ありふれたFGOで世界最強   作:妖怪1足りない

38 / 72
ウル攻防戦

 愛子達からの情報によりウルの町は騒然となった。

役場にはギルド支部長、町の幹部、司祭達が集まっており喧々囂々たる有様である。

ハジメはやれやれといった様子で、言葉を開く。

「静まれ」

ハジメの厳かでありながら、威圧感のある声に皆が黙る。

「ここには豊穣の女神に、創世と滅亡を司る神たる我がいる。

故に落ち着いて議論せよ」

そう言い放ち全員を落ち着かせた。

「南雲君ごめんなさい」

「別に問題はない。それより、ふふ、生徒を戦場に参加させるのを嫌がっていた、

先生が我を戦場に投入するとは皮肉だな」

その言葉に愛子は言葉に詰まる。

「戯れだ。許せ。どちらにしても放置は出来まい」

「勝算はあるんですか?」

「ふふ。勝算が無ければ住民を退避させている。勝算があるからこそ戦うのだ」

 

 現在、ウルの町は土壁に囲われていた。ハジメが権能で作った即興の防壁である。

その土壁の上にハジメ達はいた。そこに愛子達がやってきた。

「先生か・・・。ティオを操っていた黒ローブの男を捕まえればいいんだな?」

「はい。お願いします」

「・・・・・・その結果どうなっても知らぬぞ」

「わかっています」

「承知した」

愛子の話が終わるのを見計らって今度はティオが話しかけた。

「お主に話が・・・・・・というより頼みがあるんじゃが聞いてもらえるかの?」

「何だ?」

「お主ウィル坊を送り届けたらまた旅に出るのじゃろ?」

「ああ」

「うむ。頼みというのはそれでな。妾も同行させてほしい」

「我らが行く先は困難な道。それでも同行するか?」

その覚悟はあるのかと全てを見透かすかのような水色の瞳がティオをとらえる。

「もちろんじゃ。それにのう・・・妾、自分より強い男としか伴侶として認めないと決めておったのじゃ」

「調査とかはどうするつもりだ?」

「問題ない。ご主人様の側にいる方が絶対効率がいいしの」

「まあ、それは後だ。来たぞ」

ついに魔物の大群がやってきた。

 

 「よくも集めた物だ。数は六万弱。到着まで後三十分」

「ハジメさん」

「・・・・・・ハジメ」

「ふふ。さて始めるか」

そう言って悪童のごとき笑みを浮かべるハジメ。

「聞け! ウルの町の諸君! すでに我らの勝利は確定した!」

ハジメは声を張り上げる。

「ここには二人の神がいる! 一人は豊穣の女神愛子様!

もう一人は創世と滅亡を司る我だ!」

住民がざわざわと騒ぎ出す。

「愛子様は『豊穣』と『勝利』をもたらす! 滅亡を司る我が剣となりて魔物を滅しよう!」

そう言ってハジメはエミヤ・オルタの銃を投影。

「I am the bone of my sword.---So as I pray, unlimited lost works.」

宝具を使用し、プテラノドンもどきを吹き飛ばしていく。

その後住民達を前にして言い放つ。

「愛子様、万歳!!!」

ぬけぬけとのたまった。

それは瞬く間に伝播してゆき、愛子様コールになった。

愛子自身の突き刺さる視線を無視し、魔物達に向き直った。

「それじゃあ始めるか」

 

 突如として砂埃が舞い始める。

「・・・・・・ハジメ何するの?」

ハジメだろうと推測しユエが問う。

「固有結界だ。大群には大群で対抗する」

「え!? 何ですかこの人達!?」

シアが声を上げる。

そこには完全武装した兵士達が多数現れた。

ハジメ自身もブケファラスに乗り、軍団の正面に立つ。

「ここに集うは一人の偉大なる王に率いられた猛者達!

さあ再び集え! 共に最果てを夢見た猛者たちよ! ここに刻む轍は我らの誉れ!

『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』! 蹂躙せよ!」

魔物の大群と王の軍勢が激突する。共に万の大群だが、

『制圧軍略』、『カリスマ』等を使用している、

ハジメの方が押していく。逃げ出していく魔物もいるが、固有結界内ではそれも叶わない。

この光景を町の人は呆然と見ていた。町の周囲が砂漠に変わり、万の兵がいきなり現れたのだ。

この光景には愛子達も呆然としている。

やったのはハジメだが規格外すぎる。これが地球最高峰の魔術師の力なのかと。

「さて、逃がすわけなかろう」

ハジメはブケファラスを走らせ、黒フードの男をブケファラスの後脚で蹴り飛ばす。

気絶した男のフードを剥ぐと、やはり清水であった。

「さて、先生はどうするかな?」

ハジメはため息をつかざるを得なかった。

戦はハジメ側の勝利に終わった。

「皆の者、勝鬨を上げよ!」

兵士達がその呼びかけに応じ勝鬨を上げた。

 

 ハジメ達は場所を町外れに移して、愛子達と合流した。

直接連行されてきた清水を見て愛子はショックを受けた。

「起きよ。面倒な」

ハジメは清水を蹴り飛ばし無理矢理叩き起こす。

そして清水が語ったことは、ハジメが千里眼で見たことと同じだった。

そしてハジメを見て喚きたてた。

「黙れ雑種」

ハジメからの凄まじい圧力を伴う言葉に黙り込む清水。

「本来貴様を殺しても良かったものを、先生に配慮して生かしたのだ。

そもそも貴様など眼中にない雑種。身の程をわきまえよ」

そう言って清水を見下ろすハジメ。

一方、言われた清水は顔を真っ赤にするも、ハジメの圧力に言い返せない。

 

 そして愛子が清水の説得中に事件は起きた。

愛子を羽交い締めにしたのだ。

そして、何かを取り出そうとするが、何故かあせる。

「探し物はこれか? 雑種」

ハジメが取り出したのは、十センチ程の針であった。

「たわけが。武器を隠し持ってないか調べるのは当たり前であろう。

それ、返すぞ雑種」

そう言ってハジメは清水に針を投擲する。

針は清水の額を刺し貫き、清水は崩れ落ちる。

そして今度は、ゲイ・ボルクを取り出す。

「『突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)!』」

そう言って愛子へ向かってゲイ・ボルクを投げる。

ゲイ・ボルクは愛子の横を通り、後方にいた魔人族に命中した。

「見逃すと思うか雑種が」

「南雲君! 清水君が!」

「ああ、そうだな。我が殺した」

「何も殺さなくても!」

「そうしなければ先生が死んでいたのだぞ? 戦場での甘えは命取りだ」

「・・・・・・」

「結果はどうなっても知らぬと言ったはずだが?」

「でも・・・・・・」

「そうだな。非難もされよう。殺したのは我だ。恨みもされよう。我がしたのだからな。

復讐にも答えよう。我はそれだけのことをしたのだからな」

ハジメはシャドウ・ボーダーを取り出す。

「先生の理想は幻想に過ぎん。だが、我のようになるな・・・心が折れぬようにな」

そう言ってユエ達全員を乗せ走り去った。

後には、愛子達と町の喧騒だけが残された。

 

 北の山脈地帯を背にシャドウ・ボーダーが街道を南に疾走する。

ハジメは運転をシアに譲り、外の景色を見ていた。後部座席に乗っているウィルが、ハジメに対し、少々身を乗り出しながら気遣わし気に話しかけた。

「あのハジメさん。あのままで良かったのですか? 特に愛子殿は・・・」

「あれでいい。俺がいない方がいいだろう」

「理由を教えてくれませんか?」

「理由?」

「清水という少年を殺したことについてです」

「敵だから・・・ではダメか?」

「それならば連れて来ないでしょう。あの場で殺した理由です」

「・・・・・・ハジメは一人で背負いこみすぎ」

ユエが会話に加わる。

「・・・・・・愛子を傷つけないようにするため。だからあえて悪役になった」

「それはどういうことでしょうかユエ殿?」

「・・・・・・あそこまで堕ちたら誰かが殺さなければならない。

でも愛子達では殺せない。だからあえてハジメが殺った」

ユエが説明するとこうだ。戦場で殺すことは可能だが、あえてしなかった。

改心する心が残っていればという希望をハジメも持っていた。

しかし、もはや清水は底まで堕ちていた。そのためハジメがあえて悪役になってまで、

清水を殺したと。

「ならばそう愛子殿に説明して・・・」

「あの精神状態じゃ不可能だ。それにこれでいいんだ。これで。

このことで先生が俺を殺そうとしても、それは受け入れるよ。

復讐という感情があれば生きようとするだろう」

そう言うハジメのその顔は寂しさに満ちていた。

そこにユエがハジメを包む。

「ユエ?」

「・・・・・・ハジメ、修羅に堕ちてはダメ。私もシアもティオもいる。

だから一人で背負いこまないで」

「・・・・・・ん」

ユエに身を委ねるハジメ。ハジメは神だ。だが、一割は人間だ。

これが壊れたら、ただの破壊するための機械になるだろう。

その危険性をユエは本能的に察したのである。

一行が次に目指す場所はフューレンである。

 




スキル
魂の灯火:EX
ハジメが守り通している人間としての灯火(じんかく)。
大切なものが増えることで、その輝きは強くなる。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。