【ライセン大峡谷】を走る物があった。
トータスの住民から見れば何かはわからないが、
地球の住民からみればそれが特殊大型装甲車両と見えるだろう。
しかし、これの本来の目的は別の所にある。
走っている物の名前は『虚数潜航艇シャドー・ボーダー』
虚数空間を移動できる乗り物である。
ハジメが運転をし、ユエは助手席に座っていた。
二人は会話をしながらシャドー・ボーダーを走らせていた。
この峡谷では魔法が使えない。
理由は発動した魔法の魔力が散らされてしまうからである。
そのような場所であるため、シャドー・ボーダーに近づいてくる魔物は、
王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)から武器を射出し、
魔物を蹴散らしながら走っていた。
このためシャドー・ボーダーが走った跡には魔物の死体が散乱していた。
しばらくシャドー・ボーダーを走らせていると、
双頭のティラノサウルスみたいな魔物に出会った。
それ自体は別に珍しくないのだが、
その足元で半泣きになりながら、逃げ惑うウサ耳の少女がいた。
そして、シャドー・ボーダーを見つけると、こちらへ全力で走ってきた。
双頭ティラノサウルスも引き連れて。
「はあ。仕方ない。ちょっとあの魔物退治してくる」
ハジメはそう言うと、シャドー・ボーダーを止め、天井部分に乗る。
そして、宝物庫から朱色の魔槍ゲイ・ボルクを取り出し、魔力を込める。
『刺し穿つ死棘の槍』(ゲイ・ボルク!)
そして、真名開放を行い双頭ティラノサウルスに投擲した。
今回はハジメの筋力、幸運などが合わさりすぐに音速を突破。
双頭ティラノサウルスの心臓をぶち抜き、そのまま反対側へ抜けていく。
ハジメの手にゲイ・ボルクが戻ると同時に、双頭ティラノサウルスは倒れた。
その衝撃でウサ耳少女は吹き飛び、シャドー・ボーダーに飛んでくる。
「きゃあああああーー! た、助けてくださ~い!」
「悪い。無理。一張羅が汚れるから」
ちなみにハジメの服は、FGOの斎藤一の初期の服装を模したものである。
ウサ耳少女はシャドー・ボーダーの側面に顔面から激突した。
気絶はしてないようだが、痛みをこらえて動けないようだ。
「・・・・・・なんて残念なウサギさん」
ユエの声がハジメの心の声を代弁していた。
「大丈夫か?」
ハジメがウサ耳少女に声を掛けたかと思いきや・・・
「よし。シャドー・ボーダーに傷はないな」
心配したのはシャドー・ボーダーの方だった。
ハジメの心の中では、シャドー・ボーダー>ウサ耳少女である。
ウサ耳少女の傷は治るが、シャドー・ボーダーは複雑な機構を持った代物だ。
仮に修理となると厄介なのだ。
この行動はハジメの中では自然な行動だった。
「先程は助けて頂きありがとうございました! 私は兎人族ハウリアの一人、
シアといいます! とりあえず、私の家族も助けて下さい!
ものっすごくお願いします!」
そして、性格も中々に図太かった。
「さてと・・・ユエ、峡谷をとっとと抜けるぞ」
「・・・・・・ん」
『直感』が物凄く面倒な厄だと告げたので、さっさと逃げようとするハジメ。
「逃がしませんっ!」
ガシッとハジメの腰に腕を回してつかむシア。
「ええい! 放せ! 俺の『直感』が厄だと告げてるんだ!
俺達も忙しい! 死ぬ気でやれば何とかなる! だから放せ!」
実際前世でハジメは戒厳令の敷かれた都市に潜入。
任務遂行後、その都市から離脱ということをやっている。
死ぬ気でやれば何とかなるとはここから来ている。
「いいえ逃がしません! そうしないと未来が変わっちゃいます!」
この言葉にハジメが反応する。
「お前・・・千里眼、もしくは未来視の類を持ってないか?
少し話を聞いてやる。話をしてみろ」
迷宮を抜けた途端に面倒事に巻き込まれるとは。
幸運EXは仕事をしているのかと思うハジメであった。