ありふれたFGOで世界最強   作:妖怪1足りない

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黒竜

 北の山脈地帯

千メートルから八千メートルの山々が連なる山脈地帯。

だが異常なのはその山々だ。

夏の環境のような木が生えている山もあれば、

真逆の環境のような場所もある。

ハジメ達が到着したのは、秋の紅葉地帯である。

皆がきれいという中、ハジメだけが眼が死んでいた。

千里眼で探ったら香織に殴られる未来しか見えなかった為である。

 ハジメ達は山登りを始めた。

千里眼で場所はわかっている。そこまで歩くのだ。

およそ一時間で六合目に到達。そこで一時休憩となった。

原因は愛子達がばてたことにある。

ハジメ達との体力差が激しいのだ。

ある意味予想の範囲内だったので別に問題ではなかった。

ハジメは眼が死んだままだが。

「先に言っとく。動揺するな」

「どういうことですか南雲君?」

愛子が尋ねる。

「この先に冒険者の物と思しき遺留品がある」

そう言ってハジメは進み始める。

ハジメが進んだ方向には遺留品らしきものが散らばっていた。

ハジメはそれらを回収。さらに先に進む。

そうすると今度はブルタール・・・オークに似た魔物・・・に襲われた跡を発見した。

今度はハジメは川の下流方向へ向かう。

 

 そして滝に到着した。

「滝裏の洞窟に一人生きている」

「他の人達は?」

愛子が尋ねるがハジメは首を横に振る。

それに沈黙する愛子達。

「ユエ、頼む」

「――波城。――風壁」

そうすると滝と滝つぼが真っ二つに割れた。

そうして奥へ進んでいくハジメ達。

そして一人の青年を発見した。

生きていたのはやはりウィルだった。

詳細を話そうとしたウィルを遮り、事情は分かっていると伝える。

そして、生きろと。生きていれば生き残った意味があると伝えた。

 

 日暮れまで一時間、急ぎ山を降りることにしたのだが、黒竜がそこにいた。

体長は七メートルほど。それがいきなりブレスを吐いてきた。

ハジメは退避を呼びかけようとしたが、愛子達が間に合わない。

「『熾天覆う七つの円環(ローアイアス)!』」

7枚の光の盾が花弁のように展開する。

本来FGOには存在しない。その為原典のローアイアスを蔵から出した。

「ぐっ!」

だがその黒竜のブレスは凄まじいまでの攻撃力だった。

一枚一枚と割れていく。

(トロイア戦争で大英雄の投擲を防いだアイアスさえもたないのか!)

流石のハジメも焦りを覚えた。ハジメはともかく、愛子達がもたない。

その間にも一枚一枚割られてゆく。

「――禍天」

そこにユエの重力魔法が直撃。黒竜は地面に叩きつけられる。

これなら効いたと思いきや・・・

咆哮と共に即座に復活。ウィルに狙いを定めて襲いかかった。

「この・・・!」

ハジメは王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)を展開。竜殺しの逸話を持った宝具に絞り、射出した。

危険を感じたのか黒竜は全てを回避するが、またウィルに狙いを絞る。

「ユエ、ウィルを守れ! 先生はそいつら連れて退避しろ!」

ハジメは原典のヴィマーナを取り出し、空へ飛んで行った。

 

 戦場は空中へと移った。

ヴィマーナを駆り、竜殺しの宝具を射出するハジメ。

対して黒竜は追いかけたり、ブレスを吐くが、ヴィマーナのスピードには追いつけない。

次第に黒竜は傷を負っていく。

愛子達はその空中戦を呆然と見つめていた。

どう見てもハジメの乗り物は音速を越えているからだ。

ハジメはどこで仕掛けるか考えていた。

ならばとヴィマーナをユエ達の所へ着地させる。

やはりと言うべきかウィルを狙い攻撃を仕掛ける黒竜。

「ああ、そうだろうな」

そう言ってハジメは一振りの剣を取り出す。

「邪悪なる竜は失墜し、世界は今落陽に至る。撃ち落とす――『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』!」

これは効いた。

地面に墜落する黒竜。

ところが驚いたことに女性に変わった。

これに一同は驚愕する。

「こいつは・・・竜人族か?」

ハジメは頭痛を覚えた。幸運EX仕事しろと。

 

 ハジメは神水を飲ませたうえで、グレイブニルで身体を縛る。

いかに黒竜といえどグレイブニルは破壊できないだろう。

その上でハジメは金属バットを蔵から取り出す。

何をするかと皆が見ていると、黒竜の尻を持ち上げ、そこに思いっきり一本足打法からケツバットをかました。

「ぎゃあああーーーーーーー!」

竜の弱点であるお尻にケツバットは効いた。黒竜は眼を覚ました。

あまりの痛みに声も出せずにいる。

「知ってること全部話せ。次は釘バットでお尻にいくからな」

皆がドン引きする中、黒竜は話し始めた。

 

 要約すると異世界の来訪者について調べに来たらしい。

だが、途中でこの山脈で眠ってしまった。

そこに男が来て操られたという。

その後ウィル達を襲い、ハジメ達を襲った。

最もハジメのバルムンクは流石に効いたらしく、それで意識を取り戻したらしい。

「それは本当か?」

「竜人族の誇りにかけて嘘ではない」

「・・・・・・きっと嘘じゃない」

「ユエ・・・・・・?」

「竜人族は高潔で清廉。だからきっと嘘じゃない」

「ふむ。この時代にも竜人族のあり方を知る者がいるとは・・・」

「・・・私は吸血鬼族の生き残り」

「なんと! 吸血鬼族の・・・。三百年前に滅んだと聞いておったが・・・。

しかし、そこのハジメと言ったか? お主人間ではないな?」

それに愛子が反応する。

「何を言っているんですか! 南雲君は人間です。両親も普通の人でした!」

「いや、違う」

それに対し黒竜はキッパリと否定する。

「そやつの心臓。竜の心臓じゃ。そんな物普通の人間が耐えられるわけがない。

それにそやつ神性を抑えておるな? お主何者じゃ?」

その言葉に皆がハジメを見る。

ハジメはスキル『カリスマ』、『神性』を全開にし、話し始める。

「くく、良く気付いた。我は神々の王インドラが子にして、

創世と滅亡を司る神なり。よくぞ我が正体を見破った!」

「くっ! この神性。間違いなく神か! とんでもない者が召喚されたな!」

ユエとシアを除く全員があっけに取られる。

そしてあまりの圧力に全員が動けない。

「う、嘘ですよね南雲君?」

「本当だ。・・・本来人間として生を終えたかったのだがな」

それはハジメの本心であった。

水色の瞳が寂しさを現していた。

「さて、黒竜よ覚悟は出来ておろうな?」

とどめを刺すべくハジメが近づく。

それをユエが押しとどめた。

ユエの説得に折れたのはハジメだった。

自身がつくづく女、子供に甘いなと思う。

黒竜のグレイブニルを外す。

黒竜はティオ=クラルスと名乗った

ティオは今回の責任を取ると約束した。

そして、ハジメの千里眼は恐るべき物を見た。

「ふむ。不味いな。魔物は万単位だ。ウルの町まで後一日といったところか」

その言葉に愛子は混乱した。トラウマを抱えた生徒達、非戦闘職の愛子。

戦力的にどうにもならない。

「落ち着け」

静かにそれでいて威圧感のある声を出したのはハジメだった。

「忘れたか? 今回は我も参加すると。たかだか数万。滅してくれよう」

普通なら何を言ってと思うところだが、神たるハジメが言うのだ。

勝算があるのだろう。

「さて、町へ戻るぞ」

そういってハジメは全員を転移させた。

 


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