あれから1週間位が経ち、応募の当選発表が今日発表されることになっていた。結果が出るまでの放課後のこの時間は自分の教室の机でツアーアンセムの作業を行っていた。エフェクトの作業自体はすぐに終わるので、出来上がった所をキャンサーに送り、問題ないことを聞いてから最後の得意な物をぶつけあう所のフレーズを何個か作成している状態だった。作業をしていたらスマホに着信が届き、それを確認したらネビュラプロダクションからのメールが届いていた。中身を確認すると、募集結果は見事当選をしており、これが衣舞紀達が歌うのかと思い、赤面しながら少し嬉しい表情をしていた。正直落ちていただろうと思っていた物だったが、フォトンのメンバーと一緒に出かけたことを思い浮かべながら作った曲ということもあって、楽しく作れて、そしてスピカ自身の心境が変わっていっていることに気が付き始めていた。
「衣舞紀に連絡を入れておこう」
そう思ってスマホを取り出してL〇NEに当選したことを送信したタイミングで教室の入口にDJクノイチこと犬寄しのぶがドアに縋って立っていた。なんでも、スピカに会わせたい人物がいるということらしく、作業自体もある程度キリが良かったので、一緒に会いたい人物に会うためにライブスペースの楽屋に向かった。
到着した時にはしのぶ意外に3人程がライブを終わらせてゆっくりとしていた。彼女達は今陽葉学院でトップに君臨する大人気ユニットのPeaky P-keyで、ライブが終わってしのぶがスピカを楽屋に呼んだ形になっていたのだ。
「ライブ終わりだよね、お疲れ様」
「ありがとう、真珠星スピカだよね、しのぶから色々と聞いているよ」
そう言って声をかけてきたのはピキピキのボーカルを担当している山手響子だった。しのぶ曰く、ちょくちょくしのぶがスピカと一緒に話している姿を目撃していたということと、ユニットランキングに乗らずにかなりの人気を誇る裏の人気DJという面から気にはしていたらしいのだ。
「それで、呼んだのは分かるけど、何か聞きたいの?」
「ふふ、色々とあるけどさ、スピカの曲を聴かせてもらってもいいかな?分かるものがあると思うし」
そう響子が言うので、仕方なくスピカが作った曲の中で気に入っている物を何曲か聴かせることにした。それを聴いた3人はそのレベルの高いインスト曲と1曲のボーカル曲を聴いてかなり驚いた表情をしていた。
「すごい、インスト曲なのにも関わらず脈動するこの感じ、かなりイケてる。インストだけでこれほどの曲が作れるのは凄いよ」
「本当ね、色々な人の曲を聴いたけど、スピカさんの曲は格別に何かを感じてしまう」
「スピカさんってどこかに所属してますよね?」
流石はお金持ちっていうか、勘がとても鋭かった。
「ええ、絵空の言う通り、私はStardustという音楽レーベルに所属しているトラックメイカーで同じようにヴァルゴという名義で活動してます」
その発言で3人は驚いた顔をしていたが、しのぶはというと、また進化したなというような顔をしていた。
「折角ならプロのDJプレイがどんなものなのか気になるな」
そう響子が言ったので、見せようにも下校時間だったので、仕方なく阿久戸に連絡を取り、営業開始前の30分だけ使えると言われたので、そのままスピカとピキピキのメンバー全員でアステリズムの方に向かった。到着した時にはいつでもできるようにスタンバイされていたので、流す曲をささっとリスト化し、曲をかけ始めた。盛り上がるタイミングというのをしっかりと抑えてエフェクトやスクラッチを回しての曲繋ぎや、リバースなのでさらに盛り上げていった。演奏が終わり、ピキピキのメンバー全員が唖然とした顔をしていた。
「凄い、プロのDJプレイってあまり見る機会がなかったけど、これは納得せざるを得ないかもな」
響子から賞賛とも言えるコメントを貰い、安堵の顔を出したスピカを由香が1枚写真をとった。そのDJプレイに刺激を受けたのか、ピキピキのメンバー全員の顔が引き締まった顔をしていたので、何か決心がついたと思い、次の言葉を残してアステリズムを去った。
「今後のピキピキの活躍、期待しているよ。昔、私が辿り着けなかった所までね...」
家に帰ったスピカはそのまま部屋に上がったのだが、そこには衣舞紀と咲姫が待っていた。
「お邪魔してます。今回の応募の結果を聞いて、直接言いたいことがあるので上がらせてもらいました」
「はあ、まあいいや。当選したし、そのことらしいから今回は許すわよ」
応募に当選し、そのことで直接おめでとうと言いたかったらしく、もう少しスピカのことを知りたいと思ってか部屋に上がってきた二人に文句は言えず、そのまま作業の続きをしている姿や音ゲーをしている所を見せて軽く駄弁ってから二人は帰った。ただその時間が悪くない時間だと思っている心境にスピカはまた会いたい...寂しくなり始めて心の中がモヤモヤし始めていた。
「気を紛らわせよ、作曲自体あと5%くらいだしな」
勿論、その姿を見ている影が一つだけあったのだが、そのことにスピカは知る由もなかった。
次回くらいには曲は完成しているでしょう