Vibes Star   作:Crina

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あと2話です。それと、今回はかなり長いです。


2-12話 Lyrical Lily

 10月末になり、スピカは近々開催される音ゲーの公式大会の予選が開催されるということがあって、スピカは青薔薇こと葵、店内2位の実力を持っているL.Eさんと一緒に予選に向けての追い込みを行っていた。そこには衣舞紀と咲姫もおり、その光景に圧巻されていた。3人共の選曲が最高難易度帯付近にある曲ばかりを選んでバチバチとやり合っていた。リザルトを見てもPerfectと1落ちばかり出しているために勝敗の決定打という所が見当たらない戦いばかりだったが、結果としてはスピカが負けとなった。

「まじで青薔薇上手すぎんだろ、これなら勝てると思ったのになぁ」

「ごめんねヴァルゴ、ヴァルゴが絶対この曲を選んでくることは分かっていたんだよ。だから練習した」

「こ の や ろ う」

 19時になった時には皆でゲーセンから離脱し、そのまま衣舞紀と咲姫と一緒に家に向かっていた。そのタイミングでスピカのスマホに着信が掛かってきた。その着信に気づいて電話相手を見ると凄く見覚えのある電話番号から掛かってきていた。

 

 遡ること3時間前、名門のお嬢様学校である有栖川学院の地下に4人の生徒が集まっていた。有栖川学院公認であるDJユニットであるLyrical Lilyのメンバーの春日春奈、桜田美夢、白鳥胡桃、竹下みいこだった。どうやら公式になってまだ日が浅いということもあって、まだ戸惑っている感じだった。

「リリリリの皆さん困っていますね、お手伝いしましょうか?」

「あら犬養さん、実は...」

 犬養鷲莉愛(いぬかいじゅりあ)、有栖川学院に通っている高校2年生で、閉鎖的な雰囲気を醸し出している有栖川の中では外の世界をかなり知っている情報通なので、今回リリリリが困っていることを知ったのでこうして手伝いに来たという訳だ。

「なるほどね、そういうことならDJについてかなり知識がある人に教えてもらうしかないですわね。確か私のお知り合いに一人、DJをやっている方を知ってますので、また明日ご連絡しますわ」

「分かりました。よろしくお願いします」

 その日の夜、鷲莉愛は家の電話である人に電話を掛けた。そう、掛けた相手はスピカなのだ。

「もしもし、お久しぶりだね」

「かれこれ2年ぶりか?珍しいね【アルタイル】から連絡を貰うなんてさ」

「まあいろいろとね、明日の夕方空いてる?Stardustに所属してなかなか時間ないでしょ?」

「ん?今なら空いてるから問題ないよ」

「そう空いている...て、え?大丈夫?忙しいんじゃないの?」

「丁度タスク全て終わった所だったから空いているんだよ」

「そっか、ならスピカ、助けてほしいから有栖川学園に来て欲しいの」

 

翌日のお昼時、スピカはいつもの通りになっているフォトンのメンバーと一緒に昼食を食べていた。いつものようにフォトンのメンバーと一緒に母親が作ってくれた弁当を食べながら話をしていた。スピカは今日に限ってはソワソワしていることはフォトンのメンバーには筒抜けだった。

「今日のスピカさんは何かソワソワしていますね、何かあるのですか?」

「いつものスピカじゃないよね、乙和にも教えて~」

「確かにいつもの感じじゃないよね?何かあるの?」

「珍しいね、スピカがこんな感じになるなんて(めっちゃ可愛い~)」

という感じに質問攻めにあうことになった。まあ仕方ないのかもしれない、まさかお嬢様学校である有栖川学園にコーチとして行くことになるとは思ってもいなかったし、何より、場違いすぎて困惑していた。

「実はさ、今日の放課後に有栖川学園にDJの指導に行かなくてはならなくてね、それで困惑しちゃって...」

「そういうこと...え?あの名門のお嬢様学校に!!!」

 勿論の事ながらフォトンのメンバーは驚いており、スピカもそのことに対しての経緯を話した。

 

 放課後、スピカは家に帰らずにそのまま有栖川学園に向かうことにはなるのだが、距離としては結構の距離があるので、どうしようかと悩んでいたら目の前にリムジンが止まった。その後ろの窓が空くと、そこには絵空が座っており、どうやら昼間の会話を聞いていたらしく、有栖川まで送ってくれるというので、お言葉に甘えて乗せてもらうことにした。勿論の事ながらその間にもDJ活動の話で話が弾み、気がついたら有栖川学院に着いていた。

「ではスピカさん、また今度~」

 有栖川に到着したスピカの印象はデカいと高貴さなという事しか思い浮かばなかった。

「真珠星スピカ様ですね、早速中へどうぞ」

そう門の前にいた管理人らしき人に案内され、着いた場所は有栖川の雰囲気とは思えない地下空間だった。そこにはリリリリの4人の他にアルタイルがスピカの到着を待っていた。

「久しぶりだねスピカ、本当に大丈夫だったの?」

「昨日言ったでしょ、今は予定が空いているって」

そんな会話を聞いていた4人は驚きの顔をしていた。まさか陽葉学園の生徒がくるとは思ってもみなかったのだから。

 

「はじめまして、Stardustという音楽レーベルで活動していますヴァルゴこと真珠星スピカです。今日はよろしくお願いします」

 自己紹介が終わった所で早速どんな感じで演奏をしているのか確認するために実際にやってもらった。意外にも出来が良く、悪くはない感じがあったのだが、強いて言えば、DJをやっている春奈があたふたしている感じがあった。

「どうですか?」

「全体の出来は良いとは思えたけど、3人の振付に多少のずれがあったのが気になったわね、そこを直すだけでもより良いものができると思うわ」

そう言って色々と気になったところ、個人の改善ポイントを教えた。

「そして最後に大きく気になったのはDJの春奈、DJ機種に対してまだまだなれている感じではなかったわね、直接教えてあげるわ」

 

 そうして色々と話していたら30分が経過しており、休憩を取ろうと美夢が言ったので、休憩を取ることにした。中庭の方でアフタヌーンティーが用意されており、そこで色々と話ながらゆっくりと休憩を取っていた。スピカが紅茶を飲んだら口が急にヒリヒリとして口に入っていた紅茶を思いっきり吐き出してしまった。

「大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫、何か私が飲んでいた紅茶に激辛ソースが入っていたの」

大体こんなことをするのはあの2人だと春奈は察し、二人を探し始めたが、スピカは探さなくても良いと伝えた。逆に仕返しをすぐに企て始めた。

「へ、へ、へ~、激辛ソース作戦大成功~。春奈ちゃんに教えている時間めちゃくちゃ暇だったし、何より驚く顔が見たかったんだ~」

「大成功なの~。いい感じに驚いていたから良かったの~」

 先に地下にいた胡桃とみいこはスピカに行ったドッキリに大満足な様子だった。まさかその後に酷い仕打ちを受けることになるとは思ってもいらずに...。

 

 休憩が終わり、春奈のDJコーチは30分ほど進んだ。その間にも3人には課題を指摘していたこともあって、どうしたら改善できるか考えさせていた。丁度コーチが終わって、どれだでできているかを確かめるために実際にライブをしているという大聖堂の方で本番を見据えてやるように手案を持ちかけた。勿論の事ながら4人とも賛成だったこともあって、そのまま大聖堂の方に向かった。スピカはアルタイルにドッキリの仕掛けを時間を稼いでいる間にシスターに了承を得て作業をしてもらうようにし、仕返しを企てていた。

「大丈夫ですか?胡桃さんは意外にも勘が良いのですよ?」

「問題ないよ、あいつの仕掛けは気づかれにくいものだから」

こそこそと話しているスピカは何か楽しそうな感じで、それが春奈にとっては心配だった。

 大聖堂に到着し、実際にライブをやる感じで位置を取り、演奏が始まった。演奏中はドッキリを作動させずに指摘したところをしっかりとクリア出来ているかしっかりとスピカは見ていた。最初の時の少しぐちゃぐちゃとした感じはなく、しっかりと課題はクリアできており、これならば問題はないとスピカは思った。ライブが終わり、総評を伝える...前にスピカはアルタイルからもらっていたボタンを押した。そしたら丁度胡桃とみいこがいる床が飛び上がり、綺麗に大聖堂の入口付近に隠して用意していた網に入り、二人とも相当困惑していた。

「あまり私をコケにしないようにね?」

スピカから放たれる圧に耐えきれず、二人は揃ってごめんなさいと謝罪の言葉を言って網から解放された。

 

 総評を伝え、最後に実際にスピカがどのようなライブをしているのか見てみたいと美夢が言うので、仕方なく自分のノートPCを取り出してDJの用意をしていた。折角ならと胡桃にVJの用意を頼み、準備を済まして早速DJプレイを行った。リリリリの4人が知らないようなインスト曲、フロアの盛り上げ方を見て完全に魅入ってしまっていた。勿論の事ながら、他の有栖川の生徒もシスターもその演奏を見て完全に魅入り、身体が自然と動いていた。

 DJプレイが終わり、その演奏に見ていた生徒とシスターから拍手喝采となり大満足をして有栖川の正門に向かっていた。

「今日はありがとうございました。また機会があればまた会いましょう」

「ええ、また会いましょう」

 そうしてスピカは帰宅し始めた。かなり距離がある道をゆっくりと歩いて帰っていた。そうしていたらスピカのスマホに着信の通知が来ていた。

「ん?キャンサーさんからだ。どうしたんだろう?」

「あ、ヴァルゴ、曲は完成したぞ。ツアーアンセムにはPVがあるのは知っているだろうし、空いている日教えてくれない?その日に撮影するから」

「分かりました。また確認して電話しますので、その時に」

 

「やっとツアーアンセムが終わるのか...意外と考え深いもんだったな」




次回でTour Anthem編は終わります。

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