ハジメ達はトレントと呼ばれる木の魔物と相対していた。
枝、葉、実、根全てが致死性の攻撃である。
大きさもオルクス大迷宮の比ではなかった。
それに対して戦っているのは、光輝、雫、鈴、そしてオーガに似た生物になった龍太郎である。
ここに至る道中、オーガ同士の死闘に遭遇したのだが、そのうちの一体が龍太郎であった。
逃げようとせずひたすら前に行く姿勢に、皆がコイツだと感じた。
その後、雫からめちゃくちゃ説教を受けた龍太郎。
ともかく全員が合流し、ハジメ達は探索の末、巨木にたどり着いたのだが、
その巨木が暴れ始めたのだ。
強さ的にもこの階層の主であろう巨大トレント。
今回は香織も回復要員で参加している。
(これはどうしたものかな)
ハジメは悩んでいた。
光輝達はそろそろ限界が近い。
しかし、それで大迷宮に攻略と認められるかどうか・・・。
『ご主人様よ。何を悩んでおるかは大体わかるが、問題ないと思うぞ』
「どういうことだティオ?」
『恐らくじゃがハルツィナは絆を試しておるのじゃろう』
「絆か・・・なるほど」
確かにそれを試している節がある。
そう思考してハジメは決断する。
『谷口、死にたくなかったら結界を解くな。全て焼き尽くす』
ハジメは念話の返事を待たずに行動に移す。
「此処に至るはあらゆる収斂。縁を切り、定めを切り、業を切り。
我をも断たん無元の剣製――即ち。宿業からの解放なり!」
強力な一振りが巨大トレントを焼き尽くす。
無論、谷口達に直撃しないように調整してだ。
結界の外が炎に染められたのを見たトラウマか、雫と鈴は眼の光を失くし、
龍太郎は冷や汗を流している。
光輝はいとも簡単にトレントを倒したハジメを見て歯がみした。
そんな時、メキメキと言う音と共に木が再生し、瞬く間に巨木となった。
そして、幹が裂けるように割れて中に空洞が出来上がる。
「なるほど。中ボス兼次への入口というわけか」
ハジメは呟き中へ向かう。それをユエ達と光輝達が追った。
全員が洞にはいると扉が閉じられ、足元から魔法陣が輝きだした。
「また転移だな……」
ハジメはユエとティオを抱き寄せた。
無駄かもしれないが、何もしないよりはましだろう。
そしてハジメの視界は一面光に塗りつぶされた。
――――――――ジリリリリリリ!
目覚ましの音にハジメは眼を覚ます。
それと同時に自室のドアが開き、制服姿のユエが姿を現す。
「ハジメ。おはよう」
「ああ、おはよう。ユエの偽物」
そう言って偽物を睨むハジメ。
「ハジメどうしたの!? 私、ユエ……」
「黙れ! 幻術を得意とする俺が、騙されると思うか!
偽物がユエの姿で、声で真似をするな!」
怒りの咆哮と共に、ハジメから強大な魔力が立ち昇る。
ハジメはエアを取り出す。
「この空間ごと壊してやる」
エアの三つの円筒が回る。
「裁きの時だ。世界を裂くは我が乖離剣! 受けよ! 『
ハジメの怒りと共に世界が切り裂かれた。
背中と後頭部に当たる冷たく硬い感触と乾いた空気。
それを感じてハジメの意識は急速に浮上した。
「ああ、くそ……」
頭を振り周囲を確認する。
棺のような物が並んでいた。
ハジメはその中の一つを覗いた。
ハジメは驚いた。琥珀の塊の中にユエがいた。
死んでいるのかと思ったが、気配感知で生きていると確認し安堵する。
「早く戻ってこいユエ。無性にユエの声が聞きたい」
ハジメがそんなことを考えていると、棺が発光し、琥珀は完全に消えてしまった。
ハジメはユエが呼吸をしているのを確認し、棺から持ち上げ抱きしめる。
ユエはゆっくりと眼を開ける。
「ユエ、お帰り」
「……ん、ハジメ?」
「想像はつくが、正真正銘のハジメだ。
俺はユエが本物だと信じる」
「どうしてそう思うの?」
「魂だ。魂の深い所がそう言ってる」
「…………私も同じ」
ハジメはユエを改めて抱きしめた。
ユエも同じくハジメを抱きしめた。