「欲しい情報は得られた。今晩、カム達のいそうな所へ潜入する。
潜入するのは俺とユエとシアだけだ。香織達はパル達の所で待機してくれ」
「それはわかったけどネディルって人が嘘をついている可能性はないの?」
「それは大丈夫だ。そいつの身体に直接聞いた。何をしたかは聞かない方がいい」
ハジメは目をスッと細めると笑顔で応じた。
この表情に察しのいい雫は、ハジメが何をしたか想像がついたが、聞かないことにした。
碌な手段ではないことは確かだからだ。
ここにきて光輝が話し合いで何とかならないか意見したが、ハジメは却下した。
対価に何を払うのかと。
帝国とてメンツがあるのだ。
タダで引き渡すはずがない。
そうなれば後は、武力行使となる。
結局、結論は同じなのだから、自力で奪還した方がいいのである。
「作戦について話すぞ。天之河達は正面で派手に暴れて陽動。適当な所で撤退。
俺達は陽動に帝国兵が気を取られている隙にカム達を救出する。簡潔に言うと以上だ。
それとこれを渡しておく」
ハジメはルーン魔術でパパっと目元を隠す仮面を作った。
それを光輝達に手渡す。
「南雲これは?」
「正体を隠すためだ。正体がバレるとリリアーナの交渉に影響を及ぼす。
付けると誰か分からなくなる魔術付きだ。色で各自誰か判断しろ」
「ちょっと待ってハジメ」
雫から異議が上がる。
「何だ?。何か問題でも?」
「何で私がピンクなの?」
「香織から実は可愛い物好きと聞いてな。それでピンクを割り振った」
親友のまさかの裏切りに愕然とする雫。
それを無視し話を続けるハジメ。
「時間まで各自身体を休めてくれ。揉め事は極力控えるようにな」
こうして雫の仮面の色はピンクに決まった。
夜になり捕まったハウリア族を救助に来たハジメ達だが、
ハジメは放置しようかどうか考えていた。
やれ鬼だの悪魔だの魔王だの・・・魔王は第六天魔王で合ってるが。
こいつら影で上官のハジメをこう思っていたとは・・・。
やはり俺には人を見る目がないとため息を漏らした。
「よし。お前等。それが上官に対する態度か」
ハウリア族全員が沈黙して硬直する。
そして、声のした方を向くとハジメがいた。
「「「「「げえっ!団長!」」」」」
「ああ。しっかり聞こえたよ。お前等、後で地獄見せるからな」
そう言ってあっさりと牢の鍵を開け、ユエが皆を完全回復させる。
カムは今、尋問中のようでここにはいないらしい。
ハジメは転移魔術を行使し、ハウリア族を予定地点に送ると、
カムの救出に向かった。
厳しい警備をスキルと魔術であっさり突破し、カムのいる尋問部屋に着いた。
中から怒声が聞こえるが、それを言っているのはカムだった。
ピー音連発のそれに頭を抱えるハジメ。
こんな兎人族に誰がした・・・。
俺だったわ。
面倒なのでスキル『圏境』と『気配遮断』で部屋に入ると、
中の帝国兵の喉をあっという間に切り裂く。
中にいたカムは先程のハウリア族よりダメージが深かった。
これでよくピー音入りの怒声を言えたものである。
ユエがカムを完全回復させ、ハジメの転移魔術で予定地点に転移した。
予定地点にてハウリア族が喜び合っているのを、
ハジメが見ている時、背後から風切り音が響いた。
「投影開始」
即座に干将・莫邪の夫婦剣で防ぐ。
相手の得物は黒い鞘に覆われた刀だった。
「・・・・・・何のつもりだ雫」
そう言いつつ原因は予想がついている。
仮面の色がピンクだったのが気に入らなかったのだろう。
雫の言葉の端々からもピンクのダメージが深かったらしい。
「こんのぉ!。奔れ――― ”雷華”!」
バチバチと放電する黒刀。
しかし、当のハジメはむしろ感心するように見ていた。
「ちょっとハジメ。電撃を流しているのになんで平気なのよ」
「いや、普通に俺も放電出来るし。そもそもインドラ・・・雷神の息子だぞ?」
「くっ!。今回は引くわ。いつか一発殴ってやる」
「団長。少しよろしいでしょうか」
カム達がハジメの方へ歩み寄って来た。
真剣な表情からただの挨拶ではないと察し、
ルーン魔術で即席の椅子を作り、車座状に配置した。
その内の一つにハジメは腰掛け了承の意を伝えた。
そしてカム達は語り始めた。