リリアーナがパーティーで着るドレスを選別している時、ドアがノックされた。
部屋に入って来たのはハジメであった。
なぜこの部屋にとリリアーナが聞くと、面倒事だと言って壁に寄りかかった。
そうしていると、ノックもなしに扉が開かれ、男がずかずかと入って来た。
リリアーナの相手のバイアスだった。
バイアスはリリアーナ以外の全員に部屋から出るように指示した。
皆が従うなか、ハジメは動かなかった。
「さっさと出ろそこの奴!」
この言葉にハジメは答える。
「俺より弱い奴には従えないな雑種」
その言葉にバイアスは剣を抜いて襲い掛かるが、
ハジメ相手ではあまりに遅かった。
即座に顔面にパンチを見舞い、ノックアウトさせる。
用事は済んだとばかりにバイアスは引きずられ、廊下に放り出される。
「用事はこれだけだ。自室に戻る」
そう言ってリリアーナの部屋から退出するハジメ。
リリアーナはハジメが千里眼でこの事態を見て助けに来たとわかり、
心の中で感謝した。
自室に戻ったハジメは黙っていた。ユエ達もハジメが集中していることを悟り、
黙っている。やがてハジメは静かに目を開けた。
「流石は帝城。防御が固いが粗方のトラップは片づけた」
そして笑顔で応じる。
「首尾は上々。後は仕掛けを御覧じろ。主役達の為に俺達も着飾るぞ」
その頃、帝城の至る所で暗殺が仕掛けられていた。
警備の兵達が次々と消されてゆく。
ハウリア族の面々が音もなく静かに、行動していた。
全ての情報はハジメの身に着けたルーン魔術のアクセサリーで、
ハジメが適宜、指令を飛ばしていた。
正に死の饗宴が始まったのである。
帝城内のパーティーは豪華絢爛であった。
最も帝国貴族相手に愛想笑いを浮かべたハジメには、
不穏な情報が入っていたが、おくびにも出さない。
そうこうしているうちに、大仰に扉が開けられ、
リリアーナとバイアスが入って来た。
その姿に皆が困惑した。
リリアーナは漆黒のドレスを着ていたのだ。
祝いの席に着るような服ではない。
一方のバイアスも不機嫌であった。
とてもこれから夫婦になると思えない二人であった。
「何かあったのあの二人?」
雫がハジメに尋ねる。
「問題ない。踊るかユエ」
「・・・・・・ん」
雫の質問をはぐらかし、ハジメとユエはダンスホールで踊り始めた。
元王族で踊りの心得があるユエと、スキルを用いて踊るハジメ。
その踊る姿は見事なもので、二人に注目が集まった。
やがて二人は踊り終わり、次はティオだったが、
その前にリリアーナがハジメの前に進み出た。
「一緒に踊ってくださいますか、ハジメさん?」
「バイアスはいいのか?」
「あの方は愛人と踊っていますから」
「ふむ。それではお手を拝借」
うやうやしくリリアーナの手を取りダンスホールの中央へ導くハジメ。
リリアーナとハジメはゆったりと踊り始めた。
「先程はありがとうございました」
リリアーナが小声で囁く。
「千里眼でリリアーナに暴力を振るうのが見えたからな。
最も一時しのぎだが」
ハジメも小声で返す。
「もし、助けてと言ったら助けてくれますか?」
ハジメは少し考えてこう言った。
「助けてほしいなら助けてといえ。
そうすれば世界を敵に回しても助けてやる」
リリアーナは目を見開く。
ハジメがそう返答するとは思っていなかったからだ。
踊り終わり二人が離れる。
「さて、シア。準備完了だ。行って来い」
ハジメの言葉に頷き、会場から出て行った。
檀上ではガハルドが演説をしていた。
一方のカムも同胞に気合を入れていた。
「さて、パーティーの始まりだ」
ハジメは小声で言いつつ、顔をニヤリとさせた。