ありふれたFGOで世界最強   作:妖怪1足りない

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メルジーネ海底遺跡2

 洞窟の奥に見える通路に進もうとユエ達を促す寸前でハジメがユエに呼びかけた。

「ユエ」

「ん」

その一言でユエが障壁を展開する。

直後、ウオーターカッターのごとき水流がハジメ達に襲いかかった。

香織以外の皆に動揺はない。

突然かつ激しい攻撃に、香織がよろめく。

それをハジメが支えた。

「ご、ごめんなさい」

「気にするな」

そう言われて香織は思う。

自分は足手まといにしかならないのではないか?

その思いが香織の胸中をよぎる。

「どうした?」

「えっ。な、何でもないよ」

「・・・・・・そうか」

香織は咄嗟に誤魔化し、ハジメは特に何も言わない。

そして香織は気が付いた。

ユエがこちらを見ていることに。

女としてのプライドで、こちらを見るユエを睨み返す。

その間にティオが火炎を繰り出し、天井を焼き払う。

その正体はフジツボの魔物だった。

魔物の排除を終えると、ハジメ達は奥へ進む。

通路は先程の部屋よりも天井が低くなっており、

海水は膝上ほどまであった。

ハジメは蔵からボートを出し、それを漕いで進む。

途中魔物が出て来るが余裕で対処出来る。

「弱すぎる」

ハジメの呟きに香織以外の全員が頷いた。

今までの迷宮の経験からしたらおかしいのだ。

その答えは通路の先にある大きな空間で示された。

 

 「なんだ・・・?」

半透明でゼリー状の何かが通路へ続く入口を一瞬で塞いだのだ。

シアがその壁を壊そうとドリュッケンを振るった。

だが、壁は壊れず、その飛沫がシアの胸元に付着した。

付着した部分がどんどん溶けていく。

ティオが咄嗟に炎で焼く。

「また来るぞ!」

今度は天井部分から無数の触手が襲いかかってきた。

ユエが障壁を張り、ティオとハジメが炎で焼き払う。

「不味いな・・・。このゼリー魔法も溶かすようだ。炎が勢いを失う」

障壁もじわじわと溶けている。

そして、遂にゼリーを操っている魔物が姿を現した。

それは十メートル程もある巨大なクリオネだった。

全身から触手を飛び出させ、頭部からは無数のゼリーの飛沫が飛んだ。

「ユエも攻撃をして!防御は私が!――”聖絶”!」

それにユエも頷き、ティオ、ユエ、ハジメの炎が巨大クリオネに直撃し、爆発四散する。

「まだだ! これは・・・。不味い!」

「どうしたのじゃ、ご主人様?」

「奴には魔核がない! ここは奴の腹の中だ!」

その言葉と同時に巨大クリオネも本気を出してきた。

「一時撤退だ! 地面の下に空間がある。覚悟を決めろ!」

全員の同意の返事を聞いたハジメは、『エア』を使用。

地面の亀裂を更に広げる。

地面に大穴が開いたため、海水が一気に流入する。

全員が大穴に流されていった。

 

 「全員無事か!?」

岸にたどり着いたハジメが皆の無事を確認する。

「・・・・・・ん。大丈夫」

「大丈夫ですぅ~」

「大丈夫だよハジメ君」

「全く、ご主人様がいなかったら、全員バラバラになっておったぞ」

ティオが愚痴るのは訳がある。

ハジメ達が落ちた場所は、巨大な球体状の空間で、何十箇所にも穴が開いており、

その全てから海水が噴き出し、あるいは流れ込んでいて、まるで嵐のような、

滅茶苦茶な潮流となっている場所だった。

このためハジメは『神性』と『カリスマ』をオンにし、水神ヴァルナの権能を使った。

瞬く間に潮流が治まり、『千里眼』で魔法陣の位置を特定し、一つの穴に皆が入っていったのである。

「それと全員服を着替えてくれ。俺は後ろを向いてるから」

そう言って後ろを向くハジメ。

女性陣は自分の服が透けているのに気付き、宝物庫から替えの服を出して着替える。

女性陣が着替え終わった後、ハジメ達は深部を目指して探索を開始した。

 

その後しばらく進み密林に入る。密林を抜け出た先は船の墓場であった。

夥しい数の帆船――戦艦の残骸が横たわっていた。

どの船も激しい戦闘跡が残っていた。

そして、ハジメ達が墓場の中腹に入ると起こった。

空間がぐにゃりと曲がり、ハジメ達は船の甲板に立っていた。

「固有結界・・・いや、空間魔術の類か?」

ハジメは起きた出来事に当たりを付ける。

そして、二国の何百隻もの船が双方共、魔法を撃ち合う。

そして、ハジメに直撃コースで炎弾が飛んできた。

ハジメは王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)で迎撃したがすり抜ける。

「何ッ!」

「待って、防ぐから――”光絶”!」

香織が障壁を展開し炎弾を防ぐ。

ハジメは確認のため、近くの炎弾に王の財宝を打ち込むもすり抜ける。

ならばと王の財宝から魔杖のみを選択。魔術を打ち込む。

今度は破壊できた。

「なるほど・・・。実体を持った幻術で魔法しか効かないか」

「ふむ。そうなるとシアは戦えんの」

「香織。回復魔法はどうか試してみてくれ」

ちょうど怪我をした人物が出たので試してみると、消滅した。

「やはりか・・・・・・」

「今、私、人を殺し・・・・・・」

「香織。これは実体を伴った幻術だ。気にするな」

「ハジメ君・・・・・・。うん、そうだね。ごめんなさい。

ちょっと取り乱しちゃったけど、もう大丈夫」

「・・・・・・」

香織の言葉に黙るハジメ。

ハジメは何となくだが察していた。

 

 そのうち一部がハジメ達に襲いかかって来た。

数もどんどん増えていく。

「各自、戦闘開始! シアはユエの側に! 香織もここでは回復魔法も強力な攻撃だ! 攻撃に回ってくれ!」

こうして魔法を行使した戦闘が始まった。

言葉の端々からこれが宗教戦争だとハジメは理解した。

ハジメの顔が歪む。

前世でもこれが多かった。

信仰と宗教は別物なのだ。

宗教が絡むと、人間は狂信的に戦う。

中東での戦争がわかりやすい。

一方でハジメは香織を気に掛ける。

その戦う姿勢は気丈であるが・・・・・・。

その後二国の大艦隊は、ハジメ達に殲滅された。


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