大樹に向かって歩いていたハジメ達であったが、その大樹は枯れていた。
しかし、オスカーの指輪と同じ模様が刻まれた石板があった。
だが、入口らしきものはない。石板に書いてあることをよく読むと、
どうやら他の迷宮の神代魔法四つ。その中に再生魔法を含まなければならないらしい。
「どうやら他を回らないといけないらしいな。仕方ない」
ハジメ達はハウリア族と別れてシャドー・ボーダーを走らせ始めた。
「そう言えばハジメさん次の目的地はどこですか?」
空調の効いた車内でシアが尋ねてくる。
「『ライセン大峡谷』だ。そこに大迷宮がある可能性がある」
「じゃあ、今日は野営ですか? それとも近くの村や町に?」
「一旦町に寄る。食料とかの必需品と、素材の換金もしないとな。
それにやっておきたいこともある」
「やっておきたいこと?」
「ああ。『陣地作成』スキルを使ってやっておきたいことだ」
「ところでハジメさん。先ほど私に着けた首輪。外れないんですけど」
「悪いが着けておいてくれ。そうでないとすぐに人さらいに狙われるぞ。
それにはルーン魔術で通信や位置がわかるようにしてある。
それと外すには一定量の魔力を流し込め」
町の近くまでシャドー・ボーダーで走り、途中から徒歩で町を目指す。
流石にシャドー・ボーダーは目立ちすぎる。
町の前には門番がおり、ステータスプレートを求められた。
ハジメは素直にステータスプレートを渡す。
「『剣士』ねえ。それにしちゃあ珍しい武器だな」
「これは刀といってうちの流派の武器なんだ。普通には扱えない代物だ。
後、町に来た目的は食料の補給と素材の換金だ」
「それでそっちの二人は?」
「金髪のは戦闘中にプレートを無くしてな。ウサ耳はまあわかるだろ」
「ああ、なるほど」
そこからは問題なく町に入ることが出来た。
「ハジメさんこの首輪・・・」
「言いたいことはわかるが我慢してくれ。シアの身を守る為だ」
そう言いつつ門番に言われたギルドを見つけ中へ入る。
ギルドのカウンターにはおばちゃんがいた。
「すまない。素材の換金をお願いしたいのだが・・・」
「素材の買い取りだね。それじゃあステータスプレートを見せてくれるかい?」
「? ステータスプレートがあると何か特典があるのか?」
「冒険者と確認できれば一割増で売れるんだよ」
「なるほど」
「他にも宿の料金の割引とかがあってね。登録しておくかい? 登録には千ルタ必要だよ」
ルタとはこの北大陸共通の通貨だ。色で区別され青から金まであり、日本の通貨と同じ区切りだ。
「すまないが買い取り分から引いておいてくれ。今、ちょうど手持ちがなくてな」
「あいよ」
戻って来たプレートには天職欄の横に職業欄があり、冒険者と書かれその横に青色の点がついている。
これは冒険者のランクであり、ルタの色と同じである。
「門番にここで町の簡易な地図がもらえると聞いたのだが・・・」
「ほら、これだよ」
それはハジメが思っていた以上に詳細な地図であった。
「いいのか? これを無料でもらって?」
「あたしが趣味で書いているからね。構わないよ」
「では、ありがたく」
そしてハジメ達はギルドを後にした。
ハジメ達が宿に宿泊して一夜、ハジメは部屋に残るといった。
「えっ? 何でですか?」
シアの問いにハジメは答える。
「言っただろ? 色々と作りたいものがあると。それには集中して細かい作業を必要とする物もあるんだ。
だから外に行くのはシアとユエだな」
そう言ってシアとユエを出かけさせるハジメ。
『陣地作成』スキルを発動し、工房を作る。
「それじゃ始めるか」
ハジメは作業を開始した。
ハジメが気が付いた時には陽がとっぷりと暮れていた。
集中しすぎたかと思った所に、ユエとシアが帰ってきた。
「お帰り。何か問題はあったか?」
「・・・・・・特に何も」
「特にありません」
「必要な物は全部揃ったか?」
「ん。大丈夫」
「ですね。食料もたっぷり買い込みましたし。それにしても宝物庫って便利ですね」
「あくまで俺の投影品だがな。一からとなると今の俺じゃ無理だ」
そう言いながら、ハジメはあるものを取り出す。
「そんでシア。こいつはお前のだ」
ハジメはそう言ってシアに渡す。
それは思った以上に重く、シアは強化の魔法をかけ手に持つ。
「な、なんですかこれ?」
「お前用の新しい戦槌だ。名は『ドリュッケン』。こちらでいうアーティファクトになる。
俺が作ったから神造兵装になるな」
「神造兵装?」
「文字通り神、もしくは星が生み出した兵装のことだ。通常のアーティファクトとは一線を画す代物だ。
使い方はこれに書いてあるよく読んどけ」
ハジメは疲れたから俺は寝ると言い、そのままベッドに倒れこんで眠ってしまった。
それを見て二人はハジメをそのまま眠らせることにした。
翌日、快晴の中ハジメ達は町の出口にいた。
ハジメは後ろを振り返り、ユエとシアを見る。
「それじゃいくか」
旅の再開だ。