ありふれたFGOで世界最強   作:妖怪1足りない

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いざ迷宮へ1

翌朝、陽が出て間もない頃、ハジメ達は迷宮の前の広場に集まっていた。

 

そんな中ハジメは槍をしごきながらも、

 

興を削がれた感じになっていた。

 

事前に想像していた自然の洞窟のようなものとは違い、

 

入場ゲートのような入り口であり、受付窓口まであったのだ。

 

職員が迷宮の出入りをチェックしている。

 

ここでステータスプレートをチェックし、

 

出入りを把握することで死亡者の数を把握しているのだとか。

 

戦争が近い現状大規模な死者が出るのは避けたいのだろう。

 

入口付近の広場には露店が所狭しと並び、

 

さながらお祭りのごとき様相だった。

 

ハジメはため息をつきつつ、他の生徒達と一緒に、

 

メルド団長について行った。

 

 

 

洞窟の中は外の喧騒とは無縁で、

 

縦横五メートル以上ある通路は、明かりもないのに薄ぼんやり発光しており、

 

明かりがなくてもある程度の視認が可能だ。

 

明るい理由は緑光石という特殊な石が多数埋まっているらしく、

 

迷宮はその鉱脈を掘って出来ているらしい。

 

一行は隊列を組みながら進み、やがてドーム状の大きな広間に出た。

 

と、その時壁の隙間という隙間から、灰色の毛玉が湧き出てきた。

 

メルド団長が、「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ。

 

あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが大した敵じゃない。冷静に行け。」

 

 

 

異世界の、いや、今世初の実戦か。

 

そう考えハジメは槍を構え敵を見る。

 

ラットマンという名称にふさわしく、外見はネズミっぽいが・・・・・・

 

二足歩行で上半身がムキムキだった。

 

同じ前衛の雫の頬が引き攣っている。気持ち悪いのだろう。

 

間合いに入ったラットマンを、光輝、雫、龍太郎、ハジメが迎撃する。

 

それと同時に、香織と特に親しい女子二人、

 

メガネっ娘の中村恵里と、ロリ元気っ子の谷口鈴が詠唱を開始。

 

魔法を発動する準備に入る。

 

訓練通り堅実な陣形が出来ているなとハジメは思った。

 

 

 

光輝が純白に輝くバスタードソードを、

 

視認も難しい速度で振るい、数体を纏めて倒している。

 

彼の持つその剣は王国のアーティファクトの一つで、

 

名前はお約束に漏れず、『聖剣』である。

 

光属性の性質が付与されており、光源に入る敵の弱体化、

 

自身の身体能力の強化が自動で発動するという、

 

実に嫌な性質を持っている。

 

龍太郎は空手部らしく、天職が『拳士』であることから、

 

籠手と脛当てを着けている。

 

これもアーティファクトで衝撃波を出すことができ、

 

不壊の性質も付与されている。

 

龍太郎はどっしり構え、見事な空手技を披露し、

 

決して敵を後ろに通さない。

 

その姿はさながら盾役の重戦士のようだ。

 

雫はサムライガールらしく、『剣士』の天職持ちで、

 

刀とシャムシールの中間のような剣を抜刀術の要領で抜き放ち、

 

ラットマンを一撃で切り裂いていく。

 

その動きは洗練されていて、他の騎士達が感嘆する程である。

 

ハジメもその動きを見つつ、敵の急所を槍で突き、

 

一撃で葬っていく。ハジメの武器は何の変哲もない槍であり、

 

『不壊』の能力が付与されているだけである。

 

だが、ハジメはこれでいいと思っている。

 

戦場で必要なのは、爆煙に燻され、

 

砂まみれになってもなお稼働する、

 

武人の蛮用に耐えうる武器である。

 

どれだけ高性能でも実用に耐えなければ意味がない。

 

それがハジメが前世の戦場で体験した結論である。

 

そうして戦っているうちに後方から詠唱が響き渡った。

 

「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、

 

灰となりて大地へ帰れ。”螺炎”」」」

 

三人同時に発動した螺旋状に渦巻く炎が、

 

ラットマン達を吸い上げるように巻き込み燃やし尽くしていく。

 

断末魔の悲鳴を上げながら、パラパラと降り注ぐ灰となって絶命していく。

 

 

 

ハジメはこれがこちらの世界の攻撃魔法かと観察する。

 

前衛が敵を防いでいる間に、

 

後方で詠唱というゲームや小説でよくあるパターンである。

 

ハジメはこの世界では魔法使いは、単独行動は厳しいだろうなと感じた。

 

詠唱が長く隙が大きい為である。

 

ハジメはスキル『高速詠唱』もあり、即射できるが。

 

もっとも殴った方が早いとも感じている。

 

そうしているうちに広間のラットマンは全滅していた。

 

ハジメ達召喚組の戦力では一階層の敵は、弱すぎるらしい。

 

生徒たちの優秀さに苦笑いしながら注意する団長。

 

「それとな・・・・・・今回は訓練だからいいが、

 

魔石の回収も念頭に置いておけよ。

 

明らかにオーバーキルだからな」

 

メルド団長の言葉に香織達魔法支援組は、

 

やりすぎを自覚して思わず頬を赤らめるのだった。

 

 

 

そんなやり取りを見つつ、ハジメはスキル『直感』をオンにし、

 

気を緩めていた。これなら問題ない。

 

後は、どこで計画を実行に移すかを考えていた。

 

ハジメはこの時油断していた。長いこと戦場から遠ざかったことで、

 

勘が鈍っていた。悪意というものはどんな時でもあるものだということを。


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