次元境界穿孔艦ストーム・ボーダーが空を駆ける。
時速2万9000kmの超高速・超音速で飛べる艦である。
その性能の凄まじさに雫達は絶句した。
飛行性能もさることながら、潜水艦でもあり、
虚数空間という特殊な空間も移動できるという。
なによりこれは地球の魔術で作られたという点で、
クラスメート達を驚かせたのだ。
ハジメの宝具も地球の物だから、驚きだが、
ストーム・ボーダーは次元が違った。
原子力潜水艦以上の大きさの物体が空を飛ぶ異質さ。
全力を出す必要もないだろうとのハジメの命令の元、
旅客機のスピードで、ストーム・ボーダーは空を飛んでいた。
「こんなのが地球で作られているなんて凄いですね」
愛子は雫に話しかけた。
「ええ。UFOの正体ってこれなのかしら?」
雫は疑問に思った。
今回はクラスメート達全員をハジメは連れて来ていた。
王都の守りは大結界の復旧と、ハジメ製作アルテミス・レプリカで大丈夫と判断した。
このアルテミス・レプリカ。FGOの本元には及ばないが、それでも十分な威力がある。
クラスメート達全員を連れて来たのは、ひとえにハジメの猜疑心である。
「雫・・・ここにいたのか」
「光輝・・・」
「しかし、凄いなこれ」
「そうね。光輝一人?」
「龍太郎や近衛の騎士達はシアさんの料理を食べてるよ。
鈴はリリィとおしゃべり。南雲は艦長席で指揮を取ってる」
南雲の名が出た途端、苦々しい表情に変わった。
「ハジメが気に入らないの?」
「これだけのものを持っていて、あれだけ強くて、
何でこの世界を救わないんだよ。おかしいだろ」
「天之河君、南雲君もギリギリの精神状態なのよ」
愛子の言葉に光輝は訝しむ。
そこで愛子は現在のハジメの状態を語った。
「そこまで追い詰められていたなんて・・・・・・」
ハジメの精神状態を知り、衝撃を受ける光輝。
「確かにハジメは強いわ。でも、精神まで鋼じゃないの。
私達はやれることをしないと」
雫が言葉を続ける。
不意にストーム・ボーダーが進路を変えた。
三人は顔を見合わせる。
帝国へは一直線で行けるはずだ。
三人は急ぎ艦橋へと向かった。
艦橋ではハジメが指示を出していた。
「砲雷長、対地ミサイル発射用意!」
「アイ、キャプテン!」
「ハジメ、どうしたの!?」
雫が尋ねる。
他のメンバーも勢揃いしていた。
「画面を見てくれ」
雫達は正面のディスプレイを見る。
二人の兎人族と帝国兵とのリアル鬼ごっこが始まっていた。
また、その後方には帝国兵の馬車が見えた。
「目標帝国兵。外すなよ砲雷長!」
「アイ、キャプテン!。対地ミサイル撃て!」
対地ミサイルが発射され、帝国兵達を跡形もなく吹き飛ばした。
呆然とする兎人族の二人。
「着地態勢に入る。慎重に降ろせ」
「アイ、キャプテン」
ストーム・ボーダーは兎人族の前に着地した。
「久しぶりだな。健康そうでなによりだ」
「「団長!」」
「余計かと思ったが、実地テストも兼ねて兵器を使った。
おとり作戦を壊してすまないな」
「「「「「「恐縮であります。Sir!」」」」」」
待ち伏せていたメンツも合わせて、唱和した。
ハジメやユエは慣れているが、他はドン引きである。
シアがパルに色々尋ねるが、中二病全開である。
仕方なく他のメンツに尋ねるが、こちらも中二病全開であった。
ハジメにも付けようとする始末である。
ハジメは変な二つ名をつけられると嫌なので、第六天魔王を名乗った。
そんな中、森人族・・・アルフレリックの孫が尋ねて来た。
手枷足枷が痛々しい。
本来守られているはずのアルフレリックの孫が、
捕まってこの状態ということは、
どうやら樹海で異常事態が起きたようだ。
ハジメはそう推察し、亜人達を樹海に送ることにした。
アルフレリックの孫・・・アルテナの枷を全て外し、
鍵を錬成し、パルに全員の枷を外すよう指示を出す。
全員の枷を外し終えると、全員をストーム・ボーダーに乗せ、
樹海に向けて飛び立った。今回も厄介なことになりそうだ。
ハジメはそう思った。