あれから二週間が経過した。
現在、ハジメは訓練の合間の休憩時間を利用して、
王立図書館にてこの世界のことを調べていた。
机には数冊の本が置かれ、物凄い速さでハジメは本を読んでいた。
最初はちゃんと本を読んでいるのかわからなかった司書も、
ハジメに質問したら本の内容を完璧に覚えており、
ちゃんと元の場所に戻すので、気に止めなくなった。
逆にさりげなく司書にならないか勧誘する始末である。
ハジメはまずトータスの魔法について調べた。
トータスにおける魔法は、体内の魔力を詠唱により魔法陣に注ぎ込み、
魔法陣に組み込まれた式の通りの魔法が発動するというプロセスを経る。
詠唱の長さ、魔力量、魔法陣に書き込む式の多さに比例して、
威力なども変わってくる。
ちなみに魔法陣は紙に刻んだ使い捨てタイプか、鉱物に刻むタイプの二つがある。
次にハジメは地理、人種の特徴を調べた。
亜人族は被差別種族であり、基本的に大陸東側の南北に広がる、
【ハルツィナ樹海】奥地に引きこもっている。
差別される理由は彼等が一切魔力を持っていないかららしい。
魔法は神からのギフトであるという価値観が強いのだ。
なお、魔人族はエヒトとは違う神を崇めているが、
亜人族を差別するのは同じらしい。
この魔人族は全員が高い魔法適性を持っており、
人間族より遥かに短い詠唱と小さな魔法陣で強力な魔法を繰り出してくる。
数は少ないが、南大陸中央にある魔人の王国【ガーランド】では、
子供まで強力な攻撃魔法を放てるようであり、
国民全てが兵士と変わらないなとハジメは考えた。
【海上の町エリセン】は海人族といわれる亜人族の町で、西の海の沖合にある。
亜人族の中で唯一、王国が公に保護している種族だ。
理由は北大陸に出回る魚介類の八割がここから出回っているからである。
ちなみに西の海に行くには、
その手前にある【グリューエン大砂漠】を越えなければならない。
この大砂漠には輸送の中継地として重要なオアシス【アンカジ公国】や、
【グリューエン大火山】がある。
【グリューエン大火山】は七大迷宮の一つである。
七大迷宮という言葉に、ハジメのスキル『天賦の見識』が引っかかった。
これは何かの鍵になる。ハジメにそう思わせた。
ハジメは続きを読み進める。
七大迷宮とは、この世界における有数の危険地帯である。
ハイリヒ王国の南西、グリューエン大砂漠との間にある【オルクス大迷宮】と、
先程の【ハルツィナ樹海】もこれに含まれる。
何故三つなのかというと、古い文献からその存在は信じられてきたが、
詳しい場所が不明なのである。
一応目星はついており、大陸を南北に分断する【ライセン大峡谷】や、
南大陸の【シュネー雪原】の奥地にある【氷雪洞窟】がそうではないかと言われている。
(一度現地に行って調べるか。最悪、千里眼で片っ端から探すか)
ハジメはさらに続きを読み進める。
【ヘルシャー帝国】は魔人族との戦争中、
とある傭兵団が起こした新興国で、軍事国家らしい。
使えるものは何でも使うという思想があり、
亜人族を扱った奴隷商が多数存在している。
帝国は王国の東に【中立商業都市フューレン】を挟んで存在する。
経済力を最大限に使い中立を貫いている。
何か欲しいものがあれば、ここに行けばいいという商業中心の都市だ。
世の中やはり金を持つものの方が強いのだ。
ここまで読んでハジメは訓練の時間が迫っているのに気付き、本を片付け始めた。
大体の大陸の情報は理解できた。特に迷宮は一度行く必要がありそうだ。
そこに何かがある。そう思うハジメであった。