特に謝り返したりもしなければ何かを言い返したりもせず、ただ黙っているだけだった。

 

そんな彼女は、かえではちゃんと自分に謝ってくれているのに、なんで自分はかえでに謝れないんだと自分自身にレナは問いかける。

 

『レナちゃん、私足手纏いにならないよう頑張るから!』

 

かえでは全然悪くないのに、自分が謝らないといけないのにと、レナはどうして「ごめん」の一言も言えないのだろうと彼女はもどかしい気持ちでいっぱいになる。

 

『レナちゃん、本当にごめんね?』

(謝らないでよ・・・・・・! なんですぐ謝るの?)

『それだけ伝えたかったんだ。 明日もまた鎖の魔女探しに行こうね?』

 

そんな風に、かえでは優しく自分に声をかけてくれたのに、結局最後まで自分は謝らないまま。

 

謝ることすらできないこんな自分に、レナは嫌気が差すのを感じ、彼女は顔を隠すように俯く。

 

(レナなんて・・・・・・レナなんて・・・・・・大嫌い・・・・・・!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ、んっ・・・・・・」

「んあっ、あれ? ここどこ?」

 

一方で、ゼンといろははいつの間にか気を失っていたようで・・・・・・。

 

2人が同じタイミングで起き上がると、ゼンといろはの2人は辺りを見回し、見たところそこが誰かの部屋であることにはすぐに気付くことが出来た。

 

「人の、部屋・・・・・・?」

「あっ」

 

そこでいろはは部屋のベッドに膝を抱えて腰かけているももこの姿を発見し、彼女に続いてゼンもももこの存在に気付くと、彼はももこに話しかけようとするのだが・・・・・・。

 

しかし、ゼンがももこに声をかけるよりも早く、ももこが口を開き、ゼンの言葉を遮った。

 

「アンタ達はレナのこと好き?」

「えっ?」

「えっ、なんで今そんな質問・・・・・・?」

 

唐突に自分達に対して繰り出されたももこの質問に、いろはやゼンは困惑し、一体なんで今そんな質問をしてきたのかと疑問を抱かずにはいられなかった。

 

「好きな訳ないよね。 レナは性格悪いし、みんなから嫌われてる。 ももこもかえでも迷惑してるの」

「ももこ・・・・・・さん?」

 

「ももこもかえでも迷惑してる」というももこの言葉を聞き、ももこってお前だろとツッコまずにいられないゼンといろはだったが、そこでゼンは以前にも、似たような状況になったことを思い出した。

 

それは数日前に、ももこやかえで、レナと共に立ち寄ったフードコートでレナが変身したももこがが自分達に話しかけて来た時のことであり、レナが他人に変身できる能力を持っていることをその時は知らなかったゼンやいろはは当然ながらそのことに混乱した。

 

だからゼンはもしかしてとももこの瞳の色を確認すると、彼女の目の色は青く、それは本物のももこではないことを意味していたのだ。

 

つまり、今ここにいるのはももこではなく、「ももこに変身したレナ」なのだ。

 

「私も、アイドルみたいにキラキラしたい」

 

ももこに変身したレナが、そう呟くと彼女が見ていたテレビの画面にノイズが入り、やちよの姿が映し出される。

 

『私も変わりたい』

 

しかし、そこに映し出されたのは本物のやちよではなく、それはレナの心情を反映した物であり、続いてレナの姿が今度はみたまの姿へと変わる。

 

「変わりたい。 なんで変われてないの?」

『キュゥべえに叶えて貰った筈なのに・・・・・・』

 

またテレビの画面のやちよの姿も変わり、今度はいろはの姿が映し出される。

 

『レナなんて嫌い、大嫌い・・・・・・』

 

そこからさらに、かえでの姿がテレビに映し出され、まるで自分自身を責めるように言葉を続けるレナを見て、ゼンは胸を締め付けられるかのような感覚に見舞われた。

 

「自分が嫌い」・・・・・・その気持ちは、ゼンは痛いほど理解できた。

 

「っ、分かるよ。 自分が嫌いな気持ち・・・・・・」

「ゼンくん・・・・・・?」

 

ゼンも、自分自身が嫌いだった。

 

「俺も、俺が嫌いだ」

 

孤独を恐れて、奇怪な目で見られるのが嫌で、「環 いろは」というこの世で最も大切な人の力になりたいのに、タイガの力を借りなければ自分じゃまともに助けになれなくて、「チビスケ」というこの世で最も大切な友達を二度も守れなくて・・・・・・。

 

確かに、タイガの力を手に入れた時はこれでいろはの助けになれると喜んだ。

 

だけど、チビスケがトレギアに殺されたことで、ゼンは痛感した。

 

所詮自分はタイガの力を貸して貰ってるだけに過ぎない、これは自分自身の力ではないと・・・・・・タイガの力を手に入れて、強くなった気でいただけだったんだと・・・・・・。

 

自分が弱いから、とても弱いから、チビスケを自分は死なせてしまった。

 

もっと自分が上手くタイガの力を使いこなせていれば、もっと自分が強ければと、そう後悔しない日は無い。

 

「だけど!!」

 

しかし、これから先も、ずっと自分は無力のままかもしれない、結局タイガのように誰かの力を借りなければ自分は何も出来ないのかもしれない。

 

だとしても・・・・・・。

 

「そこで立ち止まって良い理由にはならないだろ!!」

 

ガッとレナの両肩をゼンが力強く掴みながらそう言い放つと、変身が解けて元の姿に戻ったレナはゼンのその行動に驚いて目を見開く。

 

「っ」

「自分が嫌いだからって、それを理由にして俺はそこで立ち止まりたくない。 そんな嫌いな自分を、叩きつぶして俺は今度こそ大切な人達を守れる自分になりたい!! だから俺は足掻くんだ。 レナちゃんは、自分が嫌いだからって理由で、こんなところでずっと閉じこもってるつもりなのか!?」

 

ゼンにそう言われて、レナはどう答えて良いのか分からず彼女は目を泳がせる。

 

「それに、無理に変わる必要なんて、無いと思う。 君は君のまま、君らしく少しずつ変わっていけば良い」

「っ・・・・・・。 何よ、それ。 矛盾してんじゃない。 変わるのか変わんないのかどっちなのかハッキリしないさいよ!」

「うん。 確かにそうかもね、口下手でごめん、上手く言葉に出来ない・・・・・・。 でも、1つだけハッキリ言えることはある」

 

そして、ゼンが苦笑して謝りながらレナの肩から両手を離すと、彼は後ろにあったテレビの方へと振り返り、握り拳を作ると彼はテレビに向かって全力で拳を放つ。

 

「誰かと誰かの繋がりを引き裂こうとするお前なんかが!! レナちゃんの道を、塞いでんじゃねえよ!!!!!」

 

レナの映るテレビの画面を、ゼンが力を込めて全力で殴りつけると、テレビの画面がヒビ割れ、鏡のように「パリン!!」と大きな音を立てながら割れると、それと同時にこの部屋も鏡のように粉々に砕け散り、ゼン、いろは、レナの3人は大量の階段が溢れる魔女の結界内と思われる場所へと出てきたのだ。

 

「あっ、レナちゃん・・・・・・? そんなところで、何してるの?」

 

しかも目の前には、レナにとって何よりも助け出したかったかえでが立っており、不思議そうにこちらを見つめるかえでに、レナは思わず呆気に取られてしまった。

 

「もう! レナちゃん私のことを助けに来たんじゃないの!?」

「かえで・・・・・・!?」

「レナちゃんって、落ち込むとすぐももこちゃんに変身するよね?」

 

どうやら、先ほどのレナの様子はかえでからも見えていたようで、彼女のそんな指摘に対しレナは「は、はぁ!?」と顔を真っ赤にして「そんな訳ないじゃん!!」と否定する。

 

「って、アンタどこ行ってたのよ!? 誰のせいでこんなことになってると思ってるの!?」

「ふゆう!? わ、私もずっと降りれなくて困ってたししょうがないよ!?」

 

再会して早々、以前喧嘩した時ほどの険悪さどころか、むしろ微笑ましく思えるような喧嘩を早速おっぱじめるレナとかえでだったが、なんにしても今は喧嘩している場合ではないとゼンといろはが慌てて止めに入り、仲裁に入る。

 

一方で、あの魔女が作り出したと思われるあのレナの部屋の疑似空間から抜け出せたからか、離ればなれになっていたももこややちよも彼女等の気配を探知し、彼女等2人はソウルジェムを介して心の中で会話をする「念話」を使い、急いで2人はいろは達のいる場所へと向かっていた。

 

『やちよさん! レナ達の反応が! いろはちゃんもいる!!』

「えぇ、感じたわ! でも、結構離れた枝にいるみたい!」

 

場所は戻り、いろはとゼンの2人が言い争うかえでとレナの仲裁に入っていると、どこからか、あの小さなキュゥべえが空から振って来ると、キュゥべえはいろはの肩に乗り、当然ながら神浜に最初に来た時に目撃した小さなキュゥべえとの再会にいろはは驚く。

 

「あれ? そのキュゥべえが例の・・・・・・」

「う、うん。 そうなんだけど・・・・・・どうしてこの子、こんなところに・・・・・・」

 

ゼンもキュゥべえの姿を確認すると、いろはとゼンの2人はなんでここにこの小さなキュゥべえがいるのかと疑問に思ったが、その時、キュゥべえはいろはの肩から降りると階段を駆け上がって行く。

 

「待って!!」

 

いろははそんなキュゥべえを呼び止めようとするのだが、同時にいろはの目にこの空間を作り出している本体の魔女と思われる鐘を発見。

 

「あの鐘が、本体・・・・・・なの?」

 

魔女の本体に、レナやかえでも気付くと、2人は早速先ずは周りにいる邪魔な南京錠のような姿をした魔女の手下達に攻撃を仕掛け、かえでが杖を構えると大量の枝のようなものを放ちながら手下達の身体を貫く。

 

『私、ちゃんと聞こえてたよ? レナちゃんが私のこと『大嫌い』って言ってるの』

『聞いてたなら分かってるでしょ!? ここを出たら、今度こそ本当に絶交だから!』

『それはヤダなぁ』

 

念話で会話をしながら、かえでに続くようにレナは三叉の槍で空中にいる手下の1体を叩き落とすと、その横にいた手下も槍で貫いて倒し、ゼンを後ろに下がらせたいろはもクロスボウを構えて矢を連射して放つが・・・・・・レナやかえでと比べると攻撃の威力が足りないのか、直撃しても矢は弾かれてしまった。

 

『今までだって、レナとかえでは友達なんかじゃなかったのよ。 レナが一方的に怒って、かえでは一方的に謝って・・・・・・』

『じゃあレナちゃんも謝れば? っていうか、謝ってくれたよね、さっき?』

『あんなの、謝ってないわよ!』

『謝ってたよ・・・・・・』

『ノーカン!』

 

レナは先ほどかえでに謝っていたことを頑なに認めず、それでも食い下がってくるかえでに対しレナはあんなものはノーカンだと言ってのける。

 

『じゃあ絶交もノーカンね!』

『何よそれ!?』

 

レナが謝ったのがノーカンなら、自分達が絶交してしまったのもノーカンだと無茶苦茶な言い分を述べて来るかえでにレナは少しばかり呆れた声を上げる。

 

『あのね、レナちゃんって自分勝手でワガママで怒りっぽくて人見知りだけど、別にそれでも良いんじゃないかな? レナちゃんはそのままで良いし、私とレナちゃんもずっとこういう関係で良いんじゃないかな?』

 

そこで一度、かえでがその場に立ち止まり、背中合わせに立つレナの方に一瞬振り返る。

 

「だから友達じゃないってことには、ならないと思うよ?」

 

かえでの言葉は、先ほどゼンが自分に対して言っていた「君は君のまま、君らしく変われば良い」という言葉となんとなくだが、どこかダブって聞こえていた。

 

言ってることは微妙に違うのに、根本的なところは同じ・・・・・・そんな風にレナは感じた。

 

「レナの言うことも、ちゃんと聞いてよ! レナにもちゃんと謝らせてよ!!」

 

だからレナは、改めてかえでに謝罪することを告げ、かえではそんなレナに優しく微笑みかけながら快く頷く。

 

「分かったよ。 聞く、ちゃんと聞くから」

「・・・・・・ここを出たら、言う」

「ふふ。 分かった。 待ってる!」

 

そんなレナにかえでは思わず笑ってしまうが、おかげで絶対にこの魔女を倒さないといけないというモチベーションが上がったおかげで、俄然やる気が出るかえで。

 

また魔女の手下達を倒しながらももことやちよその場に合流すると、彼女等2人はそのまま真っ直ぐ魔女本体に向かってそれぞれ武器を構え、攻撃を仕掛けようとする。

 

しかし・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

「まだゲームが終わるのは早いよねぇ~!!? だからオマケのゲームを、ダウンロードしてあげよう♪ その名もDLC、『バゴン』。 おいでぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

ある場所で、青霧がそう呟くと遥か上空から超巨大な怪獣・・・・・・「暗黒怪獣 バゴン」が振って来ると、魔女の作り出した階段を幾つか破壊しながら・・・・・・けれどもまるで魔女を守るかのように、現れたのだ。

 

「グルアアアアアア!!!!!」

「なっ、怪獣!? なんでこんな・・・・・・ところに!? つか、なんだあの化け物!?」

 

突然現れた怪獣のせいで魔女の元に続く為の階段が破壊されてしまい、目の前の道が失われたことで思わず立ち止まってしまうももことやちよ。

 

それと同時に、ももこは魔女の結界に巻き込まれた訳でもないのに何故こんなところに怪獣が現れたのか、そのことに対し疑問を抱かずにはいられなかったが・・・・・・。

 

「ももこ!! ボーッとしないで!!」

 

やちよの呼びかけに我に返ったももこは、右腕を振りかざしてきたバゴンの攻撃を紙一重で空高くジャンプすることで回避。

 

「ガアアアアア!!!!」

「あっぶな!?」

 

やちよは幾つもの槍を空中に浮かばせると、それをミサイルのようにしてバゴンに向かって放つが、その巨体故にやちよの攻撃は蚊に刺された程度のダメージしか与えられず、バゴンはやちよに向かって口から白い炎を吐き出す。

 

なんとか飛び跳ねてバゴンの攻撃を躱そうとするやちよだったが、空中へと飛んだところを狙われ、バゴンの拳がやちよの方へと放たれる。

 

「っ、回避が・・・・・・!!」

 

空中で思うように動けないこと、バゴンの拳があまりにも巨大なことから、やちよが回避が間に合わず、バゴンの攻撃を喰らってしまうと目を瞑るが・・・・・・。

 

その直前・・・・・・。

 

『カモン!』

「光の勇者、タイガ!!」

 

ゼンがタイガスパークのレバー部分を引くと腰に下げていたタイガキーホルダーを右手で掴み取り、左手に持ち替えるとタイガスパークのクリスタル部分が赤く輝く。

 

「バディィィィィ!! ゴー!!!!」

『ウルトラマンタイガ!』

 

そしてゼンは右腕を掲げると光に包まれ、「ウルトラマンタイガ」へと変身し、空中にいるやちよを両手で包み込むようにして掴むと急いでその場から離れ、バゴンの攻撃をどうにか躱すことに成功した。

 

タイガはまた別の階段の上にやちよをゆっくりと降ろすと、バゴンの方へと振り返り、空中へと飛んでファイティングポーズを取りながらバゴンと対峙する。

 

「あの時の・・・・・・巨人? 私を、助けてくれたの?」

 

やちよは再び自分の目の前にタイガが現れ、自分を助けてくれたことに驚くが、それよりも今はあの怪物はタイガに任せ、自分達は魔女に集中すべきだろうという判断し、先ずはももこと合流する為に彼女の姿を探すことに。

 

『こいつ、『タイタス』から昔聞いたことがある。 かつて、タイタスの故郷U40を襲ったことのある怪獣だ! でも、聞いてた話じゃ空を飛べるような能力は無かった筈だが・・・・・・』

 

そう、この魔女の作り出した空間には「地面」が存在せず、足場は魔女が作り出した階段くらいしかない。

 

そのため、バゴンのような巨大な身体を支えられるような階段も無い。

 

しかし、バゴンはかつてU40を襲った個体とは違い、「飛行能力」を有していたのだ。

 

『なんにしても、魔女はいろは達に任せて、俺達はこいつを!』

『あぁ!!』

 

タイガは勢いをつけてバゴンの顎に向かって拳を繰り出し、攻撃を叩きこむのだが、バゴンはほんの少しだけフラついただけですぐに体勢を立て直し、タイガの身体を掴みあげようと右手を伸ばす。

 

『うおっ!?』

 

しかし、タイガは紙一重でなんとかバゴンの手を躱すのだが、続けざまにバゴンは左拳をタイガに向かって振るい、今度はタイガは回避が間に合わず、バゴンの拳による攻撃を受けて大きく吹き飛ばされてしまう。

 

『ウアアアア!!!!?』

 

階段を幾つか破壊しながら、タイガは下の方へと落下していき、それを追いかけるようにしてバゴンは急降下キックをタイガへと繰り出す。

 

『マズ!』

 

だが、タイガはどうにか空中で一回転して身体を反転させて体勢を直すと、バゴンの蹴りをギリギリで回避し、バゴンの頭上よりも高い位置を目指してタイガは飛行。

 

バゴンよりも高い位置に素早く移動すると、タイガは虹色に光りながら体内エネルギーを貯めた後、両腕をT字型に構えてタイガスパークから発射する高熱破壊光線「ストリウムブラスター」をバゴンの顔に向けて発射。

 

『ストリウム・・・・・・ブラスター!!』

「グルアアアアア!!!!」

 

しかし、バゴンは右腕で自身の顔をガードすると、そのままタイガのストリウムブラスターによる攻撃を完全に防いでしまい、バゴンは防御を解くと同時にタイガを捕まえようと左手を伸ばす。

 

『グゥ!?』

 

タイガはどうにか身体を捻って捕まらないようにバゴンが伸ばしてきた左手を躱すが、その時に魔女の操る鎖がタイガの右足を拘束し、そのせいで一瞬動きの止まったタイガはバゴンが自分に向けて伸ばして来た右手への対応に大きく遅れてしまい、遂にはその手に掴まれ、捕まってしまう。

 

『グアアアア!!!? 離せぇ!!?』

「タイガ!!」

 

ギュウウウッと力を込められ、今にも握りつぶされたそうなタイガの姿を見て、いろはは叫び、慌ててニュージェネレーションブレスを取り出して装着し、彼女はニュージェネレーションブレスを起動させようとするのだが、そうはさせまいと魔女が幾つもの鎖をいろはの前に出現させると、鎖はいろはに向かって鞭を振るうような動きをしながら攻撃を繰り出して来たのだ。

 

「きゃああ!!?」

 

別の階段の上に飛び乗ることで、魔女の攻撃を躱したいろは。

 

しかし、魔女は執拗にいろはを狙うように何度も鎖を鞭のように振るって攻撃を仕掛けてくるが、それを駆けつけたやちよとももこが槍と大剣でどうにか弾き防いでくれた。

 

「やちよさん! ももこさん!」

「せめて、先に魔女だけでも!」

 

やちよはバゴンは倒せなくても、せめて魔女くらいは倒すことが出来ればともう1度狙いを魔女に定めるのだが・・・・・・それに気付いたバゴンはそれを阻止すべき口から白い炎をいろは、やちよ、ももこに向かって吐き出し、魔女の元へと行くのを妨害する。

 

「うわわ!!? アッツ!! アッツイ!!?」

「っ、なんなのこいつ等・・・・・・! どうして怪獣と魔女がお互いを守り合うように・・・・・・!!」

 

実を言うと、バゴンは兎も角、魔女は別にバゴンを守っているつもりはなかった。

 

だが、どうやらこの魔女・・・・・・バゴンが自分を守ろうとしていること自体には気付いている節があるようで、魔女はバゴンを利用しているだけに過ぎず、そのため結果的に魔女とバゴンはお互いを守り合うような図式が完成していたのだ。

 

とは言っても魔女が怪獣を、怪獣が魔女を守り合うこの構図は偶然とはいえタイガにとっても魔法少女達に取っても厄介極まりない状況だった。

 

そして、バゴンが再び魔女を守るようにいろは達の前に立ち塞がるとまるで彼女等に見せしめるかのように右手に力を込め、口元に醜悪な笑みを浮かべながら彼女達の前でタイガを握りつぶそうとする。

 

『グアアアアアア!!!!!?』

「タイガ!!」

『撃ち抜け! イチイバルの力!!』

 

いろはは今度こそニュージェネレーションブレスを起動させると、いろはの腰部に赤いアーマーのようなものが装着され、さらに両手にはガトリング砲のようなものを出現すると、彼女はは両手に構えた2丁4門による一斉掃射「BILLION MAIDEN」と左右の腰部アーマーを展開し、内蔵の多連装射出器から追尾式小型ミサイルを一斉に発射する「MEGA DETH PARTY」を同時に放ち、タイガを握りしめるバゴンの拳に集中砲火を浴びせる。

 

「グルアアアアアア!!!!?」

 

流石に一箇所に集中砲火を浴びればある程度のダメージは通るのか、バゴンは思わず手を離してしまい、タイガはその隙に急いでバゴンの手から脱出する。

 

『グウ、ウゥ・・・・・・。 ハァ、ハァ・・・・・・!』

 

バゴンに握りつぶされそうになったのが余程のダメージになったのか、空中に浮かんでこそいるものの、タイガは呼吸を荒くし、体力が著しく消耗していた。

 

『いろはのおかげでなんとか助かったけど・・・・・・。 見た目通りの化け物だな、コイツ・・・・・・!!』

 

タイガのインナースペース内で、忌々しげにバゴンを睨み付けるゼン。

 

『何か手は無いのかタイガ!? アイツのこと知ってるんだろ!?』

『俺とアイツじゃ、相性が悪すぎるってのもあるからな。 勿論、それを理由に引き下がるつもりはないけど・・・・・・』

『当たり前だ!! 俺は、もう二度と・・・・・・大切なものを失わない、今度こそ必ず守るってチビスケに誓った!! ここで引く訳がない!!』

 

もはや打つ手無しかと思い悩むゼンとタイガ。

 

しかし、タイガもゼンもまだ闘志が消えている訳ではない。

 

むしろ逆に、戦う意志をより強固に持ち、フラつきながらもタイガはファイティングポーズを構え、未だにバゴンへと立ち向かう姿勢を見せる。

 

すると、そんな時のことだ。

 

突如、そんな風に、闘志を燃やすタイガやゼンの意志に呼び寄せられるかのように、空から魔女の結界を突き破るようにして・・・・・・一筋の光が現れ、その光がタイガの胸部のカラータイマーの中へと吸い込まれるようにして入って来たのだ。

 

『なんだ? 今の光は・・・・・・』

 

ゼンが先ほどタイガのカラータイマーの中に入ってきた一筋の光に、疑問を抱いていると、突如として目の前に光が現れ、それがタイガキーホルダーに酷似した「タイタスキーホルダー」へと変化。

 

『久しぶりだな、タイガ』

『っ!? オイオイ! 『タイタス』!! これは夢じゃないんだよな!?』

『えっ、誰?』

『こいつは『ウルトラマンタイタス』、俺の仲間だ!』

 

いきなり現れた人物に、ゼンが首を傾げているとタイガが目の前にキーホルダーとなって現れたのがタイガの言っていた仲間の1人、タイタスであることを説明。

 

『あぁ、あの赤い髪の少女と、青い髪の少女、彼女等の強い絆を感じ取り、気になって来てみればまさかタイガがいるとはな! 再び共に戦う時が来たようだ!!』

 

予想していなかったかつての仲間との再会に、タイガは嬉しそうな声を上げ、『タイタス』と呼ばれた人物と、タイガは今ここにはいない「ウルトラマンフーマ」と建てた「トライスクワッド」誓いの言葉を思い返した。

 

『生まれた星は違っていても!』

『共に進む場所は1つ!!』

『我等!!』

『『『トライスクワッド!!!!』』』

 

3人はタイガスパークが装着された右手を突き出しながら、3人で作った誓いの言葉を建てた時のことをタイガやタイタスは思いだし、感傷に浸っていると、即座にゼンから「再会を喜んでる場合じゃないだろ」とツッコまれ、タイガやタイタスも「確かに」と頷いた。

 

『賢者、ウルトラマンタイタスの力を君に!!』

 

タイタスがそう言うと、タイタスキーホルダーはゼンの腰に装着され、彼が力を貸してくれることを理解すると、ゼンは素早く「分かった!!」と言いながらタイガスパークのレバーを降ろす。

 

『カモン!』

『力の賢者、タイタス!!』

 

そこから腰に下げられたタイタスキーホルダーをその手に掴むと、続けて右手に取ったキーホルダーを左手に持ち替えるとタイガスパークのクリスタル部分が黄色く輝く。

 

「バディィィィィ!! ゴー!!!!」

『ウルトラマンタイタス!!』

 

そしてゼンは右腕を掲げると彼は光に包まれ、タイガの姿が変わり、身体の色が黒く、ムキムキの筋肉マッスルボディの戦士・・・・・・「ウルトラマンタイタス」へとゼンは新たに変身。

 

『ムゥン・・・・・・! フン!!』

 

タイガからバトンタッチしたタイタスはラット・スプレッド、サイドチェスト、サイドトライセップスといったマッスルポーズを披露し、そのムキムキの筋肉を自慢するかのようなタイタスにいろは達はタイガがまた別のウルトラマンに姿を変えたことよりもそのことの方に困惑を隠せないでいた。

 

「なんか、またあの巨人が別の巨人に姿を変えたんだけど・・・・・・それ以上にめっちゃマッスルポーズが気になる」

「なんであの巨人いちいちポーズつけてんの? なんか意味あんのあれ?」

 

そんなタイタスに至極真っ当な疑問をぶつけるももこやレナであったが、一応タイタスのこれらのポージングはただの筋肉アピールをしているわけではなく、自身の身体能力を一時的に上昇させるという効果があるため、ちゃんとした理由があることにはある。

 

『ふむ。 まさかかつて我が故郷、U40を襲った暗黒怪獣 バゴンと相見えるとはな。 それと、その奥にいる奴が魔女という奴か』

 

タイタスは握り拳を作ったファイティングポーズを取りながら、バゴンと対峙し、早速バゴンが右拳を振るってタイタスに攻撃を仕掛けて来る。

 

『貴様等は、この街を汚した!! そして賢者の拳は、全てを砕く!!』

 

挿入歌「WISE MAN'S PUNCH」

 

全身の筋肉から生み出されるパワーを拳に込めて放つパンチ技「ワイズマンフィスト」を繰り出し、互いの拳が激しくぶつかり合うが、僅かにパワーではタイタスが上回っていた為、バゴンの右拳が弾かれる。

 

『シュア!!』

 

さらにそこからバゴンの顔を目がけて飛び立つと、何発もの拳をバゴンに連続で叩き込み、バゴンは身体のバランスを崩して倒れそうになる。

 

だが、バゴンはどうにか耐え抜き、タイタスに向かって手刀を繰り出すが、タイタスは両腕を交差してバゴンの手刀を受け止めるとそのまま押し返して弾き、バゴンの胸部に向かってさらに強烈な拳を叩き込む。

 

「グルアアアア!!!!?」

 

そこで魔女がバゴンを援護する為に幾つもの鎖がタイタスに伸びて来て両腕、両足を拘束されてしまうが、タイタスはそれを力尽くであっさりと粉砕して砕いてしまったのだ。

 

『鍛え抜かれた筋肉の前では、そのような拘束など無意味!! プラニウム!! バスター!!』

 

するとタイタスは光球を生成して同時にパンチを叩き込む「プラニウムバスター」をバゴンに向けて放ち、バゴンはその直撃を受けるのだが僅かに怯む程度でバゴンを倒し切ることは出来ず、バゴンは白い炎を口から吐き出し、タイタスは両腕を交差してどうにか炎による攻撃を耐える。

 

『グウウウ・・・・・・!!?』

 

だが、タイタスは攻撃を耐えながらも、視線をいろは達に向けると、彼は首をクイッとやり、自分がバゴンを引き受けている内に魔女を倒すようにジェスチャーを送る。

 

それを理解いろは達はタイタスに頷くと、いろは達は魔女に向かって駈け出して行く。

 

勿論、それに気付かないバゴンではなく、一度タイタスへの攻撃を中断するといろは達の攻撃を仕掛けようとするが・・・・・・。

 

『貴様は私だけ見ていろ!!』

 

タイタスの強烈なタックルが右足の膝に繰り出され、バランスを崩して倒れこむような姿勢になってしまうバゴン。

 

「ガアアアアア!!!!?」

 

その間に、ようやく今度こそ魔女の位置に辿り着いたももことやちよが大剣と槍で攻撃を繰り出すと、魔女は大きく吹き飛ばされ、ももこは魔女へのトドメをレナとかえでに指示。

 

「レナ! かえで!! 頼んだ!!」

「レナちゃん!」

「行くわよ!」

 

レナとかえでがお互いに頷き合うと、2人は手を繋ぎ合って「コネクト」を発動。

 

すると幾つもの鏡が魔女の左右を挟み込むように縦一列に出現すると、魔女はパチンコ玉のように鏡に弾かれて空高くの位置へと投げ出される。

 

そして今度は横一列に並んだ幾つもの鏡が出現すると、その1つにレナが飛び乗り、槍を魔女に向かってかざすとその複数の鏡から幾つもの槍が放たれ、レナとかえでの連帯攻撃の前に吹き飛ばされた魔女・・・・・・否、「絶交階段のウワサ」はバゴンに激突し、そのまま爆発。

 

「ガアア!!?」

 

それにより、偶然とは言え顎にある目の変わりとなっていた水色の結晶体が破壊されてしまい、バゴンは完全に視界を封じられてしまう。

 

「っ、今だ!!」

『怪獣と艦娘の究極のユナイト!』

 

さらにそこでいろはがニュージェネブレスを起動させると、両腕に「G」と書かれた青く、鋭く尖った爪のような武器「ゴモラクロー」が装着されると、いろはは階段を駆け上がってバゴンの頭上に乗ると、爪をバゴンの頭部に突き立てる。

 

「ゴモラ振動波!!」

「グルアアアアア!!!!?」

 

両腕のクローにエネルギーを集めて発射する「ゴモラ振動波」をいろはは繰り出し、バゴンは先ほどから集中的に顔を攻撃されていたこともあり、それなりのダメージを与えることに成功。

 

バゴンにダメージを与えたことに手応えを感じたいろはは即座にバゴンの頭から降りると、続けざまにタイタスの拳がバゴンの頬にクリーンヒット。

 

「グルアアア!!?」

『トドメだ!! エックスレットを、使いなさい!!』

 

又もやマッスルポーズをつけながらタイタスがそう指示を出すと、インナースペース内のゼンは「分かった!!」と頷き、彼はタイガスパークのレバーを引くと左手首に「ウルトラマンエックス」を模したブレスレット、「エックスレット」を出現させる。

 

出現したエックスをゼンがタイガスパークにかざすと、スパークから音声が鳴り響く。

 

『エックスレット! コネクト・オン!』

 

すると一瞬エックスの姿がタイタスに重なり合うと、タイタスはボディビルのポーズをしながら光球を生成し、腕をXの字に組んで緑の稲妻状のエネルギーを付加した光球をクロスチョップで打ち出す「エレクトロバスター」をバゴンの顔に向けて放つ。

 

『エレクトロ!! バスター!!!!』

 

直撃をまともに受けたバゴンはレナとかえでが吹き飛ばして爆発した魔女の炎に巻き込まれたこと、いろはの繰り出したゴモラ振動波を受けたこと、そしてタイタスの拳やエレクトロバスターを頭部に向かって集中的に受けたことから遂に耐えきることが出来ず、身体中から火花を散らして爆発するのだった。

 

「グルアアアアアアア!!!!!?」

 

バゴンを倒し終えると、そこから一筋の光が現れ、タイタスの胸部のカラータイマーへと吸い込まれ、それがゼンの手に渡ると1つの指輪へと変化する。

 

『また指輪?』

『ウルトラマンの力を秘めている。 不可思議だ』

 

それから、バゴンが倒され、少し遅れてから結界が消滅。

 

その際、小さなキュゥべえがいろはの肩に乗ってほんのちょっとだけ頬ずりをしていたが、結界が消滅すると同時に小さなキュゥべえもいなくなってしまったのだった。

 

「あっ・・・・・・」

 

結界が消滅したことで、元の空間へと戻り、いろは達は学校の屋上へと戻ってきたのだ。

 

屋上へと戻ってくると、レナはかえでと向き合い、気まずそうにしつつもかえでに何かを言おうとする。

 

「だから・・・・・・!」

「うん」

「レナも色々・・・・・・悪かったと思ってるわよ」

「うん」

「そこ頷くところなの!?」

 

かえでに謝罪しようとする意志を見せるレナではあるが、やはり素直な性格ではない為か自分でも中々上手く伝わらないなと思いながらも、精一杯に言葉を続ける。

 

「兎に角、もう謝ったし・・・・・・。 こ、これからは! レナのと、ともだ・・・・・・とも、ともとも・・・・・・! げ、下僕でいなさい!!」

『なんでだ』

 

顔を真っ赤にし、恥ずかしそうにしながら、それでも精一杯の自分の気持ちをかえでに伝えるレナだったが、そこは「友達でいなさい」で良いだろうに、わざわざ「下僕でいろ」と言い換えるレナにすかさずいろは達と黙って2人の様子を見守っていたタイタスがツッコミを入れた。

 

しかし、ゼンとしてはむしろレナはああいう感じで良いのだろうと思った。

 

素直じゃ無いけど、素直な気持ちをかえでに伝えた・・・・・・。

 

それはきっと、自分のまま自分らしく変わったことを現していたのかもしれない。

 

そしてそんなレナの想いはかえでにもしっかりと伝わったようで、涙目になっているレナの手をかえでが優しく握りしめると、彼女はレナに微笑みを向ける。

 

「っ!」

「こちらこそ、これからもよろしくね! 『友達』のレナちゃん!」

 

これで万事解決、結果オーライ・・・・・・全てが丸く収まったと、ここにいる全員が満場一致の考えでそう思ったその時・・・・・・。

 

「遊びの時間は終わらない」

 

学校から離れた位置で、青霧がそう呟くと彼は変身アイテムである「トレギアアイ」を取り出し、眉間にあたる部分の裏にあるボタンを押すと、トレギアアイはトレギアの仮面部分に似た形状へと変化。

 

それを顔にかざすと、黒と白の電撃のようなものを放ちながら紫のオーラが溢れ出し、青霧は身体に拘束具のようなものが装着された仮面の青き巨人、「ウルトラマントレギア」へと変身。

 

戦闘BGM「ウルトラマントレギア」

 

『フハハハハ!!』

『ムッ? 貴様は、トレギア!?』

『あの日の苦痛、覚えているかい?』

 

トレギアはそう言うと、学校の屋上にいろは達に向けて指先から小さな光弾を放ち、いろは達はそれに身構えるが・・・・・・それをタイタスが素早く腕を振るって弾き飛ばした。

 

『丁度今、暇になったところだ。 相手になってやろう』

 

拳を構え、トレギアと対峙するタイタス。

 

『あの仮面野郎ォ!!』

 

それと同時に、タイタスのインナースペース内でトレギアの姿を見るや否や、ゼンが憎悪に満ちた表情を浮かべ、明らかな怒りをトレギアに見せる。

 

『フン、なんだぁ? まだチビスケを私に殺されたことを怒っているのかい? みみっちい奴だな、君は?』

『黙れぇ!!』

 

トレギアはゼンをからかうかのように挑発すると、ゼンはさらにトレギアに対する怒りが込み上げるが、タイタスはそんなゼンに「落ち着け!!」と冷静になるように言い聞かせる。

 

『君の今の感情が、君と一体化している私にも流れ込んできた。 君のその感情、私にも・・・・・・経験がある』

『っ・・・・・・!』

 

冷静にならなくてはいけないというのは頭では分かっている、だが、それでもトレギアの姿を見ると、声を聞くと、チビスケが自分を庇って殺された時のことがフラッシュバックしてしまい、やはりどうしても怒りを抑えることが出来なかった。

 

『君の心は君だけのものだ。 あんな奴に心を惑わされる必要なんてない』

『おいおい、何時まで話し込んでるんだ。 それに『あんな奴』呼ばわりとは失礼だな。 早く打ってみな? 賢者の拳とやらを』

 

トレギアは手招きしながらタイタスを挑発するが、タイタスは敢えてその挑発に乗るように、トレギアに向かって全力の拳を叩き込む。

 

『ムゥ』

 

タイタスの拳を受け、少しだけ怯むトレギアだったがそれでも大したダメージは入っていないようで、トレギアはそのことに対して思わず笑ってしまう。

 

『オイオイ、賢者の拳は全てを砕くんじゃなかったのか?』

『その挑発、敢えて乗ろう! ゼン!!』

 

タイタスは一度トレギアから距離を取ると、ゼンに呼びかける。

 

『怒りの気持ちに支配されるな。 怒りの気持ちをコントロールできて、初めて人はもっと強くなれる。 怒りを逆に利用しろゼン!!』

『・・・・・・怒りを・・・・・・』

 

タイタスにそう言われ、ゼンは一度深呼吸すると気持ちを落ち着かせてトレギアを見つめ・・・・・・その気持ちを受け取ったタイタスはトレギアに再び突っ込んでいく。

 

タイタスの右拳はトレギアに直撃し、続けざまに放たれた左拳によるパンチがトレギアの鼻っ柱辺りに直撃。

 

『ぐふっ』

 

連続で顔を殴られたせいか、トレギアは少しだけ唸り声のようなものを上げ、すかさずタイタスは再び右拳による殴打をトレギアの胸部に繰り出す。

 

『グッ』

 

だが、それをどうにか耐えたトレギアはタイタスの両腕を掴みあげるのだが・・・・・・タイタスは膝蹴りをトレギアの腹部に喰らわせ、連続で頭突きを喰らわせることで引き離すことに成功。

 

『なんだ? 以前喰らった時やさっき喰らった時よりもパワーが上がっている・・・・・・?』

『デヤアアア!!』

 

さらにトレギアの顔目がけて拳を放つタイタスだったが、次の瞬間・・・・・・トレギアは煙のように消えてしまい、タイタスは慌てて辺りを見回すが・・・・・・。

 

『アハハハ・・・・・・!』

 

そこには既にトレギアの姿はなく、ただトレギアの不気味な笑い声だけが残るのだった。

 

『撤退したのか・・・・・・』

 

トレギアがいなくなったのを確認すると、タイタスは空高く跳び上がって去って行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだったんだ、今のは・・・・・・」

 

なんにしても、これで一応は万事解決ことは間違い無く、ももこはその場に座り込んだ。

 

「あっ、終わりました?」

 

そこへ学校の屋上の扉が設置してある上の方からひょっこりとゼンが顔を出すと、なぜかやちよから怪訝な視線を向けられ、それに思わず後退るゼン。

 

「あなた、今までどこに・・・・・・」

「えっ、いや、普通にいろはに言われて安全そうなところに隠れてましたけど・・・・・・」

「・・・・・・」

 

ゼンはやちよの質問に対し、安全なところに隠れてやり過ごしていたと説明するのだが、やちよはどうにもその説明で納得していないようで・・・・・・。

 

だが、今はそれよりも気になることがあるため、ゼンのことは追々として今はあの魔女についてのことの方が重要だった。

 

「あの魔女、グリーフシードを落とさなかったわ」

 

やちよはももこやいろはにあの魔女について気になったことを言うと、いろははそれを聞いてあんなに大きかった相手なのに、グリーフシードを落とさなかったのかと彼女は驚きを隠せないでいた。

 

基本、魔女を倒せば自分達の魔力を回復させる為の「グリーフシード」と呼ばれる物を落とす筈だった。

 

しかし、どう見てもあの鐘は魔女本体に当たる存在・・・・・・グリーフシードを落とさない、魔女の使い魔とも思えなかった。

 

「あれは、魔女じゃなかったのかもしれない」

「えっ・・・・・・?」

 

グリーフシードを落とさなかった理由・・・・・・やちよはそれをあれが魔女では無かったからなのかもしれないと予想し、だとすればあれは一体なんだったのかという話になるが・・・・・・。

 

その答えを知る者はこの場には誰1人としていなかった。

 

「ウワサの条件を満たすとどこにでも出現する魔女なんて聞いたことある? しかも、寸前まで魔力の気配すらないなんて・・・・・・」

 

それだけを言うと、やちよは学校の屋上の手すりの上に立ち、最後にいろはやももこ達に忠告だけを残す。

 

「気をつけなさい。 今の神浜は何かがおかしい」

 

それからやちよは一瞬だけレナやかえでの方に視線を向ける。

 

「あなた達、良いチームね」

「なんだよ、いまさら?」

「なんでもないわ」

 

やちよはそれだけを言い残すと学校の屋上から飛び降り、その場から去って行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ももこ達が探していたあの鎖の魔女(仮称)を倒したことで、絶交階段の事件は無事に解決した。

 

取りあえず、みんなも今日は疲れていることもあり、それで解散となった。

 

そして今、ゼンはいろはに呼ばれて彼女の自宅に訪れており、いろはは自分の部屋にゼンを招いていた。

 

「いろはの部屋に入るの久しぶりすぎて緊張する・・・・・・」

『あんまり女性の部屋をジロジロ見るものではないぞ』

「それは、そうなんだけど・・・・・・」

 

ゼンはいろはが用意してくれた座布団の上で正座しながら座っていると、少し遅れてお盆に飲み物を乗せてやってきたいろはが戻って来た。

 

「ごめんね、ゼンくん。 わざわざ来て貰って・・・・・・」

「い、いや、別に・・・・・・」

『ふむ。 俺達はどうやら邪魔みたいだし、タイガスパークの奥の方に引っ込んでおくか、タイタス』

『そうだな。 空気を呼んで、私達は退散しよう』

「えっ、ちょっ、1人にしないで・・・・・・っていうかタイガスパークの奥の方ってどゆこと!?」

 

ゼンが女の子の部屋に1人でいるの緊張して心細いから1人にしないでとタイガとタイタスに訴えるが、タイガとタイタスの2人はそれを聞き入れず、タイガスパークの奥の方にすっこんで姿が消えると、とうとうこの部屋にはゼンといろはの2人だけとなってしまい、ゼンはタイガ達が消えたことでさらに緊張を高める。

 

いろはは小さな机の上に、飲み物が乗ったお盆を置くと、彼女は床に腰を降ろし、どこか不安げな表情を浮かべながら、ジッとゼンの顔を見つめながらそっと彼の手を握りしめる。

 

「私は、ゼンくんが自分のこと嫌いでも、私はゼンくんのこと好きだよ」

「えっ、あっ・・・・・・?」

 

いきなりいろはに「好き」だと言われて、当然ながら困惑するゼン。

 

だが、いろはの言う「自分のこと嫌いでも」という部分は恐らく、鎖の魔女に囚われたレナに向けてかけた自分の言葉のことを言っているのだろう。

 

「ゼンくんが自分のこと嫌いって言った時、何か声をかけてあげたかった。 でも、何を言って良いのか分からなくて・・・・・・。 ただ黙って見てることしかできなかった」

 

いろはは顔を俯かせながら、言葉を紡いでいき、ゼンに自分の想いを必死に伝えようとする。

 

「それは多分、もしかしたら違うかもしれないけど、ゼンくんが自分を嫌う理由の1つに、私が関係してるんだろうなって思ったからかもしれない。 だから『自分を嫌いにならないで』なんて気安く言えなかった。 それでも、私は何かをゼンくんに伝えたくて・・・・・・。 ずっと昔から、ゼンくんを好きでいる人がここにいるんだよってことを伝えたくて・・・・・・」

「いろは・・・・・・」

 

するといろはは握っていたゼンの手をさらに強く握りしめると、彼女は顔を上げ、真剣な眼差しでゼンを見つめる。

 

「もう1度言うね? 私は、ゼンくんが・・・・・・好きです」

「俺も、優しくて、思いやりがあって、何時もの俺のことを気にかけてくれる・・・・・・。 そんないろはが、好きだよ」

 

ゼンはそう言いながら、いろはの手を握り返すと、彼女は目尻に涙を浮かべつつも嬉しそうに笑う。

 

そんな彼女の頬を、ゼンが右手で添えると、いろはも左手でゼンの右手にそっと触れ、彼女はキュッと目を瞑ると自分の唇に柔らかい、だけどもどこか力強い感触が伝わって来るのが分かった。

 

「っ、ゼンくん・・・・・・」

「・・・・・・っ」

 

お互いに顔を真っ赤にし、気まずいが、どこか心地の良い沈黙がしばらく流れる。

 

「あっ、そうだ」

 

しかし、不意にいろはが唐突に何かを思い出したようで、彼女はミレナ座から去るときのゼンの答えを聞いていないことを思い出したのだ。

 

「ぐっ、覚えてたか・・・・・・」

「あれの続き、聞かせて欲しいなぁ? ダメ?」

 

上目遣いで、小首を傾げながらそんな可愛らしい仕草をするいろはのお願いを聞いて、ゼンは断れる筈もなく・・・・・・。

 

「今言うとめっちゃバカップルっぽく聞こえるんだけど、良い?」

「うん。 それでも聞きたい」

 

ゼンは少しばかり渋ったが、覚悟を決めてあの時言いかけた時の答えをいろはに教えることに。

 

「俺はみたまさんに鼻の下なんて伸ばして無いよ。 そりゃちょっとは驚きはしたけど、本当にそれだけ。 それに、俺が鼻の下伸ばすの、いろはだけ・・・・・・だし・・・・・・」

「えっ」

 

物凄く恥ずかしそうに、ゼンがいろはの知りたがっていた答えを言うと、それを知ったいろはは「クス」と笑ってしまい、遂にはお腹を抱えるほど笑い出したのだ。

 

「ぷっ、あは、あははは! ごめ・・・・・・! でも、確かに今言うとバカップルっぽいかも。 ふふっ、それにゼンくん本当に私のこと好きすぎだよね?」

「恥ずかしすぎて死にそう・・・・・・!」

 

なんていうやり取りがあったが、その後はお互いに寄り添うに2人並んで座るようにしながら他愛ない話をするだけ、1日が終わった。

 

そして・・・・・・いろはのスマホにレナからメールが届き、「アンタの妹、病院で探してあげる」というメールが届いたのは、その翌日の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタの妹、環 ういって患者を覚えてる人はいなかった」

 

その翌日、再び里見メディカルセンターにやってきたゼン、ももこ、かえで、いろは、レナ。

 

いろははういについてのことをレナが看護師に変身して調べて貰ったのだが、やはり結局と言うべきか・・・・・・ういの情報は得られはしなかった。

 

「でも、他の2人・・・・・・灯花とねむのことを覚えてる人はいた」

 

しかし、ういの情報こそ何も得られなかったものの、その代わりにういの友達だという灯花とねむの情報を掴むことには成功しており、レナが言うには確かに昔、この病院にその2人は入院していたというのだ。

 

「えっ!?」

「『あぁ、あのとっても頭の良い娘達ね』って、合ってる?」

 

灯花とねむの特徴をレナがいろはに尋ねると、いろはは「合ってます!!」と即座に答えて頷く。

 

「2人は、もう退院してるんだって」

 

レナが言うには名字や入院していた時期なども聞いてみてくれたそうなのだが、流石にそこまで覚えている人はいなかったようで・・・・・・灯花とねむについても、得られる情報はそこまでが限界だった。

 

「ありがとう、ございます・・・・・・」

 

それでも、ほんの少しでも、ういに繋がるかもしれない手がかりや、灯花やねむは確かに実在し、この病院に入院していたことが分かっただけでも、いろはに取って十分過ぎるほどのものだった。

 

いろははレナの両手を握りしめると彼女に感謝の意を示し、お礼を述べながらレナに笑いかける。

 

「ねむちゃんと灯花ちゃんが本当にいたって分かっただけでも、凄い進展です!!」

「っ・・・・・・」

 

そんないろはの対応に、レナは照れ臭そうな表情をそっぽを向き、そんなレナに、かえでは思わず微笑んでしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「取りあえず、一歩前進か」

「うん。 灯花ちゃんと、ねむちゃんは確かにあの病院にいた」

 

帰りの電車で、いろはとゼンはようやくういについての手がかりを見つけることに成功し、そのことに2人で喜び合っていたのだが・・・・・・それでもまだまだういについての情報は足りない。

 

「ういは、神浜市のどこかにいるのかな・・・・・・?」

「可能性は、高いだろうな」

 

すると、いろはは何気なく窓の外を見つめ・・・・・・。

 

(お姉ちゃん、もっと頑張るから。 絶対にあなたを見つけ出してみせるから・・・・・・!)

 

そう力強く、いろはは必ずういを見つけ出すことを誓うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神浜市の、ほんの少しだけ離れた場所で。

 

「『巴 マミ』、君が来てくれて助かるよ」

 

そこでは金髪で、髪をロールにした少女・・・・・・「巴 マミ」が隣に座るキュゥべえと共に神浜の街を高い場所から見下ろしており、キュゥべえは神浜市の中を調べて欲しいと、マミに依頼していたのだった。

 

「あなたが神浜市に入れないってホントなの?」

「入れないというか、神浜市の中では意識を保つことができないんだ」

 

キュゥべえはマミにそう説明を行いながら、数歩進むとそこが神浜のエリア内に入った為か、キュゥべえの目から光が消えてしまい、その場に倒れ込んでしまった。

 

マミはそんなキュゥべえを拾いあげ、元の位置にまで戻るとキュゥべえは再び意識を取り戻す。

 

「言ったとおりだろう?」

「でっ? 私にその原因を調べろって?」

「これは優秀な魔法少女にしかお願いできないんだ。 神浜市の魔女は、他の地域の魔女よりも強いからね。 それに、厄介なベテラン魔法少女も多い」

「もう、調子良いんだから」

 

マミはどこか呆れたような声を出すが、一応キュゥべえからの依頼を断るつもりはないようなのだが・・・・・・それでも現地の魔法少女とトラブルになるのは避けたいとキュゥべえに相談してみるものの、キュゥべえ曰く、「そうも言ってはいられない」状況だそうでむしろトラブルになる可能性の方が高いのだという。

 

「君も聞いただろう? 誰かが神浜市に魔女を集めて、グリーフシードの独占を企んでいるというウワサを?」

「確かに、見滝原の魔女も減ってるし、もしそれが事実なら放っておけない。 良いわ、今の神浜の異変が、魔女のせいなのか、それとも魔法少女によるものなのか、調べてきてあげる!」

 

マミはキュゥべえの方に顔を向けながら、キュゥべえの頼みを快く受け入れる。

 

「それからもう1つ、神浜市に現れたという光の巨人、ウルトラマンについては君も知っているだろう?」

「えぇ。 勿論・・・・・・ニュースにも、なっていたわね」

「ウルトラマンは地球人と敵対するようなことは先ずないとは思うけど、一応警戒しておいて欲しい。 最も、それ以上に気をつけないといけないのはあの青い仮面の巨人の方だけど。 あいつは下手をすれば、魔女以上に危険な存在だ」

「分かっているわ。 見るからにヤバそうな雰囲気醸し出してたしね」

 

キュゥべえの警告を受けて、マミは気を引き締めると彼女は今度こそ神浜の街へと足を踏み出し、街の中へと突入するのだった。

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