王都侵攻から五日経った。
リリアーナは目の回る忙しさだった。
国王を含む首脳部は、恵里の傀儡兵に殺され、
政治態勢の立て直し、騎士団の再編成。
亡くなったもの達への慰問。やることが山積みであった。
また、愛子を含むクラスメート達も皆表情が暗い。
恵里の裏切りが影を落としていた。
中でも雫は心ここにあらずといった表情だ。
ハジメが香織を生き返らせるようなことを言ったが、
神であるハジメでもそれが可能なのか不明である。
また、教会が何も行動を起こさないのも問題だった。
実態はハジメが宝具で吹き飛ばしたせいだが。
このため、国民の間では不安が広がっていた。
動揺を防ぐため、カバーストーリーを立てて、混乱を収めた。
リリアーナと光輝は時間を縫って、話し合っていた。
話がハジメの話に及ぶと、光輝は色々な感情がないまぜになった表情をした。
クラスメート達でもハジメの戦闘力は評価が分かれた。
前線組はその差に絶望し、居残り組はもはや諦めた。
人と神ではここまで違うのかと思わせるものであった。
そして、リリアーナが神山の方を見ていると、
三頭の馬に引かれた戦車がこちらへ向かって来た。
そして、リリアーナの前で停車した。
ハジメ、ユエ、シア、ティオの四人である。
「よお、雫。ちゃんと生きてるな」
「香織は!?。香織はどうなったの!?」
その言葉にハジメは神妙な顔になった。
「蘇生は成功した。したんだがちょっと本人が頑固でな。
詳しいことは本人から聞いてくれ。もう来る」
もう来るという言葉通り、空から人影が見えた。
「やっぱりまだ駄目か」
ハジメはそう言うと空中へジャンプし、人影をキャッチして降りた。
その人影に愛子とリリアーナが驚く。
その人影はノイントだったからだ。
すぐに注意喚起され、皆が戦闘態勢に入る。
そこにハジメが中身は香織だから大丈夫と言った。
どういうことかと詰め寄る雫に、ハジメが理由を説明した。
神代魔法に魂魄魔法があり、それで元の肉体に戻そうとしたが、
香織から待ったがかかった。
このまま弱いままじゃ嫌だから、強い肉体が欲しいと。
その言にホムンクルスの肉体を培養するか考えた時、
ノイントの肉体使えるんじゃないかと。
やってみた結果、定着に成功し、元の肉体は冷凍保存で宝物庫の中にあると。
「まあ、そういうわけだ」
ハジメは軽く口にするが、結構作業は大変であった。
「ハジメ。恩ばっかりだけど、どうもありがとう。返せる当てはないけどね」
「気にするな。俺がやりたくてやっただけだしな」
「ところでなんで先生がさらわれたの?。神代魔法と関係があるの?」
雫の質問にハジメは愛子を見て、説明を促す。
そして、愛子は説明を始めた。
全ての説明が終わった後、真っ先に文句を言ったのは、光輝だった。
その文句にハジメは言っても自分の言葉を信用しなかったろと返した。
「でもこれから一緒に神と戦うなら・・・・・・」
その光輝の言葉に、ハジメは大笑いした。
「はははははははは!。二回も死にかけた所を救われ・・・普通は感謝する所を感謝もせず、
・・・それで神と戦う・・・はははははははは!。天之河、お前は救いようのない道化だな!」
「なんだと!」
「事実だろう!。人も斬れぬ勇者様なぞ邪魔なだけだ!。そもそもインドラからの命令は懲罰だ。
エヒトを倒すことではない。それはこの世界の人間のすることだ」
「お前は俺より強いじゃないか!。なんでその力を使わない!」
「阿呆が。力を使うか使わないかはそいつの意志だ。
力があるから倒せ?。何の権限があってお前は言ってるんだ?
意志が弱いからお前は敗北するんだよ」
これ以上は時間の無駄と吐き捨て、養豚場の豚を見る目をするハジメ。
リリアーナが今度は残ってもらえないか願い出た。
せめて防衛体制が整うまでは。
しかし、ハジメもエヒトと事を構える以上、迷宮攻略を急ぎたいと説明。
王都の大結界は修復すると約束した。
ハジメが帝国領を通って大樹海の迷宮に向かうと説明すると、リリアーナが帝国に行くので、
ついて行くと説明した。
そうすると光輝達もついて行くと言い出した。
「いや、勝手に行け。そして、死ね」
ハジメが光輝を見る目は北極並みに冷たかった。
「無理なんですね?」
愛子がハジメに尋ねる。
「無理です。死にたいならどうぞ」
「一つだけでもいいんです。神代魔法を手に入れさせてくれませんか?」
愛子が頭を下げて頼む。
「ハジメお願い!。一つだけでもいいから神代魔法を手に入れさせて!」
雫が必死になって頭を下げて頼む。
鈴や龍太郎も頭を下げて頼んだ。
「・・・・・・一度だけだぞ」
雫達の必死の姿勢にハジメが折れた。
本来なら足手まといは御免である。
しかし、今後のことを考えると、
勝てないまでも死なない位はなってもらわないと困る。
流石にこれ以上クラスメート達の死亡は見たくないのだ。
果たして元の世界に帰るまでに何人生き残れるのか・・・。
気が重くなるが表情には出さないハジメであった。