その日ハジメは教室の中で始業の時間が始まるまで寝ていた。
するとそこへ一人の女子生徒が近づいてきてハジメを起こした。
「南雲君起きて。もうすぐ授業はじまるよ」
それと同時に他のクラスメートの男子から嫉妬の視線を感じ、
ハジメが顔を上げるとクラスメートの白崎香織が立っていた。
「ああ、おはよう白崎さん」
そう言いながら、こちらを特に睨んでいる男子四人組、
檜山大介、斎藤良樹、近藤礼一、中野信治に殺意を込めた視線を向けると、
四人共視線をそらした。
ハジメは1年の時この四人に絡まれたのだが、
校舎裏で逆に八極拳の練習台にしたのだ。
以来こちらを睨んできても、手は出してこなくなった。
「?。南雲君どうしたの?」
「いや、別に何でもない」
そういいつつ同じく机の上に寝ていたフォウを撫でる。
フォウはハジメのペットだが、クラスのマスコットキャラでもあるのだ。
もっともその正体を知っているハジメが、
フォウを常に監視下に置くためという理由もある。
「フォウ君気持ちよさそう」
香織が笑顔でフォウを見る。
美少女の笑顔を見て、これは人気が出るし、嫉妬の視線も受けるわけだと理解する。
「ハジメ、おはよう」
「雫、おはよう」
「また、香織は南雲に構っているのか。放っておいていいだろ」
「全くだぜ。放っておいても問題ねえだろ」
そう言った男子の一人は天之河光輝。
成績優秀、容姿端麗、スポーツ万能の完璧超人。
そして、八重樫道場に通う門下生でもあり、ハジメには一度も勝てていない。
加えて成績面でもハジメが勝っており、ハジメをライバル視している。
もう一人の男子は、坂上龍太郎といい光輝の親友である。
努力とか根性とかが大好きな人間であり、傍から見ると才能だけに見えるハジメは、
嫌いらしい。現にハジメを見て顔を歪ませている。
雫も声を掛けたことで、さらに男子の嫉妬の視線が突き刺さる。
いい加減うんざりしてきたハジメは、スキル『深淵の邪視』を発動。
クラスメートを恐怖状態にしてこちらを見れないようにした。
ため息を吐きながらハジメは思う。こういうこともあるが、この世界は平和だ。
少なくとも前世で体験したようなことがない。
しかし、インドラは己を鍛えよと言った。そうなるといつそうなるのか?
叶うならばこの平和がいつまでも続きますように。ハジメは心の中で祈った。
しかし、その思いはあっけなく砕け散る。
教室全体にいきなり魔法陣が展開したのだ。
騒ぎ出すクラスメート。
その中でもハジメは魔法陣を消すべく宝物庫から、
破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)を取り出し魔法陣の破壊を試みる。
しかし、破戒すべき全ての符を発動するより早く魔法陣が爆発。
その後にはそこにいた人間の姿は無かった。
『深淵の邪視』ジル(キャスター)のスキル。
ハジメが使うと相手がハジメを見ることはほぼ不可能。
雫、香織という美少女に話しかけられている時に使用がほとんど。