お久しぶりです。やんかつです。
今回はキンジとアリアのお話。時系列としては3巻以降でしょうか。
途中で様々なキャラが出てきますが、特徴が掴めている心配です。特に武藤。
レキは可愛いポイントを少し振りました。どこの場所のことを言っているか分かった方はコメントいただければと思います。
原作をトレースしている部分が多いので、思い出しながら読んでください。
それでは本編をどうぞ٩( 'ω' )و
1週間の中で金曜日が一番という人は多いのではないだろうか。1日が終われば土曜日曜と自由な日々が手に入る。俺も例に漏れず、週末に何をしようかと想像を膨らませていた。
「キンジ!ラーメン食いに行くぞ!」
「今日はパス。他を当たってくれ」
ノリノリで声をかけてきたのは武藤。退屈な午前の授業が終わり、今日は特別午後の授業がない。昼には帰れるというのに、野郎と過ごすつもりはない。かといって女子と過ごす気もないけどな。早々に支度を済ませ、昇降口へと向かう。
「あれっ」
少し喉が渇き、自販機でコーラでもと思っていたんだが、財布がない。
ポケットじゃないなら鞄の中なのかと漁るが、見当たらない。どこかに落としたか?
「ツイてないな……」
落ち込んでいても仕方がない。さっさと見つけて帰るとするか。
「教室、屋上、更衣室……こんなところか?」
どこで落としたかわからない以上、今日行った場所をしらみ潰しに探すしかない。早速教室へと戻り、机の中や落としそうな所を探すが、財布らしきものは見当たらない。
「おーキンジ!ラーメン食いに行く気になったか?」
「そんな気は天地がひっくり返っても起きん。というか俺は今無一文なんだ。行こうにも金がない」
「大袈裟だな……俺の誘いを断るからバチが当たったんだろ。あてはあるのか?」
「まあ……手当たり次第に探すだけだ」
「どこにもなさそうなら職員室に行ってみろよ。落とし物として届いてるかもしれないしな」
「そうだな」
教室には無いことを確認し、屋上へと向かう。昼休みの時に来た限りだが、ここは有力候補だろう。
早速座っていた辺りを探すものの、見つかったのは空薬莢の数々。武偵高らしいものしか落ちてない。根気よく探すものの、屋上では見つけることができなかった。
(そうなると、後は更衣室か…?)
体育の授業前に使う更衣室だが、普段は鍵がかけてあるため職員室に鍵を取りに行かなければならない。
一階へと降り、ドアに手をかけたその瞬間。
バキバキッ!
「うおっ!」
開けようとしたドアの反対側が真ん中からへし折られ、中にいたであろう男子生徒が飛んできた。
「次違法改造なんぞしたらこんなモンで済むと思うなや!」
職員室の奥から聞こえてきたのは蘭豹の怒号。どうやらこの生徒は蘭豹に改造銃がバレて説教&蹴りというコンボを喰らったらしい。手が小刻みに動いているので死んではいないだろう。
「失礼します」
こんな状況な上、更衣室の管理をしているのは蘭豹。しかしここで財布を諦めるわけにはいかないのだ。
「蘭豹先生、更衣室の鍵を借りたいんですが……」
「鍵ぃ?そこら辺にあるから勝手に持っていけや」
蘭豹の対応はそっけないものの、鍵を見つければ更衣室に入ることができる。乱雑に置かれた書類の山をかき分けていると、更衣室以外の鍵が10以上一緒になっていた鍵束を見つけ、そそくさと職員室を出る。
あんな猛獣だらけの部屋にいたら命がいくつあっても足りないからな。足早に二階へと向かい、第二男子更衣室の鍵を開けて中に入る。
使ったロッカー、入ったら見つかりにくい隙間、その他にもありそうな場所を探したが、ここにも無い。
「もういっその事新しい財布を買った方が早いんじゃないか…?」
そうボヤきつつ更衣室の鍵を閉める。諦めきれない気持ちが強く、後はどこだったかと考えていると、後ろから声がかかった。
「キンジさん」
「レキ?」
どこからともなくレキが現れた。考え事をしていたとはいえ、足跡も気配もまるでしなかったぞ。
「レキ。俺の財布を知らないか?どこかに落としたみたいなんだが…」
「財布…?いえ、私は知りません」
ダメ元で聞いてみたが、やっぱりダメか。
「そういえば、アリアさんが財布らしきものを拾ったと言っていました。もしかしたらキンジさんのではないでしょうか」
アリアが…?当たってみる価値はありそうだ。
「ありがとう。ちょっと強襲科に寄ってみる」
足を踏み出そうとしたが、レキが俺の服の袖をつまんできた。なんだ?
「キンジさん。第六訓練準備室の鍵を持っていませんか?」
第六…訓練準備室?聞いたことはないが、もしかしたら鍵束にあるかもしれないと探してみる。ジャラジャラと見てみると第二調理室、第五計測室、第六…訓練準備室。みつけた。
「鍵束ごと渡すから、後で蘭豹に返してもらえるか?」
コクリとうなづくレキに鍵束を渡し、強襲科へと走る。大半の生徒が昼終わりということで学校外に出てしまっているため、急がないとアリアがいない可能性もあるのだ。
強襲科にはいくつかの施設があるが、アリアはよく射撃訓練場にいる。ピンク色のチビっ子を探せばいいので、背を除けば目立つアリアを探す。
アリア…アリア…いた!シャラシャラと髪の毛を揺らし、ちょうど射撃訓練を終えたところのようだった。
「アリア!」
「キンジ…?なんでアンタがここにいるのよ?」
「財布を無くしたんだが、レキからお前が財布を拾った話を聞いてな。今持ってたりしないか?」
「財布…?あたしが拾ったのは財布じゃなくてパスケースよ。誰のものかわからなかったから、蘭豹先生に預けたけど」
アリアもハズレか…。
露骨に落ち込んだ俺を見て、アリアが慌てふためく。確かにレキは財布らしきもの、と言っていた。過度な期待をした俺が悪い。
「他の場所は探したの?教室とか、アンタよく屋上にいくじゃない」
「他の場所も含めてどっちも探したさ。見つからなかったけどな」
「キンジのことだから割と近くにある気はするのよねぇ」
近く、と言われても鞄にもポケットにも入っていない。可能性がありそうな場所ももう探し尽くしてしまった。
「これだけ探して見つからないんだ。後は誰かが拾ってくれるのを期待するさ」
「なんだか楽観的ねぇ。しょうがないからももまんの一つでも奢ってあげるわ。少し待ってなさい」
ガチャガチャとアリアが片付けを始めたため、強襲科の外で待つことにした。その間特にやることもなく、携帯をいじっていたんだが……。
「キーくん!」
ぎゅっ!
ダッシュしてきた理子に不意に抱きつかれ、少しよろけてしまう。胸が当たってヒス的な血流が流れるものの、性的興奮より驚きが勝ち、なんとか血流を止めることができた。
「理子ぉ!」
「おっと」
ちょうど強襲科から出てきたアリアが理子の頭に足刀を入れようとしたが、それを俺の肩を支点にして前方バク転で理子が躱す……っておい!
これ、俺に当たるじゃねぇか!
ガスッ!
「いってぇ…」
アリアのミニあんよをモロに食らった俺はその場に蹲ってしまう。
財布は無くすわアリアに蹴られるわ…今日は厄日だ。
「というかなんで理子がここにいるんだよ……?」
「キーくんいる所に理子あり!…っていうのはウソだけど、強襲科にキーくんがいるのは珍しいじゃん?何かあったのかなーって」
「この馬鹿財布を無くしたのよ。誰かが拾ってくれるなんて考え方、楽観的過ぎだわ」
「財布?それホント?」
何やら理子が顔を顰めて考え始めた。
「多分、家の中じゃないかな……?」
「根拠はあるのか?」
「アリアなら分かってるんじゃない?」
アリアが?横を見るとアリアも顔を数秒顰(しか)めて……納得したような顔になった。
「勘ね」
「あのなぁ、勘で財布が見つかるなら苦労しないぞ」
「でも家はまだ確認してないんだよね?」
「それは……そうだが」
「なら一旦確認しにいきましょ。幸いまだ早い時間だから、無いならまた戻って来ればいいし」
他に財布が見つかる当てもないため、一度男子寮に戻ることになった。
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「いっちばーん!」
なぜか合鍵を持っていた理子が玄関を開け、靴を放って勢いよく家の中へと入っていく。
「せめて靴くらいは揃えていけよ……」
理子の靴を揃え、俺とアリアも家の中へと入る。朝の状態のままで、移動場所なんて限られるんだが本当にあるのだろうか。
「あっ!あったわよ」
後ろで靴を脱いでいたアリアが声を上げる。
「ちょうど隙間に落ちたみたいね。ポケットに入れてしゃがんだ時にでも落としたんじゃない?」
手渡された財布を手に取り、ポケット……はまた落としそうだからジャケットの内側にしまう。
「ありがとな」
「べっ、別に感謝なんてしなくていいわよ。どうしてもっていうならももまんで手を打ってあげるわ」
素直に礼を受け取らないアリアだが、こんなに早く財布が見つかるとも思わなかった。一つと言わず、後でたくさん買ってくるとしよう。
「そういえば理子はどこいったんだ?」
1番に家に入ったはずの理子の姿が見当たらない。廊下や寝室も見てみるが、理子の姿はない。トイレも今さっき腹痛を起こしたアリアが入っていったからいない…となるとリビングか?
「理子?」
理子の姿はないが、声をかけてみる。すると。
「キンジ!」
「うおっ?!」
後ろから理子…じゃなくてアリアが現れた。
「理子を見なかったか?リビングにもいないみたいなんだが……」
歩きながら探すものの、やはり見つからない。
「えいっ」
ちょうどソファがあるところで押されてしまい、受け身も取れずそのままソファに倒れ込んでしまう。
「キンジ?せっかく私が見つけたんだからご褒美があってもいいんじゃない?」
そう言いながらアリアが覆い被さってくる。なんだ。いつものアリアの感じがしない。
「キンジ。もっと私を見て欲しい。今だけでいい。ずっと見て欲しいだなんて贅沢言わない。だから……」
耳元でそう囁き、アリアは俺を優しく抱きしめてきた。服越しでも分かる柔らかい体の凹凸から、内側へと血流が流れてくるのが分かる。抜け出す方法もなく、なされるがまま。さらにいえば、今の俺には抜け出すという選択肢も無くなっていた。なってしまっていたから。そして、気づいてしまったから。
「どこでそんな早着替えをしたのかな。理子」
「やったやった!キーくんがヒスった!」
ウィッグを脱ぎ、ベリベリとフェイスペイントを剥がしてピョーンと跳ねた理子は口をω←こんな形にして目を輝かせている。
「女の子の悪戯を怒ったりはしないよ。でも、なんでこんなことをしたのか教えてもらえるかい?」
「くしししし。それは後ろを見てからのお楽しみ、だよ!」
何故か後ろへと下がっていく理子を不思議に思いつつ、振り向く。
「ア、ン、タねぇ……!」
元々吊り目気味な目をさらに吊り上げたアリアがそこにはいた。
「ちょっと目を離したらもうこれ?理子も理子でヘンな事するんじゃないわよ!」
正確にはアリアに押し倒されたんだがな。途中から見ていた(らしい)アリアからは理子が変装していたことは見えていなかったらしい。
「アリア。落ち着いてくれ。俺と理子は何もしていない」
「してたじゃない!ソファで!キスを!」
犬歯を剥き出しにし、顔を真っ赤にしながらアリアは叫ぶ。今にも襲いかかって来そうなムードだ。
「アリアー?これなーんだ」
ここで理子の助け舟。ありがたい、と思いつつ理子の方へと振り向くと、先程のウィッグとペラペラのフェイスペイント。
「キーくんはねぇ?アリアの格好をした理子に押し倒されてたの。しかもその後は無抵抗。愛されてるねー?アリアー?」
悪い顔をしながらアリアに事の顛末を話す理子。アリアは元々真っ赤な顔をさらに赤くして動かなくなってしまった。なんなら頭から湯気が出ていないか?
俯いたまま動かないアリアだが、このままにしておくと本当にそのままな気がしたので、
「アリア。その…まあ、アリアが思うようなことはしていないから心配しなくていい」
的なことを言って誤魔化しておいた。
「何何!?もうキーくんとアリアはそんな仲だったの?」
「変な勘違いをするな、理子」
「気になるじゃーん!って、あれ?」
俺の周りをクルクル回っていた理子が時計を見た瞬間動きを止める。しばし時計を眺めて、何かを思い出したかのように慌て始めた。
「やばい!やばいよキーくん!大変だよ!」
「な、何が大変なんだ?」
「今日は駅前のカフェで限定ストロベリーいちごパフェが出る日なの!理子もう行くから!ばいばいきーん!」
と言い残し去っていった。というかストロベリーといちごって同じじゃないのか?などとどうでも良いことを考えるが、ヒステリアモードの掛かりが甘く、もう半分以上は普通に戻ってきている。
開けっ放しの玄関を閉めてリビングに戻るが、アリアは固まったまま。
「……アリア?」
チラ。少しだけこちらをみたが、目があった瞬間俯いてしまった。どうしたものか。
消えかけのヒステリアモードであることを思い出し、支度を始める。
「アリア。ちょっと出かけてくるから少し待っててくれ」
立ったままのアリアの肩を掴んでなんとかソファに座らせ、俺は部屋を後にした。
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午後5時。早めに帰ってこようとは思っていたが、目当てのものを見つけるのに時間がかかってしまった。アリアはまだ部屋にいるだろうか。
ピンポーン。
自宅のインターホンを鳴らし、アリアを驚かせないよう注意を払う。赤面→逆ギレコンボは幾度となく経験しているから細心の注意を払って部屋に入る。
リビングのドアを開けるが、ソファにアリアの姿はない。買ってきた荷物をテーブルに置いた瞬間、携帯の通知音が鳴った。
携帯を開き、メールボックスを確認する。
『おかえり』
アリアからのメールだが、姿はない。多分寝室がどこかにいるんだろう。
いることは分かったので手早く準備を始めた。買ってきたのは大量の桃まんと初めて買ったコーヒー。後は海外品を取り扱ってるお店で角砂糖を買ってきた。
「……桃まん?」
「それだけじゃないぞ」
やっぱり寝室にいたらしいアリアだが、警戒してるのか近づかない。
2人分のコーヒーをカップに注ぎ、買ってきた角砂糖を入れる。テーブルに置いたところでアリアがソファに座った。
「コーヒー?」
「飲んで良いぞ」
香りで気づいたのか怪訝そうな目で見ているが、両手でカップを持ち、縁に口をつけた。
「っこれ……!」
アリアが目を見開き、俺とコーヒーをニ度見する。
「エスプレッソ・ルンゴ・ドッピオ。砂糖は……カンナだったか?」
「覚えていたのね」
途端に上機嫌になり、横に置いてあった桃まんにも手をつけ始めた。
良かった。さっきの件はどうやら有耶無耶にできそうだな。
「アリア。改めて言うが、今日はありがとうな」
「別に私は何もしてないわ。たまたま見つけたのがあたしだっただけよ」
既に2つ目の桃まんを手に取りながら、アリアは続けた。
「むしろここでこのコーヒーが飲めると思ってなかったから、あたしが感謝したいくらい。ありがとね、キンジ」
屈託のない笑顔を向けられ、少しドキリとしてしまう。アリアにそんな気はないだろうから無意識なんだろうが、不意にやられると心臓悪い。
「……砂糖は大量にあるから、豆さえ買って来ればいつでも飲めるぞ」
「しょうがないから買ってきてあげるわ。買ってくるだけだけど」
「俺が淹れるのかよ……」
「たまになら良いでしょ。武偵はいつでも危険と隣り合わせなの。しっかりと休息を設けるのはむしろ当然よ」
まぁ……それもそうか。
「これからもよろしくね。キンジ」
「なんだよ改まって。らしくないぞ」
「初めてここにきた時を思い出してたのよ。色んなことがあったけど、いつも横にキンジがいてくれた。これからも……一緒に戦ってくれる?」
「期待に応えれるかは分からないが、やれるだけのことはやるさ」
「なんだか弱気ね。キンジらしいといえばらしいけど」
アリアはコーヒーを飲み干し、立ち上がる。
「もう夕方ね。あの日も今日みたいな綺麗な夕陽が見えてたわ」
「……そうだな」
アリアは俺の方に向き直し、あの時のようにアリアの体が夕陽に染まる。そして、
「パートナーとして……これからもよろしくね」
あの日とは少し違ったセリフを俺に言ってくるのだった。