パルヴィーズGBN公開出産本    作:ビルダー林檎

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公開出産

「えへへ。最近、またお腹大きくなって来ました。」

 翡翠色の美しい髪を結った少女の様な少年。パルヴィーズは一言そう言い終えると心の底から嬉しそうに、愛おしそうに自身の腹を撫でた。その腹は第三者から見たらまさしく妊婦のそれであろう。

 大きく突き出したその腹は、人の営みの中で得た新たな生命のゆりかごと言えた。

 パルヴィーズの本来の性別は「男」ではあるが、ここGBNにおける性別は「女」である。

近年、Lダイバーと呼ばれる新たな電子生命体が誕生して以来、パルヴィーズの様にGBN上で子を授かる者が急増している。

ガンプラに対する想いが電子の海に漂うLダイバーと繋がり"子"を成すのだそうだ。

 眉唾物の理屈ではあるが、こうしてパルヴィーズの様に実際に子を授かる者がいる以上、運営としても見過ごす事はしないのだと。以前パルヴィーズは小型のガンダムの姿を模した男に言われた事があった。

 パルヴィーズが子を授かってから、早数ヶ月が経つ。初めの頃はつわりに悩まされたが、今は少しだけ落ち着いていた。

 

「おぉ〜!すげぇなぁ!男でも子供が出来るなんてよ!」

 

「ああ、これも人が持つ新たな可能性……なのだろう?」

 

「ああ。パルヴィーズ。俺達も最後までサポートするよ。」

 

「はい!ありがとうございます!皆さん!」

 

ビルドダイバーズの皆に励まされ、パルヴィーズはまた嬉しそうに腹を撫でた。

「そうだパル!どうせなら俺のチャンネルでやろうぜ!お前の出産をよ!!」

ふいに、カザミが素っ頓狂な声をあげた。その突然の発想に驚き固まる三人。

 

「出産を見世物にするのか!?」

 

「ちげーよ。パルがここまで頑張ってんだ。その姿をみんなにも見てもらおうぜ。男でも、子供が産めるってな。」

 

「なるほど、これはLダイバーだけじゃない。新たな母体としての可能性を示すつもりなのか。」

 

「ちょっと恥ずかしいですけど……僕は大丈夫です。」

 

パルヴィーズは恥ずかし気に俯いたまま、そう答えた。以前までの気弱な彼であればこうして自身の考えを表に出す事は無かっただろう。

 だが、「エルドラ」と呼ばれる地で仲間達と共に強大な敵と戦ってから、彼は強くなった。

 それは命のやり取りだけではない。折れていた自身の翼を治し、愛機のモルジアーナと共に大空へと飛び立ったパルヴィーズ。その姿は凛々しく、雄々しく、そして何よりも美しかった。

  数週間後。パルヴィーズは大きな寝具の上に横たわっていた。その表情には不安の色が見え隠れするが、少しだけ新しい命に対する期待もある様に見えた。

 

「パルヴィーズ。もう少ししたら陣痛が始まる。その際に伴う痛みはお前の想像以上の物になるだろう。……耐えられるか?」

 

「……覚悟の上です。」

 

メイの心配そうな表情に対して、パルヴィーズははっきりと答えた。それは覚悟を決めた男の表情。

次世代に命を繋ぐ行為に対する決意の現れであった。

 

「うぐっ!」

 

「パルっ!!」

 

 

「パルヴィーズっ!!」

 

 

「おいパルっ!大丈夫か!……ヒロトっ!!」

 

カザミが目配せすると、ヒロトが機材の電源を入れる。入れたと同時に、パルヴィーズの絶叫がGBN上に設けられた病室内に響いた。

 

「う……うああああああああああっ!!!!!痛いっ!!あ、あああああああああああああああ!!!」

 

パルヴィーズが痛みにのたうち回りそうになるが、ベッドに四肢が固定され辛うじて落ちないでいる。その表情は脂汗が滲み、苦痛に歪んでいた。

本来女性では無いパルヴィーズでは、肉体に伴う苦痛が女体の比ではないのだ。男の体では命を産む。という行為はあまりにも荷が勝ちすぎていた。

 

「みんなっ!みてるかっ!!ジャスティスカザミのリライズニュース……!じゃない!パルヴィーズの出産だ!!今この瞬間GBNに新たな命が生まれようとしているんだっ!!みんなっ!応援してくれぇっ!!!」

 

カザミが劇を飛ばす間も無く再生回数が伸び続けている。それは圧倒的な数だった。

コメントにはパルヴィーズ君頑張れといった励ましがある反面、男が子供を産むのか……といった否定的な意見もあった。数時間にも及ぶ長い闘いが続いた。メイがパルヴィーズの汗を拭いてやり、ヒロトが体を拭いてやり、カザミが現役助産師のプレイヤーからアドバイスを貰う。完璧な連携が取れていると言えよう。エルドラを解放した時に匹敵する辛い闘い。

 

 

(もし、この場で僕がショック死したらこの子はどうなるんだろう?」

 

 

パルヴィーズは痛みに薄ぐ意識の中でふと考えた。

仮にリアルの肉体が痛みによるショックに耐えられず、死した場合お腹の子はどうなるのだろうか。

 

 

(まさか…消滅?)

 

 

パルヴィーズの脳裏に嫌な想像が過ぎる。

そうはさせない。とパルヴィーズは力を込めた。

 

 

「頭が出て来たぞっ」

 

 

「パルっ!もう少しだっ!頑張れっ!!」

 

 

(みんなが応援してくれている。そうだ。僕がここで頑張らないで、いつ頑張るんだ!!みててくれ!モルジアーナ!!!!)

 

 

パルヴィーズは最後の力を振り絞った。頭の中の嫌な想像を掻き消す。赤子が生まれてくるイメージだけを脳裏に描き、一点。余計な力を抜いた。

 

 

「「「おおおおおっ!生まれたぞっ!!」」」

 

 

長い闘いから数時間の後、パルヴィーズは元気な子供を産んだ。男の子だった。GBNで遊ぶみんなのガンプラへの想いが集まった子。奇跡の子。願いが、想いが、未来への希望が、今ここに生命の息吹をあげ誕生した。

 

GBNのみんなが歓声をあげている。

その万雷の拍手と歓声の中、パルヴィーズは達成感と共に眠りについた。

数時間後、パルヴィーズは己の隣ですやすやと眠る赤子を愛おしそうに眺めながら、満足そうに目を瞑った。この子の未来に幸あれ、と。

 

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