その頃トラウムソルジャーの方はかなり数を減らしていた。
ハジメの指示が効いたためである。
その間に、メルド団長は回復した騎士団員と香織を呼び集め、
光輝達を担ぎ離脱しようとする。
「待って下さい! まだ、南雲君がっ!」
「ハジメの作戦だ! ソルジャーどもを突破して、
安全地帯を作ったら魔法で一斉攻撃を開始する!
ハジメなら即座に離脱できるはずだ! 魔法で足止めしている間に、
ハジメが帰還したら上階に撤退だ!」
その頃ハジメは先程と同じ攻撃を繰り返していた。
狙うのは足の部分。そこを集中的に攻撃して、
頭を床から抜かせない作戦だ。
まだかと思いつつもここで例の作戦を決行するつもりだ。
上階へ上がったら、混乱の中から離脱するのだ。
「悪いが上にはいかせない。この階にいてろベヒモス」
ハジメはそう呟くと攻撃を続けた。
その頃、香織がみんなに叫んでいた。
「皆、待って! 南雲君を助けなきゃ!
南雲君がたった一人であの怪物を抑えてるの!」
その言葉に橋の方を見る生徒達。
影が動くたびにベヒモスが傷ついていくのである。
「あの影、南雲か? どんな速さで動いてんだよ・・・」
「攻撃が全然見えない・・・・・・」
あまりの光景に呆然とする生徒達。
「そうだ! ハジメがたった一人であの化け物を抑えているから撤退できたんだ!
前衛組! ソルジャーどもを寄せ付けるな!
後衛組は遠距離魔法準備!
ハジメが離脱したら一斉攻撃で、あの化け物を足止めしろ!」
「頃合いか!」
ハジメは魔力が後方から高まっているのを察知。
ベヒモスから離脱を開始した。
攻撃が止んだため、ベヒモスが顔を出すが、
次の瞬間、あらゆる属性の魔法攻撃が殺到した。
ダメージはないが、足止めにはなっている。
「よし!」
そこまで見たハジメは上層階の階段へ向かい走る。
しかし、その直後ハジメは驚愕する。
多数の魔法の中から、火球が明らかにハジメを狙い向かってきた。
すぐさま火球を槍で弾き、スキル『千里眼』で過去を見て犯人を探す。
(檜山!)
すぐに犯人を割り出し、そちらへ向かい走るハジメ。
直後、『直感』が後方からベヒモスが接近しているのを探知。
即座に飛び退くハジメ。
しかし、ついに橋が崩落を開始。ベヒモスと一緒に落下を開始した。
「なめるな!」
ハジメは崩落していく橋の欠片を足場に跳躍を続けたが・・・・・・
(間に合わない!)
落下スピードの方が早くハジメは奈落の底へ落下していく。
ハジメは生徒達や騎士団員達の、
絶望を内包する様々な表情を見ることとなった。
(計画変更。ここで離脱する!)
ハジメは計画を変更し、ここから迷宮の最奥部を目指すと決めた。
だが・・・・・・
「檜山・・・・・・地上に戻り次第お前を殺す。
・・・・・・楽に死ねると思うなよ」
檜山はハジメの逆鱗に触れた。
落下していくハジメの顔は、ぞっとするほど冷たい笑みを浮かべていた。
一方の生徒達は迷宮を無事脱出した。
だが、どの面々も表情が暗い。
それほどハジメの死が衝撃的だったのだ。
あの戦闘能力をもってしても死ぬ。
いや、そもそもあの戦闘能力になれるのか?
絶望的な思いを抱えていた。
一方、メルド団長も表情が暗い。
いきなり召喚組の最高戦力を失ったのだ。
あの危機的状況での冷静な判断力、指揮能力は稀有なものだった。
あの召喚組を次に率いるとなれば光輝だが、ハジメには劣る。
戦力の大幅なダウンは避けられまい。
ため息を吐きつつ、ハジメが死亡したことを報告に向かった。
ホルアドの町に帰還した生徒達のほとんどは、すぐに眠りについた。
その頃、檜山はとある人物にハジメ殺しで脅されて、手駒にされた。
だが、彼らは知らない。ハジメが仲間の裏切りを決して許さないことを。
そして、裏切者がどのような無惨な最後を遂げてきたのかを。