亜人族の案内で進むこと一時間程、突如、霧が晴れた場所に出た。
そこには門があり、そこをくぐると別世界であった。
「ふむ。素晴らしい。美しさと調和がとれた町よな」
ハジメはそう感想をもらす。
巨樹の中に住居があり、どの木もビルにして二十階ほどもあった。
「ふふ、フェアベルゲンを気に入ってくれてなによりです」
アルフレリックの表情が喜色に変わった。
アルフレリックに会談の場へと案内されたハジメとユエは、アルフレリックから説明を聞かされていた。
オスカーの指輪が大迷宮の踏破者である証であり、ハルツィナ大迷宮への有資格者だという。
説明の最中、階下で揉めあう声が聞こえてきた。
ハジメとアルフレリックは顔を見合わせ、階下に向かった。
階下についてみると、ハウリア族と他の亜人族でもめ事が起きているらしい。
すでにシアとカムは殴られた跡がある。
ハジメは抑えていたスキル『カリスマ』と『神性』を引き上げ、言葉を発する。
「そこの亜人族よ。ハウリア族は我のものだ。それに手を出す意味がわからぬか?」
「貴様のような人間の小僧が有資格者だというのか!敵対してはならない強者だと!」
その言葉にアルフレリックが止めに入る。
「そうじゃ! それにやめよ! ハジメ殿は・・・!」
「・・・・・・ならば今この場で試してやろう!」
そう言って熊の亜人族がハジメに襲いかかった。
「愚かな・・・。獣風情が・・・。凶れ」
ハジメは歪曲の魔眼を発動。熊の亜人の四肢をあらぬ方向へ捻じ曲げた。
「ぎゃああーーーーーー!!」
「これでわかったか? わからぬならこの場の全員をこれと同じようにするが?」
この言葉に全員が押し黙る。
アルフレリックがここで口を開いた。
「ハジメ殿は異世界の神。ユエ殿は吸血鬼族じゃ。人間族ではない」
その言葉に驚く亜人達。異世界の神が何故ここに? といった顔を向ける。
「とりあえず詳しいことを話し合おう」
そうアルフレリックは話した。
こうして話し合いが開かれ、ハジメが口火を切る。
「して、亜人族としてはどうなのだ? 我は大樹のもとに行きたいだけだ。
亜人族と戦う気はない。しかし、襲われては敵味方の区別なく殲滅するしかなくなる。
亜人族側の意思統一を図ってもらいたいのだ」
「長老衆は敵対しないというのが総意だ。末端の者にも伝える。しかし・・・」
「絶対ではないと?」
「そうだ。手加減して殺さないようにしてもらうのは・・・」
「我には出来るが、神を殺しにかかる以上それは無理だ」
「なれば我らは大樹への案内を拒否させてもらう」
「ほう?」
「ハウリア族には案内してもらえると思わないことだ。彼らは罪人だからな」
その言葉にハジメは魔力を一気に上げていく。
「お主等は勘違いをしている。ハウリア族は我のものだ。それに手を出すということは、それなりの覚悟を持っていような?」
ハジメの強烈なプレッシャーに冷や汗をかく長老衆。
「アルフレリック。我がハウリア族に放った一撃を見たであろう? あれは何重にも威力を抑えている。
その気になればフェアベルゲン、いや森丸ごと消滅も可能であるぞ?」
「そんなこと・・・!」
「出来ぬと思うならやって見せようか? 責任はお主等にあるぞ? 神性領域拡大・・・」
「待ってくれ! フェアベルゲンから案内を出すと言ってもか?」
「我が案内を頼んだのはハウリア族だ。それ以外は一切認めぬ」
「なぜそこまでハウリア族を?」
「神たる我に嘘を付けと? これはハウリア族との契約だ。であるなら契約を切るわけにはいかぬ」
「・・・ハウリア族はハジメ殿の奴隷として認めよう。これでよいか?」
「アルフレリック!」
「わかるであろう。ハジメ殿が本気であることを。亜人族全員の命を天秤に掛けることはできぬ」
そこから話は進み、ハジメ達は大樹へと向かうこととなった。
「えと・・・これで家族は大丈夫なんですよね?」
「まあな」
ハジメは『カリスマ』と『神性』をオフにし、元に戻った。
「あの・・・こういう場合どう表現したらいいんでしょう?」
「・・・・・・喜べばいいと思う」
ユエの言葉にシアはハジメに全力で抱きつく。
「ハジメさん! ありがとうございます!」
「うおっと。いきなりなんだ?」
「むっ・・・・・・」
シアの行動に一瞬不機嫌そうになるものの、特に何もしなかった。
(だが・・・・・・)
周囲の亜人族には苦々しく思う者や、敵意を向ける者達がいた。
(これは長老衆の命令無視して攻撃してくるな)
そう思うハジメはとある手段を考える。
(本来やりたくはなかったが、・・・・・・ハウリア族をこのままにするわけにはいかないな)
ハウリア族の良い点はそのままに、悪い点を直す。
その手段はあるが、出来ればやりたくないハジメであった。