その後、シアと短髪の初老の男性・・・シアの父親が抱き合って喜んでいた。
おっさんのウサ耳・・・ああ、予想はしていた。そりゃ歳を取ったのもいるだろう。
だが、予想以上に誰も得しないなと考えるハジメであった。
シアの父親の名前はカムであり、一族皆がハジメに礼をしてくれた。
ちょっと人を信用しすぎなのではと思うハジメであったが、素直に受け取ることにした。
その後、移動を開始したのだが、流石にシャドー・ボーダーに四十人以上も乗せられるはずもなく、徒歩での移動となった。
当然のように多数の魔物が襲ってきたが、ハジメの王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)になす術なく葬られる。
黄金の波紋から武器が射出され魔物を葬る姿に、驚くハウリア族。
そして、ハジメは何気なしに呟いた。
「峡谷の出口に帝国兵がいるな」
「ど、どうしますハジメさん!?」
「邪魔するなら殺すまでだ」
「でも、同じ人間族ですよね?」
「・・・ん~、ちょっと違うんだよな」
「え? ハジメさん人間族でしょう?」
「あ~、これは体験してもらった方が早いな。帝国兵を実験台にするか」
そうして峡谷の出口に到着すると、帝国兵がおり、下卑た言葉を口にしつつ、なめきった態度をしていた。
ハジメはこいつらの説得は無理と判断し、スキル『カリスマ』と『神性』を最大にしてオンにした。
その途端、ハジメの眼の色が全てを見透かすような空色に変わり、その場の空気が一瞬にして歪んだ。
ハジメを除く全員が動けなくなり、恐ろしいまでの圧力がのしかかった。
「我が命じる。帝国兵共膝まづけ」
その途端、帝国兵達が膝まづく。自らの意思ではなく、見えない何かからの圧倒的な命令。帝国兵達は冷や汗が止まらなかった。
「我は問う。他の兎人族はどうした? 帝国に移送したのか? 答えよ」
その中から隊長らしき人物が答える。
「兎人族は・・・数を絞って・・・全て移送済みです」
ハジメは眉をピクリと動かすとさらに言葉を続ける。
「それは嘘ではないな。答えよ」
「嘘は・・・申しておりません」
隊長らしき人物は真っ青な顔になりつつ答える。
「しからば我が命ずる。帝国兵共、全員自害せよ」
そうハジメが命ずると帝国兵達は剣を抜き次々と自らの首を斬っていった。
あまりのことに思考が追いつかない兎人族達。
そして、帝国兵達が全員自害するとスキルをオフにする。
途端に空気が戻り、兎人族達は皆へたり込んだ
「ハ、ハジメさんあなたは一体・・・」
へたり込んだシアが問う。それに対してユエが答える。
「ハジメは異世界の神々の王の子・・・・・・創世と滅亡を司る神霊」
「えっと・・・・・・それってほぼ神様?」
「・・・・・・ん」
ユエの返答に絶句する兎人族達。それに対してハジメは、
「ああ。普段は力を抑えているからな。まあ、正確にいうと神造兵器に近いか。インドという国の神性全部と、他に世界中の歴史上の英雄、王、騎士とかの技能等も取り込んでいるし」
「何ですかそれ!? もう神とかそういう領域越えてるじゃないですか!」
「だから言ったろ。ちょっと違うって。外側だけ人で中身はもう別物。むしろ亜人族に近いぞ? それより連中の馬や馬車があるからあれを利用させてもらおう」
そう言って馬の方に向かうハジメ。ひょっとしてとんでもない人に頼ってしまったのではないかと思うシアであった。