「改めまして、私は兎人族ハウリアの長の娘、シア・ハウリアと申します。実は・・・」
シアの話の中身を要約するとこうだった。
ハウリアと名乗る一部族達は樹海にて百数十人規模の集落を作り、
ひっそりと暮らしていた。
そして、シアが生まれた。一族は大いに困惑した。
普通は濃紺の髪なのに、青みがかった白なのだ。
魔力まで有しており、直接魔力を操る術と、とある固有魔法まで使えたのだ。
何とかシアを隠して育ててきたが、ついにばれて一族ごと樹海を出たのだ。
北の山脈地帯に逃げようとしたが、帝国兵と出くわし、峡谷に追い詰められたのだ。
「・・・・・・気が付けば、六十人以上いた家族も今は四十人ほどしかいません。
このままでは全滅です。どうか、どうかお願いです! 助けてください!」
それを聞いたハジメは視線を宙にさ迷わした後こう言った。
「無理だな」
ハジメの言葉にシアが口を開く前に言葉を続ける。
「千里眼で並行世界の未来も見て出た結論だ。
今のままでは、北の山脈地帯に逃げても俺達がいなくなった後全滅だ。
俺達もやらなければならないことがある。いつまでも守れない。
今のままだとここで全滅か、後で全滅かの違いだけだ」
ハジメの言葉に押し黙るシア。
恐らく彼女は未来視を持っている。
その未来は見えているはずだ。
ハジメの千里眼で見えるものは美しいものばかりではない。
醜く悲劇的な物事まで見えてしまう。
未来が悲劇的だとわかっていて、それでも進まねばならない。
それを彼女はどう受け止めているのだろう。
「・・・・・・まあ、”今のままなら”だがな」
そう言うハジメは自信に満ちた顔で言う。
「何か手があるんですか!?」
シアがそう聞くと、ハジメは答えた。
「その代わりハウリア族には地獄のキャンプを味わってもらうけどな。
とりあえず助けに行くぞ。アレに乗れ」
そう言ってハジメはシャドー・ボーダーを指し示す。
「そういえばお二人の名前を聞いてませんでしたね?」
「南雲ハジメ」
「・・・・・・ユエ」
「ハジメさんにユエちゃんと・・・」
「・・・・・・さんを付けろ残念ウサギ」
「ふぇっ!?」
そんなやり取りを聞きつつ、
ハジメはシャドー・ボーダーのアクセルを全開にして飛ばす。
「そういえば必死で流してましたけど、この乗り物はなんです?
それにハジメさんの投げた槍、魔力が込められてましたよね。
なんでここで使えるんです?」
「まあ、それは走りながらな」
そう言いつつカーブでドリフトをするハジメ。
騎乗EXの能力は伊達ではないのだ。
ハジメはシャドー・ボーダーのことやら、
武器のことやら様々な事を走りながら説明した。
しばらくシャドー・ボーダーを走らせていると、レーダーに相当数の反応と、
魔物の声が聞こえてきた。
「っ。ハジメさん! もうすぐみんながいる場所です!
あの魔物の声・・・・・・ち、近いです!
父様達がいる場所に近いです!」
「わかっている! レーダーでも確認した。さらに飛ばすぞ!」
シャドー・ボーダーの限界ギリギリのスピードで飛ばした先には、
魔物に襲われている兎人族がいた。
「ハ・・・ハイベリア」
シアがワイバーンもどきを見て、呟く。
「ユエ、運転代わりに頼む! そのまま真っすぐ! 宝具で殲滅する!」
ユエに運転を交代したハジメは天井部分に乗り、宝具を展開する。
「神性領域拡大。空間固定。神罰執行期限設定――全承認。
シヴァの怒りを以て、汝らの命をここで絶つ。『破壊神の手翳』(パーシュパタ!)」
ハジメの手に白い光球が現れ、それがハイベリアの頭上に瞬時に移動し出現。
強烈な爆発を引き起こした。
ハイベリアは瞬時に消し飛び、兎人族も地面を転がったが予測範囲内だ。
とりあえず間に合ったかと一安心するハジメであった。