ハジメは奈落の底へ落下の途中で、
宝物庫から巨大な弓であり飛行船である、天舟マアンナを取り出す。
落下が止まり、ハジメは宙に浮いた状態になった。
ハジメはマアンナを操り、緩やかに降下していった。
ハジメは奈落の底に着くと、マアンナと槍を宝物庫にしまう。
そして、宝物庫から神造兵装の剣である無毀なる湖光(アロンダイト)を取り出した。
同時に『千里眼』や『直感』といった各種スキルをオンにする。
「さて、どんな魔物が出て来るか・・・」
そう呟きハジメは通路を進み始めた。
洞窟は巨大なものだった。
縦横が大きく隠れる所も多い。
しばらく進んでいると、四辻の分岐点に到着した。
そこにはウサギに似た魔物がおり、ハジメを見るなり襲ってきた。
ハジメはそれを無造作に切り捨てる。
そして、ふと思った。これを食べたらどうなるのかと。
図書館の本には魔物の肉には毒があり、食べると肉体が崩壊すると書いてあった。
だが、ハジメにはスキル『頑健』や『天性の肉体』があり、毒は効かない。
火の魔術で肉を焼き始めるハジメ。途中、オオカミに似た魔物が襲ってきたが、
振り向かずに切り捨てる。
肉が焼けたので食べ始めるハジメ。
ジビエの味だなと場違いな感想を抱いた。
食べ終わると何か肉体に違和感を感じた。
ステータスプレートで確認すると、
自分が持っていなかったスキルがついている。
これはいいとハジメはにんまりした。
魔物を食べるとスキルが追加されるようである。
先程倒したオオカミも食べると、新たなスキルが追加された。
「それじゃあ、次行くか」
ハジメはさらに奥へ通路を進む。
その目は捕食者の目をしていた。
しばらく歩くと、今度はクマに似た魔物に遭遇した。
「悪いが俺の餌になれ」
そう呟き、アロンダイトの真名を開放する。
「最果てに至れ。限界を超えよ。彼方の王よ、この光をご覧あれ!
『縛鎖全断・過重湖光』(アロンダイト・オーバーロード!)」
アロンダイトを全力で振りぬくと、魔物は真っ二つになり、
勢い余って地面にアロンダイトがめり込む。
その時、ガキンと地中から音が鳴った。
何だ? そう思い地面を掘ると、
神秘的な美しい石が出現した。液体がぽたぽたと落ちている。
ハジメは知らなかったが、その石は『神結晶』と呼ばれる伝説の石だ。
内包する魔力が飽和状態になると、液体となって溢れ出す。
それを『神水』と呼び、これを飲んだものはどんな怪我や病も治るという。
解析の魔術を使い、これが神秘の塊であり、効能も把握できた。
顔が思わずにやけるハジメ。安全なところで内包する魔力を抽出すればいい。
解析も完了しているから、投影で同じ物の複製も可能だ。
喜びながら魔物の解体作業に入った。
ハジメが迷宮で魔物を食い荒らしている頃、
雫は王宮内の一室で未だ眠りについている親友の香織を見つめていた。
あの日からすでに五日が経過している。
あの後高速馬車に乗って、一行は王国へと戻った。
勇者の同胞が死んだ以上、国王にも教会にも報告は必要だった。
帰還を果たし、ハジメの死亡が伝えられた時、王国側の人間は誰もが愕然とした。
召喚組の・・・いや、王国の最高戦力の死亡はあまりにも衝撃的であった。
王は茫然自失とし、イシュタルは、
神は我々をお見捨てになられたのかと呟くほどであった。
王宮内にもすぐに噂は広まり、皆が不安を感じていた。
問題はその後に起こった責任の所在である。
メルド団長をはじめとした騎士団、軽率な行動をした檜山達、
魔法でハジメを誤爆した魔法組。
これらが槍玉にあげられ、誰が責任を取るかで揉めたのである。
長い議論の結果、これは不慮の事故であるとして片づけることが、
国王の一言で決まった。
これ以上の戦力低下は容認できないとの判断である。
しかし、問題は魔法組内部で起こっていた。誰がハジメを誤爆したのか?
それぞれがあいつではないかという疑心暗鬼に陥ったのである。
前衛組も不安を感じていた。
ハジメに起こった誤爆が自分に起こるとも限らないからである。
光輝がリーダーシップを発揮して纏めようとするも効果は薄かった。
以前ならハジメが裏で調整を行っていたためである。
ハジメが裏で利害調整を行い、
光輝がリーダーシップを発揮して率いていたのである。
しかし、ハジメがいなくなりそれぞれの利害が噴出したのである。
最終的にメルド団長が何とか纏めたが、その表情は暗い。
ハジメがいなくなった途端にこのような事態になるとは・・・。
戦力面以外でもあまりにもハジメの死亡は大きすぎた。
そう思うメルド団長であった。
そのような事態の中で雫は思う。
私達はあまりにハジメに頼りすぎていた。
ハジメなら何とかしてくれる。
普段は目立たないけど、その能力でいつも皆をフォローしていた。
それについみんな頼ってしまっていた。
それが今回の事態を引き起こしていると。
雫は窓の外の空を見上げた。
その空は雫の心を映すように、曇っていた。