長居は迷惑になるとハジメは判断し、一両日中にアンカジを後にした。
ハジメがシャドウ・ボーダーを飛ばしていると、
隊商が盗賊に襲われているのがわかった。
香織が割られる前まで張られていた障壁を見て、知り合いがいるようだ。
香織がハジメに助けるように頼み切る前に、ハジメはシャドウ・ボーダーを加速させた。
シャドウ・ボーダーはドンドン加速していく。
「あ、あのハジメ君?。まさかと思うけど・・・」
「このシャドウ・ボーダーも宝具だ。宝具を開帳する」
そうしてシャドウ・ボーダーは盗賊達に突っ込んでいく。
「駆け抜けるは前人未到・・・・・・未完の馬よ、輝ける轍を残せ!
ああ・・・・・・人生はとても楽しい! 『境界を超えるもの(ビューティフル・ジャーニー)』!」
言ってることは綺麗だが、やってることは盗賊を轢き殺してるのである。
香織は引き攣った笑みを浮かべた。
確かに自分が頼んだことだが、やってることは交通事故である。
そのまま一気に駆け抜けると、香織は隊商の元へ。
ハジメ達は盗賊の討伐に当たった。
そして盗賊達は数分と経たず、全滅した。
そしてフードを被った人物が近づいてきた。
隊商の障壁を張った人物である。
それはなんとハイリヒ王国の王女、リリアーナであった。
一国の王女がお供を付けず、お忍びで隊商に乗る。
何かあったと考えるべきだろう。
ハジメはそう思った。
「香織、治療は終わったか?」
ハジメは香織に尋ねた。
ハジメの姿を見て、リリアーナは懇願する。
「異界の神たるハジメさん!。どうか助けて下さい!」
リリアーナの態度は必死であった。
そんな中、ハジメ達の元へある人物が近寄って来た。
「お久しぶりですな。息災・・・・・・どころか随分とご活躍のようで」
「確か・・・・・・モットーだったか」
「覚えていて下さって嬉しい限りです。ユンケル商会のモットーです。
危機を助けてもらえたのは二度目ですな。あなたとは何かと縁がある」
このモットーはかつてブルックの町から、
フューレンまでの護衛での隊商のリーダーである。
この世界の商人の性をハジメに教えた人物でもある。
ちなみにハジメは投影魔術で複製した宝物庫の指輪を渡しており、
装備品等の値引きといった便宜を図ってもらえるようにしている。
リリアーナはホルアドまで行く予定だったようだが、ハジメ達に会えたことで、それを止めた。
『直感』が警告を発しているので、ハジメは嫌な予感がした。
その後、モットーはアンカジへ向かっていた。
そして、リリアーナが語った言葉は最悪の一言だった。
「愛子さんが・・・・・・さらわれました」
ハジメはリリアーナから詳しく話を聞き、責任の一端が自分にあると判断。
「先生を・・・・・・救出する」
そう呟いた。
ハジメは千里眼を行使。王宮の現在と過去を見た。
そして、ハジメの顔が鬼になった。
凄まじいまでの魔力の奔流が立ち上り、ユエ達も声をかけられない。
リリアーナに至っては、正に神の怒りを見てしまった。
「檜山の糞が。やはり裏切ったか!」
やはり殺して置くべきだったと、ハジメはそう吐き捨てた。
「・・・・・・ハジメ、何を見たの?」
ユエが代表で問う。
「今回もクラスメイトが裏切った。裏切った首謀者は恵里。檜山は部下だ」
「そんな・・・・・・!」
香織が驚く。
「騎士団の大半は恵里の手駒になっている。メルド団長は真犯人に殺された」
「ふむ。真犯人とは?」
ティオが聞く。
「エヒト神の眷属だ。王達も魅了で操られてる。
・・・・・・これで俺もエヒトに懲罰を執行しないといけなくなった」
「懲罰とはどういうことですか!?」
リリアーナが問いただす。
ハジメはアンカジでの事を話した。『解放者』達のことも。
「そ・・・・・・んな・・・・・・」
崩れ落ちるリリアーナを支える香織。
今まで信じてきたものが、全て崩れた者の表情だった。
「ど、どうするんですか!。ハジメさん!」
シアが尋ねてくる。
「・・・・・・先生の救出を最優先。それと神山の迷宮を攻略する」
「・・・・・・恵里達は?」
ユエが問う。
「俺達にすぐに危険がない以上、後回しだ。ただし、状況次第では行動が変わる」
ハジメのプランはこうだ。
まずは先生を救出する。
次に神山の迷宮を攻略。
その後、王宮に隠密裏に潜入。
恵里と檜山を暗殺。
この流れで行う。
ただし、何らかのトラブルが発生した場合、各自の身の安全を最優先。
リリアーナには悪いが、エヒトが関わる以上、悪辣な罠も予測される。
王は諦めて、今のところ無事なランデル王子の救出を最優先することになる。
「ここまでで何か質問は?」
「父上達は何とかなりませんか?」
ハジメの説明にリリアーナが問う。
「現状どの程度の魅了かが不明だ。
眷属による妨害も考えると、解呪に手間取る。
無事なランデル王子を救出するのが優先だ」
ここにいるメンバー以外は全て敵と判断すべきとハジメ。
敵は一国。だが、遅れを取るつもりはない。
ハジメはいざという時の為に、ある者達を作っていた。
これを使うのは戦争時しかないが、それを使うのも辞さない覚悟だ。
「これはあくまで上手くいった場合だ。当然、エヒトの眷属や教会関係者、
恵里達等の妨害が予想される。各自気を引き締めてくれ」
ハジメの言葉に全員が頷いた。