ありふれたFGOで世界最強   作:妖怪1足りない

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金髪の吸血姫

「ああ、面倒だ」

 

ハジメは王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)で武器を射出。

 

魔物を屠っていた。

 

これは、ハジメにしては珍しい光景である。

 

通常ハジメは敵に応じて適した武器を取り出して戦う。

 

ギルガメッシュのように適当に武器を射出はしないのである。

 

ハジメは武具は職人が魂込めて作ったものであり、

 

丁寧に扱うべきと考えているからだ。

 

仮にギルガメッシュとハジメが相対した場合、相性は最悪である。

 

即座に殺し合いが展開されるであろうが、

 

それでもハジメが勝つだろう。

 

賢王のギルガメッシュなら、ハジメは命令に従うなりするだろう。

 

流石にハジメも精神的疲労を抱えていた。

 

いかに魔除けのルーンを張り、そこで睡眠を取るなどしても、

 

長期間迷宮を踏破するのは精神的に疲労するのである。

 

 

 

すでに五十階層降りてなお最奥に着かない。

 

そして、このフロアは異質であった。

 

脇道の突き当りにある開けた場所には、

 

高さ三メートル荘厳な両開きの扉があり、

 

その扉の脇にはサイクロプスとおぼしき、

 

彫刻が半分壁に埋め込まれるように鎮座していたのだ。

 

『直感』は良い意味と悪い意味両方の警告を出していた。

 

とはいえ、ようやくヒントになりそうなものが出てきたのだ。

 

行かないという選択肢はない。

 

ハジメが扉の前まで行くと魔法陣が扉に書いてあった。

 

面倒だと宝物庫から破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)を取り出し、

 

扉の魔法陣を破壊する。

 

その途端、両側のサイクロプスの彫刻が動き出した。

 

「邪魔だ」

 

ハジメは即座にゲート・オブ・バビロンで武器を射出。

 

哀れサイクロプスは何の出番もなく殺された。

 

ハジメは何の感慨もなく、扉を開けた。

 

 

 

部屋に入ると、部屋の中央に巨大な立方体が置かれていた。

 

ハジメはその立方体に近づいていく。

 

「・・・・・・だれ?」

 

その声は弱弱しい少女の声であり、ハジメは出元を探す。

 

すると立方体の上の部分に、生首のように生えている人の頭部があった

 

「人・・・・・・なのか?」

 

ハジメが呟くと、少女は返答し、

 

「助けて・・・・・・お願い!」

 

ハジメは考え込むと宝物庫からある物を取り出した。

 

それは黄金の天秤であった。

 

「とりあえずなぜ封印されているのか理由を聞かせてくれ。

 

その答え次第で救出する。嘘はなしでな」

 

ハジメがそう言うと少女はしゃべり始めた。

 

自身が裏切られたこと。

 

自分は先祖返りの吸血鬼であり、凄い力をもっていること。

 

その力を使って頑張ったが、ある日お前はもういらないと。

 

殺せないから封印すると。

 

「つまりお前は王族だったということか?」

 

ハジメの問いにコクコクとうなづく少女

 

「殺せないとはどういうことだ?

 

例え首が切られても再生可能ということか?」

 

「それもだけど・・・・・・魔力、直接操れる。陣もいらない」

 

「それは・・・・・・凄まじいな」

 

ハジメは答え、天秤を見る。

 

天秤は全く動いていなかった。

 

実はこの天秤、嘘発見器である。

 

質問の回答に嘘がある場合、片方に天秤が傾くのだ。

 

『ルールブレイカー』!

 

ハジメは問題ないと判断。

 

立方体に『ルールブレイカー』を突き刺した。

 

たちどころに立方体は壊れ、裸の少女が現れた。

 

それを見てハジメは宝物庫から、適当なマントを取り出し、少女に渡す。

 

服の方は後でルーン魔術を使って作ればよいと考えた。

 

ルーン魔術は組み合わせ次第で、大体の物が作れる便利な魔術である。

 

「・・・・・・名前、なに?」

 

「南雲ハジメ。お前は?」

 

「・・・・・・名前、付けて」

 

「は? 自分の名前忘れたのか?」

 

「もう、前の名前はいらない。・・・・・・ハジメの付けた名前がいい」

 

「うーん・・・・・・」

 

ハジメは悩んだ。名前、名前・・・・・・

 

そう考えている時、一人の女性の名前が浮かんだ。

 

殺人機械にまで堕ちた自分を、人に戻した、前世でただ一人愛した女性。

 

そして、自らの手で殺さねばならなかった大切な女性の名前を。

 

「・・・・・・”ユエ”はどうだ?」

 

「ユエ?・・・・・・ユエ・・・・・・ユエ」

 

「ああ。俺の故郷で月を表すんだよ。

 

・・・・・・そして、俺の中で一番大切な・・・・・・大切な名前だ」

 

ハジメは遠くを見つめるような表情で言った。

 

「・・・・・・んっ。今日からユエ。ありがとう」

 

「ああ。こちらこそよろし・・・」

 

 

 

 

そう考えていた時、『直感』が警告を鳴らした。

 

「上か!」

 

ハジメは少女を抱え、『縮地』で離脱する。

 

上から降りてきたのは、強いていうならサソリに近いものだった。

 

こちらを威嚇している。

 

「ユエ。少し待ってろ。すぐ終わらせる」

 

ハジメはそう言ってユエを床に降ろす。

 

「固有結界展開」

 

ハジメがそう言った瞬間、世界が塗り替わる。

 

燃え盛る無数の剣の荒野が姿を表す。

 

「これは・・・・・・」

 

ユエが困惑した表情を浮かべると、ハジメは、

 

「『固有結界』・・・術者の心象風景をカタチにし、

 

現実に侵食させて形成する結界だ。

 

結界内の世界法則を、結界独自のモノに書き替えたり、

 

捻じ曲げたり、塗り潰すことができる禁呪の代物だ」

 

ハジメはそう言うと、術式を展開する。

 

「此処に至るはあらゆる収斂。縁を切り、定めを切り、業を切り。

 

我をも断たん無元の剣製(つむかりむらまさ)」

 

すべての剣が砕けて雪の結晶のように散り、ハジメの手にただ一振りの刀が残る。

 

「――即ち。宿業からの解放なり!」

 

ハジメが刀を振るった瞬間、地面から凄まじいまでの火炎が吹き出し、

 

サソリもどきを悲鳴をあげる間もなく焼き尽くす。

 

「固有結界解除」

 

後には、ハジメとそれを見つめるユエの姿だけがあった。

 


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