『おのれ!! あのウルトラマンにネリル星人のガキと魔法少女共がぁ~!!』
神浜のとある路地裏にて。
そこではゼンと魔法少女達の活躍により、オークションを阻止された「電波怪人 レキューム人」が壁を蹴りながら苛立った様子で頭を抱えており、彼はその場で自身のオークションを台無しにしたゼンやいろはを始めとした魔法少女達に対する怒りを募らせているところだった。
『絶対に許さん!! 俺のオークションを台無しにしてくれた礼はたっぷり返してやる!! 少々値は張るが、奴等への復讐を果たせるのならば・・・・・・!!』
そう言いながら、レキューム人が懐から1つの端末を取り出すと、彼はそれを操作し、ヴィラン・ギルドのマーキンド星人に連絡を入れる。
『はいはい! なんでございましょうか?』
『マーキンド星人!! 今すぐ購入用の怪獣を用意して貰いたい!!』
*
神浜市、今日もいろはとゼン、それからゼンの装着したタイガスパークに宿るタイガと新たにタイタスを加えた一同はういを探す為にこの街に訪れており、今、いろははゼン達を引き連れて「美味い、安い!」「神浜最強の中華料理店」「万々歳」と書かれたチラシを持ってとある中華料理店へと訪れていた。
『目的地ってここだよな?』
『確かにあの店にもこのチラシにも『万々歳』と書いてあるな』
いろはの両肩に乗りながらミニサイズのタイガとタイタスも彼女の持つチラシを覗き込みつつ、目の前にある飲食店を見比べて、確かに目的の場所であることを2人も確認。
そしてゼンはいろはの肩に乗るそんなタイガとタイタスの2人をはたき落とした。
「俺も人見知りなところあるから気持ちは分かるけどさ、1日中そこでつ立ってる訳にはいかないだろ? みたまさんの話じゃ、そんなに悪い娘じゃないみたいだし、取りあえず店に入ってみよう?」
店の中に入ることを少しばかり躊躇しているいろはを見て、ゼンは何時までもここに立っている訳にはいかないと声をかけると、いろはは「そう、だね」とコクリと頷き、戸惑いながらも店の扉を開けると・・・・・・。
そこには黄色いリボンで髪を結んだサイドテールの茶髪の少女、「由比 鶴乃」が父親と思われる男性が両手に持った大きな生肉を「そらそらそらそらぁ!!!!」と叫びながら薄暗い店の中で殴る光景がゼン達の目に飛び込んで来たのだ。
「良いぞ鶴乃!! 熟成してきやがった!!」
「ちゃらー!!」
そこからさらに、鶴乃は最後に勢いよく拳を突き出すと、父親は思わず後退り、そのまま倒れこんでしまうのだった。
(えっ!? 何何何!? いや怖い怖い怖い!!)
そんな若干カオスな光景を目撃して、恐怖を感じたゼンは自分と同じく表情を引き攣らせたいろはに視線を向けて店の扉を開けた彼女に「早く扉閉めて!!」とアイコンタクトを送ると、ゼンの視線の意味を見事に察したいろはは鶴乃とその父親にバレないように静かに閉めようとするのだが・・・・・・。
「あっ、お客さん!!」
ところが、バレないように逃げるのは一歩遅かったようで、鶴乃がいろはとゼンの存在に気付くと、彼女は嬉しそう笑顔をこちらに向けながら駆け出し、彼女は閉めようとした扉に足を挟み込んで塞ぎ、いろはとゼン、タイガですら鶴乃のこの行動には思わず恐怖を感じ、3人揃って「ひい!!?」と小さな悲鳴をあげるのだ。
『笑顔で走ってきて閉めようとした扉足で挟んでくんのなんか怖いんだけど!!』
『ふむ、あのパワーとスピード、彼女、中々鍛えているようだな!』
『気にするところそこなのか!?』
驚きの声をあげるタイガとは逆に、謎の感心をするタイタス。
そんなタイタスにタイガは思わずそこが気になるのかとツッコまずにはいられなかったのだった。
「中華料理店、万々歳へようこそ!!」
「えっ、えーっと、その・・・・・・ち、チラ・・・・・・」
そしてそんな鶴野に対し、いろはは自分はどう話しかければ良いのか、こういう時どう対応すれば良いのか、どうすれば良いのかまるで分からず、彼女はしどろもどろになり、オドオドとした様子を見せることしかできず、いろはは戸惑いを隠せないでいないでいた。
(いや、かわいいなオイ)
そんないろはの姿を見て、表情こそ表に出さないもものの、つい思わず「かわいい」と思ってしまい、あたふたするいろはに釘付けになってしまうゼン。
『おい何しにきた』
「あっ、いや、別にいろはに見惚れてた訳では・・・・・・いや実際見惚れてましたけど・・・・・・!」
タイガのその一声で我に返ったゼンはそもそもここには食事をする以外に目的があって来た訳で、そのことを思い出したゼンはいろはの代わりに自分が鶴乃に話しかけようとするのだが、それよりも先に鶴乃がいろはが持っているチラシの存在に気付き、チラシを見て来てくれたのだと思った彼女はとても嬉しそうな表情を浮かべる。
「あっ!! そのチラシ・・・・・・!!」
*
数時間前、神浜ミレナ座にて。
建物の中央の部屋にでういの情報集めと絶交階段のウワサを倒した後、これまで消えていた生徒達がどうなったのかを確認する為、今日もその場所へと集まっていたいろは、ゼン、レナ、かえで、ももこ、みたまの6人。
今現在、一同はテーブルの上に置かれたお菓子を摘まみながら、その後絶交階段の被害者達はあの後どうなったのかをももこ達はいろはとゼンの2人に説明しているところだった。
「それじゃ、消えた生徒さん達も全員戻ってきたんですね?」
「うん、名前が書いてあった子はみんな! 怪我もなくね?」
ももこ達が調べた結果、絶交階段に名前を書かれ、行方不明となっていた者達は1人残らず五体満足で精神などにも特に異常もない状態で無事に帰ってきたらしく、それを聞いて「良かったぁ」と胸を撫で下ろすいろはとゼンの2人。
(ってか、あの人チーズケーキにケチャップかけてんだけど・・・・・・オェ)
因みにその際、ゼンといろはの視界にチーズケーキの上にケチャップをかけ、その上にさらに梅干しを置くみたまの姿が見え、思わずドン引きしてしまい、ゼンは思わず気分が悪くなり口元を押さえてしまった。
さらに、隣に座るいろはを見れば、彼女もまた顔を引き攣らせて引いているのが目に見えた。
「魔女に掴まってたのに、全員無事なんて有り得るの?」
そこで、レナが口を開き、本題を出すと「そうだ、今日はその話を聞きに来たんだ」とどうにか我に返ることが出来たいろはとゼンの2人。
そして、レナの言うように確かに囚われていた人々が無事だったのは良いことだが、魔女に掴まっていたにも関わらず、全員が無事だったなんてことが有り得るのだろうかと疑問に思わずにはいられないレナ。
「餌になる人間を備蓄してた・・・・・・とかじゃないのか?」
「サラッと怖いこと言うな、ゼンくん・・・・・・」
そんなレナの疑問にゼンは人間を何人も集めて後で纏めて食べたりするつもりだったのではないかと予測し、そのような憶測を立てるゼンに少しばかりももこは恐怖を感じてしまい、思わず顔を引き攣らせてしまった。
「まぁ、もう1つの可能性としては・・・・・・やちよさんが言っていた通り、あれは魔女じゃないのかもなぁ」
両腕を組みながら、やちよが言ってたように魔力の気配もなく、グリーフシードも落とさなかったことからやはりあの怪物はやちよの言っていた通り魔女でもなければ怪獣ですら無かったんじゃないだろうかと考え、呟くももこ。
「じゃあなんなのよ?」
「ウワサの裏に潜んでいた何か・・・・・・」
魔女でもなければ怪獣でもない、ならばアレはなんだったんだと疑問をももこにぶつけるレナであったが、ももこから返ってきた返答はふんわりとしたよく分からない解答であり、レナは「はあ!? 何それ!?」と思わず叫んでしまうのだった。
「つまり、全く新しい敵ってことですか?」
「そう、なるかなぁ? 全く面倒な・・・・・・」
ただでさえ神浜の魔女は強い上に、最近ではヴィラン・ギルドなんてものが出てきたのに、今度は魔女やヴィラン・ギルドとも関係のない全く新しい敵が出現したことにももこは頭を抱え、彼女は思わず溜め息を吐く。
「でもまぁ、確かに最近多い気がするわ。 変な『ウワサ』」
「どんなウワサがあるんですか?」
そこでみたまが最近、神浜では妙なウワサをよく耳にすると言うと、彼女の言うそのウワサは一体どんなウワサがあるのかと、もしかしたらういを探す手がかりにもなるかもしれないと考え、興味本位でいろはが尋ねると、ももこ達は1人ずつ自分達が聞いたことのあるウワサをいろはとゼンに教えていく。
「私が聞いたことがあるのは4時44分44秒に自分の未来の姿がテレビに映るっていうやつ」
「ハァ!? そん・・・・・・んぐっ」
先ずは最初にかえでが自分が聞いたことのあるウワサをいろはとゼンに説明すると、それをかえでの隣で話を聞いていたレナはまさかそれをかえでは自分で試していたりしないだろうなとでも言いたげな形相で彼女を睨むのだが、かえではそんなレナの口にお菓子をあーんさせて食べさせながら、そんなことはしていないと首を横に振るのだった。
「試してないよ? そんな遅くまで起きてられないし」
「他には、マンホールの下に地下帝国が広がってるとかな・・・・・・」
「どんな願いも3つだけ叶えてくれる『三つ目のトーテムポール』とかも、私は聞いたことがあるわね~」
かえでに続くように、今度はももこやみたまもそれぞれ自分達が聞いたことのある、知っているウワサ話を話していき、他にも毎日数ピースずつ家にパズルのパーツが送られ、全ピースをはめた人をパズルの世界へと引きずりこむ「パズルの女」のウワサや、人の寿命がつきる瞬間に、「原風景」を見せて安らかな死を与えるという「送り火」のウワサなどをももこ達はいろはとゼンに話すのだった。
「下らない!」
そんなももこ達の話すウワサ話に対し、レナはどれもこれもつまらないものだと一蹴するのだが、正直、ゼンもいろはも「下らない」の一言で片付けるにはどうにも引っかかる部分があった。
何せ、絶交階段のウワサ自体は本当にあった出来事なのだ。
ならば今ももこ達の話した内容のウワサも、絶交階段と同じように実在し、絶交階段と同じように、魔女とはまた別の得体の知れない化け物が潜んでいる可能性は十分に有り得ることである。
「行方不明になった人もいるんじゃ・・・・・・?」
「それも今のところは絶交階段のウワサぐらいじゃないのかな?」
だから、いろははもしかしたらういはウワサ絡みの事件に巻き込まれてしまい、絶交階段のように囚われているのではないかと不安げな表情を浮かべるのだが、ももこが言うには人が行方不明になっているウワサと言えば今のところは絶交階段ぐらいのものだとのことだった。
一応、先ほどももこ達が例にあげたウワサの中にも人が消えてしまうという話はあったものの、絶交階段と比べるとどうにも信憑性が薄いものが多く、今のところそれらの調査に乗り出している魔法少女はやはり少ないのだという。
「ういちゃんも、ウワサ絡みの事件に巻き込まれたんじゃ無いかって考えてる?」
「・・・・・・はい、キュゥべえも魔女の仕業じゃないって言ってたし、もしかしたらそのウワサの中に、ういに関係するものが・・・・・・!」
そんな顔を俯かせるいろはに対し、ももこは心配げな様子で彼女の考えていそうなことを言い当てると、いろははそれに頷き、ももこは両腕を組んでどうにかういを探す為の情報を得られないか、何かいろはの助けになれそうなことはないかと「うーん」と必死に唸るように考えるのであった。
「ウワサかぁ。 私達よりか詳しそうな奴が、いるにはいるんだけど・・・・・・」
「もしかしてあの、やちよさんって人ですか?」
一応、ももことしては神浜市のウワサ話について情報を色々と持ってそうな人物に心当たるはあるものの、ゼンがその心辺りのある人物ってもしかして初めて神浜を訪れた際に出会い、その後も何かと対面することの多いあのやちよという女性だろうかと尋ねると、ももこは「ま、まぁ・・・・・・」と歯切れの悪い反応を見せ、苦笑いする。
「まぁ、紹介し辛い気持ちは、なんとなく分かりますけど・・・・・・」
確かに、あの近寄りがたい態度や雰囲気を考えると、ももこがやちよをいろはやゼンに紹介し辛い理由は何となく分かるし、彼女がまともに自分達のことを相手にしてくれるかどうかも不安だった。
「ねえ、妹のことって警察に言っても仕方がないのよね?」
「私の妄想って、思われるだけかと・・・・・・」
そこで、レナはやはり警察に言ってみるのはやはりダメなのだろうかといろはに尋ねるのだが、そもそも原因は不明ではあるが、ういは存在自体が抹消されてしまっているのだ。
両親ですら、ういの存在を忘れてしまっているのだから尚のこと警察には相談することは難しいだろう。
下手をすれば精神病院にでも連れて行かれかねない。
「迷子の猫を探す時みたく、張り紙したりとか?」
「他はやっぱ聞き込みかなぁー?」
ならば限られたういを探す為の手段として、かえでは張り紙、ももこは聞き込みといった提案をしていき、他にもういの映っている写真などは1枚もないのだろうかとレナはいろはに尋ねるのだが、彼女は首を横に振り、一応持って来ていた写真を取り出してみんなに見せるのだが、そこにはやはりいろはが1人だけ、もしくはゼンの2人だけが映った写真しかなく、ういらしき人物が写っている写真は1枚も存在しなかったのだ。
「せめてそれがあれば、証拠になったんですけど・・・・・・」
しかし、いろはが持って来た写真には全て明らかに不自然なスペースがあり、それはまるでそこに誰かがいたかのように空いているものだったのだ。
ゼンもまたその写真を手に取って改めて見ると、これはもう意図的にそこだけ切り取られたもののようにしか見えない気がしてならなかった。
だが、写真が不自然、というだけではやはりなんの証拠にもならないだろう。
『確かに不自然っちゃ不自然なんだけど、ゼンと一緒に映ってる写真は単にいろはとイチャコラしてるだけの写真にも見えるな。 これに関しては本当に妹がその場にいたのか?』
いろはの持って来た写真を見ながら、タイガがふっと思った疑問を口にすると、ももこ達がいる前でタイガ達とは会話はできないため、いろはは小さくコクリとタイガに対して頷く。
尚、後にいろはに聞いた話によると毎回ではないもののゼンがいろはと2人っきりで出かけるのが緊張するからとの理由で彼はわざわざういに頼み込んでよく一緒について来て貰っていたらしい。
『この奥手のヘタレ野郎』
『そう言ってやるなタイガ・・・・・・と言いたいところだが、流石に意中の相手の妹に『一緒について来てくれ』と言うのはな・・・・・・』
「うるせえよ!! どうせ俺は奥手のヘタレ野郎ですよ!」
そしてこの話を聞いた時のタイガとタイタスの反応はこんな感じだったとのこと。
ただいろはが言うにはういはういとしてタイミングを見計らってはゼンといろはを2人きりになれるようにしたりして距離を縮めるのに貢献していたらしい。
「それなら似顔絵かなぁ?」
そこで、かえでが他にういを探す手段として写真もないのであればあとは似顔絵などを書いたりして壁に張ったりするのはどうだろうかと提案してきたのだが、かえでの画力はそこまで高い訳ではないようで「アンタの絵じゃ判別できないでしょ」とレナから苦言が漏れるのだった。
「えっ? レナちゃんに言われるなんてビックリだよ・・・・・・」
「どーいう意味よ!?」
とは言っても、画力についてはレナも人のことを言えないレベルだそうで、かえでにそのことを指摘されるとレナはふて腐れたような表情を浮かべるのであった。
「だけど似顔絵かぁ。 今はそれしかまともな手段は無さそうだけど、俺も画力はそこまで自信が・・・・・・。 やっぱいろはの妹ってぐらいだから、いろはに似て可愛らしい外見なのは間違いないんだろうけど」
「っ・・・・・・」
ゼンに「いろはに似て可愛らしい外見」と言われた為か、彼の隣に座るいろはは思わず顔を赤面させてしまい、彼女は照れくさそうに顔を俯かせてしまう。
「あ、あの、ゼンくん、みんながいる前でそういうこと言われるのは・・・・・・その、ちょっと、恥ずかしい・・・・・・から」
「えっ? あっ、あぁ! わ、悪い・・・・・・」
そんないろはの言葉にゼンは自分が無意識に呟いていた言葉が割とちょっと恥ずかしい感じの言葉であったことに気づき、彼は慌てていろはに謝罪した。
そして、そんな2人のやり取りをレナはジットリとした視線を2人に対して向けると、それにハッとなったいろはは慌てて「あ、あの!」と言いながら誤魔化すようにその場から立ち上がる。
「その、大丈夫です! 元々、ゼンくんと2人でやるつもりでしたから!」
「いや、手伝うよ? 乗りかかった船だし」
いろははこれ以上、ももこ達に迷惑はかけられないと思ったからか、彼女はここから先はゼンと一緒に2人で(正確にはタイガ達もいるので4人だが)ういを探しを続行すると言い出したのだが、ももことしてはそんなことを気にする必要はないし、これからも手伝うと助太刀を申し出てくれたのだ。
「いえ、聞き込み先に宛てもないし、もしかしたら、凄く気の長い話になるかもしれないので・・・・・・」
しかし、いろはは上記の理由から有り難いことではあるのだが、これ以上ももこ達に手伝って貰うのも気が引けてしまうということで彼女はももこの申し出を断ってしまったのだ。
「でもなぁ」
だが、ももことしてはやはりそれでも何かいろはの助けになれないだろうかと思い悩むのだが、そんな時、あのゲテモノチーズケーキを完食したみたまが口を開くと、彼女はある1枚のチラシをいろはへと渡したのだ。
「ねえ、いろはちゃん? 神浜市を回るつもりだったら、はいこれ」
そう言われてみたまに渡されたのが、物語冒頭でいろはが持っていた物と同じ「万々歳」のチラシであり、みたま曰く「お腹が空いたら寄ってみるのも良いんじゃ無いかしら?」とのこと。
*
そして物語冒頭に戻り、丁度お腹も空いて来ていたこともあり、みたまに渡されたチラシを頼りにいろはとゼンの2人は万々歳へと訪れていたのだ。
「なぁーんだ! あなたも魔法少女だったんだね! チラシを見て来てくれたなんてすっごく嬉しいよ!」
それから、いろはとゼンから一通りの事情を聞いた鶴野は2人に店の料理を振る舞いながら、彼女は自分を親指で指差しつつ、自己紹介。
「私は中華料理店、万々歳の最強魔法少女! 由比 鶴乃だよ! よろしくね!!」
「環 いろはです」
「み、みつ、光和 ゼン・・・・・・で、す・・・・・・」
お互いに自己紹介を終え、いろはが自分達の席のテーブルの上に置かれ、出された料理を見下ろすと、いろははラーメンを単品、ゼンは店の中で1番安い料理を1つだけ頼んだ筈なのだが・・・・・・。
自分達の目の前に出された料理は自分達が頼んだ物以外にもチャーハンや野菜炒めといった明らかにオーダーしていない料理がズラっと並べられており、特にゼンに至っては割と質素な感じの物を頼んだ筈だったのだが、ゼンに出された料理もいろはと同じぐらいの量と種類の料理が揃えられていたのだ。
「魔法少女サービスだよ!!」
(ホントだ! よく見ると壁に堂々と『魔法少女サービスはじめました』って張り紙してるぅー!!?)
鶴乃曰く、自分と同じ魔法少女のお客さんにはサービスしているらしく、壁にかけられた張り紙にもしっかりと「魔法少女サービスはじめました」とガッツリと書かれており、魔法少女の存在は普通は世間的に秘密であることもあり、ゼンは「そんなの張って大丈夫!?」と思わずにはいられなかった。
「って、えっ? 魔法少女サービスって、俺は魔法少女じゃないんですけど・・・・・・何よりも男だし」
だが、そこでゼンが他にも疑問に思ったのが、これが魔法少女に対してのサービスだと言うのではあれば、なぜ魔法少女ではない自分にまでこんなに多くの料理を振る舞ってくれるのか分からず、もしかして後で自分にだけ多額の料金を請求するつもりなのではと口元に手を当ててプルプルと震えていると鶴野はそんなゼンの考えていることを察してか手をブンブン振って「いや違う違う」とゼンの考えていることを否定した。
「そんなぼったくりバーみたいなことウチはしないよ!! えっと、ゼンくんだったよね? 君はいろはちゃんの彼氏さんなんでしょ? 珍しいよね、魔法少女の事情を知っている魔法少女の彼氏さんなんて!!」
「か、かれ、彼氏・・・・・・」
「あっ、うぅ・・・・・・」
黒江の時はまだ付き合う前だったので否定していたが、絶交階段の事件が終わった後、いろはとゼンは正式に付き合うことになった為、今回は黒江の時とは違い、否定はしないゼンといろはであったが・・・・・・。
しかし、その事実を改めて他人から言われると、いろはは顔を真っ赤にして俯き、ゼンもまた顔を赤くしてしまう。
「だからまぁ、魔法少女のいろはちゃんの彼氏さんなら、彼氏さんにもサービスすべきだろうと思ってね!!」
「割とその辺の認定ガバガバすぎてこっちがなんか不安になってくる」
正直、自分の家は割と貧乏で、今日も電車代浮かせる為にネリル星人の粒子化能力を利用して空飛んで神浜まで来たぐらいなので、こういう腹いっぱいに食わせてくれるサービスをしてくれるのは嬉しいことには嬉しいのだが、「魔法少女の彼氏さんだから」という理由だけで自分にまでサービスしてくれるのは若干それは店的に大丈夫なんだろうかと心配になってしまうゼンであった。
「っていうか、大盛り・・・・・・」
「ううん、普通盛りだよ?」
(普通盛りとは?)
しかも、自分達の目の前に出された料理はどれも大盛りと言えるレベルのボリュームであり、さらに鶴野が言うにはこれでも自分の店ではこれが普通盛りなのだという。
「さあ、遠慮せず食べて食べて!!」
鶴野に勧められ、若干戸惑いはあるもののいろはもゼンも箸を持って万々歳の料理を食べ始めると、鶴野は期待に満ちた眼差しを向けながら「どう? どうかな!?」と味の感想を求めてきたのだ。
「美味し、いです・・・・・・」
いろはが戸惑いつつも味の感想を言うと、隣にいるゼンもコクコクと同意するように頷き、それに対して鶴野はならば点数をつけるとすれば何点ぐらいだろうかと2人に聞いてきたのだ。
「何点ぐらい!?」
「へっ!? 美味しい・・・・・・ですよ?」
「えっと、その・・・・・・」
「何点!? 何点!!?」
身を乗り出すようにして鶴野は店の料理の味を点数をつけるとしたら何点かといろはとゼンの2人に尋ね、いろはとゼンは互いに顔を見合わせて「どうしよう」と困り果てた表情を浮かべていた。
「その素直な気持ちを点数に、さあ!!」
「いや、でも、点数・・・・・・とかは・・・・・・」
「うんうん!! この料理の点数は・・・・・・!!?」
流石に点数を言ったりするのはちょっと・・・・・・という感じのゼン達であったが、流石に点数を言わないと何時まで経っても聞いて来そうなので、止むなくいろはが代表するようにして鶴野へと点数を告げることに。
「点数をつけるとしたら・・・・・・25点だ!!」
いや、なんでもない、今のは忘れてください。
「えっ、今の何・・・・・・?」
「それでいろはちゃん!! 点数は!?」
「え、えっと・・・・・・さ、さん・・・・・・50、点・・・・・・?」
(今30点って言いかけたな)
「たった50点!!?」
「ガーン!!」という効果音が聞こえてきそうなぐらいのショックを受けた様子を見せる鶴野。
「ち、違います!! 普通って意味です! 普通に美味しいっていう・・・・・・ほらあの、50点って半分もあるし、半分も・・・・・・!!」
「落ち着けいろは! それなんのフォローにもなってない!!」
そんなショックを受けた様子の彼女に対し、いろはは慌ててフォローを入れようとするのだが、ゼンの指摘する通りいろはのフォローは先ほどから全くと言って良い程なんのフォローにもなっておらず、オロオロと助けを求めるように彼女はゼンの方を見つめるのだが、正直言ってゼンもどうして良いのか分からず、困り果ててしまうのであった。
ちなみにゼンも点数を付けるとしたら大体50点ぐらいとのことだった。
*
「「ご馳走様でした」」
その後、取りあえずは万々歳の出された料理を全て1つも残さず完食したゼン達。
(いろはの奴、下手したら折れそうなぐらいほっそい身体してるのによくあの量の料理を完食できたな・・・・・・)
自分のお腹を摩りながら、自分はもうお腹いっぱいでちょっと苦しいぐらいだというのに、隣の席に座るいろはは自分とほぼ同じ量の料理を全て完食したというのに彼女はケロッとした涼しい顔をしており、ゼンはあの細い身体のどこにあれだけの料理が収まったんだと思わずにはいられなかった。
「あの、すいません。 サービスして貰ったのに失礼な感想を・・・・・・」
すると、いろはは折角サービスしてご馳走してくれたのに微妙な評価を下してしまったことを申し訳なさそうな表情で謝罪するのだが、鶴野は首を横に振りながら「気にしないで」と笑って見せたのだ。
「万々歳は味が濃くてどの料理も同じ味付け。 大体丁度50点ぐらいの料理が出て来るバランス感覚に優れたお店だってこの辺りじゃ有名なんだ!」
(あっ、やっぱり50点なんだ・・・・・・)
(あっ、やっぱり50点なんだって思ってそうな顔してるないろは。 まぁ、確かに点数をつけるとしたらこんな評価して申し訳ないけど俺も50点ぐらいだな・・・・・・)
それから、ゼンといろはは鶴野と少しばかり話し合うこととなり、ゼンといろはの2人はういのことについて何か手がかりになるようなことはないかと鶴野に尋ねるのだが、残念ながら薄々予想はしていたが、やはりういに繋がるような情報は何もなく、鶴野はいろは達の力になれないことを申し訳無さそうにしつつ彼女は2人に謝罪するのだった。
「ごめんね、折角来てくれたのに妹さんの手がかりなくて・・・・・・。 心配だよね? 早く見つかると良いね」
「いや、ういちゃんの存在を信じてくれて、そう言って貰えるだけでも助かります」
「うん、ゼンくんの言う通りです。 ありがとうございます、由比さん!」
正直、ういに関して普通なら信じて貰えないのが当たり前の反応だ。
しかし、鶴野は疑うこともせず、純粋に自分達の話を信じ、ういが見つかるようにと応援してくれたのだ。
しかも料理まで格安で大量に振る舞ってくれた。
ういの情報は得られなかったが、自分達の力には十分になってくれたと言えるのだから、自分達の力には十分になってくれたと言えるだろう。
「『由比さん』じゃない! ここは『鶴野ちゃん』だよ?」
「へっ、鶴野・・・・・・ちゃん?」
「はい! 鶴野ちゃんです! 由比さんより、鶴野ちゃんが良いな! ゼンくんも出来ればそう呼んでね!」
右手を挙げながら鶴野は自分のことは『鶴野ちゃん』と呼んでくれといろはとゼンにそう言うと、いろはは笑みを浮かべながら「はい!」と頷き、ゼンも戸惑いつつも「わ、分かった」と頷くのだった。
「あっ、いろはちゃん達がさっき言ってたなんとか階段みたいな変なウワサのことも調べたいんだよね? それなら、紹介したい人が・・・・・・。 ダメ元で、聞いてみるね・・・・・・?」
「ダメ元・・・・・・?」
すると、鶴野は神浜のウワサ話について詳しそうな人物に1人心辺りがあるそうで彼女はスマホを取り出すと、その人物に連絡を入れようとするのだが、彼女は少しばかりなぜか戸惑う素振りを見せつつも、一度深呼吸した後に意を決したようなその人物へと電話をかけると、すぐにその人物との通話が繋がり、鶴野はその人物に対しどことなくぎこちない様子で挨拶を交わした。
「あ、あの、久しぶり・・・・・・です。 ちょっと、頼みたいことが・・・・・・。 ウワサを調べたいって子達がいるんだけど・・・・・・」
鶴野が通話相手に対して自分の用件を言うと、次の瞬間、鶴野は「えぇー!!?」とどこか嬉しそうに驚きと歓喜が入り混じったかのような声を突如としてあげたのだ。
「えっ!!? 本当に!? ホントのホントのホントに良いの!? いろはちゃん、ゼンくん!! 今から会おうって!!」
どうやら、鶴野が通話した相手はウワサについて調べているならばいろはやゼンからも詳しい事情を聞いてみたいとのことで鶴野がその人物とこれから会う約束を取り付けるとゼンといろはは顔を見合わせつつ、「は、はぁ・・・・・・」と頷き、取りあえず鶴野に連れられる形で3人で待ち合わせ場所に指定された「水名神社」と呼ばれる場所へと赴くことになるのだった。
『これあのやちよって人がいるパターンじゃね?』
『あの青くて長い髪をした女性のことか。 確かももこというお嬢さんも、そのやちよという人物がウワサに詳しい・・・・・・みたいなことを言っていたからな。 可能性は高いかもしれんな』
「だとしたら俺達とちゃんと話とかしてくれるかな・・・・・・」
タイガとタイタスは鶴野が電話している相手って「やちよじゃないのか?」と予想を立てると、ゼンも確かにタイガ達の言う通り鶴野の通話相手がやちよという可能性は高そうだと考え、もし仮に相手がやちよだった場合、自分達のことをまともに相手してくれるだろうかという不安がゼンの中には少なからずあった。
しかし、自分自身なんとしてでもうい達のことをちゃんと思い出したいし、いろはの為にも、ういの為にも、相手が誰であろうとういに繋がる何かしらの手がかりを持ってるならばどれだけ拒絶されようが意地でも話を聞いてやろうとゼンは強く決意し、覚悟を決めるのであった。
*
それから、鶴野、いろは、ゼンの3人が待ち合わせ場所の水名神社へと辿り着くと、神社の入り口前には案の定、タイガ達の予想していた通りの人物・・・・・・やちよが待っており、鶴野はやちよの姿を見るや否や人懐っこい顔を浮かべながら彼女の元へと駆け寄るのだった。
「あっ! やちよ師匠ー!!」
(師匠・・・・・・? ってやっぱ予想通りやちよさんじゃん!!)
だが、やはりと言うべきかやちよがゼンといろはの姿を見ると未だに街にいる2人に対しどこか呆れたような態度を見せると彼女は即座に帰ろうとしてしまう。
「っ、あなた達だったの? もしかして、また妹さんの話? 悪いけど・・・・・・」
そんな時、帰ろうとするやちよの腕を鶴野が強く掴むと、彼女はウルウルとした瞳で今にも泣きそうな表情を浮かべながら、必死にやちよを引き止めたのだ。
「かっ、帰らないでぇ!!」
「そ、そうでりゅ、そうです!! まだ帰らんでください!! あなたからはどうしてもウワサについての話が聞きたいんです!!」
さらに、そこで鶴野に続くようにゼンがやちよの前で両手を広げ、未だにやちよに対しては若干苦手意識を持っているからか少しばかり台詞を噛んでしまうものの、それでもゼンは彼女を逃がさないように通せんぼするとやちよはそんな2人を見て溜め息を吐き、ここで無理に帰ると逆に面倒なことになりそうだと感じ取ったのか、渋々「分かったわよ・・・・・・」と頷き、神社の隣に設置してある喫茶店で話をすることになるのだった。
『やちよと初めて会った時の威勢はどこ行ったんだよゼン』
「いや、だってあの時はこっちには非が無かったからついムカッ~と来て。 それを抜きにしたらこんなもんだよ、俺」
初対面時と比べると、どうにもやたらやちよに対して腰が低い感じのゼンに対し、彼女と初めて会った時のあの態度をどこに行ったんだとタイガが尋ねると、ゼンは小声でそう応えるのだった。
*
「なぁんだ。 やちよ師匠といろはちゃんにゼンくん、3人とも知り合いだったんだね」
「お店でお話した絶交階段のウワサを追っていた時に手伝って貰って・・・・・・」
神社のすぐ隣に建てられていた喫茶店の外の席で詳しい事情をいろは達が絶交階段の時にやちよと本格的に知り合った時の経緯を鶴野に話すと「そうだったんだ~」と彼女は呟く。
「何か新情報があるかと思ってきたけど、期待外れだったみたいね。 あなた、その子達から絶交階段のことは聞いたの?」
「うん! ももこ達もいたんでしょう? 私も一緒に行きたかった~」
やちよが視線を鶴野に向けながらそう尋ねると、彼女は首を縦に振って頷き、ももこ達もいたのならば自分も一緒に手伝いたかったと鶴野は残念がる様子を見せるのだった。
そこで、やちよはまたもやどこか呆れたような表情を見せながら溜め息を一度吐くと、彼女は口を開き、そろそろ本題に入ろうということで神浜の「ウワサ」のことについて語り出し、彼女は自分が調べた限りのウワサについての今現在の自分の見解をゼン達へと述べていくことに。
「絶交階段と同じように、他のウワサにも何かが潜んでいる可能性はあるわ」
「ウワサの陰に潜む悪・・・・・・うんうん! 燃えてきたね! それでそれで!?」
両腕を組みながら、コクコク頷きながらやちよにさらにウワサについての詳しい話を鶴野が求めると、やちよは大量の付箋が張られた「神浜ウワサファイル」と書かれた一冊のノートを取り出すと、彼女は最近自分が調べているというウワサについてのことが書かれているページを開いてそれをゼン達に見せる。
「私が今調べているのは『口寄せ神社』、最近急に広がり始めたウワサみたいね」
「・・・・・・口寄せ神社?」
*
失った過去を取り戻したい?
あなたが落とした思い出を、あなたが捨てたあの人を?
心の底から取り戻したいなら、私達の神様にお任せを!
会いたい名前を絵馬に書き、お作法通りにお参りすれば想いの人に会わせてくれる。
だけどもだけどもご用心!
幸せ過ぎて帰りたくなくなっちゃうって水名の地域じゃもっぱらのウワサ!
ご滞ざ~い!
*
「会いたい人に、会えるウワサ?」
「調べたら、実際に会えたっていう書き込みもあったわ」
「本当ですか!?」
以上が、やちよが今現在調べているという「口寄せ神社のウワサ」についての内容であり、さらに彼女が言うにはその口寄せ神社で絵馬に書いた名前の通りの人と実際に会えたという書き込みがネットにあったそうで、それを聞いた瞬間いろはは驚きと期待の入り交じった声をあげ、それは本当なのかと思わず席から立ち上がりながらその話に食いついた。
「本当だとしたら、凄いね」
「じゃあ、その神社を利用すれば、ういちゃんと会える可能性が・・・・・・!!」
鶴野ももしそれが本当なのだとすればこれは凄いことだと感心し、ゼンもその口寄せ神社の力を利用すれば自分達が探している「環 うい」を見つけ出すことが可能になるのではないかと淡い期待を寄せるのだが・・・・・・。
『だけど、そんな上手い話があるか・・・・・・?』
「でも、そう書き込んでいた投稿がそれ以降無いの」
しかし、絶交階段の時のことなどを考えるとタダで会いたい人に会えるなんて少しばかり都合が良いのではないかとタイガが疑問を抱いていると、案の定、やちよが言うには「会いたい人に会えた」とネットに書き込んでいた人々はそれ以降の投稿が全くされていないらしく、タイガの予想通りそう上手い話ではないようだった。
「それって・・・・・・」
「もしかして、口寄せ神社から帰れなくなった?」
「・・・・・・だとしたら、似てますよね? 絶交階段のウワサと・・・・・・」
いろは、鶴野、ゼンの3人がそれぞれやちよの話を聞いて得た感想をそれぞれ口に出すと、そこでやちよはゼンの言葉に対して同意するように首を縦に振り、絶交階段も口寄せ神社もどちらも誰かがそのウワサを利用した結果、多くの人々が行方不明になっているという共通点が存在しており、もしかするとこれら2つのウワサは何かしらの繋がりがあるのではないかとやちよは言うのだ。
「被害届けとか出てないのかな?」
「出てるかもしれないけど、口寄せ神社と結びつけて考えてる人がいるかどうか」
それだけ行方不明者が出ているならば、警察などに被害届けが出されているのではないかと鶴野が疑問を浮かべるが、やちよは仮に出されていたとしても口寄せ神社と行方不明者を関連づけているかどうか怪しいとのことだった。
「そっか、まだみんな気がついてない・・・・・・」
「怪しい・・・・・・! すっごく怪しいよ!! 師匠! いろはちゃん! ゼンくん!! ハッ、ま、まさか・・・・・・!!」
何やら急にテンションの高い様子で鶴野が席から立ち上がると、彼女は水名神社の階段前へと移動し両手を広げると、その口寄せ神社の正体がこの水名神社だったのかと突然叫んだのだ。
「その口寄せ神社の正体がここ!! 水名神社だったんだねー!!」
「・・・・・・」
しかし、やちよからの反応は何も無く、鶴野はそんなやちよの反応に「アレ?」と首を傾げる。
「それで済めば簡単なんだけどね」
「違うんですか!?」
「さっきウワサの内容で『水名の地域』って出てたから、俺もてっきりここだと思ったんですけど・・・・・・」
先ほどやちよが話してくれたウワサの内容の中には「水名の地域」というワードがあった為、てっきりゼンも水名の名前が冠したこの神社が口寄せ神社なのではないかと思ったのだが、どうやらやちよが言うには恐らく口寄せ神社はここではないとのことだった。
「あまり期待はしていなかったけど、もう試したわ」
何よりも、とっくの昔にやちよ自身が既にこの神社で口寄せ神社のウワサを試していたようで、それで結局何の手がかりも無かったというのだ。
「それに、大体こんな参拝客が多い神社で会いたい人の名前を書いて行方不明になってたら今頃もっと大騒ぎになってるでしょうしね・・・・・・」
「それもそっか」
なので、やちよの予想としては口寄せ神社があるのはこの辺りである可能性は高いものの、それがあるのは恐らくもっとみんなから忘れ去られた場所なのではないかというのが彼女の考えだった。
「口寄せ神社は、多分もっとみんなから忘れ去られた場所・・・・・・。 それらしいところを片っ端から回ってみるしか無さそうね・・・・・・」
そんな訳で、ゼン達は喫茶店から口寄せ神社のウワサを見つめる為に、別の場所の神社へと向かうこととなり、一同は先ずは人の少ない小さな神社を目指すことにするのだった。
*
取りあえず、一同は「稲荷大明神」という小さな神社へと辿り着くと、いろはとゼンはやちよから渡された絵馬に「ういに会わせてください」と2人でそれぞれ書き込むと2人は絵馬を奉納し、最後にお参りを済ませ、何か起きないかと少しばかり待ってみるのだが・・・・・・。
「やっぱ何も起きないか・・・・・・」
「うん・・・・・・」
大方予想通りではあるものの、やはりというべきか特に何かが起こるようなこともなく、結局は無駄骨だったかと肩を落としていると・・・・・・不意に「いろはちゃーん!! ゼンくーん!! 見てみて!」と2人の名を呼ぶ鶴野の声が聞こえ、いろはとゼンの2人は声のした方へと顔を向けるとそこには数枚の赤い紙を持った鶴野の姿が目に入った。
「『悲恋の男女の足跡を巡ってスタンプを集めれば水名区切っての縁結びのパワースポットが見つかるよ! 主催、水名区町興し委員会』・・・・・・これって、口寄せ神社の手がかりになるんじゃない!?」
鶴野は手に持った赤い紙をそれぞれ人数分、いろは、ゼン、やちよの3人に渡しながらその紙に書かれてある文字を読み上げると、彼女はもしかしたらこれが口寄せ神社の手がかりになるのではにかと予想する。
「これはちょっと、ウワサというか普通の町興しなのでは・・・・・・?」
しかし、いろはとしては確かに「縁結び」という部分が「会いたい人に会わせてくれる」という口寄せ神社のウワサの部分と似ているような気がしないでもないが、それでもそれら2つに関連性あまりあるようには思えず、いろはは若干戸惑い気味にその紙を鶴野から受け取るのだった。
「・・・・・・良いんじゃ無い? 水名区もくまなく探せるし」
「ノリ気なんですか!?」
だが、そこでやちよがこの町興しとやらに挑戦してみても良いのではないだろうかという意見が出ると、いろははまさかやちよがそんなことを言い出すとは思っておらず、彼女は意外そうな表情を浮かべた。
「闇雲に探し回るよりはそうね この縁結びのパワースポットを探して見るのも良いかもしれないわ」
「確かに、当てずっぽで探してたら何時までかかるか分かんないし、こういう町興しイベントには積極的に挑戦した方がターゲットは絞りやすいかもしれませんもんね」
やちよの意見にゼンも同意すると、いろはもまた「成程」と頷き、ならば善は急げということで鶴野の「よーし、ならしゅっぱーつ!!」という言葉を合図に、一同は再び一同を開始し、水名区のスタンプを集めていくことになるのだった。
*
「悲恋の男女の足跡ってなんのことでしょうか?」
「水名区に伝わる古い伝説よ。 ウワサファイルにも引用されてるわ」
水名区を周りながら、いろはが先ほど鶴野から聞いた話でふっと疑問に思ったことを口にすると、やちよが言うには水名区に伝わる古い伝説とのことで、遥か昔、大名がこの辺りを納めていた時代。
町人の男が水名城に住むお姫様に身分違いの恋をしていた。
2人は強い絆で結ばれていたが、それに嫉妬した許嫁によって男は殺されてしまったのだそうだ。
そしてお姫様はそのことに悲しみ、毎日毎日泣き暮らし、毎晩毎晩神社へ通い、「どうかあの人に会わせてください」と神様へとお祈りをし続けた。
すると、1500日同じ祈りを繰り返した後、その願いは通じ、姫は死んだ筈の男と再会を果たすことが出来たのだと言う。
「素敵な話ですね」
「本当にそう思う?」
「えっ?」
やちよから水名区の伝説の話を一通り聞いたいろははその伝説を素敵なお話だと評したのだが、逆にやちよはどこか怪訝そうな表情を浮かべており、彼女はいろはに対し、本当に素敵な話だろうかと問いかけたのだ。
「死んだ人が、そう簡単に生き返る筈ないでしょ」
「男の人は幽霊だったってことでしょうか?」
町人の男が生き返った訳ではないのだとしたら、いろははその姫と再会した男はもしかして幽霊だったのだろうかと憶測を立てたが、例えそうだとしてもどちらにしても良い話だと彼女はやちよに応えたのだが・・・・・・どうやら話はそこで終わりではないようで、話にはまだ少し続きがあったのだ。
「失った日々は、二度と戻らないものよ。 それに、この伝説には隠された本当の結末があるの」
「本当の・・・・・・?」
なんでも、例のお姫様は愛しい人ともう1度会う為に、たったそれだけの願いの為だけに、城下町に暮らす人々の命を・・・・・・神様へと捧げてしまったのだという。
「奇跡は何時だって代償を必要とするわ」
「えっ、怖っ。 悲しい恋の物語ながらも最後はハッピーエンドかと思ったらとんだホラー染みた話じゃないですか。 しかも幽霊より生きてる人間の方が怖いパターンのやつ」
そこで今まで黙って話を聞いていたゼンがそこで今まで黙って話を聞いていたゼンが思わずといった様子で感想を述べるとそれにやちよは「確かにそうかもね」とゼンの言葉に同意するように頷く。
「実際、怖いものだと思うわよ。 生きてる人間っていうのは・・・・・・色んな意味でね」
「えっ? それってどういう・・・・・・「あのね、やちよ!」」
妙に何か引っかかるような言い方をするやちよにゼンがそれはどういう意味だろうかと彼女に尋ねようとするのだが、それよりも先に、鶴野がやちよの名を呼んだことで言葉が遮られてしまい、ゼンは「まあ、後で聞けば良いか」と考え、今は黙ることにするのだった。
「なんだか、昔に戻れたみたいで楽しいね!」
「・・・・・・」
鶴野はその言葉の通り、どこか楽しげな様子でやちよへと語りかけるのだが、それに対してやちよは特に表情1つ変えず、そっぽを向くとそれを見た鶴野は一瞬だけ、悲しげな表情を浮かべるのだが、すぐさま明るく振る舞うようにして前へと駆け出すと、「早く早く~!!」とゼン達に急ぐように呼びかけたのだ。
「早くしないと天守閣登れなくなるよ~!?」
そのまま鶴野はゼン達よりも足早に歩き出し、ゼン達はそんな彼女の後ろをついていくようにして歩いて行く。
「まともに付き合おうとしない方が良いわ。 昔からああなのよ」
「鶴野ちゃんとは、昔から仲が良かったんですか?」
不意に、やちよが自分の隣を歩くいろはに対し、「ああいう娘の高いテンションに合せてたら少し疲れるでしょ?」とでも言いたげな様子で、そう語りかけるといろはは別にそんなことはないと苦笑しながら首を横に振り、彼女はやちよに鶴野とは昔からの友人同士だったのだろうかと尋ねると、やちよは少しばかり歯がゆそうな表情を一瞬見せた後、「別に」とだけ応える。
「仲が良かったこともあったけど、昔の話よ」
「・・・・・・昔の話でも、羨ましいです」
確かに、今日一日を振り返ってみると鶴野は積極的にやちよと関わろうとしているものの、やちよの方はどこか鶴野とは少しだけ距離を置いているようにも見えた。
それでも、昔からゼンやうい以外にまともな友人が出来たことの無かったいろはは例え鶴野と仲が良かったのが昔の話であろうとそれは自分からすれば羨ましいことだと評したのだ。
「私、ういやゼンくんの他には仲の良い友達もいなかったから、ういの為に生きるのが私の全てだったんです。 ういがいないと、私、空っぽだなって・・・・・・」
「・・・・・・過去に囚われているのね」
そんないろははの話を聞いていたやちよは、いろはは過去に囚われ、縛られているのだろうとそう呟いた。
「過去じゃないです」
しかし、いろははそんなやちよの言葉を、温厚な彼女にしては珍しく、僅かながらに不満げな口調で即座に否定したのだ。
なぜなら、いろはは別に過去を見ている訳ではなく、「ういを探しだし、見つけ出す」という未来を見ているから。
ういは過去の人間じゃない、まだ生きていて必ずどこかにいる筈なのだ。
だからいろはは静かながらも強い口調でやちよの言葉を否定したのだ。
「ういは今も私を探しているかもしれないから、早く見つけてあげたいんです」
「それなら先ず、神浜市の魔女と渡り合える実力を付けなさい。 自分の中身を過去で埋めても、強くはなれないわ。 あなたは妹さんの為に強くなりなさい」
それは、やちよなりのいろはへのアドバイスだったのだろう。
妹のういを探し出す為にも、まずは自分自身を強くするべきだと告げたのだ。
「・・・・・・はいっ」
そして、その言葉を受けて、いろははコクリと頷くのだった。
*
それから、スタンプを全て集め終えたゼン達は最後に訪れることとなる縁結びのパワースポットへと辿り着くことが出来たのだが・・・・・・。
「おぉ~! ここが口寄せ神社・・・・・・って水名神社!?」
鶴野はてっきり、最後に訪れるこの場所こそが「口寄せ神社」では無いかと考えていたのだが、辿り着いたのは集合場所にも指定していた水名神社であり、振り出しに戻ってきてしまっていたのだ。
「なんでなんで!? 縁結びのパワースポットは!?」
「水名神社だったって、ことでしょうか?」
「道は間違えてないよな?」
元の場所に戻ってきてしまった事に困惑する鶴野であったが、いろはの言うようにつまり、要するにその縁結びのパワースポットの正体が水名神社だったということであり、ゼンもどこかで道を間違えてしまった可能性を考え、町興しの紙に書かれた地図を見て改めて確認してみたが、やはり場所はここで間違いはなかった。
「ハッ! そっか! このスタンプを集めたからもう1度お参りすればもしかして・・・・・・!」
「確かにそれなら人数も今よりも絞れるし、それが正解なんだとしたら文字通り一週回って鶴野ちゃんがここだって言っていたの正解じゃん」
そこで鶴野はスタンプを集めることが口寄せ神社へと向かうことが出来る条件なのではないかと考え、ゼンも「成程」と納得し、淡い期待を寄せるのだが・・・・・・。
「いえ、それだけではまだ対象となる人の数が多すぎるわ」
しかし、やちよはゼンの言うように今よりも対象となる人々の数が少なくなるのは確かなのだが、だとしてもそれだけでは対象となる人の数が未だ多く、口寄せ神社へ行く為の条件としてはまだあまりにも不十分なのではないかと彼女は語ったのだ。
「縁結びのパワースポットなんだから絵馬には会いたい人の名前を書くでしょうしね」
「思ってたんなら早く言ってよ~」
唇を尖らせながら、やちよにそう思っていたのなら早めに言ってくれと不満げに言う鶴野。
「辿ってきた場所のどこかに、ヒントが・・・・・・?」
「もう!! 口寄せ神社どこにあるのさー!!」
やちよは地図を見ながら、もしかしたらゴールが答えではなく、これまで訪れた場所に何かしらのヒントがあるのではないかと考え込み、鶴野は一向に見つからない口寄せ神社に対し、どこにあるんだとうんざりした様子で嘆くのであった。
いろはも僅かながらに期待していたのか、結局口寄せ神社を見つけることが出来なかったことに彼女は少しばかり落ち込んだ様子で小さな溜め息を吐くのだった。
「・・・・・・いろは」
そんな残念そうにするいろはの姿を見て、ゼンはそっと彼女の肩に手を置き、微笑みかけると「きっと大丈夫」と優しく声をかけたのだ。
「口寄せ神社のウワサが本当なのだとしたら、さっきも言ったけど、それを利用してういちゃんを探し出すことが出来るかもしれない。 ちょっと危険な賭けな気もするけど、だから先ずは徹底的に口寄せ神社について調べよう。 少なくとも、今日ういちゃんに会える手段があるかもしれないっていう収穫はあったんだ」
「ゼンくん・・・・・・。 うん、ありがとう」
ゼンの励ましの言葉を受け、いろははどこか嬉しそうに笑みを浮かべると、彼女はゼンの言うようにほんの少しだとしても、ういを見つけられる可能性は出てきたことに希望を持つことにしようと考え、たった僅かな情報だとしても、今は前向きに考えるべきだろうと思い、彼女は僅かながらも元気を取り戻すのであった。
とは言え、これ以上の収穫は期待できそうにない為、取りあえずは一同はその場を立ち去ることとなるのだった。
*
その後、水名神社を去り、しばらく歩いていると、やちよがふっと視界に入ったとあるスーパーの前へと立ち止まると、彼女の目に偶然店の扉に張られている「本日ポイント10倍」や「お総菜がなんと半額」と書かれたチラシが映るとその瞬間は「ハッ・・・・・・!」とやちよは声をあげながら目を見開き、彼女はワナワナと肩を震わせ始めたのだ。
「そう、そうだったわ・・・・・・! こんなに大切なこと、私今まで・・・・・・!」
「んっ? やちよ?」
一体急にどうしたのだろうかと首を傾げながら、鶴野がやちよに声をかけるのだが、やちよからの返事はなく、彼女は少しばかり考え込むような仕草を見せた後、やちよはゼン達の方へと勢いよく振り返る。
「鶴野! 環さん!! 光和くん!! ちょっと、手伝ってくれる・・・・・・!?」
「「「は、はい・・・・・・!」」」
「それで、何を・・・・・・?」
急に名前を呼ばれ、いきなり手伝ってくれと言われたことに驚くゼン達だったが、深刻そうな彼女の顔を見るとどうやらただ事ではない様子であり、まだ何を手伝えば良いのかは分からないが、今日自分達に付き合ってくれたこともあり、特に断る理由もない為、ゼン達は快くやちよの頼みを引き受けることに。
そして一同はスーパーへと入店すると、そこからやちよの指示に従い、鶴野は缶詰を購入する為に一旦は別行動となり、いろはとゼンはやちよに連れられる形で彼女の買い物に付き合う形となるのだった。
*
それからやちよに引き連れられたゼンといろはは彼女が指定した商品を見つけて、それぞれ2人で手分けして持つこととなり、商品を手に取ると3人は次の商品を購入する為、また別の場所へと移動することに。
「持ったわね? その商品は1人2個までなの。 鶴野が缶詰を確保してくれている内に・・・・・・」
「あ、あのぉ・・・・・・手伝うってこのこと・・・・・・?」
やちよのような人がかなり深刻そうな顔をしていたものだから、いろはは一体何事だろうかと思っていたのだが、まさか普通に買い物をするだけとは思わなかったので、彼女はこのことに少しばかり戸惑いを感じずにはいられないようであった。
「パスタは日持ちするのよ? それに今日は10倍デー。 さらにその上この時間はタイムセール中・・・・・・! こんな大切なことを忘れていたなんて・・・・・・」
「ポイント10倍・・・・・・?」
「・・・・・・ピンッと来てない? そういうところはまだまだお子ちゃまね」
そのようにやちよの説明を受けたいろはであったが、あまりその話を聞いてもいまいちピンッと来ていないようで未だに彼女は困惑顔であったものの、少しだけやちよの意外な一面が知れたからか、「お子ちゃま」だと言われてもあまり悪い気のしなかったいろはは思わず小さな笑みを浮かべ、「はい!」とやちよに返事を返すのだった。
ただ、逆にゼンの方はというと「えっ? なんで『分かんない』って顔してるの?」とでも言いたげな表情でいろはへと視線を送っており、彼女とは正反対にやちよの言っている意味を理解している様子だった。
「いや、ポイント10倍とか、タイムセールとか結構暮らしていく上で重要で必要なことだろ!」
「あら、光和くんは事の重大さが分かってるのね。 少し意外だったわ」
「俺の家、まぁ、そこそこ貧乏なもんで・・・・・・。 昔からよく母ちゃんにお遣い頼まれたり、一緒に買い物手伝ったりとかしてたんで、タイムセールやらなんやらの重要性はそれなりに分かってるつもりですよ、俺は」
やちよに意外だと告げられ、ゼンは苦笑いを浮かべながらそう語ると、やちよは「成程ね」と頷いて納得すると今度はゼンの方が「俺も意外でした」とやちよに語りかけたのだ。
「やちよさんも、結構そういうの気にする人だったんですね」
「まぁ、私の場合は貧乏という訳ではないのだけれど、1人暮しだから。 なるべく節約はしないといけないのよ。 あっ、光和くんちょっとその商品取ってくれるかしら?」
「ハイハイ」
買い物を通し、お互いに妙な共感を覚えたゼンとやちよは最初に出会った時と比べ、少しばかり距離の縮まったようで2人は僅かながらに砕けた口調で会話を交わすと、ゼンはやちよに指示された通り、彼女が手に取った商品を手渡すのであった。
「なんでちょっとだけやちよさんとゼンくんは通じ合ってるの・・・・・・? むぅ」
だが、そんな風にお互いに多少なりとも共感し合うゼンとやちよを見て、いろはは唇を尖らせ、ゼンと仲良さそうに会話するやちよに嫉妬したのか、商品を持っている為に両手が塞がっていることもあり、彼女はゼンの背中に自分の頭をコツンッと軽くぶつけると、頭をグリグリと動かし、ゼンの背中を攻撃し始めたのだ。
「ちょっ、なに!? なんだこの可愛い攻撃・・・・・・? 何してんのいろは?」
「イチャついてないで早く次の場所に行くわよ」
「アッハイ」
そうして、やちよはゼンといろはの2人にイチャつくなと注意しつつ引き連れて次の場所へと向かうこととなったのだが・・・・・・。
その時・・・・・・不意にやちよが突然その場で立ち止まったのだ。
「どうかしたんですか!?」
「・・・・・・魔女結界・・・・・・」
『ゼン! いろは! 気をつけろ! 何かが来る・・・・・・!』
やちよが魔女の気配を感じ取り、それと同時にタイガやタイタスもまた魔女の気配を感じ取ってゼンといろはに気をつけるように忠告すると、警戒を促された2人は「どこ!?」と言いながら魔女はどこにいるのかと周囲を見回す。
「こんなスーパーで魔女なんて現れるのかよ!? 人目が多いぞ明らかに!」
まさかスーパーの中で魔女と遭遇するとは思っておらず、悪態をつくゼンであったが、そんなことは魔女の知ったことではない。
そのため、次の瞬間には周囲の景色が変貌し、ファンシーな見た目をした魔女結界内部にゼン達が囚われるとやちよといろははそれぞれのソウルジェムを手に持って魔法少女へと変身。
それと同時に、地中から巨大なウサギのぬいぐるみのような外見をした魔女、「立ち耳の魔女」が出現したのだ。
「あれ? なんか可愛いな今回の魔女 あといろはが持ってるぬいぐるみにも似てる」
「可愛いからって見た目に騙されないで! 良いからあなたは隠れてなさい!」
「あっ、りょ、了解!」
魔女の姿を見て思わず感想を漏らすゼンであったが、やちよにさっさと隠れろと言われた為にゼンは言われた通りそそくさと物陰へと隠れ、そこからこっそりといろは達の戦いの様子を見守ることに。
そしていろはは先行するようにして前に駆け出すと、彼女は左腕に装着されたクロスボウを構えながら魔女へと突っ込んでいく。
「環さん! 私の後ろへ!」
「大丈夫です!! 私だって!!」
しかし、未だに未熟な面が目立ついろはに対し、やちよは先ずは自分の後ろにいるようにと忠告するのだが、いろははそれを聞かず、自分にも出来るというところを見せる為に、彼女は魔女の頭上へと跳び上がる。
そのままいろははクロスボウから矢を魔女に向けて発射するのだが、魔女は身体をくるりと回転させることで攻撃を回避。
だが、いろはは上手く魔女の背後に回り込みようにして地面に着地すると、さらに魔女に向けて矢を発射。
このまま行けば間違いなく直撃コース。
「やった・・・・・・!」
いろはもそれを確信し、「攻撃が当たる」と思い、笑みを浮かべたが・・・・・・魔女は身体を素早く後ろに倒すことでいろはの放った矢を躱し、地面を掘って隠れてしまう。
「あのウサギ、図体がデカい割にすばしっこい野郎だな・・・・・・!」
戦いの様子を見守っていたゼンは、いろはの攻撃をことごとく躱す魔女に対して悪態をつき、自分達も出るべきかとタイガスパークを構えるのだが・・・・・・。
「っ! いろは!! 危ない!!」
その時、いろはの背後から魔女が地面を突き破って出現し、皮膚が青黒く変化して顔が割れ、人間の恥骨のようなものが露わになった攻撃的な姿になると、魔女は巨大になった耳を大きく振りかぶってそれを振り下ろし、いろはを叩きつぶそうとしてきたのだ。
だが、間一髪やちよがいろはを抱きかかえて魔女の攻撃を飛んで躱し、彼女の窮地を救うと、やちよは安全な場所で抱えていたいろはを降ろし、槍を構える。
「や、やちよさん・・・・・・! 私、その・・・・・・」
「良いから!! 下がっていなさい!!」
そのことでいろははやちよの手を煩わせ、足を引っ張ってしまったことに申し訳なさそうな表情で謝罪の言葉を口にしようとするのだが、そんないろはの言葉を遮り、兎に角後ろに下がっていろとやちよは厳しく言い放つ。
『彼女、少しばかり肩に力が入りすぎているように見えるな』
そんないろはの様子を見て、タイタスは彼女がどこか焦りすぎているようにも見えると評し、それを聞いたゼンはもしかして先ほどやちよに言われたことを気にしているのだろうかと考え込む。
「『妹の為に強くなれ』、確かやちよさんはさっきいろはにそう言ってたよな?」
『成程な。 それを意識するあまり、気持ちだけが先走ってしまってるって訳か』
ゼンやタイタス同様に、その一部始終を見ていたタイガも冷静に今のいろはの状況を分析し、それで少なからずいろはは焦りを覚えているのかと納得。
さらに言えば、神浜の魔女は他の地域の魔女に比べて明らかに強い上にみたまに調整して貰ったとは言え、いろは自身そこまで強い魔法少女ではない。
そのように様々な要因が重なった結果、いろはが焦りを覚えてしまうのは仕方のないことだと言えるだろう。
「いろは・・・・・・!」
するとその時、いろは達と戦っていた魔女が檻に無数の包装紙を束ねたような姿をした自身の使い魔達を大量に呼び寄せると、魔女は使い魔を操り、いろはとやちよの2人を囲みだし、やちよは必死に使い魔達を槍で切り裂いていくが、その数はあまりにも多く、切りが無い。
「っ・・・・・・!」
そんな使い魔達を、やちよが忌々しく睨み付けていると・・・・・・。
「ちゃらぁー!!」
そんな独特な掛け声と共に、変身後の服装は中国の僧侶を思わせるヘソ出し衣装の魔法少女姿の鶴野がいろはとやちよに纏わり付いていた使い魔達を両手に持った炎を纏う巨大な扇子で纏めて切り裂き、その一撃で使い魔達を全滅させながら現れたのだ。
「最強魔法少女!! 由比 鶴乃!! 私は強いから勝ぁ~つ!!」
なんて名乗りながら決めポーズを取っていると、頭上からそっとハサミと化した魔女の耳が鶴野に襲いかかろうとしており、彼女は間一髪それに気付いて驚きながらも後ろに後退し、なんとか魔女の攻撃を回避することができた。
「おっ、おわあ~!? ビックリしたぁ~!!」
「鶴野ちゃん!!」
そのまま鶴野はいろはの元にまでやってくると、いろはは鶴野とコネクトしようと彼女の名を呼び、いろはの意図を察した鶴野も頷いて彼女とのコネクトを発動させようとするのだが・・・・・・。
次の瞬間・・・・・・。
突如、魔女の結界一部分に空間の歪みが発生。
『~♪』
「えっ? なになになに!? なに今の音!? こってん・・・・・・ぽっぺ?」
さらには妙な音楽のようなものが聞こえると、鶴野はあの空間の場所からまさか何か出て来るのかといろは達共々警戒を強める。
『ようやく見つけたぞピンク髪の魔法少女とネリル星人のクソガキがあああああ!!!!』
そして、その歪んだ空間から両肩に巨大な金色の角を生やした怪獣、「吸金爆獣 コッテンポッペ(別名ゴルドルボムルス)」がレキューム人を頭に乗せた状態で魔女結界内部に突入してきたのだ。
「グルアアアアアア!!!!!」
『このゴルドルボムルスで!! 貴様等に潰されたオークションの恨みを晴らしてくれる!!!!』
「アイツは・・・・・・!! チビスケを攫った・・・・・・!!」
そこでまた、ゼンもコッテンポッペの頭の上に立つ因縁の相手であるレキューム人の存在に気付くと、彼もまたレキューム人に対し、怒りの形相を見せる。
「おっ、おわっ!? あれが今神浜で話題になってる怪獣と宇宙人!? 私、初めて見ちゃった!!」
「なんかあの怪獣の頭の上の宇宙人、何を言っているのかよく聞こえないけどなんだか環さんに向かってワーワー騒いでるみたいね。 知り合い?」
コッテンポッペとレキューム人の出現に、鶴野は興奮した様子を見せ、やちよはいろはにレキューム人とは知り合いかとなのかと尋ねると、彼女は戸惑いつつ、「ま、まぁ・・・・・・一応・・・・・・?」とだけ応えるのだった。
「知り合いと言えば知り合いですけど・・・・・・でも、昔ゼンくんとその友達に酷いことした悪い人です・・・・・・!」
レキューム人と知り合いであることは否定しないものの、いろはもまた、ゼンと同様にレキューム人を睨み付ける。
『先ずはピンク髪の魔法少女!! お前からお前の仲間諸共始末してくれる!! 行け!! ゴルドルボムルス!!』
レキューム人が指示を出すと、額の角から発射する「ビードロ光線」をコッテンポッペはいろは達へと放ち、直撃こそ受けなかったもののいろは達はその衝撃で大きく吹き飛ばされてしまう。
「「きゃあああ!!?」」
「おわあああ!!?」
「いろは!! やちよさん!! 鶴野ちゃん!!」
それを見たゼンは慌ててタイガスパークを構えると、さらにゼンはタイガスパークのレバー部分を引く。
『カモン!』
「光の勇者!! タイガ!!」
次に腰に下げていたタイガキーホルダーをゼンが右手で掴み取り、左手に持ち替えるとタイガスパークのクリスタル部分が赤く輝き、ゼンはタイガスパークが装着された右腕を掲げる。
「バディィィィィ!! ゴー!!!!」
『ウルトラマンタイガ!』
そしてゼンが赤い光に包まれると、彼は「ウルトラマンタイガ」へと変身し、空中へと放り出されたいろは、やちよ、鶴野の3人を両手で見事にキャッチし、ゆっくりと3人を地上へと降ろしたのだ。
「タイガ!! 来てくれたんだ、ありがとう!」
「っ、光の巨人・・・・・・! また、助けて貰ったみたいね・・・・・・。 礼を言うわ」
「これまた話題の人!! 私達のこと助けてくれたんだね!! ありがとう!!」
いろは、やちよ、鶴野の3人がそれぞれ自分達を救ってくれたタイガにお礼を述べるとそれにタイガは頷き、立ち上がってコッテンポッペの方へと振り返る。
『シュア!!』
『来たなウルトラマン!! お前にも恨みを晴らさないとな!! 行け!!』
タイガの姿を見るや、レキューム人は怒りに満ちた声をあげながらコッテンポッペにタイガと戦うよう指示を出すのだが・・・・・・。
そんな時、「自分の存在を無視するな!!」と言わんばかりに立ち耳の魔女が耳のハサミを使ってコッテンポッペへと攻撃を仕掛けて来たのだ。
しかし、コッテンポッペは魔女のハサミを両手で掴んで受け止めると、魔女の腹部に蹴りを入れて引き離す。
『魔女如きが、俺の邪魔をするな!! お前も俺の物にしてやる!!』
そう言いながらレキューム人が懐から赤い丸いボタンのついたリモコンの形をした何かの装置のようなものを取り出すと、それを魔女に向けてかざし、赤いボタンをポチりと押す。
すると、リモコンから怪電波が魔女に向けて放たれ、それを受けた魔女は頭を抱えて苦しみ出すと、魔女の目が赤く発光し、魔女はレキューム人によって操られてしまったのだ。
「魔女を、洗脳した・・・・・・!?」
「嘘ぉ!?」
それを見たやちよと鶴野はそのことに驚愕し、レキューム人によって洗脳された魔女がコッテンポッペの隣に並び立つと、さらにそこからレキューム人もコッテンポッペから飛び降りて巨大化。
『くっ、3対1か・・・・・・!!』
それによって魔女、コッテンポッペ、レキューム人の3体が並び立つこととなり、タイガは数的不利を悟りつつも、警戒を怠らず身構える。
『さあ!! タイガに攻撃を仕掛けろ!! ゴルドルボムルスに魔女よ!!」
「ギアアアアアア!!!!」
戦闘BGM「ウルトラマンタイガ」
レキューム人の指示にコッテンポッペと魔女が頷くと、2体は同時にタイガに向かって駈け出して行き、最初にコッテンポッペが鼻の先の角を振りかざし、タイガに攻撃を仕掛け、タイガはそれを受け止め攻撃を防ぐものの、背後に回り込んだ魔女が耳のハサミを使ってタイガの背中を斬りつけようとする。
『シュア!!』
だが、魔女の攻撃をあらかじめ読んでいたタイガは魔女の胸部に蹴りを叩き込んで引き離し、コッテンポッペも押し返すと胸部に連続でタイガは拳を叩き込み、最後にアッパーカットをコッテンポッペの顎に喰らわせることでコッテンポッペも引き離すことに成功。
『このままさらに追撃だ!! ゼン!! バゴンリングだ!!』
『分かった!!』
『カモン!』
タイガがインナースペース内にいるゼンにそう語りかけると、ゼンはタイガスパークのレバーを下に下げ、左拳を突き出すようなポーズを取ると、その左手の中指に前回の戦いで手に入れた「暗黒怪獣 バゴン」の力が宿った指輪、「バゴンリング」を出現させる。
そしてヘルベロスリングをタイガスパークにかざすと、ゼンの背後に一瞬だけバゴンの幻影が現れる。
『バゴンリング! エンゲージ!!』
それによってタイガはバゴンの力を一時的に纏い、地面を踏み付けることで周囲の重力場を増大させ、大気の屈折によって発生させた巨大な足の幻影で敵を押し潰す「バゴンスタンプ」をコッテンポッペと魔女に繰り出したのだ。
『バゴンスタンプ!!』
「ギアアアアア!!?」
しかし、間一髪魔女だけは地面に潜ることでタイガの攻撃を回避すると、素早く地中を移動し、タイガのすぐ近くで地面から勢いよく飛び出すとすれ違いざまにハサミでタイガの身体を斬りつけ、身体から火花を散らしたタイガはその場に膝を突いてしまう。
『グアアッ!?』
「ギアアアアア!!!!」
その隙を狙い、起き上がったコッテンポッペが角から発射するビードロ光線を放つとタイガはその直撃を諸に喰らい、吹き飛ばされてしまう。
『しまっ! ガアアアア!!!!?』
一方でレキューム人はタイガの相手はコッテンポッペと魔女に任せ、自身は魔法少女達3人と戦闘を繰り広げており、特にいろはを執拗に狙って踏みつけようとしてくる。
「ひゃああ!!?」
『オラ!! 逃げるなぁ!!』
「アイツ!! いろはちゃんばっかり狙うなぁー!!」
どうにかこうにか、レキューム人の攻撃を躱し続けるいろはであったが、それを見ていた鶴野がいろはばかりを狙うレキューム人に怒ると彼女は両手に持つ扇子に炎を纏わせ、跳び上がってそれをレキューム人に叩きつけようとする。
だが、レキューム人は頭部から赤いレーザー光線を鶴野に対して発射すると、鶴野は「うわああ!!?」とその攻撃に驚きながら空中でなんとか身体を捻ることで光線を避けたものの、レキューム人は空中で体勢を崩した鶴野を右手で掴んで捕まえてしまったのだ。
「鶴野!!」
「鶴野ちゃん!!」
そのままレキューム人は鶴野を地面に叩きつけようとするのだが、そうはさせまいとやちよの放った大量の槍がレキューム人の右腕に突き刺さり、それによりレキューム人は思わず鶴野を手放し、彼女を解放してしまう。
『ぐあああ!!? このアマァ・・・・・・!!』
「助かった!! ありがとうやちよ!!」
さらにそこからレキューム人の手から抜けだした鶴野は炎を纏わせた2つの扇子をブーメランのようにしてレキューム人に投げつけ、その攻撃の直撃を受けたレキューム人は僅かに怯み、そこから追撃をかけようと鶴野とやちよがそれぞれの武器を構えてレキューム人に突っ込もうとするのだが・・・・・・。
「ギアアアアア!!!!」
タイガの相手を一時的に魔女に任せたコッテンポッペがビードロ光線をやちよと鶴野に撃ち込むことでレキューム人への接近を阻止し、2人は後方へと飛んで回避するのだが、地面に着地した瞬間、レキューム人の放ったレーザー光線が繰り出され、2人は爆発に巻き込まれて吹き飛ばされてしまう。
「うああっ!!?」
「っ、ああああ!!!?」
「やちよさん!! 鶴野ちゃん・・・・・・!!」
いろはは2人の名を叫びながら、彼女等の元へと駆け寄ろうとするのだが、先ほどの魔女との戦いで足を引っ張ってしまった時のことを思い出してしまい、ついつい彼女は「自分が助けに行ったところで、また2人の足を引っ張ってしまうのでは?」と考えてしまい、思わず足が止まってしまったのだ。
「っ・・・・・・。 あっ・・・・・・」
そんな風に考え込んでしまったいろはは顔を俯かせ、その場で呆然と立ち尽くしてしまう。
無論、そのような無防備状態のいろはを、彼女に恨みを持つレキューム人が見逃さす筈もなく、コッテンポッペに指示を出し、「ゴールデンテール」と呼ばれる尻尾でいろはを叩きつけようとしてきたのだ。
『いろは!!』
「っ!!?」
しかし、それをタイガがいろはを庇うようにして彼女の代わりに背中でコッテンポッペの攻撃を受けることでいろはを守ることに成功。
だが、レキューム人はこの瞬間ならタイガはいろはを守る為に動けないと即座に考え、それを絶好のチャンスだと捉えると、レキューム人はコッテンポッペにビードロ光線を連射させることでタイガにダメージに蓄積させていく。
『ガアアアア!!?』
しかも、この状況では防御力の高いタイタスに上手くバトンタッチすることも困難であり、タイガのカラータイマーも既に点滅を開始。
『グアアアア!!!!?』
「タイガ!! ゼンくん・・・・・・!!」
その光景を見て、又もやみんなの足を引っ張ってしまったことを激しく痛感し、いろははこの状況で、一体自分はどうすればいいのかと思い悩み、彼女は俯いてしまう。
『っ、うっ、ぐうう!! そんな顔するな。 いろは・・・・・・!』
「っ、ゼンくん・・・・・・」
そんな時、タイガのインナースペース内からゼンがいろはへと語りかけてきたのだ。
『ぐう!!? やちよさんに『妹の為に強くなれ』って言われて、ちょっと焦りすぎたんだよな? 「妹の為に」って言葉に縛られすぎて、自分でも気づかないうちにプレッシャーになってるんだろ?』
「それは・・・・・・!」
ゼンの言葉にいろははハッとなり、同時に図星だったのか彼女は言葉を詰まらせてしまう。
『ハァ、ハァ、ぐっ・・・・・・! 図星だろ? だから、プレッシャーじゃなく、妹のういちゃんに対しての想いを、強さに変えるんだ。 自分の『想い』の力を信じろ!』
「ゼンくん・・・・・・」
コッテンポッペの攻撃を受けながらも、いろはに励ましの言葉を送り続け、必死に耐えるタイガとゼン。
『攻撃を受けながらその小娘と楽しくお喋りとは随分と余裕だな!! これで終わりだ!! ゴルドルボムルス!! 最大出力の光線であの魔法少女の小娘諸共ウルトラマンタイガを吹き飛ばせ!!』
そこから角にエネルギーを大量にチャージした最大威力のビードロ光線を撃ち込もうとするコッテンポッペであったが・・・・・・。
「ちゃらぁー!!」
そこへ、高く跳び上がってコッテンポッペの頭上にいつの間にかジャンプしていた鶴野が、炎の扇子を勢いよく振り下ろす姿がレキューム人達の目に入り、気付いた時には鶴野の攻撃がコッテンポッペの鼻先の角が破壊されてしまい、それにコッテンポッペの悲痛な鳴き声をあげたのだ。
「ギアアアアア!!!!?」
『あのオレンジの小娘!! もう戻ってきたのか!!』
そのまま鶴野がいろはのすぐ傍まで着地すると、鶴野は心配げな表情をいろはへと向ける。
「大丈夫だったいろはちゃん!?」
「あっ、うっ、うん・・・・・・。 タイガが守ってくれたから。 鶴野ちゃんこそ」
「私は全然平気!! やちよはさっきの攻撃でそこそこダメージ受けちゃったからまだ戻って来れてないけど、さっき吹き飛ばされた時、私はクッションみたいなところに落ちてダメージそこまで入らなかったから! いやぁ~! 運が良い!」
そう言いながら鶴野は笑いながらガッツポーズをして見せ、鶴野はいろはの両肩へと手を置く。
「さあ、反撃開始だよ、いろはちゃん! 妹さんを見つけるまで、こんなところで負ける訳にはいかない!! でしょ?」
「鶴野ちゃん・・・・・・。 うん!!」
そんな鶴野の言葉に、いろはが力強く頷くと彼女はニュージェネレーションブレスを取り出し、それを右腕に装着。
『ニュージェネレーションブレス!』
それに続くように、インナースペース内のゼンもタイガスパークのレバー部分を再び降ろし、腰に装着してある「タイタスキーホルダー」を手に取る。
『カモン!』
『力の賢者! タイタス!!』
続けて右手に取ったキーホルダーを左手に持ち替えるとタイガスパークのクリスタル部分が黄色く輝く。
『バディィィィィ!! ゴー!!!!』
『ウルトラマンタイタス!!』
最後にゼンが右腕を掲げると彼は光に包まれ、ゼンはタイガから「ウルトラマンタイタス」へと変身を完了させたのだ。
『賢者の拳は、全てを砕く!!』
戦闘BGM「ウルトラマンタイタス」
しかし、その時タイタスに変身を完了させた直後、いつの間にかまた地面に潜っていた魔女がタイタスの目の前に出現すると、魔女は頭のハサミでタイタスの胴体を挟み込み、力を込めてハサミで身体を斬りつけてやろうとするのだが・・・・・・。
タイタスの身体はあまりにも頑丈であり、力を入れて斬りつけようとしたら逆に魔女のハサミの方が粉々に破壊されてしまい、タイタスが魔女の頭を掴みあげると持ち上げるとタイタスはコッテンポッペの方へと力いっぱいにボールの如く放り投げたのだ。
「ギアアアア!!!!」
だが、コッテンポッペは魔女を右腕を振るって弾き飛ばし、タイタスに向かって突進を繰り出すと、タイタスは真正面から両手を前に突き出すことででコッテンポッペの突進を受け止める。
『ヌゥ・・・・・・!! デヤアア!!』
そのままタイタスはコッテンポッペに膝蹴りを叩き込み、全身の筋肉から生み出されるパワーを拳に込めて放つパンチ、「ワイズマンフィスト」をコッテンポッペの顔面に喰らわせると殴られたコッテンポッペは顔を一瞬凹ませながら大きく吹き飛ばされる。
「ギアアアアア!!!!?」
*
一方、タイタスがコッテンポッペと激闘を繰り広げているのと同じ頃、いろはと鶴野はレキューム人と戦闘を繰り広げており、レキューム人は頭部からレーザー光線をいろはと鶴野に向けて発射。
「同じ技ばっかで芸がないね!!」
それに対し、鶴野は炎を纏った扇子を振るってレーザーを弾くと、いろははニュージェネブレスを操作。
『切り刻めイガリマの力!!』
するといろはの目の前に2本の緑色の鎌「アームドギア」が現れると、彼女はそれを手に取り、2本のアームドギアを合体させ、三日月型の刃を左右に備える大型の鎌を形成する「対鎌・螺Pぅn痛ェる」を発動させる。
「行きますッ!!」
そのままいろはが空高く跳び上がるとアームドギアを振るい、レキューム人の身体を縦一閃に斬りつけ、レキューム人は火花を散らしながらその場に尻もちをつくようにして倒れる。
そこからさらにジャンプしていろははアームドギアをレキューム人に向けて振り下ろすのだが、レキューム人が魔女を呼び寄せるといろはとレキューム人の間に割って入るようにして魔女が乱入。
魔女は残っている片耳のハサミでいろはを切り裂こうと刃を伸ばすのだが、彼女はなんとかアームドギアで受け止めることに成功。
だが、それでもいろはは魔女に弾き飛ばされてしまい、彼女はどうにか地面へと着地。
「いろはちゃん!? 大丈夫!?」
「うん、なんとか!」
「おーっし!! 次は私の番!! これで・・・・・・どうだぁ!!」
そこで今度は鶴野が火炎弾を雨のように降らせた後、敵を一閃する「炎扇斬舞」を鶴野がレキューム人と魔女に繰り出すと、攻撃を受けた魔女とレキューム人は軽く吹き飛ばされ、壁に激突して倒れ込むのだった。
『ぬがああああ!!!!?』
*
そこからコッテンポッペに向かって駆け出すタイタスであったが、コッテンポッペは頭部左右の2本の角からの電撃、「キッ光線」を発射。
『ウオッ!?』
予想外の攻撃を受け、僅かに怯むタイタス。
その隙を見逃さず、コッテンポッペは雄叫びをあげながらゴールデンテールを振るってタイタスに攻撃を繰り出すが、タイタスはコッテンポッペの尻尾を掴みあげ、そのままジャイアントスイングを繰り出してコッテンポッペを投げ飛ばす。
『シュア!!』
「ギアッ!!?」
『よし!! トドメだ!! プラニウム・・・・・・!!』
投げ飛ばされて地面に叩きつけられ、既にグロッキー状態となったコッテンポッペを見て、タイタスはトドメの一撃、必殺光線「プラニウムバスター」を放とうとするのだが・・・・・・。
『待て!! その怪獣の細胞は特殊でな! 光線技でその怪獣をもしも吹き飛ばせば、その怪獣はこの辺り一帯を吹き飛ばすほどの爆弾となり、この辺り一帯は魔女の結界ごと軽く吹き飛ぶ! それでも良いのか!?』
『なんだと!?』
いろは達と戦っていたレキューム人が、フラフラになりながらもタイタスがコッテンポッペにトドメを刺そうとしているのを見て待ったをかけると、レキューム人はコッテンポッペを光線技のようなもので吹き飛ばせばコッテンポッペはその瞬間に強力な爆弾となり、この辺り一帯は軽くその爆発に巻き込まれてしまうと忠告すると、それを聞いたタイタスは思わず動きを止めてしまう。
『最も、仮にその怪獣が大爆発を起こしたとしても、俺が爆発に巻き込まれそうになればその瞬間俺の持っている転送装置が起動して俺だけは逃げ切れるがなぁ!!』
『くっ、もう時間がない・・・・・・!』
既に活動限界時間も迫ってきている為、ならば肉弾戦で倒すしかないかと考えるタイタスだったが、コッテンポッペは異常に打たれ強いようで先ほどまでグロッキー状態だったのがもう既に回復してしまっているようだった。
(肉弾戦のみで倒しきれるか・・・・・・!?)
『タイタス! 俺に考えがある!! 俺に変われ!』
『むっ? タイガ? 分かった、君に任せよう』
そんな時、タイタスがコッテンポッペをどう倒すべきかと考えていると、そこでタイガが自分に良いアイディアがあるとタイタスへと語りかけ、それを信じたタイタスはタイガへとバトンタッチし、姿をタイガの姿へと変える。
『ウルトラマンタイガ!』
『ゼン!! ブルレットを使え!! ブルレットの力を応用するんだ!!』
『分かった!』
ゼンもまた、タイガの言う言葉を信じるとゼンはタイガスパークのレバーを引くと左手首に「ウルトラマンブル アクア」を模したブレスレット、「ブルレット」が出現。
そのままゼンは出現したブルレットをタイガスパークにかざす。
『ブルレット! コネクト・オン!』
すると一瞬、タイガにブル・アクアの姿が重なるとの姿が重なると虹色に光りながら体内エネルギーを貯めた後、両腕をT字型に構えてタイガスパークから発射する水のエネルギーを纏った光線「アクアブラスター」を発射。
『アクア!! ブラスター!!!!』
『フン!! バカが! そいつを吹っ飛ばせばお前等諸共・・・・・・!!』
それをレキューム人は折角自分が忠告したにも関わらず、光線技を使用したタイガを嘲笑うのだが・・・・・・。
無論、そんなことタイガは当然分かりきっており、タイガはアクアブラスターを相手を倒す為に使用した訳ではない。
タイガの放ったアクアブラスターはコッテンポッペに直撃。
次の瞬間、アクアブラスターがコッテンポッペに直撃すると同時にコッテンポッペの身体を水を包み込み、やがてコッテンポッペの全身を水のエネルギーで生成したバリアで囲ったのだ。
『どうだ見たか!? ブルレットの力を応用して怪獣をバリアの中に閉じ込めてやったんだ! その中なら爆発しても周囲を巻き込むことはない!!』
『なにぃ!!?』
水のバリアで閉じ込められたコッテンポッペは必死にそこから出ようともがくが、上手く脱出することが出来ず、レキューム人は今の自分の最大戦力をこんなところで失う訳には行かないと思い、即座に魔女と共にコッテンポッペを助け出そうと駆け出す。
「あなた達の相手は、私達よ」
しかし、レキューム人と魔女の足下に幾つものやちよが生成した槍が突き刺さり、コッテンポッペに2体を足止めするといろは達の元へやちよが戻って来たのだ。
「さっきはよくもやってくれたわね」
「やちよ~!!」
「やちよさん!!」
その間に、インナースペース内のゼンはタイガスパークのレバーを引き、左手首に「ウルトラマンロッソ フレイム」を模したブレスレット、「ロッソレット」を出現させる。
『カモン!』
出現したロッソレットをゼンがタイガスパークにかざすと、スパークから音声が鳴り響く。
『ロッソレット! コネクト・オン!』
そして一瞬、タイガの姿にロッソ・フレイムの姿が重なると赤く光りながら両腕をT字型に構えてタイガスパークから発射する炎のエネルギーで強化されたストリウムブラスター、「フレイムブラスター」をタイガはコッテンポッペに向かって放つ。
『フレイム!! ブラスター!!!!』
タイガの任意によって水のバリアの一部分を解除し、その部分を通り抜けながらフレイムブラスターはバリア内部のコッテンポッペに直撃。
『ギアアアアアア!!!!!?』
最後に解除していた一部分に再びバリアを張ると、コッテンポッペは身体中から火花を散らしながら爆発し、爆発の炎はなんとか水のバリア内のみで収まるのであった。
『なっ!? クソ! 俺が爆発に巻き込まれそうにならなければ転送装置は起動しない・・・・・・!! チィ、このままでは部が悪い。 このまま撤退を・・・・・・!!』
「っ! 逃がさない!!」
舌打ちをしながら、この状況は部が悪いと判断し、撤退しようとするレキューム人であったが、そうはさせまといろはは鶴野に目線を向けると、いろはの意図を察した鶴野は頷き、彼女と手を握り合せることで「コネクト」を発動させる。
それにより、鶴野が持っていた2つの扇子がブースターのように炎を放つと、彼女は身体を回転させながら炎を纏い、レキューム人と魔女へと突っ込むと、レキューム人は魔女を掴んで盾にするものの、鶴野は魔女ごとレキューム人の身体を貫き、身体を貫かれたレキューム人と魔女は火花を散らしながら倒れ、爆発するのであった。
「今度こそ、これでトドメだああああああ!!!!」
『なっ! ぐああああああ!!!!?』
そして、レキューム人と魔女が倒されたのをタイガが確認すると、両腕を交差させて急いでいろは達共々変身を解除し、ゼンの姿へと戻り、それと同時に魔女の結界も消滅。
一同は元の空間へと戻って来るのだった。
*
「・・・・・・アイツも、倒されたのか」
元の空間へと戻り、「悪い宇宙人、私達でやっつけてやったねー!」といろはに抱きつきながら、はしゃぐ鶴野達の姿を見つめながら、ゼンはレキューム人が倒されたことにどこか複雑そうな顔をしており、それに気付いたいろはは慌てて彼の元へと駆け寄る。
「ゼンくん、大丈夫?」
心配そうに見つめながら、大丈夫だろうかとゼンに尋ねて来るいろは。
「あぁ、大丈夫だ」
それに対し、ゼンは笑みを浮かべてそう応えるのだが、いろはは「そっ、か・・・・・・」とだけ返し、2人の間でしばらくの沈黙が流れていると・・・・・・。
「環さん」
不意に彼女の後ろから自分の名を呼ぶやちよの声が聞こえ、それにビクッと驚きながらも「は、はい!!」と返事を返しながらいろははやちよの方へと振り返る。
「さっきの戦い、最初の方はそこそこのヘマはあったけど、後半での動きはそんなに悪くなかったわよ」
「えっ、あっ、えっと、あ、ありがとうございます!」
そんなやちよの意外な言葉に、いろはは戸惑いながらも頭を下げると、やちよは「この調子で頑張りなさい」とだけ声をかけ、それを受けたいろはは「は、はい!!」と頷くのだった。
「ハッ! そうだわ! タイムセールの方は・・・・・・!」
そこでやちよはもしかしたらまだ時間があるかもしれないと思い、スマホの時計を見て現在の時間を確認するのだが、時計は既にスーパーの閉店間際の時刻となっていてタイムセールはとっくの昔に終了しており、大方予想していたとは言え、結局まともに欲しかった商品を買うことが出来なかったやちよは小さな溜め息を吐くのであった。
「今日は、残念だったけど、また別の日に・・・・・・」
「俺も、また神浜に立ち寄ったら良ければ手伝いますよ」
そんな風に、溜め息を吐きながら少しばかり落ち込んだ様子を見せるやちよに、励ましの言葉をかけるゼンと鶴野の2人。
「・・・・・・タイムセール、時間限定・・・・・・」
不意に、やちよがスーパーの壁などに貼られたタイムセールの張り紙を見つめながら、何やらボソボソと呟き始め、彼女の呟きを聞いていたゼンと鶴野はタイムセールに間に合わなかったことがそんなに辛かったのかと心配になり、思わず彼女に声をかけようとした時である。
やちよの表情を見ると、どうにもタイムセールに間に合わなかったことを気にしている訳ではないようで、スーパーの外に出ると彼女はいろは達に向かって「一緒について来てくれる?」と言い出したのだ。
「確かめたいことがあるの」
*
そのまま一同はスーパーから移動し、ゼン達はやちよに案内されるままとある場所へと向かうことに。
「一体、どこに向かってるんですか?」
「・・・・・・口寄せ神社」
だが、未だにどこへ行くのかちゃんとハッキリと聞いていなかったいろはが、一体自分達はどこに向かって進んでいるのだろうかと尋ねると、やちよは今日一日ずっと自分達が探し続けていた「口寄せ神社」へと向かっていることを説明し、それを聞いた瞬間、当然ながらいろはは「分かったんですか!?」と驚きの声をあげた。
「凄い凄い!! 流石やちよ師匠!!」
「それで、口寄せ神社の場所は・・・・・・?」
口寄せ神社の場所が分かったと述べるやちよに、鶴野は興奮気味に「流石!!」とはしゃぎ、ゼンがその場所は一体どこなのかと尋ねると、その問いかけに対し、やちよは口寄せ神社はやはり水名神社だったのだと彼女は応えたのだ。
「口寄せ神社は、やっぱり水名神社だったのよ」
「へっ!? でも、昼間は違うって・・・・・・」
しかし、昼間や再度水名神社に戻ってきた時も、口寄せ神社は水名神社ではなかったとやちよ自身が言っていたのに、なぜ今になって水名神社が口寄せ神社だと思うようになったのかといろはが問いかけると、それにやちよは「大事なのは時間だった」と言葉を返したのだ。
「見落としてたのよ、大事なのは・・・・・・悲恋の伝説でお姫様が神社に通った時間。 恐らく夜にしか口寄せ神社の道は現れない・・・・・・」
「確かに、夜なら人も少ないだろうし、人数をかなり絞れ込めますね」
やちよのその推測に、いろはもゼンも、鶴野も「成程!」と納得したような表情を浮かべ、だから先ほどスーパーでぶつぶつと何かを呟いていたのかと理解したのだった。
*
そして、しばらく歩き続けると一同は再び水名神社へと訪れることとなったのだが・・・・・・。
「閉まって、ますね・・・・・・」
既に神社に出入りする為の門は閉じられており、「閉苑」と書かれた看板も置かれ、神社の中に入ることができなくなっていたのだ。
「・・・・・・」
だが、やちよは門が閉まっていようがいまいがそんなことは関係ないと言わんばかりにジャンプして門を飛び越えて神社の中へと入っていき、それを見た鶴野も「あっ、待ってよ~!」と言いながらやちよに続くように門を飛び越えて神社の中へと入っていくのだった。
彼女等魔法少女は変身しなくても高い身体能力を誇る為、神社の門程度ならば簡単に飛び越えられるのだ。
「悪いけど、いろは? 頼めるか?」
「うん、ゼンくんは私が抱えて行くね?」
尚、ゼンも宇宙人の血も流れていることや身体能力自体はタイガ達が一体化したこともあり、変身前の魔法少女達と同等レベルなので彼もこれぐらいの門は軽く飛び越えられるのだが、ゼンの性格上、やちよ達の目の前でその身体能力を披露するのは色々とやちよ達に不信感を与えかねないと考えた為、ゼンはいろはに抱きかかえられ、2人で一緒に神社の門を飛び越えるのだった。
*
その後、誰にも気付かれることなく、神社へと侵入した一同。
「夜の神社って、初めて入りました」
「まぁ、夜の神社なんてあんま誰も来ないだろうしな」
神社に設置してある橋の上を歩きながら、夜の神社の雰囲気の感想を述べるいろはとゼン。
「キュ~!」
「あっ!」
そんな時、いろはに向かってどこからかあの小さいキュゥべえが現れると、キュゥべえは真っ直ぐいろはに向かって飛びつき、いろはもまた自分に飛びついてきたキュゥべえを優しく両手で受け止めたのだ。
「あなたが言っていた小さいキュゥべえって・・・・・・」
「はい! 絶交階段の時もいたんです!」
今までは本当に小さいキュゥべえなんていたのかと半信半疑のやちよであったが、こうしていろは以外の、自分達の目の前にも現れたことで、やちよはいろはが言っていたことが真実であったことを実感したのだった。
「俺も、このキュゥべえをまともに見るのは初めてだけど・・・・・・なんだろう。 普通のキュゥべえと比べると、アイツにはあった胡散臭さがこのキュゥべえには全然無いな」
いろはに抱きかかえられるキュゥべえを見つめながら、普通のキュゥべえから何時も感じていた胡散臭さを全く感じられないことに不思議そうに首を傾げるゼン。
むしろどこか、この小さいキュゥべえを見ていると不思議となんだか懐かしさを感じるようで・・・・・・。
「モキュ?」
すると、キュゥべえがゼンに視線を向けると、キュゥべえはゼンにも飛びつき、それにゼンは驚きながらもしっかりとキュゥべえを両手で抱き留める。
「うおっ!? オイオイ、いきなり飛びかかってくるなよ、危ないだろ?」
「ふふ? その子、ゼンくんにも懐いたみたいだね?」
「そう、なのかな・・・・・・?」
そのまま、いろは達は小さいキュゥべえを引き連れ、先へと進むと空から突如、空から唐突に絵馬がその場にいた人数分を振って来ると、やちよはそれらを拾っていろはやゼンに手渡していく。
ただ、ゼンに絵馬を渡す際、一般人である彼に危険が伴う可能性を考え、一瞬絵馬を渡すことを渋ったやちよであったが・・・・・・ゼンの「お願いします」と真面目で、真剣な眼差しを見たことで、彼女は渋々ながらも承諾し、絵馬をゼンにも手渡すのであった。
最後に、鶴野もやちよから絵馬を受け取ろうとするのだが・・・・・・。
「鶴野は書かないで」
「えぇ!? なんで!?」
やちよは絵馬を鶴野に渡すことを拒否し、それに納得できないと言いたげな鶴野であったが、何が起こるか分からない以上、念のために彼女には待機しておいて欲しいからとやちよは説明。
「それに、あなたが書こうと思っている名前と、私が書く名前は同じ筈よ」
それに何より、鶴野もやちよは恐らく絵馬に書こうとしている人の名前は同じだからということで、それを聞いた鶴野は素直に納得し、「分かった」と彼女は頷くのだった。
尚、同じ人の名前を書こうとしているのはゼンといろはも同じだったが、ゼン自身も出来れば自分もういには会いたいと願っているのでいろはと同じように、絵馬には「環 うい」の名前を書き込んだのだ。
やちよも同様に、書きたい人の名前を書き込むと、ゼン、いろは、やちよの3人分の絵馬にそれぞれ4つの翅が生え、絵馬は空へと飛び立つ。
(なんか気持ち悪。 蛾みたい)
「次は参拝ね」
ゼンが空に飛び立つ絵馬を見ながらそんなことを思っていると、やちよは参拝をする為に先へと進んでいき、それにゼン達も慌ててついて行く。
その際、いろは、やちよ、鶴野は念のために魔法少女に変身し、警戒をしながら進んで行くと・・・・・・。
『書かぬのか? 書かぬのか? 会いにいらしてくれぬのか!?』
男と女の声が交わったような声を発しながら、ゼン達の背後に巨大な影が現れると、その影の中から黒く、長く巨大な手が伸びて鶴野の背中を掴みあげ、手は彼女を引っ張り、鶴野は驚きながらもなんとか自分を掴んできた腕を振り払いながら両手に武器の扇子を出現させ、巨大な手を攻撃する。
「おわっ!!? いろはちゃん先に行ってて!!」
「でも・・・・・・!」
「私は最強だから平気! それより、師匠を!!」
そう言って、鶴野はこの場を引き受けていろは達に先に行くように促すと、いろはは戸惑いつつも頷いてゼンややちよと共に先へと進み、神社の本殿へとどうにか辿り着くことに成功。
それから、いろは、やちよ、ゼンの3人はお参りし、それぞれ自分達が書いた名前の人に会わせてくれるように目を瞑りながら両手を合わせて願う。
(お願いします。 神様! ういに会わせてください・・・・・・!)
そして、いろは達は3人揃って最後にお辞儀をした後、頭を上げて目を開けると先ほどまで真っ暗の空の色が夕方のように赤く変わっており、さらには景色も幾つもの端が何重にもかかった不可思議な空間にいつの間にか変わっており、いろは、ゼン、やちよは突然変わった周りの景色に動揺し、3人は辺りを見回す。
「まさか、ここか・・・・・・?」
「やちよさん、ここって・・・・・・!!」
やちよはある場所を見つめながら、目を見開き、やちよ同様に、いろはもある場所へと視線を向けると、彼女もまた目を見開いて激しく驚いた様子を見せたのだ。
「・・・・・・みふゆ?」
「うい・・・・・・なの?」
やちよの視線の先、いろはの視線の先、そこにいたのはそれぞれ会いたがっていた絵馬に書いた通りの名前の人物が立っており、ゼンも驚きの表情を見せ、いろはと同じ方向を見つめた。
「それじゃ、あの娘が・・・・・・うい・・・・・・ちゃん?」
*
一方、その頃、水名神社の入り口前では・・・・・・。
「おやぁ? おやおやおや? まぁた楽しそうなことをしているねぇ? 私もそれに便乗させて頂こうかな? ウルトラマンタイガ・・・・・・」
不気味に、不敵な笑みを浮かべる青霧がチョコボールを食べながら立っていたのだった。
ちなみに、魔女を洗脳した装置についてはアレは魔女のデータを調べ上げた上で作ったレキューム人の自作です。
電波怪人だし、そういうことできそうだと思ったので。
尚、装置は予算もかかる上に手間もかかる為あれ1個しかない上に一度しか使えない模様。
あとコッテンポッペとレキューム人の組み合わせは特に繋がりとかそういうのなく単純にマイナー怪獣なるだけ出したいっていう何時ものアレです。
ゼラン星人とギマイラの組み合わせだって謎ですし。
あと、このコッテンポッペは爆発する規模が大分小さくなっております。
それでもライジングマイティキックレベルの被害は出る爆発ですが。
またバゴンスタンプには元ネタの技がありまして・・・・・・フォーゼのジャイアントフットです。