ハジメ達が【ハルツィナ樹海】に到着した頃、遥か彼方からその様子を見ている者がいた。
ハジメを下界に送り込んだ神、インドラである。座っているインドラの後ろから声をかける者が現れた。
「インドラよ。何を見ている?」
「ブラフマーか。何、送り込んだ息子の様子を見ているのよ」
そういうインドラの横にブラフマーは座り、インドラに尋ねる。
「インドラよ。何故あやつを選んだ?」
「何故とは?」
「あやつはその功績により、英霊の座に登録が決まっていたはずだ。それをわざわざ使い、過去に送り込むという面倒なことをしたのはなぜだ?」
「ふむ。エヒトという下級世界の神が、上位世界の我らの世界に干渉した時、神々で対応を協議したな?」
「ああ。結果、懲罰するという結論を下し、お主に対応を任せたのだったな」
「それよ。神秘が薄くなった現世では我々は現界できん。となればカウンターパートを作る必要がある」
「それがあやつだったと?」
「そうだ。あの生存本能に戦闘経験。カウンターパートにするには打って付けだったのだ」
「しかし、あやつがエヒトを倒すとは限るまい?」
「確かに。しかし、倒せなくてもよいのだ。エヒトとやらの思惑通りにはいかないようにしてくれればいい。
最も、エヒトとやらを確実に殺せる力を持たせているがな」
「それはそうだが・・・エヒトとやらを倒せなければシヴァ神達に叱られるのではないか?」
「ククク・・・今は南雲ハジメだったか・・・。あやつは確実にエヒトとやらを殺すよ」
その言葉にブラフマーはいぶかしむ。インドラはそれを見て笑顔で答えた。
「あやつは仲間の裏切りは許さんが、仲間に対する危害には絶対に落とし前をつける」
「なるほど・・・いずれエヒトとやらは強力な力を持ち、思惑通りにさせないハジメに苛立ち・・・」
「本人か仲間に危害を加える。そうなれば・・・・・・」
「ハジメは落とし前をつけるために戦う。・・・そういうことか」
「ああ、その通りよ。その時にエヒトとやらは絶望を経験するだろうさ」
そう言って再度、インドラ達はハジメ達を覗き込んだ。
「・・・・・・」
「どうしましたかハジメさん?」
急に空を見たハジメにシアが尋ねる。
「見られているな」
「えっ!? もう他の亜人族が!?」
ハジメの言葉に慌てるシア。
「違う。ここではない遥か彼方からだ」
「遥か彼方って・・・何も見えませんけど?」
「違う世界だからな。・・・・・・見ているのはインドラと・・・ブラフマーか?」
「インドラって・・・ハジメさんの父親の?」
「ああ。下界に送り込んだ神だ」
「ブラフマーっていうのも神様何ですか?」
「創造神だ」
「それってめちゃくちゃ偉い神様なのでは?」
「シヴァ神、ヴィシュヌ神と同等の最高神だな」
「それが何で私達を見てるんです?」
顔を青ざめさせながらハジメに尋ねるシア。
「見ているのは俺だ。理由は知らん。が、あまり考えない方がいい。純粋な神の考えなど、神に造られた神にもわからん」
そう言ってシアの父親のカムの後に付いて行くハジメ。
慌てて付いて行くシア。
その様子をインドラ達は遥か彼方から見ていた。